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第五話・商売、そして魔物へ

「…久方ぶりだな、真依。」

「あ、直~、生きてたんだ~。」

「……もしかして、二人って知り合いだったの?」

「うん、直はここの常連さんだからね~。」

「ただ、ここのところ見なかったから心配してたんだよ…。」

「…すまんな、俺も‘’色々あった‘’からな。」

「まぁでも、こうして会えるだけで私は嬉しいよ~。」

「…そうか。」

「それで、君たちが手に持ってるのって…、」

「ああ、今欲しいモンだ。」

「じゃあ、会計するから商品をそこにおいてね~。」

「寝袋か~…それで寝るのもいいなぁ~…。」

「あんたには自分で紡いだ糸があるだろ。」

そう言いながら俺は寝袋を、指定された場所へと置く。

レジに表示された金額は2000円だった。

君たちの世界じゃ税率というものがあるだろうが、この世界じゃ政府も見せかけだけの造りもののため、税は存在しない。

俺はそれを、換金した金で払う。

「…はい、2000円ぴったりですね~。」

「……ラピス、あんたも金かBPで支払うんだ。」

俺は寝袋を受け取ると、ラピスに会計を勧める。

「え、ええ…。」

ラピスは、古ぼけた本を差し出す。

それは、600円きっかりだった。

ラピスはそれをBPで支払い、本を受け取った。

「ありがとうございました~、またいらしてね~。」

「あぁ。」

俺は軽く返事をすると、ラピスと一緒に店を出た。

「…どうか…生きて…。」

彼女の小さな叫びは、彼らに届くことはなかった。




「さて、あとはこの寝袋を住処に置きに行くだけだが…あんたはどうする?」

「何を?」

「このまま暫く行動を共にするか、ここで暫しの別れとするか。」

「…私にはまだやらなければいけない事があるの…。」

そういうと、彼女は(きびす)を返す。

「またいつの日にか、会いましょう。」

「…そうか。」

その時は敵かもしれないけど、と言うと、彼女は歩き出した。

「…。」

「俺も帰るか…。」

俺は住処へと歩み始めた。

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俺が辿り着いたのは、非戦闘区域の一角にあるボロ屋。

……今にも崩れそうだ。

(ま、これが俺の家なんですけど。)

俺はそんな事を思いつつ、家の鍵を開け、中に入る。

ドアは軋みながら開き、開ききったところでとうとうバタンッと、倒れてしまった。

「…ハァ…。」

ドアとか買わないとな、と思いつつ俺は自分の部屋に向かう。

元々ここには俺の家族が住んでいたが、魔物やら生物人間やらに、俺一人を残して殺されてしまった。

(今となっちゃそんな事どうでもいいが。)

俺はそう思いながら、寝袋を置く。

ふと、時計を確認する。

時計の針は、06時09分を指していた。

空は曇っていて、何も見えない。

「…少し狩りに行くか。」

そう言って俺は剣を片手に、魔物の討伐へと向かった。

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