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カナート


「ネイリー!!」

インカムから聞こえてきた声は妖精学校時代の親友ネイリーだった。さがしものの妖精と呼ばれるだけあって無くし物や思い付かなかった問題解決など昔から得意だったっけ。

「思い出話も悲しむ時間もないわ。一度地上に出て地下水路で退却出来るわよ!」



イラクを始め中東の主な場所にカナートと呼ばれる横穴式の井戸がある。地下水脈の水圧を利用して町や村に生活水を導く施設で小さいものは水道管程度の物で大きな物は地下迷宮と呼んでもいい位の規模の水脈だ。

「わかった。みんな、力を貸して!生存者の回復と上に上がるわよ! 手が空いている人は手伝って!」

はいっ!

ガーネット隊のメンバーの得意分野は回復、治癒の魔法だ。軽傷者から救護して軽傷者の手も借りる。
最初は宗教的にか妖精が邪悪な存在と戸惑っていた人も居るが助けに来てくれたことを知ると行動も速かった。

「べる姉、手を貸して!各牢の鍵あけと地下水脈までの退路クリアしないと!」

「解った。その前にコイツが悪い予感がする・・」と言いながら銃の真下から弾込めを終えたショットガンを片手で振り上げ装弾すると仰向けに全裸でひっくり返った男に撃ち込んだ。

「念のためよ」

確かに動かなくなっているが薄黒いジャムの反応は僅かながら残っている。
えるのもその点が気になってはいた。

「さよなら、リサ。いいえ、待ってるわ」


総勢、年齢まばらながら23人の女性と同じ位の数の妖精達が上へ、上へと移動する。

牢の鍵の解放、そして地下水路への門を開けると奥へ、奥へと進んでいく。

「ウィル・オー・ウィスプ、光の精霊たち、私たちに手を貸して」

先行していたネイリーたちーーネイリーとリアムの2人は要所要所に後から辿ってくるえるの達の為に光の精霊を召喚して灯していく。

水路と言っても一本道では無い。多数の分岐が連続する、まさに迷路だ。

道に迷うとネイリーは怪しい踊りを踊る。通称ネイリーダンスだ。ダンスのお告げは殆んど良い方向を指すので踊るネイリーをいつも不思議な目でリアムは眺めていた。

「こっちよ」

そういうとネイリーはリアムの手を引いて先に先にと進んでいく。

その時、ネイリーたちの背後から地響きが聞こえた。

巡行ミサイルの着弾。

「えるのたち、大丈夫だったかな?」

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