弁護士を呼べ
「弁護士だ、弁護士を呼べ。冤罪だ、こんなのが許されるものか」
「おじさんも、往生際が悪いね、おじさんが、被害者を殺してやると叫んでたのは、多くの人が聞いてるんだよ」
「酒の席で、ケンカになり、つい口を滑らせただけだ。だいたい、高校生名探偵だか何だかしらないが、なんで、未成年の言うことをホイホイ警察が聞いてるんだよ。おかしいだろ、推理とか言っても、俺が殺害できる可能性があるという状況証拠だけじゃないか。刑事さん、ちゃんと仕事しろよ。それとも、捜査が面倒臭いから、そこのガキとつるんで犯人をでっちあげようとしてるんじゃないのか?」
「おやおや、おじさん、刑事さんと僕がグルで、冤罪だと言い張る方が、世間では、でっちあげと思われると思うけどな」
そのときの、いかにも勝ち誇ったような高校生のクソガキの顔を俺は一生忘れない。そして、模範囚として早期に出所した後、すぐに自分の無実の証拠を集めて、その高校生名探偵と呼ばれていたが、もう高校生とは呼べない中年になっていたそいつを告訴して、裁判所に引きずり出して、俺は勝利した。判決が出たとき、もうおっさんになっていた高校生名探偵は、こんなのはでっち上げだと騒いでいた。俺は、そう思うなら、俺みたいに無実の証拠を集めて、俺みたいに告訴してみろと言ってやった。