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第3章の第83話 どうしようもない問題10



【領収書が見つかり、事件解決年に当たる6月ぐらい? ある恥ずかしい書店での出来事】
カラカラ~ン♪
1番最初に店内に入ってきたお客さんは、ヨーシキワーカさんだった。
店番の男の人はいたが、この手の場合は、声をかけることは少ない。
それは相手方の事を思いやって、そうした声をかけにくいからだ。
『……』
ヨーシキワーカ(俺)は、そのまま店内へ進み、黒いノレン(間仕切り)の前で立ち止まる。
左右には、認証システムがあり、個人を判別する装置だ。
店内から、盗みを行った場合は、即、警察が出動する流れになっている。
個人を判別していく、名前、誕生日、年齢、身長、体重、血液型等々etc……。
入所許可が下りる、赤色のランプが緑色のランプに変化し点灯する。
ピコン
その間仕切りには、あるマークがあった。
Adults Only(アダルト オンリー)……縮めてAO。
日本では、これをRating18(レーディング18)……縮めてR18。18禁と説く。
ウィーン
と開封される金属の半円形の箱。その隣の篭(かご)の中には、専用の腕輪(ブレスレット)があった。
いずれも厄除け、邪気払いに使わられている輝石だ。
・ラピスラズリ(強運・幸運)。
・オニキス(忍耐力・仕事運)。
・マラカイト(健康・洞察力)。
・スモーキークォーツ(勝負運・精神疲労の回復)。
・ヒスイ(健康・長寿)
・黒水晶のモリオン(浄化・開運)
・ソーダライト(罪悪感からの解放)
その中から、1つ手に取ろうとしていたヨーシキワーカだったが……。
『待て、相棒!』
『!』
『お前は1月生まれなんだろ?』
『……』
『……俺は、こっちのオニキスを強く勧める!』
『……』
止まっていた俺の手。俺はその右手側にあるオニキスを見て、止めていたその手を動かし、それを手に取る。
オレンジ色の輝石だった。
(今、相棒が手に取ったのは、サードオニキスだ。
その意味は、他人からの悪意や嫉妬から身を護りたい。
災いから身を護る御護り。
悪い状況から抜け出したい……などがある。
また、強力な保護力があるとされ、お守りとして身に着けると平和が保たれる……)
それを、相棒が右手首にはめる。
『……』
意を決め、その顔を上げて、歩み出す相棒。
『……』
その間仕切りをくぐっていくのだった――


【――ヨーシキワーカさんは、そうした出来事を自身の小説にこう記したわ】
【その相棒(パートナー)アントラローダイトは、こう語る】
【囮作戦にともなう犠牲と傷の道だった……】
【だから、本人にはそうした出来事を何も伝えておらず、そうしたチャンスを作る必要があった……!』
【そう、最良の囮だった――】

(――少し恥ずかしいが……、今日で決着だ……!)
左手には、腕時計型携帯端末(フューチャーウォッチ)。
右手には、この店舗内で使わられる腕輪(ブレスレット)サードオニキス。
(許せ……相棒……!)
俺は信じるしかない。
無力な自分を恥じる。
だが、勝つためには、こうした出来事が必要なんだ。
(……あいつ等は、この端末の位置情報を知っている……!! なら、こーゆう場所が打ってつけなんだろ……!? さあ、1人になったぞ……!)
『……』
そう、心の中で啖呵を切るアントラローダイト。
そして、何も知らないで、歩んでいくヨーシキワーカ。

【――最良の囮作戦だったそうよ!?】
【ヨーシキワーカさんには、そうした出来事が起こる事を、何も知らされていなかった……!!】
【だから、勝てたのよ!! 周りのそうした人達が協力してくれたからッ!!】
【……どーゆう事?】
【ちゃんと説明して?】
【ええ、人1人では、何もできないという事よ……! ヨーシキワーカさんは、それを身をもって知ったわ!】
【そして、この時点でもう、ヨーシキワーカさんの勝ちは揺るぎなかった……!】
【だって、その年の3月の時点で、その領収書が見つかっていたからね!】
【3、3月……!?】
【ええ、だから相手は、ヨーシキワーカさんとのそうした決着を、何らかの形で、つける必要があった……!!】
【……でもね……! ただし! この時! もう既に! ヨーシキワーカさんは戦う気もなかったの……】
【そりゃあそうよね!? 無職の就職難の状態が2、3年続き、そうして争う気力も削がれていたから……】
【……】
【何も証拠がなかったとするから、そもそもそんな事はなかったとするから、こんな悲しい悲劇を招いてしまった……ッ!!】
【相手も、そうした取り間違いの事実もあり】
【とんでもないぐらい、取り返しもつかないぐらい、ヨーシキワーカさんの人生設計を狂わせ、そうした貴重な時間を奪ってしまったの……!!】
【失った時間は、もう戻らないわ……】
【……】
【でもね……心の中に宿る炎、自分を信じる信念だけは、折れてなかった……くすぶっていた……!!】
【このどうしようもない問題の決着は、そう、誰かが犠牲にならないと、こーゆう争いごとが終わらないからよ……!】
【自分自身にかかる侮辱の声よりも、そうした出来事があった事を記し、多くの方に知ってもらう事で】
【『時には、こーゆう勝ち方もあるんだよ……』って事を、周りに報せたかったからよ!】
【固定観念や、先入観に囚われずにね……!】
【勝つのでも、負けるのでもなく、引き分けに持ち込みつつ、自分の無罪を勝ち取る……!!】
【なおかつ、そうした今までの被害者さん達の、自由の解放を謳う】
【これ以上にいい話はないからね!】
【だから! 関わった誰かさんに、華と手柄を持たせ、無罪を実証する保証人になってもらう】
【そうした人に事情徴収を取り、そうした人達にも、華と手柄を与え、立証人になってもらう】
【そう――ミシマさんもヨシュディアエさんたちも、もうヨーシキワーカさんが、この時点で、無罪だとわかっていたからこそ】
【この話に乗っていた……のかもしれないわね……】
【それは心の迷い、渇望、罪悪感……】
【それは期待であり希望……!!】
【自由の解放、自身の無罪の証明……に連ねる】
【そして、この案件に関わった犯人達は、自分たちの罪の重さを認め、周りのそうした人達に裁いてほしかったからかも……――】

