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 古代都市 その2

 「さあ、我と一体になるがいい!!」
 ニビル七柱の一柱とモンスターどもの集合体である、コントンはその巨体からおぞましい触手をたくさん出すと、雷神の方に放った。

 「雷神剣!!」
 雷神はエネルギー剣を創り出すと、コントンの放った触手を薙ぎ払う。斬られた触手はその部分から燃え尽きていく。

 「喰らえ!闇の息!!」
 今度はその歪んだ口からどす黒いブレスを吐き出す。

 「雷撃斬!!!」
 雷神はそれを躱さず、真正面から剣で受け止める。

 雷神とコントンの戦闘はしばし、拮抗していた。



 「さあ、そろそろ終わりか?!」
 他の騎士たちを完全に殲滅した後、哪吒子がシグルトに迫る。

 苦しそうな表情になったシグルトに地下から現れた邪気をまとった影が重なっていった。
 「シグルト!力を貸すぞ!」
 「ジャッジメントか?!頼んだぞ!」
 邪神ニビルの目であった側近がシグルトに乗り移ると、全身がさらに大きくなり、発する闘気も大きくパワーアップした。

 「へえ?ちょっとは強そうになったじゃん♪そうでなくてはおもしろくないよな!!」
 八本の腕に武器を構え直すと、哪吒子はシグルトに向かって突進していく。



 雷神とコントン、哪吒子とシグルトが激戦を繰り広げてしばらくした時、ゴゴゴゴゴと地鳴りがした後、地面が大きく揺れ動く。
 「地震か?!」
 「古代都市の防衛機構が起動したのではないか?!!」
 俺の言葉にエミリーが叫ぶ。

 「これは早く地上戦の決着を付ける必要がありますね。おじい様お願いします!!」
 アリーナ王女の要請に応えて、じいちゃんが再び変身する。

 「ザップマンちぇーんじ!アンド二段変身!!」
 じいちゃんは再び身長一五〇メートルを超す、巨大ザップマンに変身する。

 「いきなり、ザップマンフラッシュ!!」
 じいちゃんはダッシュして雷神が光線の射線に入らないよう動いた後、両手をクロスして光線を発射する。
 コントンの触手が半分以上焼き払われ、大きく隙ができる。
 雷神はその隙を見逃さずに一気に懐に斬り込んでいく。

 「雷神剣・天地一刀斬!!」
 雷神の剣が光を増しながらコントンを頭から真っ二つに切り裂いていく。
 ガアアアアアアと断末魔の叫びを上げながらコントンの体は崩れ落ちていき、砂のように崩壊していった。


 コントンが崩れ落ちたころ、シグルトも哪吒子の猛攻に差し込まれて息が切れそうになっていた。
 「そろそろ限界のようだね。では、止めと行くぜ!!」
 哪吒子はにやりと嗤うと剣撃の速度を大きく上げた。
 「閃光斬一〇〇連撃!!」
 凄まじい速度で突きこまれてくる槍と剣をシグルトはついに防ぎきれなくなり、あっという間にバラバラに切り裂かれていった。

 バラバラになったシグルトはコントン同様、死体は砂のように崩れ去っていった。



 「エミリー!様子がおかしい!!地下の様子を探ってくれ!!」
 シグルトを倒すと哪吒子は俺たちの元に戻り、エミリーに向かって叫んだ。

 「哪吒子?!おかしいとはどういうことだ?!」
 哪吒子の言葉にエミリーは眉をひそめる。

 「エミリーも気付いているだろうが、地下で凄まじいエネルギーが動き出している!それだけならまだしも、さっきまであった魔神ニビルの気配がしなくなった。」
 「ニビルがいなくなった…どういうことだ?!明日香は無事なのか?!」
 エミリー顔色を変えて叫ぶ。
 「そうだ!明日香の気配は感じられないのかい?!」
 俺の背筋に冷たいものが走る。まさか明日香が無茶をやらかしたとか…。あるいは…。

 「…それが、わからない。明日香姉ちゃんが本気で気配を消したら、『こちらに敵対する意志を見せる』ならともかく、そうでなければ俺では察知しきれないんだ。」
 哪吒子が非常に困った顔になっている。

