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第四話・旧知の蝶と平和好きな蛾

?「ちょっと、どこ見て歩いてんの?」

モルフォ蝶のような澄んだオッドアイをした少女に、少し怒られてしまった。

「すまんな…色々…考えごとしててな…。」

「もう…気をつけてって…直!?」

ぶつかってしまった少女が突然俺の名前を呼ぶもんだから、俺は眩む頭をなんとか持ち上げながら、姿を確認する。

「あぁ…ラピスか…。」

ラピス「何よ、その反応。」

「アタシじゃ何か不満なの?」

「いや…そんな事ない。」

「まぁ、あんたも生きてて何よりだ。」

「別に……。」

「アタシは、アンタが生きてて嬉しいっていうか……その……、」

「ん?なんか言ったか?」

口篭っているラピスに、俺は立ち上がりながら聞く。

「な,何でもないから!」

「…そうか。」

「で、ラピスは何処かに用でもあったのか?」

「いえ…特に無いわ。」

「だったら、これから“ある物”を買いに行くんだが、一緒に行かないか?」

「なんで?」

「いや、特に理由はない。」

「無いのに誘ったの!?」

ラピスは少々呆れて聞き返してくる。

「まぁ…良いんだけどさ。」

ラピスは小声で何か言う。

「ん?なんか言ったか?」

「な、何でも無いから!ほら、さっさと行こう!」

「…あ、あぁ。」

そう言って、ラピスと俺は歩き始めた。

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俺が前に立ち、ラピスがその後ろからついてくる。

因みにだが、ラピス(フルネームはラピス・モルフォーシス)とは、魔物に少々苦戦気味だった彼女を偶々(たまたま)見かけて、助けてやったときに知り合った。

その時の俺は、魔物の討伐にやたら熱心だったからな。

確か一年前だったかな?

今思えば馬鹿らしいな。

そんな事を考えていると、

「……お。」

「着いたぞ。」

「……ここが…。」

目的の店へと着いた。

俺は扉を開け、店内に入る。

中には、店員以外誰もいない。

(……今はいないのか…。)

俺は少し肩を落とすと、ラピスに向き直り、

「さ、俺は目的のモン探すから、ラピスも気に入るものがないか探してみるといい。」

ここ、意外となんでも売ってるからな、と付け足す。

「分かったわ。」

俺たちはしばらく別行動を取る事にした。




「……あった。」

俺は例のモノを持って会計をしに向かった。



「……それが例のモノ?」

「そうだが?」

「”寝袋”って……アンタねぇ…。」

「悪いか?」

「いや、別にいいけど…。」

「それはそうと、ラピスはなんかイイもん見つけたか?」

「ええ、アタシはこの本を…。」

ラピスの手には、古ぼけた本があった。

「ふーん…。」

(読書好きなのか…?)

「そういえば、店員は何処にいるの?」

「そこで寝てる。」

俺は、それがあたかも普通の事のように、ラピスに伝える。

そこには、糸の塊しかないのだから。

「!?」

?「💤」

「こりゃしばらく起きそうにないな…。」

俺は小声でそう言う。

すると、

?「……ん、お客さんね…。」

彼女は、一つ大きなあくびをすると、

真依「こんにちは~。私は繭原真依(まゆはらまい)だよ~。」

少し眠そうに自己紹介をした。
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