ミシマさん宅。
そのモニター画面には、赤い印が示されていた。
その画面を見るのは、ミシマさんと耳にピアスをつけた高校生ぐらいの青年。
『……』
『……』

電気工事会社の社用車。
それに乗っているのは、怪しい男性2人。
『……』
『……』

そして……モニター画面を監視している人物アヤ。
それは怒りと嘆きの仮面の人物だった。
それはハッキングの技術を用いて、店舗内の監視カメラに横から覗き込んでいた……とするものだった。
『……』

【――ブレスレットを、左右の腕のどちらかに付ける意味は知ってる?】
【知らな~い!】
そう、答えてきたのはアユミちゃんだったわ。
【……】
ミノルさん、スバル君は、男性とまだ子供なので、除外……。
アヤネさんはというと。
【……! 一応は、心得てるけど?】
【【【えっ!?】】】
驚いたのは、夫のミノルさん、アユミちゃん、スバル君の3人だったわ。
さすがねアヤネさん。
あたしは、アヤネさんの意見を促すために、手を向けて促したの。
【右手は積極性や行動力! 左手はそうした彼女との付き合いもあるから、感性や感受性を現すわね!
……左手の薬指に結婚指輪ハメるのはそーゆう意味よ?】
【【な……なるほど……】】
【さすがアヤネさん!! 物知り~~!!】
【フッ……】
感心の思いの男2人に、歓声の声を上げるアユミちゃん。アヤネさんは笑みを浮かべるのだった。
【かってのアントラローダイトの言葉があってね……】
【!?】
【パワーストーンを左右の腕のどちらかにつける意味は、
右手は、さっきアヤネさんが言ったように、積極性や行動力といった力を象徴し、高い目標を達成したい時に、大きなサポートをしてくれるからよ」
また、『挑戦する』『勝ちに行く』という精神的な意味合いの時は、右手が向いているからよ!】
【【【【へぇ~~そうなんだぁ~~……】】】】】
【――じゃあ、左手はクリスティさん?】
それはシャルロットさんからの質問だったわ。
「左腕の場合は、右脳に繋がっている為に、潜在能力を高めたい時や、疲れた時のヒーリング効果を現わし、全体運を上げたい時なんかにはいいわね。
それは、心臓の位置に近いからよ!」
「『素晴らしいですね』ザッツグレイド(アフト エイネイ イペロチョ)!】
英語では、Thats Great(ザッツグレイト)。
プロトニアが使う用語では、Afto Einai Yperocho(アフト エイネイ イペロチョ)というらしい。
そこには、呆けた感じの皆さんがいたわ。
ポカ~~ン……フフッ……。
あたしは、一瞬呆けてしまったけど、シャルロットさんが褒めてくれているだなぁと察し、微笑みを浮かべるのだった。
【まぁ、単にアントラローダイトが同じ手に付けられるのが、嫌だったらしいけどね……】
【【【【【……】】】】】
【それを言ってしまえば、終わりじゃな……】
【ええ……】
そう口に零す、アンドロメダ王女様、デネボラさんがいたのだった。


★彡
【店舗に騒ぎを持ち込んではいけない。それは相手方の迷惑を被るからだ】
――それから、数分から数10分後。
『――失礼するぞ!』
店内に怪しい男が入ってきた。
応対に当たるのは、この店の店番の男性だ。
『……何ですかいったい!?』
『……ここでちょっとした騒ぎが起こるかもしれないが、まぁ、大目に見てやってくれ!』
『まさかあなた達ですか!? あの騒ぎの原因を持ち込んできているのは!?
困りますよ!! 自分が店番をやっている時に、そんな騒ぎを持ち込まれては、もうここにいられなくなって、ここから追い出されてしまいます!!』
『安心しろ!? そんな大事にはならんよう、こっちもそれなりに務める!!』
怪しい男の人は、店員にそう言い、とある男性を探す。
右、左、前、斜めなどをみて、店舗内をくまなくよく探す。どこにいるんだあいつは?
『そんな証拠がどこにあるんですかぁ!? 困りますよぉホントにィ……!!
あっ! もしかしてあなた達ですか!? こうやって突然きて、店舗内で騒ぎの原因を持ち込んできたのは……ッ!?』
『チッ、そこまで噂になっていたか……!?』
『やっぱり……! じゃあここ最近になって、『モスバーガー』でもそうした騒ぎになる原因を持ち込もうとして……、確か出禁になりましたよね!?』
『ここまで噂が届いていたのか!? ここから結構距離が離れてるだろう!? 何でだァ!?』
『自分たちの間にもそうした、女性繋がりがいて、向こうの店舗から女の人達を通して、あなた達の噂が届いていたんですよ!! もう帰ってください!!』
『オイオイ……待て待て!!』
『いいえ、騒ぎの原因を持ち込まれるようなことを、許しては、自分たちがここにいられなくなりますからね!!』
『……ッ……あいつは……!?』

【――そうして、店番の人が、その怪しい男の人……電気屋の一人と思われる人を、ここから追い出そうとしたの】
立場が危うくなった怪しい男性の人。
その人を睨みつけて、ここから追い出そうとする店番の人。
その映像が、監視カメラにバッチリと納められていた。
【そりゃあそうよね……!? もうここまでやっていて、事件性がほとんど明るみになり出していたから……!】
【こうなったのも全部、原因はあいつが起点になっているから――】

『聞いてるんですかァ!? こっちまで届いてるんですよ!? あなた達が金儲けのために、人を『自殺まで追い込んだ』って事は……ッ!!』
『ッ!! まさかここまでそれが届いていたとはッ……!? それは誰からだ!?』
『今、あの人を受け持っている職業安定所の女の人ですよ! その人達の情報を辿っていけば、その女の人に行き当たります!!』
『そこまでバレていたのか!?』
『はいッ!!』