 「私たちとタツさんは『召喚魔法でつながっている』はずだから、エミリーが明日香とタツさんの魔法のつながりを調べれば無事かどうかわかるんじゃない?
 万が一死んでしまったらつながりが切れるはずだし。」
 「ありがとう!アリーナ。早速調べるよ!」
 エミリーが俺と明日香の魔法的なつながりの状態を魔法で探査する。

 「うん、つながり自体は大丈夫だ。明日香は間違いなく生きている。」
 エミリーが断言してくれ、俺たちは安どのため息をつく。

 その間にも地響きと震動は続き、ついには領都の前の地面が大きく割れ、中から石造りの巨大な構造物と、金属製と思われるたくさんの巨人型をしたゴーレムがせり上がってくる。
 ゴーレムはどれも大きな気を発しており、迷宮都市の地下の最後のゴーレムと同タイプのもののようだ。
 そして、一際大きなゴーレムの頭の上には…明日香が立っていた。
 明日香!無事だったんだね!!

 明日香は俺の姿を見つけると、にっこりと笑ってくれた。
 みんなも同じように喜んで……え?エミリーと哪吒子がものすごく厳しい表情をしているのだけれど? 一体どうして?


 「明日香姉ちゃん?無事なことは良かったんだけど、まず、ニビルはどうしたの?」
 「ええ。ニビルはこの都市防衛システムが吸収してくれたわ。おかげで都市防衛システム、いえ、古代都市システム自体が大きくエネルギーアップしたわ。」
 明日香がニコニコしながら哪吒子の質問に答えていく。

 「それは本当によかった。で、どうして防衛システムを起動したまま、しかも俺たちをそんなに警戒しているんだ?」
 哪吒子の表情がさらに厳しいものに代わる。えええええ?!!!哪吒子何を言っているの?!!明日香が俺たちを警戒するわけが…。

 「ふふふふ。さすがに哪吒子とエミリーには気づかれないわけがないわね。」
 明日香は相変わらずにこやかに笑っている。…でも、いつもの明るい笑顔ではないよね…。

 「古代都市システムは魔神ニビルの蓄えていたエネルギーを全て取り込んだおかげで、本来の機能を完全に取り戻して、魔族領の地下にある都市システム全てをその圧倒的なゴーレム部隊と共にいつでも自由に起動・運用できるようになったの。
 これを使えば一時間と掛からずに魔族領の全てを完全に制圧することができるわ。
 そして、その後一週間と掛からずにこの星全ても制圧することができるでしょうね。」

 「…明日香…お前、一体何を言っているんだ?ニビルに心を乗っ取られているんだよな?」
 「お兄ちゃん、安心して。ニビルとみんなで倒してくれた地上の防衛隊以外の眷属はその存在のいっぺん残らず防衛システムで吸収し尽くしたから。
 奴らがこの世界や他の場所を侵すことは未来永劫あり得ないわ。」
 いつもと同じ、でもいつもと全然違う笑顔で明日香は…あり得ないことを言い続けている。
 俺は…目の前の現実をどうやって受け止めればいい?


~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~


 「あら、ニビルさん。出てくるのが少し遅かったんじゃない?もう少しでこのシステムの乗っ取りは終了するんだけど?」
 見た目は端正な男性の魔術師といった風貌のニビルに明日香は笑いかける

 「なるほど、すでに君の魔力を相当防衛システムに侵入させたのだね。…でも…。」
 ニビルがにやりと笑うと、水晶柱と石板の動きが急に止まる。

 「このシステムが君らのような強敵を迎え撃つ要だからね。間違っても乗っ取られないように私の存在を元々浸透させていたんだよ。侵入させた君の魔力をまずは喰らわせてもらおうか!!」
 ニビルの台詞に明日香の顔色が変わる。その言葉の通り、防御システムに浸透させた明日香の魔力はどんどんニビルに吸収されていく。
 「はっはっは、凄まじい魔力だな!!君の魔力と存在そのものを吸収して、君の肉体を憑代にするのもありかもしれないな!!」
 魔神ニビルの哄笑がしばし、地下に響き渡る。
 だが、突然、明日香の魔力が吸収できなくなる。
 そして、自身の動きが鈍くなったのに気付いてニビルが慌てる。
 「これは一体どういう…。」

