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ある日の節分日記 番外編

『うふ、うふふふふ』
ぶすっぶすっぶすっ
『うふ、うふふふふ』
ぶすっぶすっぶすっ


〖ちょ、ちょっと、あれ何してるの?怖いんだけど!?〗
〖それに何か臭うような!?〗
〖ぼく、あれ覚えがあるよ〗
〖〖あっそう言えば···〗〗
遠巻きに見ている主神様親子。でも


『レ、レイ、妾の庭で柊を育てたいと言うたはその為かえ?』ううっ
勇者・天界樹様が声をかけた!鼻をつまんだ顔を更に扇で隠して···

『あらあらまあまあ、たしかに真っ先に浮かんだのはこの柊鰯だけど、柊はちゃんと漢方としても使えるわよ』
『そ、そうかの。一先ず安心じゃが、それはなんなのじゃ?』
『それ、前に聖域から届けられたものと同じか?』
もう一人の勇者・料理長もやって来た

『あらあらまあまあ、やっぱりあれそうなのね?ちょっと古くなってたようだから新しくしようと思って。これはね、いわゆる魔除けよ』

『『魔除け?』』

『そうよ。節分の日に家の門に飾るの。日本では節分に豆を撒いて邪気を払い、無病息災を願うんだけど、その邪気を鬼に例えるのね』

『『ふむ。それで?』』

『鬼はこの柊の葉の尖ったところを嫌がり、良く焼いた鰯の頭の匂いを嫌がるの』

『『鬼じゃなくても嫌じゃの(だな)』』

『ふふ。まあ、その通りなんだけど。とにかく魔除けや厄除けの意味があって、玄関や門に飾るのよ。そして、日の暮れない内に豆を炒って、夜になったら窓や戸から外に向かって豆を撒くの。『鬼は外、福は内』と二回ずつ唱えながらね。福の神様をお家にお迎えして、家の中に入り込んだ鬼を追い出したら素早く窓や戸を閉めるの。福の神を逃がさず、鬼が戻らないようにね』

『ほぉ、中々徹底しておるんじゃの』
『でも、何で豆なんだ?しかもわざわざこんな風に炒るなんてよ』
料理長の腕には大量の炒られた豆が。

『諸説あってね、日本ではお米や大豆のような穀物には精霊が宿るとされていて、穀物の中でも大きい大豆に特に強い精霊が宿るからとか、大豆で鬼の目を潰して退治したのは誰だったかしら?とにかく、鬼が嫌うんですって』

『『ほぉ~』』

『そして、お豆は歳の数、もしくは歳の数にひとつ足した数を食べると、その年の間、病気をせず健康でいられると言われているの』

『『歳の数?』』
『無理じゃ···』
『流石に腹が爆発するぞ。自分の歳なんかはるか昔に数えるのやめたしな』

『そりゃそうよね。神様だもの。無理のない範囲でいいんじゃないかしら?』

『『それならまぁ···』』

『ふふ。孫はね豆まきで鬼役の源さんを負かせてしまったことがあるのよ。あ、豆撒きってね、鬼に扮した人に豆を投げつけるのよ。それで、私が源さんに鬼役を頼んで夜に庭から来てもらったんだけど』くすくす

『それでどうしたのじゃ?』
『愛し子にあの源がやられたってか?信じられねぇな』

『それが、源さんたらものすごく凝り性でしょう?それはもうリアルな大人でも逃げ出したくなるようなものすごく怖い赤鬼姿で現れたのよ。ものすごく怖い声で『悪い子はどこだ~』って言いながらね』くすくす

『『それで?』』

『そしたら孫が···』


「ぴぎゃあああっおにしゃん、こあい~っ!あっちいけ~っ!」
どごぉんっ
『ふぎゃ』ばたんっ
『あ、あらあらまあまあ、ごめんなさいっ大丈夫かしら?』バタバタ
「ふにゅ?」ぱちくり


『豆を入れていた大きな升をそのまま投げつけて源さんの顔にぶつけちゃったのよね』くすくす

『おやまぁ』
『がはははっ!ちびっこにやられたのか!情けねぇな!』

『それだけ本格的だったのよ。おかげで次の年から豆まきは明るい時間にすることになったのよ。鬼も少し優しい顔にしてもらってね』

『かわいそうに、トラウマになってしまったのじゃな』
『がはははっ!それは源もじゃないか?それで、豆を用意したってことは今からやるのか?』

『そうよ。聖域が強化されたって聞いたから、天界もと思って』

『なるほどのぉ』
『そういうことならその柊鰯ってやつの匂いも我慢できるな。玄関や門ってことは外だしな』

『そうでしょ?それに工芸神様には鬼のお面を頼んでいるのよ。エルフちゃんたちや、保護された獣人の子たちにも楽しんでもらおうと思って。武神様たちが鬼役を買って出てくれたの。優しいわよね』

