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法の家.3


 …――それを可能にするのは……、

 《天藍(てんらん)理族(りぞく)》と呼ばれる異能(いのう)の血統が製造する道具……《法具(ほうぐ)》に秘められた可能性。

 《法具(ほうぐ)》を()かし、空間を()みあげるのは…――

 いにしえよりうけ継がれてきた知識の発展形を理解し、なおかつ、それを現実にする資質――《心力(しんりょく)》に恵まれたひとにぎりの人間。

 空間を()む《(しず)め手》を補助(ほじょ)し守護するのは、おのおのの目的や都合・理想や思い入れなどから、不自由も少なくない契約(けいやく)に縛られることを望むという闇人(やみひと)……もしくは、それに準ずる者たち。

 三種(さんしゅ)の知恵と才能は、淡紅色(あわこういろ)の館で、どれが欠けてもなりたたない(みつ)(どもえ)の調和をみせ、平穏を維持する力となる。

 北の小さな村に生まれ、その(すべ)を確立したはじめの《神鎮(かみしず)め》が(きょ)をかまえたのは、深い森と清水をたたえた(ここの)つの湖に囲まれて存在する《千魔封(せんまふう)じの丘》。

 その中央にあって、(とど)まる者、住む者が()える都度、土を()り、増改築(ぞうかいちく)をくり返してきた敷地と淡紅色(あわこういろ)建物群(たてものぐん)はいま、《神鎮(かみしず)め》の技を正式に(つた)()()無二(むに)の学び()としてあり、国や自治都市の権謀術数(けんぼうじゅつすう)、利害人道が飛び()う中も、どの権力に()びることなく中立を(たも)っている。

 彼らが活動する比較的安全な領域(りょういき)において、文化的繁栄(はんえい)をとげた人々は、人里(ひとざと)離れた土地を()め、余人(よじん)をよせつけないようでもあるその勢力拠点(せいりょくきょてん)を思い思いの表現で呼ぶ。

 《法の家》《天守(てんしゅ)(やかた)》と(たた)えるその陰で、

 《治外法権(ちがいほうけん)》《闇人(やみびと)古巣(ふるす)》《(かく)(みの)》《異人館(いじんかん)》《異邦人の(さと)》……

 ()てには《背徳(はいとく)の城》《金の亡者の巣窟(そうくつ)》《伏魔殿(ふくまでん)》とまで(うわさ)する。

 尊敬(そんけい)憧憬(どうけい)を集め、依存(いぞん)される一方で、ねたみ、そねみ、時には恨みも買う異端的組織(いたんてきそしき)

 その大陸の西側を(なか)平定(へいてい)した力と知恵は、多大(ただい)な影響力を(およぼ)しつつも、広く普及(ふきゅう)するには(いた)らぬまま、頑固(がんこ)な法の番人のように存在していたのだ。 

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