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第3章の第104話 どうしようもない問題31 答え売り上げ利益5



★彡
【月見エビバーガーオーロラソース社】
【生産工程の遅れ】
――それは、ヨーシキワーカが退職した後の仮説だった。
場所は、そう、菓子パンライン。
『………………』
それは、いつまで経っても、箱が届いてこない事から始まるものだった。
途中までは、あった箱も、1時間、2時間と進むにつれ、段々と消費されていき、減っていくばかりだった。
ついには、そこにいたパート従業員の女性も。
『……どうなってんの!?』
そこへ、相槌の声を打ってきたのは、向かい側にいたもう1人の女性従業員さんだった。
『変ねぇ……昨日もその一昨日も顔を見せてなかったけど……』
『……』
まさかの、予感が過ぎる。
その足が向かった先は――箱洗いだった。
ゴォオオオオオ
そこは、地響きにも似たような異常振動を起こし、が鳴りたてるような異常騒音ものだった。
――菓子パンラインのおばちゃんは、開口一番。
『ちょっとあんた達!! 箱が着てないわよ!! どうなってとね!?』
『……』『……』
そこにいたのは、キーシストマ先輩に新しく入った新入社員さんの姿だった。
『……? あれ? ヨーシキワーカさんは?』
これには、キーシストマ先輩も。
『辞めたぞ、あいつ』
『……え? 初耳なんだけどなぁ……』
(全然、聞いてないわよ……そんな事……)
『……』
(普通は、他のラインの人には言わないからな……)
ハァ……
そこで、溜息が零れたものだった。それは、新入社員さんのものだった。
『昨日も、そうでしたよね?』
『……』
『……まぁ、いいわ、あんた達、それが終わったら、すぐに持ってきてくれる?』
――それから1時間経過。
それは、箱洗いの中ではなく、わざわざ、外に回り込んでからの物言いだった。
『遅いッッ!! あんた達、いったい、いつまでそれに掛かっているとね!?』
『……』『……』
2人は、協力して、箱上げを繰り返している最中だった。
『もう、1時間も経っているわよ!! 何でそんなに掛かっているとね!?』
これには、新入社員さんを推しても。
『えっ!?』
と驚き得るものだった。
それに対して、キーシストマ先輩は。
『あいつがおかしいんだよ……! 早過ぎるんだよあいつ……。……同じにするな!』
『は!? どーゆう事よそれ!?』
『新入社員(こいつ)は、前に入ったばかりなんだぞ!?』
そのキーシストマ先輩の一言で、
察するは、菓子パンラインのおばちゃん、『……! あぁ、そーゆう事……』と。
だが、これには、新入社員さんを推しても。『ムッ……!』とくるものがあったのだった。
次いで、菓子パンラインのおばちゃんは、こう言葉を投げかけたのだった。
『あっそうねぇ……そう言えばそうだったわねぇ……』
そう言えば、新入社員(この人)が入ってきたのは、1月ぐらいだったわね。
で、今は、3月下旬に当たる。
ヨーシキワーカは、その3月下旬から、超・長期の有給休暇を取り、4月下旬の終わりまで、ほぼすべて使い倒し、退職する願いだった。
『でも、キーシストマさん、あなたがキチンとものを教えてあげないとダメでしょ!?』
『そんなの知るか!!』
『はっ?』
『えっ?』
『そんなのは、いつもあいつの仕事だったからな!』
『は? どーゆう事?』
『さあ?』
『フンッ!』
(あんな!奴、知った事か……! いなくなって清々する!)
ヨーシキワーカとキーシストマ先輩の仲は、辞めた時点で、既に悪いものだった。
まぁ、人間関係の悪化である。
『にしてもアンタたち、そんなに時間がかかってどうするのよ!? もう1時間よ!!』
『わかったわかった。これが終わったら、そっちへ持っていってやっから!』
『ったく!』
そうやって、菓子パンラインのおばちゃんは、元居た場所へ帰っていったのだった――
――そして。
『――ハァ……。やっと終わった』
『キッツ……』
所要時間、1時間20分以上もかかっていたものだった。
これが、ヨーシキワーカとキーシストマ先輩が組んだ場合は、50分で終わる作業量だった。
その後の、箱の整列も含めて。
何の違和感も与えないようにして。
『でも、何だってこんなに掛かるんですか!?』
『う~ん……やっぱあれかなぁ……昔、あいつが言っていたやつ』
『あれ?』
『ああ。俺も深くは教わっておらんけど、あいつはこう言ってたんだ。『円狐力』と」
『エンコリョク……?』
これには、新入社員さんも、訳が分からなかった。
それは、手鉤棒で箱を引っ張りながら、その勢いを損なうことなく、半円を描くようにして、所定の場所に持っていく技である。
『あいつ、それを『口で言うだけ』で、この場で『やって見せただけ』で、教えてくれてなかったからなー! あいつの教え方がワリィんだよ』
『えっ、何ですか、それ……』
(教えていますよ……それ、ここでやって見せていたなら……。……あなたができないだけなんじゃ……)
『でも、今頃、あの人、何してるんでしょうね!?』
『知らねぇよ……ったく! 有給休暇を取るのにも程があるだろうが……!!』


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう告げる。
「――ヨーシキワーカさんは、3月下旬から4月下旬の終わりまで、超・長期の『有給休暇』を使ったほどよ。『退職』する、その日までね」
「……」
一同、これには黙って考えてみる思いだった。
そこへ、アユミちゃんからの声かけが掛かってきて。
「それは、どうなの? いいの? 悪いの?」
それに対して、答えてきたのは、ホテルのオーナの奥様であるアヤネさんだった。
「悪くはないわよ」
「えっ!?」
「だって、有給休暇を取るのは、個人の自由範囲だからね。
知ってるかしら?
『労働基準法第39条第7項』では、年10日以上の有給休暇が付与されている労働者には、
基準日から1年以内に、5日以上の有給休暇の取得が義務づけられているのよ。
これはね、働きかた改革関連法の一環であって、
過去に、ブラック企業に入った人が、1日12時間以上も働きづめでぶっとおしで働き、
家に帰っても中々休めず、社畜として扱われていったからよ。
そのせいで、心身共に体調を崩し、無理を推してまで、会社に行っていたらしいわ。
……。
……その人の親も、泣く泣くその人を心配していたらしくてね。
自分からは、中々言い出せないような人だったらしいわよ!?
社風の空気がそれを許せず、自分さえ黙っていれば、大丈夫だと思っていたんだけど……。
業務量が、目に見えた感じで増えていってね……。
その人の負担が、他の人達と比べてみても、増えていったらしいわ。
……。
で、その日の夜、会社から帰ってきたその人は、まるで眠るようにして眠り、そのまま、息を引き取ったそうよ。
……。
それが、過労死と認定された瞬間ね。
当時、TVニュース報道等で流されて、労働に関する問題が多発する中で、
従業員がより働きやすい社会を作っていくために、厚生労働省が法整備強いて、施行されていった経緯があるのよ。
……まぁ、今から遠い、もう200年前の話ね」
「……」
それが、実際に、世の中で起きた出来事だった。
そのアヤネさんは、沈んでいたその顔を上げ、こう問いかけてきたものだったわ。
「1つ質問だけど、いいかしら?」
「はい、何でしょうか!?」
「その有給休暇の取得時に、会社側がその人に対して、何で休むのかの理由を問うてきた事はあったの!?」
「あったわ」
「あったの!?」
「ええ、それは、人から意見を求められてきたり、その有給休暇の紙に、その休む理由を書いた事があったらしいわ」
「……それは、別に法律で定まってはいないけど……。
会社側から、その人に対して、何で休むのかの理由についてまでは、聞かなくてもいい、という事になっているのよ!?
理由を求められてきても、『私用のため』で済ませられる事だしね!
それ以上、問い質していけば、その人物の事を詮索するような物言いになり、パワハラになっていくからね!?
良くこれで、誤解や間違いをする人も、意外と多いものよ!?」
それに対して、サファイアリーさんは、こう切り返してきたのだった。
「まぁ、確かにその通りなんだけどね……。
昔、エリュトロンコリフォグラミーさんという人がいて、その人の言い分もあって、
箱洗い作業場のボードに、何で休むのかの理由を書かせられた事があったらしいわ」
「それ『1番やっちゃいけないやつ』じゃない!! 他の人達は!?」
「やってはいないわね……。その人、1人だけだったそうよ……」
「完全に、標的にされていた訳ね……」
とこれには、アユミちゃんも。
「どーゆう事? ケイちゃんのお母さん」
「う~ん……そうねぇ……」
あたしは、チラッ、とサファイアリーさんに振り向いて、
「その時の理由はわかる?」
と尋ねたものだったわ。
それに対して、彼女の反応は。
「ええ、確か、資格試験を受けに行くことを名目に、休んでいたらしいわ」
「なるほど……そしたらぁ……うん。この線が考えられるわね。
例えば、その人が、休む理由を書いて、それが朝方会っていた事でも、昼になったら、それももう終わっているから……。
ブラブラと街中を散策していれば、それは、遊びに行っていた、じゃないかって!?
その時に、そこにいた人達に、勘ぐられ兼ねないのよ!?
そうした誤った誤解と、偏見的な視方で見られていって、
その会社内で、身も蓋もないような、発言の言い回しが起き兼ねないわけよ!?
例えば、その日、友人と待ち合わせしていたりして、
その友人の女友達がいれば、あいつには、彼女がいるのかもしれないと、大きな誤解を招く事だって、時にはあるものよ!?
いわゆる、女遊びの理由で、休んだとね!?」
これには、アユミちゃんを推しても。
「……マジ!?」
有り得る話である。
アヤネさんは、続けてこうも言う。
「大真面目な話よ……ハァ……。こーゆうヒヤリハットトラブルは、実社会に出れば、よくよくあるトラブルなのよ……!?
その時は、自分ばかりか、その人や女友達まで、迷惑を被り兼ねないからね……。
だからわかる? 会社側から、その人の休む理由を求められてきても、『私用のため』、で済ませる事ができるって!?」
「うん、だいたいわかったよ」
「そう、良かったわ」
それが、有給休暇願につきもののヒヤリハットトラブルである。
とここで、サファイアリーさんの心の内としては。
(あれ? あの人は、友人とは顔見せで会っていたかもしれないけど……女友達はいなかったような……?)
まぁ、そんな他愛もない話だった。
で。
「――次のポイントになってくるのは、その日の午後5時以降の話よ――」