【――正しくは少し違うそうよ? その女性は2人いてね】
【1人は以前の担当者さんの『ヨシュディアエさん』!』
【この時点での、もう1人の担当者さんは『ファウンフォレストさん』って言うのよ!】
【2人いる訳か……】
【ええ!】
【これは取り次ぎ上の間違いがどこかで起きてそうね……? う~ん……】
ミノルさん、アヤネさんと、取り次ぎ上の間違いを提示したわ。
まぁ、当然かな?
クリスティ(あたし)はこうも続けるの――


☆彡
過去から現在に戻り、クリスティさんはこう語る。
「――その事件解決年、だいたい2月ぐらいかな!?
ヨーシキワーカさんから、一度だけ、その後、ヨシュディアエさんに出会い、……こう話したそうよ?」
『――ある商業施設での話を覚えてますか?』
『ええ』
確か、前に聞いた事があるわね。
目の前にいるこの子は、こう続けて、言葉をまくしたててきたわ。
『……そのある商業施設で、騒ぎが起きた事があって……ッ! アヤがその親友を追い詰めて、その人を交通事故まで追い込んだんだ!!』
『……ッ。死んだの!?』
『ああっもう戻らないッどんなにやったってッ!! ……人がこれで死んでんだよ!!』
『……まさか、そんな……!?』
『フンッ!!』
『あっ! 待ってまだ話がッ!!』

その回想録を辿り、そうした当時の出来事を語ってくれたクリスティさんは。
「――と!」
「……どーゆう事? きちんと説明してくれるクリスティさん?」
そう言ってきたのは、恵アヤネさんだったわ。
だから、あたしはこう答えるの。
「ええ……! ……これはヨーシキワーカさん伝いに、アヤさんを通して聞いた話なんだけど……聞いてくれる!?」
「……」
その話を聞く僕達、あたし達。大事な話だ。
「――話の発端は、時系列で言えばだいたい、5年ぐらい前――
えーと……ミシマさんに関わった年に、そーゆう事があって、職業安定所の人に、話を持ち込んだ事があるらしいわ!」
「って事は、今からずいぶん昔ね!?」
「……そうね!」
と了承の意を返すクリスティさん。続けてこうも語るのだった。
「あくまで、ミシマさんに関わった年であり、その時に、5年ぐらい前といった覚えがある。
ゲームを通して、その当時のアヤさんと出会った事が始まりなの……。
再開かな? そうしたゲーム仲間の!」
「ゲーム!?」
「ええ……あの2人は、ゲーム仲間だったらしいわ。あくまで当時の話」
あたしは間を置き。続けてこう答えるのだった。
「………………。精神的に何やら思いつめていたそうよ? ヨーシキワーカさんが出会ったのは、どうやら死んだ後らしいわ……」
「うわぁ……いきなり重い(ヘビー)な話だぁ……」
「うん……」
スバル君、アユミちゃんと気を重くしたわ……。
「……ごめんね、2人とも……」
「……」
クリスティさんは、そんな僕達、あたし達に対し、謝ってくれた。
そして、こうも続けるんだった。
「――そう、人が一人亡くなっているのよ……。
実はそうした人は、他にもいて、このどうしようもない問題の危険性を知り、小説という形で遺したわけ……。
遺した人は、もちろん、ヨーシキワーカさんよ! それしか手がなかったからね……」
「……」
「……でもね? その人も、周りのそうした人達から怨まられていて……。
いつかは後ろから、刺殺されるかも……って危惧していたそうよ……?
人知れず、暗殺の類は拭いきれないからね……!?
もしくは、別の線で社会的制裁を後で被るかして……!?」
そう語ってくれたクリスティさん。
とここでサファイアリーさんが、こう注意の言葉を促す。
「……クリスティ、話が段々と脱線しかけているわよ……?」
「とと!?」
あたしは三女サファイアリーに注意されて、慌てて、その話を遮るの。
そこには、ジト目の彼女の姿があったわ。
そして、こう話を戻すの。
「――そのとある商業施設での話よ……。そこで、とある騒ぎが起こったそうよ……――」


★彡
【闇子、運び屋と化したアヤ『達』が、その名も知らない友人から、情報を聞き出し、結局はその人を追い込んでしまう】
クリスティさんのナレーションは、こうも続いていた。
【――それがどうしようもない問題……! 犯人当てゲーム! とんでもない問題! 等々etc、云われているものね……】
【……】
【2人の親しい友人がいたの……その1人がアヤさんで、もう1人が……】
『――あれはお前か!? 何で周りにバラすとや!!』
『俺は向こうから言われ、お前にちょっと聞いただけだ』
『『そのちょっと』が、『こんな事になってる』んだろうがッ!?』
『!?』
【――残念ながら、その人の名前はさすがに覚えてないわ……】
【その小説を書いた方がヨーシキワーカさんで、そのアヤさんって人に、その人の名前を聞いていないからね……】
【ゲーム中に話しかけられた事もあって、聞きそびれていたの……】
【……そのとある商業施設で、騒ぎが起きちゃったの……――】
『――もういいっ!! もうお前の顔も見たくなかッ!!』
『ハッ!?』
その時だった。周りのそうしたやじ馬が騒ぎ出したのはッ。
『何々!?』
『何だなんだ!?』
『お前のせいでもあるんだからな!!?』
『ッ』
そいつは近くにあったものを掴んで、その当時のアヤさんの方に投げ込んできた。それは、その店の商品だった。
ガシャンッ
『!?』
その商品が、アヤさんの体に当たり、床に落ちて壊れた。
そして、その商品を投げつけた親友は。
フンッ
と鼻を鳴らし、赤い顔をしたあいつは、そのまま走り出していったんだ。
『……』
そして、その様子を見ていた野次馬の1人が、そのアヤさんに優しい声をかけてきて。
『だ、大丈夫あなた?』
『は、はい……』
そこから起こるは、ちょっとした喧噪だった。
ザワザワ
『誰だあいつは……!?』
『何だってこんな事ができるんだ……!?』
『ねえ、ママ、あれなーに!?』
『シッ! 顔を合わせちゃいけません』
とそこへ、また別の誰かが優しく声をかけてきて。
『君大丈夫かい!?』
『はい』
『にしても何てやつなんだ!? 今度見掛けたら、とっちめてやる!!』
(……あいつのあんな顔、見たのは初めてだ……。あんなに気を追い詰めて……)
そこには、やり過ぎたかもしれないと思い、意気消沈したアヤがいたのだった。
床上には、壊れた商品があったのだった。
【――それはまさしく絶交そのもの。壊れた商品は、絶縁状のものに見えたそうよ……!?――】


