第一話・亀と隼
直「……眠い。」
ふわぁ...と一つ欠伸をし、俺、もとい
ここは少数派の通常人間という生物の能力を持っていなかったり、戦いを放棄したものたちが暮らしている場所。
いわゆる、非戦闘区域だ。
街の道端にいる人間は、恐怖、憎悪、怒り、嫉妬等の眼差しで俺を見てくる。
(…どうでもいいけど…。)
今はもう慣れた事だ。
今日もどこかで誰かが望みを手に入れるために戦っているのだろう。
その戦いにわざわざ介入する気力もない。
こんな馬鹿げた戦いで命を棒に振りたくも無い。
だが、戦わなければ永遠に安息を手に入れることはできないだろう。
矛盾だ。
(俺って…臆病者だな…。)
まるで…
そこで俺は思考を一度止めた。
目の前には二つに分かれる道があった。
(さて…どちらに進むか………。)
どちらに進んでも、結局非戦闘区域外に出る事は明確だった。
通常人間が殆どいない。
(……左にしよう。)
俺はそう思い立ち、T字路を左に曲がる。
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並木を通り抜け、しばらくすると、形を保っていた建物も次第に見えなくなり、形を崩しだした。
瓦礫や血痕が道を蝕んでいき、アスファルトは姿を消していく。
戦闘の気配が色濃くなっていく。
目の前には、戦っている二人の生物人間がいた。
直「……。」
しかし、俺はそんな事お構いなしに、脇を通り抜ける。
能力''turtle hide''を使って。
背景にしっかりと擬態する事ができた俺は、難なくかわす事が出来た。
俺はそのまま戦闘状態の二人を置いて去ろうとした。
その時、不意に戦闘音が鳴り止んだ。
(決着でもついたのか……?)
俺はそっと後ろを振り返る。
「……?」
目に入った景色は、さっき戦っていた二人が、首を斬り落とされ倒れていた。
血の海が辺りに広がる。
(漁夫の利か……。)
よくある話だ、そう割り切って俺は立ち去ろうとした。
その時、
「!!」
ガキッ
突然攻撃が飛んできたため、武器を使って攻撃を流す。
「ッ!」
しかし、攻撃を流しきれず、頬を攻撃が掠める。
生温かい血が、微量だが頬を伝う。
?「ふ~ん…今の防ぐんだ…。」
後ろから声がしたため、俺は振り向く。
風嵐「僕、
そこには、空に滞空し、こちらを見下ろしている生物人間がいた。
風嵐「自己紹介したけど、馴れ合うつもりはさらさら無いよ。」
と名乗った彼女は、鎌を構えるとこちらに突っ込んでくる。
直「グッ…!」
俺は彼女の攻撃を受け流すので精一杯だった。
(なんとかして退路を見出したいが……攻撃の間隔が短い…!!)
彼女の攻撃は、俺に思考を巡らせる暇を与えなかった。
(こんなんじゃいつまでもジリ貧なままだ……!)
(……仕方ない。)
俺は、"状況を打開する為の賭げ”に出る事にした。
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