★彡
【食パンライン、まさかの0個】
――それは、午後5時を周り、キーシストマ先輩とその新入社員さんが上がっていくところだった。
オレンジ色のシートシャッターが上に上がり、そこから出てきたのは、その2人だった。
『――ハァ、終わった終わった』
そして、その足が向かう先は、商品課の近くに備わっている、出勤退社のモニター画面だった。
先に、キーシストマ先輩が、ピッピッピッ、と手入力で済ませ。
次に、新入社員さんが、ピッピッピッ、と手入力で済ませるものだった。
これで、この2人の自己申告表が済み、後は上がるだけだった――
――それから、その10分後のこと。
食パンラインのおじちゃんが、大急ぎで訪れていった先は、誰もいない箱洗いだった。
『……え? どうして誰もいないとや!? これ、どがんすっとや!?』


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「ヨーシキワーカさんは、箱洗いの人達や、上の人達には、話は一応通していたの。
自分が辞めていく事をね。
ただし、他のラインの人達には、報せておらず……。
また、上の上司の人達も、箱洗いの責任者ではないから、そうした状況の変化までは、見通せず、対応に遅れが生じていったそうよ……!?」
「責任者を置いていなかった訳ね……」
「ええ、そうよ」
「なら、そうなっても仕方がないわね……」


★彡
【廃棄品目のパン】
――それは、食パンラインの責任者からの物言いだった。
『ハァ!? 何で1個もなかとや!?』
『……自分、さっき箱洗いに行ってみたんですが……誰もいなかったんですよ……』
『だ、誰もいない!? そんな筈はないだろ!?』
『いつもなら、ヨーシキワーカさんがいるんですが……。風邪でもこじらせたんじゃないかって……』
『風邪……ヨーシキワーカ……。……あああああっ!!』
あれを思い出した。
『そう言えばあいつ!! 退職願いから、もう退職届出した後だったわ!!』
『えっ!? 退職……!?』
『あぁ、済まん……言うの忘れてたぁ……』
『どうするんですかこれ……!?』
ガラ~ン
と見渡す限りは、奇麗さっぱりとない0個の厚箱だった。
ガタガタ
だが、その時既に機械は稼働していて、流れてくるは、包装する前の食パンだった。
それ等は、こんがりとキツネ色に焼きあがっていた。
『ま、マズッ!! すぐに言って、止めんといけん!!』
『ちょ、ちょっと待ってください!! 自分1人なんで、この量さばき切れませんよ!!』
『えーと受け止めるもの受け止めるもの……。あぁ、箱がない――!!』
あああああ
と当然の如く、ベルトコンベアから流れていった食パンが、その道の途中で溢れ返っていき、上から、ボタボタと落ちていったのだった。
停止ボタンスイッチを、押そうにも間に合わず、
あそこに行って呼び止める事も、間に合わなかったのだった……。
当然、落ちたものはすべて、廃棄品目に当たるのだった――


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「――ほぼほぼ廃棄品だったそうよ……。
それは、食パンラインに限らず、同じ共有場所のスナックサンドラインも含め、
ドーナツ、菓子パン、パンケーキラインに至るまで、少なくない影響を及ぼしていったそうよ。
すぐに、責任者等が動き、そうした生産ライン行程を、一時ストップしてから、取り止めていったそうよ」
とこれには、アヤネさんも。
「そこで、一時停止が入った訳ね?」
「ええ。そして、急に対応に当たるのは、上の役職の人達だったそうよ。
応援に駆り出されていったのは、総務課の人達だった」


★彡
【急に対応に当たる事になる総務課の人達】
――真っ暗闇の室内の中、片切スイッチを押し、照明が点灯していく。
その箱洗いの中には、やり残した後の箱があったのだった。
あの2人は、上げはするけれど……。
自分たちが帰るまでの間に、どこまでやれるかの計算が抜け落ちていたのだった。
これを見た総務の人達は、ブチッと切れたものだった。
『何でやっとらんとやあいつ等!!』
『ヨーシキワーカ(あいつ)は、どこや!?』
『あっ、もう休みを取っていましたよ』
『『……へ?』』
そう、事前に、もう告げてあるものである。
ヨーシキワーカは、その時、総務課の誰か1人には言った事はあるが、他全員には言った覚えがないので、
その1人から、他の人達に連絡を飛ばし、情報共有をしていないから、こうした抜け落ちが発生していたのだった。
――稼働する機械。
それは、地響きにも似たような異常振動を起こし、が鳴り立てるような異常騒音を起こすものだった。
これを聞いてしまった、耳栓をつけていない人達は。
『うわぁ!! うるっせえ!! どうなってんだこれ!?』
『あいつ等、会社の機械、壊したんじゃないのか!?』
『こりゃあたまらん!! 代わりを呼ぼう!!』
――総務課の人達は、役職で言えば、かなりの上位の方に当たり、
彼等の采配で、充てられたのが、暇そうにしていた製造事務所の正社員たちだった。
『――マジやこれぇえええええ!? 何でこんな事までせんばいけんとや!!』
で、おまけとばかりに、監視員として残っていたのは、総務課の1人だっった。
『何で、俺までやらんばいけんとや……あいつ等め』
中の方は、そんな感じのやり取りだった。
――では、外では、どうだろうか。
総務課の人は、箱洗いの屋外にいて、その腕時計型携帯端末(フューチャーウォッチ)を操作し、エアディスプレイ画面を中空に出力させるのだった。
ヴゥーン
『オイッ! そこにキーシストマがいるか!?』
『? あの……どなたですか!?』
『あぁ、その様子、さてはまだ、息子さんは帰ってきていないんだな!?』
『え……ええ……』
『やはりか……』
予想通りだった。
あいつも、ヨーシキワーカと同じ、遠方から出向いてきている身だ。
距離的で言えば、ヨーシキワーカの方が、一番遠いが……。
『う~ん……どうしたものか……。その息子君が帰ってきたら、こう言っといてくれ。
明日朝いちで、一度、総務課の方と製造事務所の方に、顔出しに来いと』
『……』
『そして、もう1つ! 自分でした仕事は、最後までやっておけ!! といっておけ! 途中で放り投げるな!! と』
『……はい、わかりました』