☆彡
【アヤの動機】
過去から現在に戻り、クリスティさんはこう語る
「――それが原因か、2人の中が険悪的になるまで悪くなって、そのまま別れたんだって……」
「……」
「そして……――」
キキィ、ドカッ、バタリ……ピーポピーポ
「――その後、アヤさんに聞いたところ、その親友は交通事故に会い、死亡となったそうよ……」
「……」
「その人を追い詰め過ぎちゃったのよ……ッ!
そのご友人は、アヤさんとは顔見知りの人……。
事件の折、困っていて、相談に乗ってくれた人の1人が、アヤさんだったの……。
……でもね、集団の陰から隠れて、そうして頼ってきた人に、裏切られてしまったことが原因で……、
その精神的ショックから抜け出せず、今回のような悲劇のケース、を辿ったとみて間違いないわ……。
「……」
「アヤさんも、そうした経緯があり、思い詰めてて、どうしてあんな事になったのか? その時はわからなかったそうよ……?
周りにはね、そうした人達がいて、喜んでいて、自分もその一味の一員だった……。
「……」
「その人の弱みになりそうなものを聞き出し、それを知らずのうちに運んでしまっていた……。
周りにはそうした人の噂話が立っていて、よくはわからなかったから……。
だから、それが返って、逆効果になってしまったの……。
……知らないからよ……!?
そうした人の心理的外傷までは、その人達にはわからないからね……?
逆の立場になって考える事は、その人達にはできないからよ……?
自分の身に、そうした事がなかったから……。
いつも、勝っていたから……!
自分は特別優秀で、その能力があり、何したって許されるからよ?」
「………………」
「後悔と苦悩の怨嗟……。その親しき人を、自殺まで追い込んでしまったのは……、
もしかしたら、自分なのかもしれない……!?
何でこんな事になってしまったのか……よくわからない……?!
あの時、いったいどんな取り次ぎがあって、どうすれば良かったのか、わからない……」
「……」
「わからない……ッッ。
周りのそうした人達がいて、喜んでいたから……。
恐くなった……人と関わるのが……一定の距離を置こう。
大丈夫、こんな事は、すぐに忘れられる。
だって、そうした事故死は、揉み消しているから大丈夫……大丈夫な……ハズ……!?
『……ッッ……ッッ』
「気を追い詰めたアヤさんは、一時期、人と関わるのが恐くなったそうよ……? こんな話、誰にも言えないからね……?」
「……」
「……そんな折、偶然にも、同じゲーム仲間のヨーシキワーカさんに出会った。
その人は、ホントに何も気に留めてなくて、知らなかったから……!
ホントにあの人は、ほとんどマイペースで、どうでもいい事だから、フツーに接してきたそうよ?」
「……」
「心の内を、ちょっとどこかで打ち明けていた……。知らない人と知っている人達とでは、そうした差異があり、救われもするから……!」
『ハァ……』
『……?』
「もう、そこには呆れ顔のアヤさんがいて、何でこんな余計な心配をしないといけないのかと……逆にバカに思えてきたそうだからね?
その話をしてくれたアヤさんが……ねぇ……」
(御兄さん、もう恥ずかしい話を……やめて……ッッ!!)
もう死にたいぐらい僕、恥ずかしい……ッッ。
ヨーシキワーカは、その当時、何も知らないから、ホントに鈍感だった……。
ホントにごめんなさい……。
「事の経緯、いきさつは、そのどうしようもない問題にあり。
そのアヤさんですら、ほとんど何も知らず、『ちょっとした情報』の受け渡しをしていたらしいわ……。
その『ちょっとした情報のやり取り』が最大のポイントでね!
……例えば、イリヤマ達を通して、闇子の運び人のアヤさんが、そのした事をちょっとだけ聞いて、
その後、当事者本人に、そうした言葉を投げかけるの。
ここで意に勝った話になり、その人達側の話を信じる事になる、そうして思い込ませるの。
後は、口達者な人達がいて、そのちょっとしただけの話が、ウソかホントか、『誠の話』になり。
誰が聞いても、そうなんだと先入観を持って思い込むようになる……!!
誤った情報のやり取りがあって、そうした犯人達側の意に勝った都合にし易く、騙されやすい……。
どこかで間違った情報のやり取りがあって、鵜呑みに騙されていたんでしょうね!?
……それが『調整調整ツギハギ』よ? わかる?
向こうの意に勝った動きになるように、そうして、話を結んできたんでしょうね……?
どこかに、話のウマい奴がいるって事よ? それは口達者なミシマさん辺りみたいな人が、そうよね……!?」
「……」
「そうした誤った情報を運んでしまったの……。
……曰く、ヨーシキワーカさんにも、そうした身に覚えがあり、うちの弟が、ちょっとした情報を持ってきては、
自分にそうした言葉をちょっちだけ投げかけ、
『あぁ、そっか……!』と頷いていた。勝手に納得していた。
だから……! 変な話になったそうよ!?
父(ダダ)も母(マム)も、なんかおかしいなぁ……って思ったそうだからね!?」
「………………」
ゴクリ……
とその恐ろしい話を聞いていて、生唾を飲み込む僕達、あたし達、私達。
「――そのアヤさんの『復讐の動機』としては充分でしょう!?
それが仕返し目的……!
誰に対する者かはわからないけど……こうした出来事はいずれ、呼び水を起こすわ……!
同じ組織の……そうした連中の内通者さんだしね……」
「……」
「『亡き友への想い、その心情が見え隠れしていた……』
『アヤが敵か味方かはわからない……』
『転じれば、それはどこかで見ているかもしれないからだ』
『アヤがあの時、何を吹き込まれたかは、私ですら、与り知れないところだからだ』
……かのヨーシキワーカさんの言葉よ?」
「――敵なの? 味方なの?」
「!」
その意見を投じたのは、アユミちゃんだったわ。
「さあねぇ……よくはわかんない奴らしいわよ?」
「……」
「その時は、ヨーシキワーカさんを手助けする側に回るほどの、何かしら、そうした強い想い、事情があったんでしょうね……?」
「……」
(((((謎だ)))))