 「つ・か・ま・え・た♪」
 明日香の凍るような笑顔を見て、ニビルが戦慄する。

 「あなたはいざという時は逃げ足の速い非常に狡猾な魔神だと思ったから、『どうやって逃走経路をふさぐか』に細心の注意を払ったの。
 この防衛機構を乗っ取られるのが嫌だろうから、こうして『乗っ取る振り』をしてあげれば罠にかけられるとは思っていたけれど、まさか、最初からあなた自身が罠に入っていてくれるとは思わなかったわ。
 この石板はね。防衛機構の乗っ取り装置という以上に私の魔力を増幅、魔法を強化してくれるシステムなの。
 私と単体で扱える魔力がほぼ同格のあなたでは『レインボードラゴン』とこの石板という『魔力タンクと魔力増幅装置』を持った私の束縛を解くことは不可能だわ。
 さあ、これからあなたは古代都市起動システムの一部となって未来永劫生き続けることになるの。あなたの自我はなくなるけどね♪」
 「ふざけるな!この小娘が!!この俺が!暗黒魔神ニビルが!!うおおおお!!!!」

 しばらくニビルの叫び声が響いた後、防衛システムは一旦停止した。
 「あらあ、魔力はかなり強かったけど、魔法技術は思ったより大したことなかったわね。私が掛けた『抵抗力をなくす魔法』をまったく受け損ねていたもの。悪知恵には長けていたようだけど、魔法戦はからきしだったのね。
 …それでは、『当初の予定通り』システムを完全起動させてもらいましょう。」
 明日香は涼しい顔で再び水晶柱を起動させ始めた。


~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~


 「明日香姉ちゃん!今から何をするつもりだ!」
 「あら、哪吒子ちゃん。落ち着いてくれるかな?
 今から少しお兄ちゃんに話すことがあるから。
 そうそう、あまり変なことをしようと思わないでね。
 みんなの召喚魔法に干渉してここにとどまらせているのは私の魔法だから。
 私がちょっと意識するだけでお兄ちゃん以外のみんなは元の場所にすぐに戻ることになるわ。」

 …なんということだ!明日香を止めようにも俺以外の誰かが何かをしようとしたら、明日香は『召喚の魔法にちょっと干渉するだけでいい』んだ。誰かと戦う必要すらない…。
 明日香は空中浮遊の魔法を使って、俺たちの前に舞い降りる。

 明日香の言葉にみんな口をつぐんだ。そして俺は…。

 「明日香!俺に言いたいこととはなんだ?!」

 俺が厳しい顔で言うと、明日香は真剣な顔になって口を開く。

 「お兄ちゃん。あなた人は三つ選択肢があります。

 一つ。この星を全て掌握し、私と共に歩くことができます。

 二つ。そこまでするのが嫌なら、魔王領すべてを掌握し、私と共に歩くことができます。

 三つ。武力行使を全くしないのであれば、防衛システムを手放し、私と共に歩くことができます。

 さあ、どれを選びますか?」
 明日香は真剣な顔で俺をじっと見つめる。

 ……ええと…どうして、選択肢の三つとも『最後に明日香と共に歩く』が付くのでしょうか?

 俺がしばし固まっていると、後ろから哪吒子の声が聞こえてきた。
 「ねえ、タツ。家に帰っていい?」
 完全にやる気をなくした顔になっている。

 「そうだ!!全部タツが悪い!!」
 エミリーが完全にあきれ返ってしまっている。
 ええええええええ!!!!どうして俺が悪いの?!!!

 「タツ!!お前は勇気を持った真の(おとこ)だ!!こういう時どういう行動を取ればいいか、お前にはわかるはずだ!!いいか!自分の心に聴けば必ずお前ならわかる!!」
 ライピョンさんが俺を激励する。

 そうだ!俺の答えは……。
 俺は明日香に向かって歩いていく。
 パーーーン!!
 俺は右手で明日香の頬を叩いた。

 「ばかやろう!!どうして俺を信じられない?!!世界とか地位と名誉とかそんなものは全然なくても俺は明日香と共に人生をいくらでも歩いてやる!!
 何もなくてもお前を大切にし続けることはできる!!」
 左頬を押さえて俺を見ていた明日香はボロボロと涙をこぼしだした。

 「お兄ちゃん、ごめんさい!…これからもよろしくお願いします。」
 明日香は俺に抱き付いて来て…しばし、時間が止まった。

しおり