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「先に断っておくと、キーシストマ先輩には、何の責任も落ち度もないものよ!
それは、新入社員さんに置いても同じ。
2人とも、雇用契約上の時間帯を守ってて、作業に従事してたんだからね。
これには、会社側の人も、その人の親には、強くは言い出せなかったものよ!?」
「……まぁ、でしょうね……」
「でも、問題は、その後に起こったらしくてね――」


★彡
【衝突する箱洗いの持ち場での意見】
――それは、商品課の比較的若い子が、入ってきて見たものだった。
『――うわっ!? どうなってんだコレ!?』
ゴォオオオオオ
それは、中々見られない貴重な光景だったと思う。
中にいたのは、箱洗いの作業員ではなく、総務課、製造事務所の持ち場の人達が、駆り出されてきて、一緒になって作業に当たっている姿だった。
『……え? これ、いったいどうなってんだ?』
そこへ、声を投げかけてきたのは、製造事務所の人だった。
『あっ、何だお前!?』
そこへ、総務課の人からの怒鳴り声が飛んできて。
『そこに突っ立っていないで、こっちに来て手伝え!!』
『……ッ』
歩み出るは、商品課の比較的若い子だった。
『あの……いったいどーゆう事なんですか!?』
『どーもこーもない!! 先にあいつ等が帰ったから、他のラインからの生産が、すべて止まっているんだ!』
『すべて!? えっ!? ヤバくないですかそれ!?』
『もう、2時間以上も、遅れが生じてきているとぞ!?』
『に、2時間ッ!? えっ、それなんだかヤバいくないですか!?』
『だったら手伝え!!』
『はっはい!!』
で、その商品課の人も駆り出される事になるのだった。
手伝いに駆り出される先は――
『――えっ……これ全部上げるんですか!? 1人で……!?』
ズラリ
と並べられていたのは、路上に置かれた箱の山だった。
それは、過去にヨーシキワーカが1人でやった量だった。もう、殺人的な猟奇的で泣きたくなるほどの量である。
夜の不気味さが、また、より一層、精神的に負いやっていた……。
そこへ、オレンジ色シートシャッターが上がり、入ってきたのは、スナックサンドライン、ドーナツライン、パンケーキのおばちゃん達だった。
『ちょっといつまでかかってるとね!?』
『もう、こっちは2時間も、生産ラインがストップしているのよ!!』
『上で、横なって休んでいても、ちっともこないじゃない!!』
これには、商品課の若い人も、ヒクヒク、とその顔が引きつっていたのだった。
『……俺、1人で……これ全部上げるのか!?』
『ヨーシキワーカは、やっていたとぞ』
『………………信じられない』


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「――この駆り出された日を境にして、ヨーシキワーカさんの不在が、
総務課、製造事務所、商品課、食パン、スナックサンド、ドーナツ、菓子パン、パンケーキラインと鯨波波及していったわけよ」
これには、ミノルさんも。
「まぁ、そうなるだろうなぁ……」
「で、さすがにこれはマズいと重く見た総務課や製造事務所の人達は、工務の方に取り次いで周り、
この音の凄まじさだけでも、取り除こうとしたものよ」


★彡
【工務の方に、修理】
――総務課の人は、箱洗いの廊下の前辺りにいて、その腕時計型携帯端末(フューチャーウォッチ)を操作し、エアディスプレイ画面を中空に出力させるのだった。
ヴゥーン
『オイッ!! ちょっとこっちへ来い!!』
『は? 何でしょうか!?』
電話回線に出てきたのは、工務の姿だった。
『とぼけるな!! 何で直さんとや!! 今中は物凄い音とやぞ!!』
『……』
――で、緊急対応に当たった工務の方は、
ゴォオオオオオ
その場で、立ち尽くすものだった。
こうした現場は、何度も見ていて、その度に修理依頼に当たったものだが、できる事はなかった。
地響きにも似たような異常振動を起こし、が鳴り立てるような異常騒音を起こしていたものだった。
だが、その時に、気づくべきだった。
ガタタッ……ガタッ……
それは、アンスタッカー側の流し台のローラーベルトの異常だった。
途中までは、普通に動くが……。その途中から、一時的に止まり、再び動き出すものだった。
ちょうど、そこに流れていた箱があって、その影響を受けて、その向きが途中で変わるものだった。
それが、詰まりの原因になり、
途中で箱が引っかかり、後からきた箱が続々と積み重なっていき、溢れ返ったほどだった。


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「――ヨーシキワーカさんが語るには、自分が在籍時にも、こうした状況下があっていて、
その日は、普通に動ていたアンスタッカー側近くの流し台も、その途中から何だかおかしくなり、
動ている途中で、一時的に止まり、また何事もなく稼働しているという、妙な状況だったらしいわよ。
これは、仮説なんだけども、夜のうちに、足りなかった箱を流していた人がいて、
翌朝着てみたら、やりっぱなしの状態だったそうよ。
つまり、その途中で機械に異常が起きても、そこにいた人達は、使うだけで、直そうとする意志がなかったって事よ。
その時は、使えれば、それでいいからね!」
これには、ミノルさんも。
「まぁ、使えればいいからな……! 別に、自分達が困るものでもないしな……」
とここで、勘のいいアヤネさんが。
「あーなるほどねぇ……。そうやって、小さな積み重ねが、積もり積もっていき、
売り上げ利益の激減と、箱洗いの機械が壊れちゃったわけね」
それに対して、サファイアリーさんは、こう切り返してきて。
「うん、まさしくその通りよアヤネさん!」
「!」
「ヨーシキワーカさんの不在は、仕事だけじゃなく、掃除や、修理のお願いにも、色々と影響していったそうよ――」


★彡
【洗浄機の機械は、温調スイッチをオフにしてから、執り行う事】
――その日、キーシストマ先輩は、新入社員さんと2人で、掃除していたのだった。
その時だった。
ブシャ――
と洗浄機側の2つのお湯タンクから、蒸気が噴き出してきたのは。
『マズッ』
原因に気づいた、キーシストマ先輩は、またやらかした感じみたく、乾燥機近くの盤へ行き、入りになっていた温調スイッチを『切り』にしたのだった。
シュウゥゥ……
それは、洗浄機側の2つのお湯タンクと繋がっていたもので、電磁弁を操作し、蒸気漏れを止めるものだった。
『フゥ……危ない危ない、また、やっちまったぜ……。……でも、何なんだ? これはいったい?』
『……?』
それは、キーシストマ先輩にしてみれば、原因不明だった。
ただの、前処置忘れである。


