第十二話『フィッシュではなくスリーセブン(前半)』3/5
◆【繁華街】
ちょうど目の前にあるコンビニの喫煙所でタバコに火をつける。
正明「……」
さて……。
スーパー考察タイムだ。
まず――WENS CASINO支配人である高木遊矢くん。
ッハ。バカか。あんなガキが支配人なわけねーだろ。
で、入り口にいるオーラあるヤツ……あいつがラシェル・オンドリィの可能性もあるが、9割型六道の回収係だろうな。
ガタイも良いし日本人をラシェルと呼ぶのは確率は低いだろう。
末端の構成員には見えなかったが……んー、その辺はわかんねえな。
他のスタッフは街にいるただのクソガキ。最低賃金のバイトか、借金漬けの利息分での労働か……ってそれどこの竹原正明だよ。
客は無言で俯いてたヤツが絞られていたヤツ。それがラシェルに関わるかは知らねーが。
もうひとりの浜田っつーのは普通のポーカープレイヤー。
監視カメラは何世代も前のものをデカデカ置いてあるが、あれはダミーで本命は別で何箇所かあるだろう。その辺の詳細はスケスケから共有貰えればいいか。
正明「……」
想定外は2つ。
客が思ったより少ない。最低でもテーブル2つ囲って10人はポーカープレイヤーが欲しいと思っていた。
まあ今日は火曜だし、こんなもんか?
もう一つは、ラシェル・オンドリィがいない可能性が高い。
高木とか言うガキは喋った感じ格落ちだし、出入り口にいるスタッフは構成員。
あと個人的なことを言えば本屋で会った男女のクソガキもいない。
正明「……」
日を改めるのが得策ではあるが、ロクさんの包囲網を100%突破できる根拠がない以上、何度も通える保証はない。
とはいえ、負けをアピールするには人数が少なすぎる。
もしWENS CASINOが単発で終わると言うなら、20万……いや、30万は欲しい。
が、テーブルのバイイン(資金持ち込み)は5,000円。上限は5渋沢。強制ベッドはBB/SBは1,000円/500円と思ったよりもレートが低い。
オレとロクさんの繋がりを知っている六道の構成員が居たら入れない。よってチャンスは少ない。
さてさて……。
判断が難しいな。普段ならほぼ間違いなく帰宅するが……。
あー、失敗したな。
WENS CASINOはやばいヤバイ聞いてたからてっきりカモがわんさか居るだろうと過剰な期待を――。
正明「……っ!」
待てよ……。
WENS CASINO……ああ。そう。WENS CASINOと聞いたら、オレの感覚値ではプレイヤーは少なくないはずだ。
なのにこの過疎っぷり。リレイズ北村に毛が生えた程度だ。
正明「……」
ポーカー客2名に対して、ディーラーは高木君含め3名に見張り1名。
どう考えても赤だろ。
ってことはこのギャップは――。
正明「なるほどな――」
社会のゴミ共は、よくもまあ頭が回ることだな!
恭介「言われた通りに換えてきた。結果として、貴様の言う通りになった」
恭介「40,200チップから手数料30%。28,000円」
恭介「交換レートはの基準として、この世界ではどうなんだ?」
正明「どうもこうもねえ。舐めすぎ。二度こねーよ」
つまり、それが答えだ。
正明「隠しカメラ何台あった?」
その質問に首を傾げると、記憶を辿るように考える。
恭介「各ゲームのテーブル中央を捉えているのが1台ずつ。しかしポーカーテーブルのみ、存在をしていない」
予想はしていたが……なるほど、なるほど。
恭介「錬金術師よ。貴様の考察を問おう」
正明「結論から言うと――」
正明「ここは"WENS CASINOじゃない"」
面白そうに恭介は笑う。
恭介「ほう」
正明「入り口に居るのは六道組の末端以下。残りは街に居るガキ共だ」
正明「ありゃケツ持ちだ。ってなると、本当のWENS CASINOはどっかにある」
正明「ここにWENSの看板掲げている以上、他の場所ってのは考えにくい。ってなりゃ地下か、別階か、或いは土日限定か。ま、そんなところだ」
正明「つーか、そうなりゃあの構成員も怪しい。もしかしたらオレの事知っている上で泳がせてる可能性も十分ある。なんたって、ここはWENS CASINOじゃねーからな」
恭介「なるほど。構造は頭に入った」
恭介「然し、ならばどうする?」
どちらにせよ、この仮説を正しいとするのならばWENS CASINOへの"通行許可が必要"なわけだ。
正明「オレがボッタクリレートでゲームを続けるっつう以上、店は拒否できねーだろ」
ゲーム性はわからないが、ルーレットや他のゲームを長時間遊べばきっとマイナスになるだろう。
それなら残る選択肢――
正明「高木くんが死んじゃうまで虐めてやるよ」