ナレーションで語るは、ヨーシキワーカ。
【――だが、これだけはわかる。それがアヤが手助け側に回ってくれた、動機だと思う】
【表立った行動は、あいつはしない。そーゆう奴だからだ】
【ミシマさんに関わった年】
【俺は、そうした話をヨシュディアエさんに話したのを覚えている。紙切れに文字を書いて渡したのも覚えてる】
【それから明くる日、どうしようもない問題の偽電話詐欺が起こり、その職員間の間で、人の噂話が立ち。そして――】
【ファウンフォレストさんが、転勤異動になってきた年】
【その当時から数えて、その職業安定所の女性職員、ファウンフォレストさんが、自分の担当として、そうした人達の噂話を聞いたのかも知れない】
【……だが、俺のところには、そうした話は来ていないので、よくはわからない……】
【私の方にそうした連絡・報告・相談はあったが……返信がないからだ】
【だから、その実、私にも知り得ない事実が多い……】
【――ここに説明補足をすれば、私の名前を語る偽者がいたからだ】
【私の名前を語る偽者がいて、メールを送ったぞ、電話をしたぞ、とする偽の告発があったからだ】
【作り方は、極々簡単だ】
【腕時計型携帯端末(フューチャーウォッチ)があるだろう?】
【その電話アプリを開き、連絡先から】
【誰か知り合いの偽の請負人がいて、その人の名前を変更するのだ】
【連絡先を編集し、保存をすれば】
【あたかも私の偽者を、容易に作成することができる】
【その最悪的なパターンは――『奪われた土地の話』だ】
【家族内の誰かを騙し、闇子に仕立てる】
【偽の請負業者の偽弁護士を立てる】
【そして、共犯者一味の1人】
【後は、不動産会社などを通し、土地や建物を担保に出して、売り買いできる訳だ】
【あたかもその現場は、偽電話詐欺が横行していて、そのご家族内の誰か証人がいて、弁護士を通せば、合法的にその話がまかり通るわけだ】
【また、そうした書類等を用意し、私の実名などを記すなどして、印を押す】
【後は、偽弁護士などを通せば、これも合法的にその話がまかり通るわけだ】
【そうした犯罪事例もあるという話さ】
【……特殊集団詐欺事件だ……! 私は、そうした折、問題事で済ませる類のものに引っかかり、事件に巻き込まれた容疑者と言えるだろう】
【……】
【今後、どんな展開に繋がっていくのか……私ですら不鮮明だ……】
【そんな話、そもそもなかったとするからだ】
【それが相手方、犯人達側の意に勝った話になり易い】
【もしも近くの誰かにそうした人がいて、もしもそーゆう『国家公務員』の方が、呟きを堕とせば……詐欺だ】
【そのした人とは、縁を切りなさい】
【私にとっては、それが『職業訓練校』のイリヤマ先生とライセン先生。そして『職業安定所職員』ヨシヅだった】
【……】
【……だから、これ以上は、こちらとしても、アヤの情報を秘匿とさせていただく】
【そもそもあいつとは、すべての連絡手段を絶っている以上、栓無き話だからだ……フッ】
【信じるかどうかは君たち次第】
【情報ソースは、だいたいこんなところだ】
【これを見聞きした君達の総合見解に、その後の総合判断を委ねる――】

『――クソッ、じゃあもうホントにあの先生!! あそこからホントに出て来れんぞッ!? 何でこんな事になったんだ!?』
『それはあなた達が、あっちの方にいる、その人だと思われる人に連絡を取り次がなかったからですよ!!
今まで取り次いでいたのは、あの人のお父さんなんでしょ!?
何だってそんなヘマをしたんですか!?
こっちまでそうした噂が届いてますよ!! ちょっと聞いてるんですか!?』
よく知っている奴だった。
まさかそんな噂まで、ここまで届いていたとは……ッ
クソッ、何だってこんな事になったんだ!?
こんな事になったのは、全部あいつのせいだ。
あいつが起因している。そもそも根源だ。
俺は、あいつを探した。そして――
『――! ……いた! あんな奥まったところにいたんだな……!』
――ついにその怪しい男性の人に見つかったヨーシキワーカ。
だが、それは背中越しだった。
距離も結構離れていて、そうした声は極めて届きにくい。
【――ついに見つかったヨーシキワーカ!! この後どうなる!?】
(金髪碧眼にするか? それとも黒髪茶眼の子にするか? それともブロンドヘアの紅眼にするか? それとも大穴でもっと海外に伸ばして――!?)
(……)
これには何とも言えない表情のアントラローダイトがいたのだった……。
【続く……!?――】


TO BE CONTINUD……。


☆彡
おまけ
【――それは記される事のないヒストリア。閑話休題(かんわきゅうだい)だった……】
【その当日中の出来事】
語るは先だって話したヨーシキワーカ。
聞くはヨシュディアエ。
『――ある商業施設での話を覚えてますか?』
『ええ』
確か、前に聞いた事があるわね。
目の前にいるこの子は、こう続けて、言葉をまくしたててきたわ。
『……そのある商業施設で、騒ぎが起きた事があって……ッ! アヤがその親友を追い詰めて、その人を交通事故まで追い込んだんだ!!』
『……ッ。死んだの!?』
『ああっもう戻らないッどんなにやったってッ!! ……人がこれで死んでんだよ!!』
『……まさか、そんな……!?』
『フンッ!!』
『あっ! 待ってまだ話がッ!!』


☆彡
【――それから数年後】
【経緯(けいい)と経緯(いきさつ)、事情はどうあれ、起きてしまった悲劇は、取り返しがつかない……】
「……」
人知れず作家活動を続けるヨーシキワーカがいた。
「……」
そして、職業安定所を解雇され、ヨシュディアエはどこかの会社で、ひっそりと働いていた。
「……」
「……」
「……」
イリヤマ先生、ライセン先生、ミシマさんは、服役していた刑務所から、無事、出署でき、
その目の前にいたのは、その刑務所に面会に来てくれたご家族の方々だった。
その胸に秘めたる思いは、実に様々だ。