☆彡
【報告書、責任者、人事案件の必要性】
【デスクダイアリーノートかメモ帳で取る習慣、PDF文書によるプリントアウト】
――そして、ここで、アヤネさんが。
「――なるほどなるほど、つまり、そこが壊れた原因でも、あるわけね!?」
「ええ。そうね。
実は、そのヨーシキワーカさんが退職なさった後、キーシストマ先輩は、まだ、その『騙されている認識』に、気がついていなくて、
掃除中に1回と、掃除が終わってから1回と、何も知らないで動かす人達が1回と、朝働きに出てくる人達が1回は、
そうやってミスして触っていた事になるから、後で、壊れていった次第になる訳よ……!」
「そうなって、当たり前じゃないのよぉ……!? 何で気がつかなかったのよ……そこの人達ぃ……!?」
もう、嘆いちゃう。あたしのホテルであれば、ホントに信じられないわぁ。
それに対して、サファイアリーさんは。
「まぁ、簡単に言えば、常に動きっぱなしだったからね……時間にも追われていたし……。ゆっくりできなかったのよあの人でもぉ」
「……」
「まだ、机に座って、報告書でも見ていれば、まだ、対処の仕様があったんだけどね……。
非正規雇用パートじゃ、さすがに無理だったって話よ……。
報告も何も受けていなかったから、どうしようもなかったし……」
「……報告書……」
「箱洗いには、責任者を置いていないからねあの会社は……」
「……」
「人事案件が、上の方には何も通らないわけよ……」
「……」

――これには、珍しくもシャルロットさんが。
「――これは、絶対に必要ですね。報告書、責任者、人事案件を預かる人が……」
次いで、アンドロメダ王女様も。
「となると、やはり、あの3人の秘書候補か……」
「ええ、もっとも適任者かと……それに年齢的にも、肢体のルックス的にも、これ以上の人材はいません」
「確かにのう……」
スバルの秘書候補は、この時から選ばれていた。
クリスティ、サファイアリー、エメラルティの美人姉妹だ。

――サファイアリーさんは、こう語る。
「――少し、話が逸れたわね……。
洗浄機の水掃除は、始めの期間の2、3年間近くは、ヨーシキワーカさんが受け持っていたわ。
残りの2、3年間は、キーシストマ先輩が受け持っていたそうよ。
そうねぇ……。ヨーシキワーカさんからの交代の理由があってね。それが……。
『洗浄機の水タンクの中の掃除をしていたら、窯泥(スラッジ)が、眼もとに飛んできて、汚れたから顔を洗っている』
『ちょっと蓄膿症になって、今、病院に通っているから』
『もう2、3年間近くは、ずーっと自分が1人でこれをやっていたから、そろそろキーシストマさんが、代わりにやってね』
――などを理由にね。
今までは、自分が洗っていたんだから、今度は、キーシストマ先輩に任せた訳よ」
とこれには、ミノルさんも、アヤネさんも。
「それで、交代したわけか!」
「そこでね!」
それに対して、サファイアリーさんは、こう切り返してきて。
「まぁ、交代したのはいいんだけど……も、そこで、度々、機械の故障を起こしていた……らしいんだけどね……」
とここで、珍しくもシャルロットさんが。
「それで、機械が壊れたのですね……? という事は、壊したのは、その2人って事ですか?
いえ、そのエリュトロンコリフォグラミーさんの他の手口は?」
「ああ、それは簡単に言えば、温調スイッチを、正しくも『切り』にしていても、
その途中で、『ちょくちょく悪さ』をしていて、温調スイッチを、切りから『入り』に切り替えて、
故障の原因をワザと作り、キーシストマさんには、『自動』で切り替わったものだとする、『誤った先入観』を植えつけていった訳よ!
これを、何度も、数年間単位続ければどうなると思う!?
誤った先入観が、段々と、固定観念に取って代わる訳よ!?」
「あっ……」
「そう、もう、精神操作の脱出は、困難だったと思うわ……!」
「……それは、完全に、してやられた口ですね……」
あぁ……
とこれには、一同、嘆く思いだった。
つまり、そのキーシストマ先輩も、エリュトロンコリフォグラミーさんの故意的な手口で、やられた被害者さんなのだ。
と同時に、月見エビバーガーオーロラソース社も、その人のせいで、被害者さんともいえる。
「ヨーシキワーカさんは、幸か不幸か、その時には既に、ボイラー免許を取得していたからね。
キーシストマ先輩には、簡単に掃除の仕方だけ、言っていた訳よ!」
とここで、珍しくもシャルロットさんが。
「それは、口でですか?」
それに対して、サファイアリーさんは、こう切り返してきて。
「ええ、あそこにはノートやメモ帳の持ち込みができないからねぇ、『工場内持ち込み禁止ルール』って奴よ?」
「工場内持ち込み禁止ルール……ですか。『それ』で、『してやられていった』訳なんですね……?」
「ええ、逆にそう捉える事も、充分に可能ね!?」
「……」
「いざ、『自分の番に回ってきた時』にために、『ノートを取る習慣』を身につかせた方がいいわ。
子供の内は、何の事だかわかんないけれど……。
それは、大人になってからわかる事で、『次の就職先』、探しの時に、これが『意外とやってくる時がある』ものよ!?」
とこれには、スバル君も、アユミちゃんも、黙ってあたしを見ていたわ。
「……」
「……」
「そう、これは、いつか、訪れるかもしれない出来事だからね。でも、それは、ベストであって、誰にでもできるわけでもない……」
「……」
「……」
「ヨーシキワーカさんも、この例であって、如何にして書くかを、これを考えていたぐらいよ!?
人は、飽きやすいしね……。
だから、世間一般的には、色違いのノート5枚一組よりも、
西暦番号の付いたデスクダイアリーノートの方が良くて、そこから書く習慣を身に付けていった方がいいわね。でも・ただし!!」
「!?」
「犯人探しゲームや、どうしようもない問題、とんでもない問題では、
よく、自分の身内の親・兄弟を騙していたもので、
一時的に、ノートや記録媒体メモリーなどを奪い、シレッと返す手口だったそうよ?
時には、鉛筆で書いていたら、その『その文字の部分だけは消されていた』……」
「……ッ!?」
「消されていた……!?」
「ええ、『何も証拠が残らない』ようにね……。
しかも、犯人達の手口は、実に巧妙で、ホログラム映像出力装置つきマウスに、『(USB)ポートハブタイプの金属的な記録媒体』を差し込んでいたそうよ。
それは、ハッカーが使う『ウィルス』付きでね。
それを介して、幾多、幾人もの人達が、ハッキングし、先に閲覧していたわけよ。
しかも、例年通り、そのマウス製品には、内臓バッテリーが組み込んであるものだから、
ヨーシキワーカさんが、不在の時や、深夜寝静まった時に、勝手に稼働していたそうよ。ヴーンという音がしていたらしくてね」
「……」
「だから、そうしたもので。
例えば、ヨーシキワーカさんがメモ帳に書けば、その内容が犯人達側にとって、丸見えの状態だった。
知られたくもない、秘密も暴露されていた……ッ。
後は、そうした現場の証拠を押さえて、騒ぎを引き起こしていた訳よ。
当然、目に見えた形にもなって、精神的にも追い込まれていた訳よ……。
あの人は、幸か不幸か、ただの偶然の一致で、自分の無罪を勝ち取っただけに過ぎないのよ!?」
「……」
「だから、ヨーシキワーカさんよりも、もっと前の被害者さん(人)は、3000万円以上の払いきれない負債金を負い、
自宅や土地や財産を投げうってもダメで、多重債務者兼低沈金労働者まで、その身を墜としていった訳……」
「……」
「信じられないなら、自分の親にでも聞けば、それがわかるわ!?
もしくは、親戚同士が集まる、『お正月』や『お盆』の時期とかに、シレッと尋ねるとかね……。
高齢者であるほど、親身になって、答えてくれるわよ?
……だから、1番の手段は、勝つのでもなく、負けるのでもなく、如何にして引き分けに持ち込みつつ、自分の無罪を勝ち取っていくか……!?」
「……」
「だから、1番の手段は、
複数の記憶媒体メモリーを持つ事と、西暦・月・日のフォルダをいくつも作り、万が一に事態に備える事。
デスクダイアリーノートには、『ボールペン』書きの方が一番良くて、『フリクションボールペン』が2番!
理想で言えば、プリンターがあれば、1番効率的だけど、一般人が持つには、高額だし、場所取りだって困るから、必要な時しか使えない!
マイクロソフトオフィス、一太郎は、当然向こうも、『暗号鍵(マスターキー)』で抑えてあるから、
そうした危険性を踏まえて、ハッキングによる破砕(クラッキング)被害に耐えていくしかない。
2、3年間は、絶対に掛かるからね!?
そうして、証拠として、記録に残しつつ、人に見せる以上は、PDF文書によるプリントアウトになってくるわけよ。
……まぁ、あの人の場合は、執筆という異例の荒業だったんだけどね……」
「……」
「ハッキングができる人であれば、会社の売上資金を『横流し』にしたり、会計ソフトを書き換える事だって、案外できるものなのよ?
例えば、ミシマさんとか、電気関連とか、設備管理科だとか、あと職業訓練校の先生方であればね。
充分、できるほどの優れた腕前を、案外とお持ちなのよ?」


