第二十一話 「血まみれ救世主」
「お
ビルサと
しゃらくとウンケイが
「おいおいおいおい。さっさとしねぇと、この女死んじまうぜ?」
コルゾがニヤニヤと笑いながら、お渋の髪を引っ張る。お渋の表情は恐怖に
「・・・侍ってのは、相変わらずクソみてぇな事しやがる」
そう言うと、ウンケイが
「・・・ッ!!!」
一方のしゃらくは、拳を固く握りしめ、顔を
「おい。ここは言う事聞くしかねぇ。この間合いじゃ、あの娘は救えねぇぞ」
ギリッ。しゃらくが歯を食いしばる。すると、しゃらくの体中の赤い模様がフッと消え、体も小さくなり元の姿に戻る。その瞬間、二人の後ろに巨大な影が迫る。ギュイィィィン!!! 見ると、ビルサが両腕を回転させニヤリと笑っている。
「元々二対一だ。
「クソったれェ!」
ズババババァァァ!!! ビルサが高速回転する両手で、無抵抗の二人を交互に殴り続ける。二人は丸腰ながら防御するも、
「しゃらくさんっ!!」
お渋がコルゾの腕を振り解こうと暴れる。
「おい大人しくしてろ!」
バシィィ!! コルゾがお渋の髪を引っ張り、頬を平手打ちする。叩かれたお渋の口から血が垂れる。
「おいおい可哀そうに。女を叩くもんじゃないぞ」
ビルサがニヤニヤと笑みを浮かべながら、お渋とコルゾに近づく。そしてお渋の顔を自分に向けさせ、頬を手で撫でる。お渋は目を合わせようとず、目だけはそっぽを向いている。
「グフフフ。血が垂れておるではないか。可哀そうに。すまなかったな。よし、俺が
ビルサがお渋の髪を撫でる。するとお渋が、コルゾの腕の中ビルサに飛びかからんばかりに暴れる。しかし、コルゾに抑え込まれ、ビルサの方へ顔を向けさせられる。お渋はそれでも、ビルサをキッと睨みつける。
「おぉ。気の強い娘だ。この俺を睨みつけるとは。グフフフ。気に入ったぞ」
ビルサは変わらずニヤニヤと笑っている。
「・・・私の母はお前に
すると、ビルサがわずかに眉を
「お前の母? はてな。どの女のことだ?」
「
ビルサとコルゾは、お渋を前に大笑いする。お渋は再び暴れようとするも、コルゾに抑えつけられ動けず、目一杯に涙を浮かべる。
「ん?」
気配を感じてビルサが上を向くと、ウンケイが空高く飛び上がっている。
「何ぃ!?」
「“
バゴォォォォォン!!!! ウンケイが勢いよく
「うわぁぁぁ!!!」
ビルサは、その巨体に見合わず上手く着地するが、コルゾは地面に叩きつけられる。
「・・・痛ぇ。・・・女はどこだ!?」
見ると、抑えていた
「ガルルル! お渋ちゃん無事か?」
「・・・うん。しゃらくさんこそ大丈夫?」
牙や爪が伸び体が大きくなったしゃらくが、お渋を抱えてニコリと笑う。しかし、しゃらくは赤いん模様が目立たないほど血だらけになっている。お渋は袖で涙を拭う。
「・・・グフフフ。しぶとい奴らだ」
ビルサは既に立ち上がり、ニヤリと笑っている。
「おお、やるじゃねぇか。さすがは
ウンケイがニヤリと笑う。しかしウンケイも、しゃらくと同様に血だらけになっている。
「・・・ビルサ様の技を食らっといて、まともに動けるとは」
コルゾが立ち上がり、刀を抜く。一方しゃらくは、お渋を城の陰に避難させている。
「お渋ちゃんはここに隠れててくれ」
しゃらくがニコリと笑い、ウンケイの元へ行こうとする。
「・・・しゃらくさん。ありがとう」
お渋が、しゃらくの背中に
「そんなの終わってからだ。あいつらぶっ飛ばして、お渋ちゃんに良いとこ見せるぜ」
しゃらくが前を向き直り、掛けて行く。広場中央、薙刀を構えたウンケイに、刀と
「おい、お前どっちやる?」
「決まってんだろ。大将戦だ」
「ふん。やれんのか?」
「ガルルル! あったりめェだァ!」
しゃらくとウンケイは背中合わせのまま回り、しゃらくがビルサと向き合い、ウンケイがコルゾと向かい合う。
「グフフ。ほう、お前が大将なのか?」
ギュイィィン!! ビルサがニヤニヤと笑いながら、両腕を回転させる。
「お渋ちゃんを泣かせやがって、てめェらは許さねェ!」
「グフフフ。許さねぇのは貴様らだ」
しゃらくとビルサが睨み合う。一方背中合わせのウンケイが、コルゾをギロリと睨む。
「てめぇはビルサの手下だな?」
コルゾの方はニヤニヤと笑っている。
「そうだ。ビルサ軍軍隊長 百人斬りのコルゾ様とは俺の事だぜ。てめぇも中々やるようだが、ここで終いだ。相棒の方も相手が悪かったなぁ」
「百人斬り? わははは。気が合いそうだな。俺はウンケイ。あんなバカ野郎の心配より、てめぇの心配しな」
ウンケイが薙刀を構え、ニヤリと笑う。
「おいウンケイ。おれ、そいつ一回ぶっ飛ばしてるからな」
しゃらくが背中越しにニヤリと笑う。
「そうか。じゃあ
「まァお前がやられても、おれがまたぶっ飛ばしてあげるからよ。安心しな」
「わはは。お前こそ、代わってあげてもいいんだぜ」
ウンケイも背中越しにニヤリと笑う。正面のコルゾは顔を真っ赤にしている。
「図に乗るなよ! あれはたまたま油断しただけだ! 本来貴様らごときにやられる訳ねぇ!」
コルゾが
「なるほど。一人にここまで攻められといて、油断してたってか」
「・・・っ!!」
ガギィィ!! ガギィィン!! しゃらくと対峙するビルサが、高速回転する両腕をぶつけ、火花を散らす。すると、しゃらくがバッと両腕を広げて構える。
「ガルルル!!」
バシュッ!! 力強く地面を蹴り、宙高くビルサに飛びかかる。
「グフハハハ! 学習せぬ奴! 何度やっても同じだ!」
ビルサが地上で構える。どんどんと距離が縮まっていく。すると、しゃらくが右手拳を握る。ビルサが目を見開く。
「“
ガァァァンッ!!! しゃらくが右拳でビルサを殴る。ビルサは
「・・・」
ビルサが、ギロリとしゃらくを睨みつける。
「ってェ~! やっぱ、上から殴んのは痛ェな」
しゃらくの拳が血だらけになっている。
「この俺に膝を着かせるとは、大したもんだ。褒めてやる」
ビルサがゆっくり立ち上がり、再び腕を回転させ、
「あァ、ありがとよ!」
しゃらくも構える。両大将が、火花を散らさんばかりに睨み合う。
完