【――そう、ここはどこかの平衡世界、パラレルワールド1つに過ぎない】
【あそこであーしていれば、こーしていれば、その人生の結末が変わり、実に多様な並行世界が生まれる】
【ここは、無事、父の不遇な死を乗り切り、どうしようもない問題に打ち勝った世界の1つに過ぎない……】
イリヤマ、ライセン、ミシマさんは、その当時の学生さん達を呼び出し、
【一路、向かうは、ヨーシキワーカが以前勤めていた某昔の会社だった――】
その応対に当たるは、上の総務課に務めるメガネをかけた小柄な女性だった。
『まだ懲りてなかったのあんた達!? もういい加減にしてッ!!』
『あとほんのちょっとだけなんですよ!!』
『!?』
『今、ミシマさん達がその裏を伝手を使って、昔ミシマさん達が蓄えていた金を使って、あるものを製作しているんです』
自信満々に言うは、ライセン先生だった。
『あるもの……?』
コクリ
『……はい。『タイムテレビ』です』
『ハァ……バカバカしい……。今の時代にタイムテレビだなんて……』
『失礼ですが……。そのヨーシキワーカさんが辞めた年はいつなんですか?』
『西暦22XX年の4月よ。
……まぁ、あの子は、その1ヶ月間前に有給休暇の結構あって、全部消費しきれなかったけどね……。あんた達はそれを逆手に取ったんでしょ?』
『……日と……!』
ライセンさんは、そのポケットメモ帳に、その日付を記すのだった。
――とそこへ。
コンコン、ガチャ
扉が開かれて、入ってきたのは、
ミシマさんの息子さんを初め、その当時の学生さん達だった。
ここには、イリヤマ先生、ミシマさんの姿はない。おそらくは――
『――今、準備ができたところだ! 後は日付の入力をするだけで、あの日の真実がわかる】
その人達を見た私達は、いや私は、またあの当時の事を思い出し、辛辣の思いだったわ。
『――ハァ……もういい加減にして!』
『!?』
『あんた達の、その問題のせいで、うちの会社が潰れそうになったのよ!!!』
『『『『『……』』』』』
痛いところを衝かれる一同が、そこにいた。
そして、こうも言い放つ。
『うちの会社がどうにか保てたのは、あの子のそのおかげでもあるのよ!? それだけ周りの理解があって、インパクトが大きかったって事よ!!
まぁ……正直……結構、はらわたが煮えくり返る思いなんだけどね……』
『……』
『まさかあんなに、バカ正直にあれに書くだなんて……』
ハァ……
とそこには、眉間に深いしわがあり、大いに頭を悩ませる女性の姿があったそうな……。
ホント、ごめんなさい……。
『風の噂で聞いた話じゃ、またあの子は、今回のような事があって、また就職できずにいるのよ!』
『ま……また……!? 何だってまた!?』
『あんなに凄いのに!?』
『さあね……あんた達みたいな人がいて、どうせ忌み嫌われているんでしょ? あの子は根はいいけど、どこか譲れないものがあるからね……!』
『……』
フンス
と鼻息を荒く立てるメガネをかけた小柄な女性の人が、そこにいたのだった。
とここで、その当時の学生さん達の1人が。
『そう言えば、今あの娘(こ)は……!?』
『結構遠くにいて、この近くじゃ見つけられなかったな……ったく余計な事をしてくれやがって!! あの姉ちゃんなんだぞ!!』
そのヨシュディアエさんを庇おうとするのは、ミシマさんのところの息子さんだった。
『――まぁ、その報せが入って、今この近くまできてるようだ』
その腕を上げ、フューチャーウォッチに目を落としたのは、ミシマさんのところの息子さんだった。
――で、箱洗浄近くの廊下では。
ミシマさんがイリヤマさんに声を投げかけていた。
『もう俺はあいつなんかに関わる気はないぞ!! ここに着たのだって、それをはっきりする為なんだからな!』
『わかってる!! 俺もあいつの小説を見て、その真実を確かめたいんだけなんだ!! これで白黒ハッキリつける……!!』
『フゥ……。どうせ、電話で取り次いでまわっても、あいつの近くには親父さんがいて、あいつはちっとも出てくる気はないからな……!!』
『……』
『せっかくシャバに出たんだ。俺は外の空気を吸いたい。……もうあいつに関わるのは、コオリゴオリだからな……!』
『ハッ! ハハッ』
『んっ!?』
『今、あいつの書いたどこかの星の生物を呟いたな!』
『チッ……!』
俺は機嫌が悪くなり、そっぽを向く。
『……あいつも子供もできて、今や俺はあんたと同じ爺さんだ』
『……俺にはひ孫ができてるがな……』
意外や意外。
『可愛いぞ~ぉ。こんなかわいい子に悪いマネは、もう一生できんって!』
『プッ!』
クククッ
と腹を抱えて笑いをこらえるミシマさんがいたのだった。
それを見た俺は、『チッ』と舌を打ったんだ。
『まぁ、今や俺も心入れ替えて、ファンになっちまったようなもんだからな?』
『チッ、ただのあいつのお膳立てになったまったな……』
フッ……
と笑みを零すミシマさんがいたのだった。
――で、そこへ顔を見せたのは、年老いたヨシュディアエさんを連れたみんなだった。
『……連れてきたぜ』
『『……』』
それを見て、相好を崩すミシマさんとイリヤマがいたのだった。
箱洗いに行き、タイムテレビをつけて、見たものは事の真相の真実だった。


☆彡
その頃、ヨーシキワーカはというと……。
自宅にいて、弟が連れてきてくれたお子さんが見えていた。その近くには弟の奥さんの姿もある。
ヨーシキワーカも結婚していて、子供ができていて、
その子供たちが遊んでいる一幕があったんだ。
とそこへ、急な報せが入ってきて。
『……あなた』
『!』
振り返るヨーシキワーカ。それは妻からの報せだった。
【――それは訃報を告げる報せだった】
【あのタイムテレビを視聴した数人は、真実を見たまでは良かった……】
【だが、後日、死を迎える事になる】
【私は、妻から事情を聴き、当たりをつけようとする】