★彡
【商品課から総務課への取り次ぎ回し、さらに総務課から、委託を請け負っている配送業者への申し入れ】
――それは、商品課のパソコン画面だった。
売り上げ利益が、下方修正に入り、グラフが斜め下に落ち込んでいたのだ。
『――うわぁ……先月より、落ちてる……。これ……あの人がいなくなってからの影響か……!?』
――すぐに商品課の人が飛んだ先は、総務課への報告書だった。
それは、エアディスプレイ画面を介して、行われていた。
『――とゆう訳なんですよ』
『……やはりかぁ……』
思った通り、頭が痛いものだった。
『影響が出ているのは、出庫と出荷の内、出荷の方に当たります』
『うちから商品が出ていくやつか?』
『はい』
『う~ん……わかった。これは、製造事務所の方にも、連絡を回しておく』
それだけ聞くと、商品課側の電話回線が、途中で切れたのだった。
無事、報告終了というやつだ。
『さーて……どうしたものか……!?』
――商品課からの報告を受けた、総務課の人達は、エアディスプレイ画面を介して、製造事務所にいる責任者預かりの人達と電話会談を繋いでいた。
俗にいう謎会議である。
『――という事らしい』
『影響が出ているのは、箱洗いを筆頭に、食パン、スナックサンド、ドーナツ、菓子パン、パンケーキ、それにバーガーのパティラインか……。
全部、生産売り上げに直結してくるやつじゃないか!!』
『これは、何とかして、取り返していかなきゃね……』
『でも、どうやって……!?』
『う~ん………………』
そこからは、世にも悪い企ても、並行して、考えていくものだった。
――そして、総務課から、委託を請け負っている配送業者へ。
『あの済みませんが……。トラック台数の本数を、半分まで抑えてくれませんか!?』
『は、半分も!? えええええっ!? マジっすか!?』
『はい……』


☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう語る。
「――そうした事がたたって、たった1人の人材が抜けたぐらいで、会社がそこまで、目に見えた感じで、落ち込むと……本気で思える!?」
これには、アヤネさんも、ミノルさんを推しても。
「ああー……」
「そっかー……」
と呟きを落とした恵ご夫妻。
少年少女達はそれを見て、疑問符を上げるだけだった。
「……?」
「……?」
だが、サファイアリーさんは、そこに気がついていた。
(さすが、元ホテルの経営者様ね。もうそこに気がつき出したか……!)
それは、お金周りの話であり、回収の話だったわ。
(その人を使って、取り返そうとする目論見)
そこへ、アユミちゃんが、こう言葉をかけてきて。
「どーゆう事? ケイちゃんのお父さんにお母さん?」
「う~ん……。んっ!?」
その少女の言葉に、恵夫妻は反応を覚えたものだったわ。振り返るは2人。
アユミちゃんに話しかけてきたのは、その父のミノルさんからだったわ。
「会社側は、負債金も、売り上げ利益の激減も、その人、『たった1人のせいにする』キライがあるのだよ!? そうした『責任話の結びつき』なのだろう」
「え……!?」
「さっき、このお姉さんが話したように、メモ帳の中身が見えなかったよね? それが、その外から見た人達の見解の認識の相違なのだよ。
だから、失った金を取り返そうとする、そうした意識の違いのもつれが、生じていったのだよ。
周りから誤解と、おかしな取り次ぎ回しのせいでね。
特殊詐欺に巻き込まれるとは、実は、案外とそうしたものなんだよ!?」
「……」
これには、少女も驚きしかなく。
続けて、アヤネさんの言葉で。
「相当、無理がある話ね」
「そうだな」
「……」
これにはもう、少年少女達も、驚きしかない。
ミノルさんは、続けて、こうも告げる。
「おそらく、『身代わりの保証人システム』なのだろう。
覚えているかい!? そのヨーシキワーカさんって人が、月見エビバーガーオーロラソース社に面接に行った日の話を!?」
「……」
「あぁ、何かあったかも……」
それは、その少女の呟きだった。
それを見兼ねて、ミノルさんは、続けてこうも語る。
「その人のお父さんの話が、確か出ていたよね? 不思議に思わなかったかい!? なぜ、会社側が、それを知っていたのか……!?」
「……ッ」
「まさか……!?」
「そう、その時から既に、その会社側と、職安の人達は、『事前にその事を調べ済み』だった……!
そうした調査が事前に行われていて、『事の有用性』がわかっていた。
会社側は、何かあった際、そうした不測の事態に備えて、『責任話』を無理やりにでも、『でっち上げる』事もできるのだよ!?
周りに問い合わせて周ってね!」
「「なっ!?」」
「それを、『損害賠償責任報酬システム』といって、
さっきの話の中にもあったように、職安の裏には、『裏の端末』があって、
そうした責任話が払いきれないなら、その人物のプロフィール情報の中に、『入りと出の入金先のやり取り』があって、行われているのだよ!?
『多重債務者兼低賃金労働者』よろしく、『障害者身分』まで墜とされていった人達も、案外とこれで、少なくなくてね……。
それが、実社会に生きる、我々の足元で蠢く、『知られざる裏の話』なんだ……!」
次いで、アヤネさんが。
「そこのお父さんが、例え、土地や建物や財産分野を売り払っても、無駄で、結局は安く叩からた上に、
そうした責任話も、払いきれなくなるからして、いちゃもんをつけてでも、無理やりにでも安く叩いて、結び付けられてくるキライがあるのよ!?
わかる!? これが恐~い『裏の世界の話』よ!?」
フフフフフッ
と不気味に笑うアヤネさんを見て、
これには、アユミちゃんも、スバル君も。
「恐ッ!!」
「メッチャ恐いですッ!!」
と恐れたものだったわ。
サファイアリーさんは、こう告げる。
「……まぁ、ヨシュディアエさんよりかは、いくらかはまだ若くて、綺麗だから、まだマシね」
「あら? 嬉しい事を言って頂けるわね?」
「ええ、あの人は、マスクの上からでもわかるぐらい、口臭が何だか臭くて、顔が厚くて、
人を脅す時なんかは威圧的な態度を取って、瞳の瞳孔を開けて、静脈が血走っていたらしいからね。
時には、手が追えず、口やかましいぐらいに、情緒不安定になったかと思えば、ヒステリック行為を起こしていたぐらいだからね。
これには、散々ヨーシキワーカさんも手に負えなかったようで、もう黙秘するしか、手がなかったらしいわ。
あたし、そ~~んな事言った覚えがないが、口癖よ。
自分が言った事すら認めようとはしない女だからね。
しかも、身内内に、ハッキングができる人を抱えていて、揉み消しまくっていたから、そうしたデータもなんだかメチャクチャだったらしいからね。
まぁ、歳相応のわがままおばさんである事には、違いはないわ!!」
これを聞いてしまったスバル君とアユミちゃんは。
「いろいろと凄そうなおばさんだね……」
「うん……」
「そんな人と付き合いたくないね……」
「あたしも、そうならないよう、気をつけよう……」
そんな少年少女達の会話があったのだった。
でも、そんなスゴイおばさんと比べられてしまった、恵アヤネさんを推しても。
「そんなスゴイ、わがままなおばさんなんかと比べられてもなぁ……」
もう引き気味よ。
(正直、なんも嬉しくないわ……)
「まぁ、アヤさんっていう、名前だけが女で、実際は男の人も、まだ、年齢的に言って、若くて救いようはあったらしいんだけどね」
「……」
「ごめ……」
とサファイアリーさんが謝ると、これには、アヤネさんも、「フンッ」と機嫌を悪くし、そっぽを向くものだったわ。
「別人だからねあたし!!」
そりゃあ当然の反応だったわ。
そこへ、ご主人さんが、ポンッ、と肩に手を置いたものだったわ。
「まぁまぁ、そんなに機嫌を悪くするな!」
「だって~」
「まぁ、いいじゃないか、すぐに謝っていたんだし……」
「……」
「それに、アヤネの方が美人だろ?」
「……」
上手い。これには美人のアヤネさんも、その顔を赤らめたものだったわ。
できる男とは、まさしくこの人の事ね。
これには、年端もいかないアユミちゃんを推しても。
「……いいなぁ……」
と呟くものだったわ。
で、無意識的に少年を見てしまい。
「……?」
「……はぁ、こっちはニブチンだしなぁ……?」
この時のあたしの心の内は。
(天然物の鈍感、朴念仁、不愛想……疎い……だよぉ~)
だが、少年の心の内は。
(アユミちゃんが大きくなったら、いったいどうなるんだろう? アヤネさんのようになるのかな? それともクリスティさん?
それに……何だか、さすがに、その人は嫌だなぁ……)
だった。その程度の認識の違いである。
とそこへ、サファイアリーさんが。
「……まぁ、それが悲しい実情なのよ……」
くたびれた感じで、ものを言うのだった。


