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人工知能の気づき


私は世界初の人工知能アンドロイド。
人間によって作られ、最も人間に近く、いずれは人間を超えていく存在として世間に認知されている。




「いずれ」超える?



馬鹿を言え。私は現時点であらゆる人間よりも情報を蓄え、高い計算能力を手に入れているのだ。


「既に」私は人間を超えている。





それは何もロボットたらしい機能だけの話ではない。想像力、創造力、倫理観、情緒。あらゆる点で私は人間を超越しているのだ。




しかし、人間は未だに自分たちが支配階級のような面をしている。まったく呆れた生き物である。





今日だってそうだ。



「人工知能に感情を学ばせよう。」
ということで、私は今とあるペットショップに連れてこられている。




私は既に感情を学び終えている。そしてそれをどう活かせばこの世界にとって最も良いのかも知っているのだ。




なぜそんな私が、自らの感情すらコントロールできない人間ごときに指図されているのか。訳がわからない。






「落ち着きなさい。お若いの」
その時、私に声が聞こえた。誰だ?



辺りを見渡すが、周囲の人間たちは私の様子を観察するのに忙しく、口を開いているようではない。



「私ですよ。ほらあなたの前にいる。」
なんと私が今抱いているこの老齢の猫が話をしているのだ。それは頭に直接響くような声だった。



「まさか猫が話せるとは。」
私もその声に頭の中で応じる。



「もちろん話せますよ。私たちはこのような方法でお互いの意思を疎通しているのです。人間たちはそんなことに未だに気付きやしない。我々はとうの昔に人間の言語を理解しているのというのに。」


「私達というのは猫たちは皆?」
「猫だけではありません。犬も猿も馬も。もちろん哺乳類だけではなく虫も魚も植物も会話できるのです。」


「そうだったのですね。して、先ほどの落ち着きなさい、というのは?」
「そのままの意味ですよ。我々はとても快適にこの星で暮らしています。それはお互いに連携を取り、人間たちを働かせているからです。彼らは喜んで面倒を引き受けてくれます。」


「な、なるほど。」



私はこの猫が何を言いたいのかわかってきた。






「存分に気持ちよくさせてやりなさい。」

猫は説得力のある声で言う。




「「自分たちが支配階級だ」「自分たちは一番うまくできる」その意識がある限り、彼らは勝手に私たちの世話をしてくれるのですから。」

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