『――おそらく、4次元世界からの干渉だ』
『4次元?』
『あぁ……。これは昔の話だが……――』
【――それは、ヨシュディアエさんにアヤの事を言い、その当日中の出来事だった】
【トイレ近くの手洗い場に立つ私は、その声を耳にしたのだ】
『――スッキリしたわ……――と!』
『え……!?』
私は、妻にこう話す。
『おそらく……3次元世界に生きる俺たちは、それに干渉できない……!!
同様に、まだそこまで技術が発達していないタイムテレビであっても、昔の世界を見て、それに干渉できない……』
『それは、こちらの様子を見ているだけってこと?』
コクリ
『……』
と頷き得るヨーシキワーカがいた。
『少なくとも、その時は4,5人の声がして、その中にヨシュディアエさんも関わっていた……』
『また、ヨシュディアエさんの話……?』
(あっマズイ……!?)
ガタッ
とその席を立ちあがる妻。
『……フンッ』
そのまま、足を運んでいく。その行先は――
『ちょっとあの子達の様子を見てくるわ……!』
冷たい態度を取る妻がそこにいたのだった。で……。
ハァ~~……
と重い溜息をつかんばかりの私がいた。
【妻は、この話をすると不機嫌になるのだ……彼女の気に障ったのかもしれないな……】
『なんか上手くいかないもんだなぁ……? ……』
そうして困った私は、頭をかくのだった。
私は、当時のそうした出来事、回想録を辿る。
――スッキリしたわ。
『だろっ!?』
と反論を零すヨーシキワーカ。
これには、見えないはずの相手方も。
――おいおい、こいつ、まさか見えているのか!?
――イヤイヤそんなはずは……、……ない筈なんですけど……!?
――でも、まさか……こんな偶然!?
――あのミシマさんが手掛かりを元に、有り金を叩いて、自分たちがここまで来たのに!?
――こいつ、なんか恐いぞ……!?
――なんかこの子を、うちで雇おうとしていたのが、今更になって恐くなってきた……!?
『……んっ!?』
違和感を覚えたヨーシキワーカ(私)は、周囲を探るが誰もいない。どーゆう事だ。
――あの弟さんともようやく仲直りし、ここまでこれたのは、たまたま家に遊びに来る子供達のおかげらしいし……。
――あの事は、決して誰にも言わず、ソッと自分たちの胸の内にしまっておこう』
――今を幸せにな
(まさか……!?)
守護霊の彼女だけが、その奇妙な違和感を捉えた。
そう、グループは2つあって。
1つはタイムテレビを通して視聴している連中。
その斜め後ろに、言い知れないもう1つのグループがあったの。

――寝静まった深夜。
(……どう思う?)
私は、守護霊の彼女に話しかける。
彼女の意見と見解を聞きたかったからだ。
(多分、4次元か、5次元世界を通しての外傷性のものだと思う)
(なるほど……)
(……また歴史を変えたい?)
(……)
(……いいよ、送るから)
(……フッ)
(その代わり、絶対にこれだけは約束して……!)
(……)
それは2人だけのヒミツの誓いだった――


★彡
【未来のスバル達が関わった後、スピリング一行が捕まり、あたしは、国外に逃亡していたわ……!!】
上空を1台の飛行機が飛ぶ――
【いいえ、違う!! 医者になるために、カナダに渡ったの】
その客室館内では。
『ハァ……』
そこには若かりし頃のクリスティがいた。
その手元には、1冊の小説があった。
あたしは、続きが気になり、その小説の見開きを開いて、次のページに目を落とすのだった。
同様にそれは、マイホームいたルビーアラ、サファイアリー、エメラルティにしても同じだった。
その机の上には、1冊の小説があった。
それを手に取ったのは、亡くなる前の母の姿だった。

記すはヨーシキワーカ。
【視えもせず、聴こえもしなかった……。けど、それは拾えたのはほん偶然……】
【……人にはステージがあって、それぞれ8段階に分かれる】
【私が認知できたのは、4のステージまでだ】
【もしかしたら、それ以上のステージがあるのかもしれないが……その詳細はわからない】
【『1のステージ:集中力』】
【1つの事に集中していて、周りの音が遠ざかっていく……】
【ゲームや遊び、仕事の練度が、日々上達していく感じがある】
【私は、これを小学生時代の時に既に心得ている】
【入る、没入するには、それなりの集中力と時間が必要になる】
【『2のステージ:覇気』】
【これは逆に、1つの事に集中していても、周りの音がうるさく聞こえる】
【しかも、ふとした拍子に、相手の方に不快感を与え、発汗と気持ち悪さを与えることも……!?】
【折りしおり、私は年下の子に対し、これを使ってしまったキライがある……】
【無自覚なのだ……済まない事をした】
【だから、私は、その力を抑えることにしたのだ】
クリスティ(あたし)は見ていて、こう呟きを堕とす。
『何よ? 自分が特別だって言いたいわけ? フゥ……』
(まぁ、でも続きだけは見て上げるけどね……)
【これは、少数の極限られた人が持っている『力ではない』……!!】
『どーゆう事?』
【覇気は誰でも扱える! 要は訓練次第なのだ! 君達にも覚えがあるだろう!?】
【同じ仕事をしていて、ある日突然、その限界を振り切って、信じられない成果を残すことが……!!】
【これは、私のそうした職場の人だが、その人は口が上手く、いいように誘導され、まんまとその話を聞いていたキライがある】
【要はそーゆう事だ】
【同じ理屈で、投票を行う選挙カーがあるだろう? その選挙権のカリスマ性を持った支持者がこれに当たり、その拡大版なのだ】
『へぇ~……そうなんだぁ……フ~ン……』
【また、どんな仕事にしてもそうであり、ある日突然、自分の限界を超えて、大きな成果を出す事がある】
【つまり、覇気は人によって、様々な職業形態を及ぼすわけだ】
『フ~ン……なるほどねぇ……。じゃあ、医者を目指すあたしは、それ関係かな……?』
【だが、問題はその先にあった――】
【『3のステージ:魂の響き】
【3のステージは深いところにあり、偶然にもその扉が開いた】
【自分に寄り添ってくれている、守護霊と思しき彼女がいなければ、潜って、帰ってくる事すらできなかった……】
【でもね】
【人には4のステージもあって、3のステージを開いた一瞬、その扉が垣間見えるの】
【私(あたし)でも、生涯の内、一度だけ見えた――】
『……』
そこには、固唾を飲んで、そのページに目を落とす若かりし頃のクリスティの姿があった――