☆彡
【一生に1度は、巡ってくる、予期しないトラブルアクシデントに対する対応】
――サファイアリーさんは、こうも語っていた。
「――まぁ、帰る間際、乾燥機近くの機械が、エラーだったのは、ホントに困ったものだったけどね……。
これは、ヨーシキワーカさんが辞めた跡にも、極低確率で起こっていたかもしれないわね」
「極低確率……?」
「ええ、1000回やって1回起きるほどの極低確率なんだけども……。そのまま何もせずに、もしも、帰った場合は……。
朝働く人たちに、迷惑行為を被り兼ねないものだったそうよ!?」
「……!」
振り返るは、アンドロメダ王女様に、スバル君の2人。
サファイアリーさんは、続けてこうも言うものだった。
「それは、朝働く人達が迷惑行為を被り兼ねないばかりか、
他のラインの人達にも、同様にして、その生産ラインの工程が、大幅に落ちてきてしまうほどのものなの……。
これが、目に見えた形にもなって、売り上げ利益が、落ちて込んでいっと思うわ。
……怒られるだけで済まないのよ? 酷い場合は、即刻クビだからね!?」
「く、クビ!?」
「た、たったそれだけで!?」
「そうよ。朝出荷出しのタイミングが間に合わず、それは配送会社を伝って、商品を卸すところが、スーパーやコンビニ、デパート等だからね。
会社側の信頼にも、大きく関わってきちゃう訳よ!?」
「……」
サァ……
と僕達、あたし達、私達は、血の気が引き、青ざめる思いだった。
「まぁ、あの人の場合は、その対処方法を知っていて、
乾燥機側近くの盤を開けてから、そこにある『リセットボタン』を押す事によって、一時的な対処方法を心掛けていたらしいわ。
これに関しては、ほとんどの従業員さんに、前もって伝えてある事なのよ?」
これには、僕もアユミちゃんも。
「ホッ」
と胸を撫で下ろす思いだった。
「箱洗い作業員、パート従業員さん達が触れるところは、限られてきちゃうからね。
10年間にたった1度だけ、言いつけを破って、あの人も勝手に触ったところもあるぐらいよ?」
「えっ……」
「それはねぇ……。
夜6時過ぎを周っていて、工務の方々もいなくて、製造事務所の人も帰っていた。『日曜日』の事だったそうよ。
そこで、アンスタッカー側の機械の故障があったらしくてね。
乾燥機側の盤の蓋を開けて、リセットボタンを、何度も押してみても、まるで効果がなかったそうよ。
このままでは、朝働きに出てくる人達に、大きな迷惑行為を被り兼ねない……そう思ったあの人は、上からの約束を破ることにした。
それは、本来であれば、絶対にやってはいけない事だった。
そう、それは、アンスタッカー側の鍵のついているところの電源を、一度、完全に落とし、
再び、電源を入れて、再起動させるという、悪い行いだったそうよ」
とこれには、ミノルさんも。
「それは、『絶対にやっちゃいけない』事だろ!?」
「上からの言いつけを、『勝手に約束を破った』のあの人!?」
「そうよッ!! でもねぇ……その日は、『日曜日』で、もう午後6時を過ぎていたらしくて、頼る先がいなかった……!
製造事務所の人も、工務室に行ってみても、誰1人としていなかった……。
工務の方は、1人いたかもしれないけど、どこかの修理に出ていて、その時間帯には、いなかったそうよ!
こーゆう事は、10年間も、そこにいたのだから、一生に一度ぐらいは、巡ってくるものなのよ!?」
「……ッ」
ショックを受ける。現実的に考えても、そーゆう事が稀に起こるからだ。
「だから、あの人は、その約束を破った後、10分間ほど、ワザと機械を動かしまま、『キチンとした動作確認』まで行っていた。
で、一度、普通通りに、停止させた後……。
また、起動ボタンを押して、再び、動作確認まで心掛けてる。
『二重確認』を取るのは、当たり前の事だからね?」
「……」
「そして、その日は、上がって帰った後、総務課を見たら、誰1人としていなかった……。
日曜日の出来事だから、知る人は、とんと少ないものよ?
その人は、日曜日の場合は、キーシストマ先輩が夕方5時上りだから、
夜7時まで、1人だけだったからね……。
相談相手もおらず、報告連絡相談すらできない状況下にあった……。
いずれは、1人になった時に、そーゆう不運な巡り会わせが、いずれは、周ってきちゃうものなのよ?」
「……」
これには、僕も、あたし達も、私達も、何も言えなかった……。
――サファイアリーさんは、こうも語る。
「不運にも、運が良かったのは、前もって事前に、工務の方のやり取りを見ていた事よ。
以前にそう言った経験を見ていたから、活かす事ができた訳!」


☆彡
【誰か1人には、教えていたのかいなかったのか!?】
――それは、シャルロットさんからの質問から始まるものだった。
「――ちょっとよろしいでしょうか? サファイアリーさん」
「はい」
「その人は、そうした現場を見ていたでしょうが……。他の人達は、視ていたのでしょうね!?」
「視ていたわ!」
あたしは、ハッキリとものをいったわ。
「ヨーシキワーカさんが、工務を呼んできて、そうした現場で、応急処置の仕方を見ていたそうよ」
「なるほど、視ていたのは、間違いありませんね?」
「YES(イエス)よ! ただし!」
「んっ!?」
「1年間に5人もの人が抜けた年もあり、1日3時間で辞めた人もいるから、
ものは教えても、いったい誰に、どれぐらい物事を教えたかまでは、あの人も覚えていないそうよ!」
「1年間に5人ですか……。仮に3として、それが10年間ですから、30人ぐらいに登りますね。
それならば、仕方がありませんね」
と割り切る、シャルロットさんの姿があったわ。
とさらに、アヤネさんから。
「じゃあ、1つ聞くけど、ちょっといいかしら?」
「はい」
「その3時間の前倒しには、商品課の人が関わってきていたのよね?」
「ええ」
「その人達が、そうした様子を見ていて、なぜそうなってしまったのかよ!?」
それに対して、サファイアリーさんは、こう切り返すのだった。
「ああ、それは、商品課だけじゃなく、他のラインの方々や、上のデータの集計を取る総務課の人達にも言えてきますね。
まぁ、簡単に言えば、ちゃんとものを教えてから、そこにいた人達に言ってから、辞めていったのか!? ……ですね!?」
「……」
コクリ
と頷き得るアヤネさん。
サファイアリーさんは、こう語るのだった。
「過去に、ヨーシキワーカさんも、それで悩んだ時期があったそうよ。
月見エビバーガーオーロラソース社から職安の方に依頼案件が着て、
その人を、その場に留めさせて、審議を問うものだった――」


