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本編

「君にお年玉をやろう」
 そういって、私はおもちゃの拳銃を取り出して、幼稚園児の甥っ子に渡した。甥っ子は目をキラキラさせながらその拳銃を受け取り眺め回した。
「これはベレッタ M92FSっていうモデルで、こないだ一緒に観た『REDリターンズ』でフランス国家警察が使ってた奴だ。ちょっと改造して音だけは本物っぽくしてあるんだ」
 元々はガスガンで、私がサバゲで使用していたものだが、発射機構に不調を来したので、そこは一切動かないようにした。代わりにマガジン部分に細工をして、トリガーを引くと実弾発射音に近い音を鳴らすようにしてある。
「先ず、このセーフティを外してだな、あ、普段はこっちにしてあるのを、撃つ時だけこっちに動かすんだ。で、あの台の的に向けて撃ってみな…そうじゃない、こうやって構えるんだ…そうそう、で、ここを見て、照準を合わせる。一直線になるように…うん、まあまあかな。じゃ、撃ってみな」
 パンと発射音が鳴る。と、的の前にシュークリームが飛び出す。
「えっ?」
 驚いてる、驚いてる、所詮は幼稚園児。ニヤニヤしながら次を促す。
「隣の的も撃ってみな」
 甥っ子が照準を合わせ、次を撃つ。今度はエクレアが現れた。
「すごい、何これ、こんなの見たことない」
 そりゃ、そうだろ、俺だって見たこと無いよ、けど昨日1日かけて作ったんだよ、君の為にな。
「喜んでくれて嬉しいよ。じゃ、お茶にしてそのお菓子食べようか?」
「僕その前にこれ友達に自慢してくる」
「えっ、あっ、おい! これ…」
 慌てて台をかかえて追いかけようとするが、甥っ子はもういない。
 あいつ、あの拳銃が魔法の銃で、撃つとお菓子が出てくるとでも思ったんじゃ無いだろうな? 細工はもちろん的を立ててある台の方にあって、私が手元のリモコンで操作していたんだけれども…
 これが原因で嘘つき呼ばわりされて、虐められたりしないといいけど。

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