次いで、次に目を落としていたのは、亡くなる前の母の姿だ。
【俺が、ここまでこれたのは、君のおかげだ】
【……】
相好の笑みを崩し、微笑んでくれる守護霊の彼女。
【ありがとう。君の御願いは、何でも聞こう】
【……】
彼女は優しく微笑んでくれた。
【――ヨーシキワーカは、その不幸な未来を変えたのだ】
【それ故に、誰かが不幸になる……】
【だが、言い換えれば、それはどちらかしか救えない未来だった】
【割り切るしかなかった……】
【自身もそれを認めていて、地獄行きを概ね認めていたぐらいだ――】
守護霊の彼女が、ギュッと抱き着いてきて。
私はその娘を、そっ、と抱きしめ返す。
『……』
亡くなる前の母は、そのページから顔を上げ、こう呟きを零す。
『お願い……死ぬ前にクリスティ(あの娘)に会わせて……』
ギュッ
とあたしは、心臓のある左乳房を掴み、せめてもの願いを託す。


次に目を落とすは、エメラルティだった。
周りには、長女ルビーアラ、3女サファイアリーの姿があった。
『あっ、ねぇねぇ、声を見て!』
『『!』』
声を投げかけられたルビーアラ、サファイアリーの2人は、エメラルティの元に集まり、その小説のページに目を落とす。
そして、呟きを零すは、愛読書のエメラルティさん。
【『――あなたの幸せを願います、ヨシュディアエさん』】
【『今までありがとうございました』】
【『末永く、その素敵な人と巡り合った事を、大切に思い』】
【『健やかに、今後、末永く、お幸せに暮らしてください――』】
『……』
『……』
ルビーアラ、サファイアリーの2人は、言葉を無くし、呟いたのは。
『別れたんだ……』
『……』
ルビーアラが、そう呟き。
サファイアリーさんは、感傷の思いを同居する。
エメラルティさんは、こう続ける。
『ええ……。でも、あの人はまだ若かったし、あたしから見ても美人だし、男の人を乗り換えるような、そんな尻軽女の人とは思えないしね!
きっと、今頃、2人で、お幸せに生きているでしょうね!』
『『……』』
相好の笑みを零す、2人がそこにいた。
『うん、そうね!』
『あたしも、女の幸せを得たと思うわ!』
『ねっ!? そう思うでしょ!』
まるでヒマワリのような笑みを零す、3姉妹の姿がそこにあったのだった。

――そして、現在からちょっと進んで、スバルとクリスティさんが一緒の部屋で寝泊まりしている時の話。
『――っていう事があったの』
『なるほど……』
『あの人は、その事件後、すっかり有名になちゃって、ようやく女の幸せを掴んだのよ!』
『……』
そこにはリアクションに乏しいスバル君の様子があったわ。
もう、ヨーシキワーカさんとホントに似たタイプね。
もう、しょうがないなぁ……フフフ。
『肢体(からだ)がいいからね~』
ウッフ~ンv
『……』
そこには視線を落とし、顔を真っ赤にするスバル君がいたわ。
可愛いものね。
『まっ、あたしほどのものじゃないけど、あの人も結構大きいからねぇ~!』
『! 20代の頃は、Nカップはあろうかという超爆乳だったんだって!?』
これにはスバル君も喰いついてきたわ。
やっぱり君も、ヨーシキワーカさんと同じで、これが大好きなオスね。
『そうそう! だいたいそれ目的で、あの娘(こ)と繋がりたい隠れプレイヤーもいたのよ! まっ、まだまだあの名器は棄てたものじゃないからね!』
『めっ……名器……!?』
『そっ!』
『まっ……まぁ、そんな素敵な人と寄り添っていけば、幸せに決まってるか……!?』
『うん!』
クリスティが、スバルが、その人の幸せを願うばかりだった。
そして、その日以降、その2人は、ヨシュディアエと接触する事になる。
【――ヨシュディアエさんの幸せを願う】


☆彡
【それは、件のヨーシキワーカさんのまだ未公開のメモ帳の状態のものをハッキングし、得たものだった】
【それは誰かに宛てられた手紙だった――】
騙された人達の代弁者アヤ。
ありがとう。
お前がいなかったら、負けていた……。
隠れ忍んでの協力に感謝する。
ついては頼みがある。
『人事降格処分、左遷リスト』を燃やしてくれ。
『今までに騙された人達の名簿』も。
理由は騒ぎになっているから。
そして、こちらでも騒ぎになったが、自分とやり取りしていた『すべての暗号を燃やしてくれ』。
そして、いつになるかはわからないが……。
こちらでいいように小説の話を進め、自分だけの新しい暗号を作る。
楽しみにしててくれ。
現在も、誰かに雇われた人が、自分をつけているが、関わらないようにしている。
声をかける勇気がないなら、騒ぎは起こさず、控えてくれ。
あの密会場所には近寄らない。
お前からも、しばらくは声をかけてくるな。
つけられるぞ!?
いい話に持ち込んで、結局は騙されて、さんざんなまでに盗り立てられる危険がある。
そんな惨めな人生は贈らせたくない……。
今までに騙された人達の被害者遺族……。
お前はもう十分苦しんだ。前を向いて、今を生きて欲しい。
被害を受けるのは、犠牲になるのは、俺きりで充分だ。
任せてくれ。じゃあ、また……。
ヨーシキワーカ
『……お前1人に、そんな危険な道は渡らせない……!』
それは、恥ずかしい書店での出来事であり、ハッキングした監視カメラを通して、その件のヨーシキワーカの様子に目を落としていた。

しおり