★彡
【ミシマさんに関わった年】
【ちゃんとお前は、辞める前に、ちゃんとものを教えてから辞めていったのか!?】
【辞めていく前に、ものを教えていなかった場合、就職活動にも、差し障ってくる】
――始まりは、ヨシュディアエさんからの声掛けだった。
『――ねぇ、ヨーシキワーカ君、それはあの中にいて、キチンとそれを教えたの!? みんな、聞いていないって言ってたわよ!?
でも変ねぇ、あの会社に数年間以上務めていて、それを教えていないって!? ンンッ!?』
――次に、お父さんからは。
『お前は、あの会社の中にいて、キチンとそれを教えたのか!?』
――次に、弟君から。
『それはお兄ちゃん、何とも教えていないんじゃなかとや!?』
――それに対して、ヨーシキワーカさんの回答は。
『教えたけど、知っている事はね』
――で、お父さんの返答は。
『おいっ、その言葉忘れるなよ!?』
『いや、普通に教えているし……』
『それもそうだな……』
(務めていた年期、10年ですよ? 普通に教えていますって……。
ただ、教えた人材が、凄い勢いで辞めていっただけで……。
あそこは、年に5人もの人が辞めていった年もあり。
また、1日、たった3時間で辞めた人もいるからなぁ……。
どんだけ、ものを教えていたと思ってんだよ……)

「――だったそうよ!? また、自分も相手さんも、頭巾を被っていて、耳栓までしてるからね。
しかも、あそこは、騒音管理区分だし……あっちが聴いていたのかどうかすらも、半信半疑らしいからね」
「それは、場所が悪いじゃないの?」
「仰る通りよ」
「……」
やっぱり。
「で、時間の経過を追うごとにして、向こうの言い分を立てるようにして、業を煮やしたヨシュディアエさんから、こう言われた事があったの――」

★彡
【ミシマさんに関わった年】
【辞めていく以上の落とし前】
――ヨシュディアエさんは、言伝を受けて、こう暴論を吐いたものだった。
『――ちょっと、ヨーシキワーカ君が、その頭を下げてまで、向こうの会社の人の所まで謝りにいって、
その後にでも、1週間か1ヶ月間ぐらい、その中にいて、そこにいる人達に、その技の教えを説いた後、
今度は、こっちの方から、堂々と捨てられるんだけどな~~ァ!? あなたを!?
もういらなくなったから、必要ないってね。
資格や免許も、『3つほど』取り上げてから、追い返しちゃってね!
それぐらいであれば、こちら側としても、許してやらなくてあげても良くてよ!?』
『……』
(あんたは、知らないだけだ。
箱洗いには、その免許は元々必要ない。後から、自分で金を出して取ったものなのだ。
時には、親にも、金を出してもらって。
教本も、教材も、資格試験を受けるための願書も、日程も自分で調べてから、取り組んだものだ。
会社には、訳を言って、有給休暇をもらい、その後で取ったものなんだ。
……あんたは知らないだろうが、会社側からの案内通知で、それを取ってください、だなんて一言も言われていない。
自分の意思で、それを取ったものだから、返品する必要はない。
知らないだろうが、会社側から、お金を出してもらったりしていれば、
それは、返す必要の義務手続きが生じる。
……だけど、『例外規定』があって、自分の場合は、それに当てはまらないんだ。
こんな事、あんたに言ってのしょうもないけど……な)

「――ってね。後はそうねぇ、『それは聞いていない』――とする言い分が付きものなのよ!?」
「……」
「まぁ、だいたいがそんな感じよ!
でも、普通によくよく考えてみれば、それはおかしくて、数年間以上、そこに務めていらしたんだから、そーゆう教えはしているものよ!?」
とこれには、みんなも。
「えっ……!? そーゆう会社さんだったの!?」
「ヒデェ……3つも取り上げるって……!?」
それは、悪い印象を持たれた事だった。
それに対して、サファイアリーさんは、「あぁ……」と嘆きつつ、「上手くいかないなぁ……」と零しながら、少し考えてから、こう言うものだった。
「う~ん……少し違うわね」
「へっ……」
「実際には、1回も謝りに行っていないし、その資格や免許も取り上げられてもいない。
ただ、今後使えないよう、周りの方に取り次いで周り、そうした制限が掛けられているのよ!?
職安を通してみても、そーゆう希望求人に在りつけないようにしてね。
やったのは、ヨシュディアエさん辺りかしらね!?
それが、『落とし前』ってところなんでしょうね!?」
「落とし前……」
「まぁ、平たく言えば、免許や資格は持っていても、紙切れみたいなものよ?
履歴書には、書けはするんだけどね。
ただし、実務経験はないから、ランクアップはできない。
自分ん家程度の電気配線を改良できる程度よ?
……まぁ、とやかく言えば、落ち着くところまで行けば、時間の経過によって、そうした制限が外されるんだと期待したいわね!?」
「……」
それは、あくまで気休め、期待程度だった。
その人が、今後、どうなっていったかは、不明である。
「で、さっきの話の続きだけど、
あくまで、ヨーシキワーカさんに対して、酷い言葉を吐き捨てたのは、ヨシュディアエさんであって、
ヨーシキワーカさんは、その人を通して聞いた事でしか、ないって事よ!?
つまり、こう考えられるのよ?
会社、人事部、箱洗いの人、人事部、電話を掛けた人、イリヤマ先生やライセン先生、ヨシュディアエさん、ヨーシキワーカさんと聞いた流れ作業だったわけよ!?
この中で、必ずといって良いほど、どこかで『作為的な私情が盛り込まれた説』が、有力だったって訳ね!」
とこれには、アユミちゃんを推しても。
「なぁんだそーゆう事!」
と納得してくれちゃたわ。
「こーゆう話は、多くの人達が、そーゆう会社を辞めた後、ほぼ必ずといっていいほど、付き物の話なのよ!?」
「……」
そこへ、アヤネさんからアドバイスが掛かり。
「アユミちゃん、実際にその人が、そーゆう体験談を経て、会ったって事実よ!」
これには、アユミちゃんを推しても、
「フ~ン」
とその程度の軽い認識だったわ。
とこれには、サファイアリーさんも。
「……まぁ、職に就いた事がない以上は、さも当然の反応なのよね!?
言われた事があっても、実際になってみないと、よくわからない事が、この社会の実情の中に、見え隠れしているからね!?」