『ほぉ、それは良い考えじゃの』
『料理は俺たちが作ってるぜ。いつもとなんか違うし、多分これも意味があるんだろ?』

『もちろんよ。目ざしは鰯ですからね。やっぱり焼く時の煙や匂いを鬼が嫌うと言われているし、でも、目ざしだけだと子どもたち鰯が苦手になってしまうから、ちゃんと違うお料理も用意したわよ。鰯の竜田揚げでしょ?新鮮だったからお刺身を恵方巻きに入れてもいいし。他にも体の中を綺麗にする蒟蒻料理に、お野菜たっぷりけんちん汁、それにお蕎麦に、福茶』

『何だか体の中から浄化されそうな献立じゃの』
『だよな。きっとそうなんだぜ』

『くすくす。その通りよ。さ!柊鰯これだけあれば大丈夫かしら?』

〖うん。十分だと思うよ。騎士達に手分けして飾ってきてもらうよ〗ぬっ

『『主人様っ』』
『あらあらまあまあ』
主神様たちも今になってやってきたのね

〖そうね。これだけあれば天界の家中にも配れるんじゃない?〗
〖ほんとですね。騎士さんたちの宿舎にもちゃんと飾って下さいね〗

『『『『『畏まりました』』』』』
『天界の大門はもちろん全ての門にも飾ってまいります』

〖うん。お願いね~〗

『『『『『はっ!』』』』』

たちまち天界中に柊鰯が···

〖しばらく外が匂いそうね〗ふふ
〖仕方ありませんわ〗ふふ

〖それじゃあ、神獣のちびちゃん達や妖精たちも呼ぼうか~〗

『あら、いいわね。あ、でも匂いは大丈夫かしら?』

〖〖〖あ〗〗〗


『『鬼は~外~』』ぱしぱしっ
『『『『『鬼は~外~』』』』』ばしゃばしゃ

〖まだまだ~わははははっ〗
『いててっバカ武神!少しはやられたフリしろよ!』
〖あ、そうか、イテテテやだがまだまだあ!〗
『だめだコイツ···』

『『福は~内~』』ぱしゃぱしゃっ
『『『『『福は~内~』』』』』ばしばしっ

〖イテテテっやられた~だがまだまだ!〗
『いい加減にやられろよ!』ばしっ

『『きゃははっ鬼は外~』』ぱしぱしっ
『『『『『わ~いっ福は内~』』』』』ばしっばしっ

漫才しながら鬼役をやってくれている武神様と龍様に子どもたちは笑顔で豆をぶつけている。

『『きゅんっ(くちゃっ)』』
『『『でもおいしいよ~』』』
ちびっこ神獣たちはお鼻に自分たちのお鼻の絵がついたマスクをしたままご飯を食べている。
『『『『ふにゅ~』』』』
妖精さんたちはがんばって風を起こしてなるべく匂わないようにがんばってくれてます。

『良かったわ。楽しんでもらえてるみたいで』
『レイのおかげじゃ』
〖私の作ったお面もお忘れなく〗
『あらあらまあまあ、もちろんですよ』
『そんでもってやっぱりだな。な?主神様』
〖だね~なんか天界の聖なる力がパワーアップしてるみたいだよ~〗
〖そうね。私たちの体の中も浄化されてるみたいな?〗
〖ですね。心なしかおちびちゃん達光ってますし〗
『あ、あはは?』
なんでかしら?

〖まあ、いいんじゃないかな?ついでにヤツを弱らせてくれたらもっといいんだけど〗

〖〖···出来るんじゃない(ですか)?〗〗

〖主神、試しにやってみたらどうです?〗
『そうじゃの。子どもたちより効果が出るやもしれぬぞ?何しろ神が自ら邪を払う訳じゃからの』
〖う~ん、だったらみんなでやったら?転移して門という門を回ろう。それこそ裏の裏まで〗

と、言うわけで

バンッ
〖〖〖鬼は外鬼は外!〗〗〗ばしばしっ
〖〖〖福は内福は内!〗〗〗ばしばしっ
バンっ
〖次っ〗しゅんっ

バンッ
〖〖〖鬼は外鬼は外!〗〗〗べしべしっ
〖〖〖福は内福は内!〗〗〗べしべしっ
バンッ
〖次っ〗しゅんっ
次々と転移しもの凄い速さで豆まきをしていく神様集団!なんかシュールだけど···


【イテッイテテテっやめろっ目が目が潰れる!】
暗闇の中、悶えるヤツが···
【クソッ何が起きているのだ!戻りかけていた力も霧散していくっ···見えかけていた天界への道も見えないではないかっ】
バシバシっ
【イテっく、くそ、目が目が~】

確実に天界の脅威が少し遠のいたようだ···


☆。.:*・゜☆。.:*・゜
お読みいただきありがとうございます。ちょっと遅刻ですが、お許し下さい。

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