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第4話 ホーンラビットの大群


「勇者パーティーの人達に見つからずに、街を出られて良かったですね。リースさん」
「お師匠様との旅。楽しみ!」

「ハハ、そうですね。良かったです……ハハハ」

勇者パーティーから追放された僕は、自由気まま1人旅をする予定だったのですが、何故かエルフの女の子と情報屋の娘さんの2人を連れた3人旅に変わってしまいました。

 現在は、ティアの街を早朝に出で林道を歩いてる最中です。

「しかし、本当に良かったんですか?」

「はい? 何がですか? リースさん」

「いえ。ですから、フリークさんのお店をいきなり出てっちゃって良かったのかなって思いまして?」

「ああ、そういうことです。良いんですよ。別に……私も久しぶりに王都に顔を出したいと思っていたんで。丁度良かったです。エヘヘ」

 うわ~! ユリネさん。凄い良い笑顔ですね。まるで、僕の事を絶対に逃がさないみたいな目をしていますね。

「へ、へえ~、そうなんですね。それは良かっ……」

ギュルギュル~!!

「「……ギュルギュル?」」

「お師匠……私のお腹の音。お腹空いた」

「そうですか。エリシアのお腹の音でしたか……仕方ありませんね。あの小川の辺りで少し早いですが食事にしましょうか。ユリネさん」

「了解です! リースお師匠様」

「……いえ。僕は貴女のお師匠様じゃないんですけど?」

「あれ? そうでしたっけ? 間違いちゃいました。すみません」

 可愛く舌を出して……ユリネさんと話してると、こっちの話しのペースが乱されちゃいますね。



「お師匠。お花摘みに行ってくる」

「あ! 待って下さい。エリシア! お腹を空かしていたんじゃないんですか? それに森は危険なんですよ! 待ちなさい!」

 小川に移動して、朝の朝食を作っていると。エリシアが突然、立ち上がり森の中へと走って行き来ました。

「不味いですね。エリシアは戦闘能力はまだないのに……追いかけないと。ユリネさん! すみませんが、貴女はここで待機……を?……ちょっと。ユリネさん、僕の右手をいきなり掴んで、どうしたんですか?」

 僕がエリシアを追いかけようと。森へと走り出そうとしたら、ユリネさんに止められてしまいました。

「いえ、それはこちらの台詞ですよ。《《殿下》》なぜ、勇者パーティーから突然抜けられたんですか?……」

 さっきまでの明るい雰囲気のユリネさんはどこへやら、厳しい顔で僕を睨み付けていますね。

「……ユリネさん。貴女は……まさか?」

「フォルティス王国。特務監査部ユリネ・リュシオン……殿下の監視の為。行動を共にさせて頂いております」

 特務監査部って……フォルティス王家直属の秘密組織暗部じゃないですか。

 ……ユリネさんがその1人? だとしたら。僕の旅に動向したのも、フォルティス王家に僕の居場所を知らせる為ですか。

「……つっ!」

「逃げようとしても無駄ですよ。殿下、殿下はこのまま私の……」

「お師匠~! ユリネェェ!! たずげでえぇえ!!」

 ユリネさんが何かを言いかけた瞬間。森の茂みから、エリシアの泣き叫ぶ声が聴こえて来ました。

「この声は……エリシア?」
「……はい? 心配しなくてもエリシアちゃんは、ちゃんとエルフの里に帰れる様に私が手配……を?」


「お師匠~! ユリネェェ!! ダズゲデエェ!! 巣に悪戯したら、いっぱい出てきた~!」
「「「「「キュキュイ! キュキュイ!キュキュイ!」」」」」

 僕達の方へと逃げてくるエリシアの後ろに数十匹は居るであろう一角兎《ホーンラビット》の大群が僕達目掛けて突進してきます。

「凄い大群ですね。面白い光景です……『スクライド』」
「な? そんな事を言っている場合じゃあ……て? あれ? 殿下が居ない?」

 僕はとある魔法を発動させて、ユリネさんの拘束から抜け出しました。

 そして、抜け出したと同時に、僕達の全ての道具を収納魔法で回収し、エリシアの元へと移動して……

「オジョウゥ!! ダズゲデエェ!!……フワァ?! お師匠? どこから現れたの?」
「やっぱり。2人旅で行きましょう。エリシア……その方が安全に旅ができそうですからね。これをホーンラビットの大群に投げて下さい」

 僕はエリシアにとある魔法瓶を手渡しました。

「……これは?」
「超強力な火薬が入った火炎瓶です。おもいっきり投げちゃって下さい。エリシア」
「わ、分かったぁ ほらりゃあ!!」

ポイッ!

「「「「「ギュイ?ギュルギュイ?」」」」」
「待って下さい。殿下、私の話を最後まで聞いて下さい!」

『フレイム・コンセクティブ』

 僕が無詠唱で、『フレイム・コンセクティブ』を火炎瓶へとぶつけると……

「「「「「キュギュイイィィ!!」」」」」
「これは不味い……退散」

 ホーンラビットの大群から火柱が上がり。一瞬だけ辺り一面燃えて、一瞬で鎮火しました。

「この隙に逃げますよ。エリシア」
「逃げる? ユリネはどうするの?」
「……そのユリネさんから逃げるんです」
「……? 何故?」

 僕はエリシアを抱き抱えると。高い木々の間を素早く乗り移り、ユリネさんから逃亡する事に成功したのでした。

「殿下………一瞬であんな遠くまで。やっぱり実力を隠していたんですね。貴方は………追いかけて捕まえないといけませんね。貴方を……リース」



《一方 ティア草原》

「………この爆発の後……ここでいったい誰が暴れたのかしら?」

 

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