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第2章39話:語らい


食事のあと。

私は二人に、洗浄魔法をかけてあげた。

今日一日、結構汗をかいたのに、水浴びできる場所がなかったからね。

二人は、私が洗浄魔法を使えることに驚き、そして感謝した。

「やはりルチル様は、お優しい方じゃないですか」

エドゥアルトがそう評した。

「本当にそうですね」

フランカも同意してうなずいている。

二人の中で、私は完全に優しいお嬢様として定着したようだ。




それから、私たちは焚き火を囲む。

ばちばちと炎が燃えている。

夜のしじまが下りる中、静かに語り合う。

主に、私がフランカに質問を投げかける形だ。

「フランカはどうして兵士になったんですの?」

たとえばエドゥアルトは、ゲームでもそこそこ重要なポジションのキャラだったので、彼に関する情報はよく知っている。主にゲームのおかげで。

しかしフランカのことはほとんど知らない。

まず、令嬢ルチルでさえゲームでは脇役である。

さらにその付き人だったフランカは、脇役の中の脇役だった。

――――フランカは今回の冒険に限らず、これからずっと付き合っていく仲だ。

互いのことをもっと良く知っておいたほうがいいよね。

「父が軍属であるというのが一番の理由です。でも、国を守りたいという気持ちもありました」

フランカが答え、さらに続ける。

「今は戦乱の時代ですから」

戦乱の時代。

まさにその通りだ。

周辺諸国はあちこちで戦争をしているし、このクランネル王国とも頻繁に衝突している。

新しい国が興っては消えていくような、激流のような時世である。

そんな時代において、兵士の仕事はいくらでもある。

「それにしても、貴族令嬢なのに一兵卒というのは珍しいですわね。最低でも下士官ぐらいの地位からはじめてもよろしいでしょうに」

「それは……私の意向を反映してもらったんです。父が叩き上げで大隊長にまでなりましたから、私も同じように一から実績を積み上げていきたいと考えました」

「殊勝な心がけですわね。そうなると大学は、兵士学科を受験なされるのですか?」

「はい。ダイラス魔法大学、剣術学部の兵士学科を受験するつもりです。ちなみにルチル様はどちらに?」

「わたくしは【魔法学科】ですわね」

適性職は【大魔導師】ではなく【錬金術師】になってしまったが、いずれにせよ、魔法学科の範囲である。

ちなみにゲームでもルチルは魔法学科の学生であった。

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