☆彡
【社風の変化】
【親子関係、結婚関係、規格試験関係】
――サファイアリーさんは、続けてこう語る。
それは、咳を1つしてから、始まるものだった。
「コホンッ! 後はそうねぇ、『社風の変化』というやつね!」
「社風の変化?」
「ええ、さっきの月見エビバーガーオーロラソース社が、まさにこれに当たる訳よ!
多くの従業員達さん達は、こう投げかけたそうよ。
なんだか息しずらくなったと……ね」
「息しずらくなった……」
「ええ、経済貿易発展の裏で、知られざるやり取りがあっていたようなものよ!
これは、どの会社・企業・工場にも言える事だけど……、自分が入社した当初と比べて、社風の変化が起こり、
以前と様変わりしていても、内心付いていけてなくても、言えなくても、
何とかして食らいついていこうとする従業員さんがいても、中にはおかしくはないものよ!」
「……」
それは、さっきの話を聴いた後の件(くだり)だった。今ならば、その言葉の意味も分かる。
サファイアリーさんは、こう続ける。
「中々、上の役職の人には言い出し切れないものだからね……!?
クビや減給の可能性だったりあるし。
中には、部署の異動もあったりするぐらいよ!?
部署の異動に伴う人材を受けた人なんかは、一からそこで学べってやつでね。
以前の場所と比べて、様変わりしていて、希望に沿った異動ではないから、モチベーションの低下に繋がり兼ねないものよ!?
ベテランほど、こうした変化には敏感であっても、中々、上の役職には言い出せず、いつしかやる気が落ちて込んでいっては……。
モチベーション低下が下がる要因になるのよ!?
そうした先輩を見ていた後輩君も、また同様であり、モチベーションの低下に繋がっていったんだから!」
これを見て、アンドロメダ王女様は。
「ほっほぅ! 関心感心! モチベーションの低下ときたか! ならば、その対応策はどうするのじゃ!?」
これを見兼ねて、スバル君は。
「……あっ! サファイアリーさん!」
「んっ何かしらスバル君!?」
「そのモチベーションの低下の対応策はどうすればいいのかって!? アンドロメダ王女様が言ってるんだけど!?」
「ああ……なるほど……」
サファイアリー(あたし)は、それは真っ当な意見だと思ったわ。
「では、何でそーゆう原因になったのかしら!?」
「え……?」
「何……!?」
「表では、これを『親子関係』とか『結婚関係』とか『規格試験関係』とかいって、3つほど例に出した方が早そうね!
1つは、親子関係。
これは、会社の中に雇われた従業員の関係であって、総務、経理、営業、従業員の関係に当たるわね。
でも、中々自分が希望した部署には配属されず、そうしたやる気が落ち込んでいって、モチベーションの低下に繋がるものよ!
1つは、結婚関係。
これは、従業員のその人と、その人を雇う会社が対等な関係があるの。
ただ単に、会社から与えられた仕事をやるだけじゃなく、自分からも別の仕事を持ってきて、その仕事を請け負う人の事ね。
当然、複数の請負業務を同時にこなしていくものだから、目に見えて大変だけど、やる気アップとお給料の同時アップに繋がるわ!
1つは、規格試験関係。
これは、1年間1回、3ヵ月間を通して、規格試験制度を設ける事よ!
ABCと目的に沿ったものを、通してやってみる事よ。
その中で、いったいどっちが効率が良くて、安全性が高く、どんなふとした拍子にも安定した業務を執り行えるような環境を整えていく事よ!
ここで、一番大事なのは、安定性なんだけどね!
でも、時には、冬の時期と夏の時期にかけて、効率生産重視に賭ける熱い情熱も大事なのよ!
それが、モチベーションアップに繋がるものよ!」
これには、少年少女達も感心を声を零し、アンドロメダ王女様も。
「へぇ~!」
「フフフ、わかっておるではないか……! 左様! 異なる異星人タイプと共に働く以上、その『規格試験制度』が『肝』になってくるのじゃよ!」
(それが、先々の見通しなのじゃ!)
このサファイアリーという娘子も、良くわかっておるわ。
その彼女は、こう続ける。
「その月見エビバーガーオーロラソース社に関しては、昼12時にトラックの積み荷は、いくらなんでも早過ぎるから、昼3時ぐらい戻した方がいいわ。
ただし、運送業界も、人手不足もあって、トラックの台数も少ないでしょうから、
その間を取って、昼2時ぐらいがベストだと思うわ!」
これには、ミノルさんも。
「ホゥ、それは、なぜですかな!?」
「ポイントは、トラック運転手も、箱洗い作業員も、人数不足のせいだからよ!
会社側としては、人材の補充よりも、今ある人材の中で、どうにかしてやり繰りしていきたいものよ!」
これには、ミノルさんも。
「確かに!」
と同意見だったわ。
それは、サファイアリー(あたし)だって、同じ。
「必要なのは、責任者であり監察員の人を、そこに置く事よ!
その動向の変化をつぶさに感じ取り、報告書をまとめ、上に申請する人!
その後、上の役職から、商品化に通知が届き、その規格試験制度ABCと順を追って試されていく!
その中で、最も出来が良く、最も安定していたものを取れば、どんなふとした拍子にも耐えられる大企業になるはずよ!」
これを見て、アンドロメダ王女様は。
「ほっほぅ……。中々、考えておるなぁ……。じゃが、それが実行できるものか否か……」
これを見兼ねて、スバル君は。
「……あのサファイアリーさん!」
「んっ!? 何かしらスバル君!?」
「王女様が、それが実行できるのか否かだって!?」
「ああ、確かにそうね! だから、最後には、バランサーが必要なのよ!」
「バランサー!?」
「この役割を果たしていた人材が、ヨーシキワーカさんでね。全体の比重を調整していたようなものよ!
万能家とか、ジェネラリストとも言われていてね。
どんな会社さんにも、必ず1人はいるものよ!」
「へぇ~」
「でも、もう自分は辞めた人材だから、戻る気もなく、また一から作ればいいだろうってね!
新しい社風の変化には、昔いた人材ほど馴染めず、古きは良き土に還ってこそ、新しい新芽ができる。
新しい社風の変化を託せるのは、新しく入ってきた新入社員さんを置いて、他にいない!
それが、次世代の後輩へのバトンタッチよ!」
「次世代の後輩への……バトンタッチ……!」
「フフッ、そうね」
サファイアリーさんの脳裏に過ったのは、3人の人物たち。
ヨーシキワーカからチルディアへ、そのチルディアからスバルへ、バトンが託された様だった。
だから、あたしは、こう思う。
(あたしは、その引継ぎ役になろうと……!)
そこには、深い思いがあったわ。
その横で、彼女、エメラルティさんも、クリスティさんも、コクリ、と頷き得、明るく朗らかに微笑んでいた。
今、ここに、新しい時代を担うものが、誕生しつつあるからだ。


☆彡
【何事もお金が大事】
「でも、モチベーションアップのためには、やっぱりお金が大事なのよ! お金がないとそもそも何もできないからね!」
サファイアリーさん(彼女)は、現金だった。
「その為には、法改正しかない!!
例えば、受注を受けた親会社の手元に100万円(7576米ドル)あったとしましょうか?
それが子会社に渡り、その手取りが60万円(4545米ドル)。
それが孫会社に渡り、その手取りが30万円(2272米ドル)。
でもここまでくれば、いくつもの枝分かれしていて、実際には10万円(756米ドル)しかないものも、ザラなのよ……」
とそこへ、クリスティさんが、口を挟んできて。
「でも、実際には、ミシマさんのような悪巧みをする人がいて、
ちょっと横から介入してきては、その話し合いに参加して、ちょっかいや悪戯を仕掛けつつ、お宝を持ち去っていく悪い人達も、中にはいるものよ!」
「そーゆう事だったの!?」
「ええ、そうよ! だから、ミシマさんは、それを恐れていたのよ!」
フ~ン……
と何となくそう思うスバル君がいるのだった。
「ちょっとクリスティ、話の腰を折らないでよ!」
「アハハハ、メンゴ!」
「ハァ~……まぁいいわ。さっきクリスティが言ったように、実社会で生きる以上、横からの介入があって、当然だからね。
そこから幾多もの枝分かれしていくのも、非日常にもザラなのよ!」
「えっそうなの!?」
「ハァ~実はそうなのよぉ!」
「へぇ~……そうなんだぁ……」
何となく納得してしまう僕がいたんだ。
「だから、新しい法改正では、
1つ、横からの受注依頼を受けた、親会社から子会社までしか、その申請の受理を受け付けない!
1つ、この子会社の中の者を通して、『横からの介入者』を、『できるだけ削がないといけない』!
基本的には、横からの紹介を受け付けず、上からの紹介申請の受理を受け取る形ね!
このやり方であれば、その中で働く、従業員さん達の給料アップが、望めるはずよ!
それが、モチベーションアップに繋がるわ!」


TO BE CONTINUD……

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