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真夏の昼の黒睡蓮

冷房のない熱気に満ちた部室で、二人の男が負けられない戦いを繰り広げていた。

男同士の真剣勝負。
敗者は勝者の用意した罰ゲームを受けなければならないという厳しいものである。

これは誇り高き戦士の決闘なのだ。たとえ、それがカードゲームであっても。

「コスト7を支払い、《黄金牙の化身》を召喚する。こいつで形勢逆転だ!」
渡辺は力本に対して堂々と宣言する。
しかし、力本は余裕を崩さない。

「残念だったな、渡辺よ。そううまくいかないのが世の中というものだぞ」
「なんだと……」
「俺は、コスト3の《容赦ない発掘》を使うぞ〜。こいつは捨て場にあるカードの効果を使用できるカードだ」
「捨て場にあるカード……ハッ?!まさか……」
「そうだ。俺が使うのは《むさぼり食い》だ」
「アッー」
思わず奇声を上げる渡辺。自らの敗北を察したのだ。

「貪り食いの効果で、俺はお前の黄金牙の化身を破壊。さらに、俺の場の獰猛なる野獣で攻撃させてもらうぞ」
渡辺にこの攻撃を止める手段はなかった。

「そっそんな……」
渡辺はゲームに敗北したのだ。それはすなわち力元の罰ゲームを受けるということだ。

「それでは、罰ゲームの時間だ。約束通り、お前に男の世界を味合わせてやるゾ」
「やっ、やめてくれ!俺はそんな世界知りたくない!」
必死に抵抗する渡辺を部室の奥にある開かずの間へと強制的に連行する。

「アッーーーーーー」
カードゲーム部の部室に一人の男の悲鳴が響いた。

外では、やかましくセミの声が鳴り響き、まるで二人の危険な戯れを隠すかのようだった

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