バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

第48話「謎の占い師」

「皆、燈君なんだけれど、刑事活動のため、しばらく学校には来れないとの事よ」

焔火がスキンヘッド男と戦った翌日の午前8時41分頃。火の玉高等学校1年A組教室内にて担任の早乙女雫は、教卓の前に立ち、教室内にいた生徒達にそう告げた。

「刑事活動!?」

「何それ!?」

早乙女の言葉に驚き、ザワつき出した教室内の生徒達。そしてその中でも1番驚いていたのは、焔火の友人である水咲姫麗水(みずさき れみ)であった。

「それから最後に燈君から皆に伝言よ「皆、また会おうッ!俺の事が嫌いじゃなけりゃあな……マヌケ(づら)!」との事よ、という訳でこれで朝のHRを終わります、皆、今日も良い1日を」

早乙女は話を終わらせると、授業の準備のため教室から出ていった。そしてその後すぐに麗水も教室を出て人気のない場所に移動し、焔火に電話をかけた。

プルルルルルッ……プルルルルッ……プルルルルッ……ピッ

「はいもしもし?」

「もしもし焔火?」

「お~麗水、どうした?」

「早乙女先生から聞いたよ!刑事活動とかいうの始めたんだって!?」

麗水は心配そうな様子で焔火に、そう尋ねた。

「お~」

焔火は麗水に気の抜けた軽い返事を返した。

「何なの刑事活動って!?つーかどんな経緯でそんな事する事になったの!?」

「ん~?いや~……まぁ……色々あってさ……」

「色々って……」

「悪い麗水、俺仕事に戻らなきゃいけないから一旦切るな、んじゃあな」

「あっ!ちょっ……!」

ピッ

焔火は通話を切った。そして麗水は通話の切れたスマホの画面を見ながら心配そうな表情を浮かべていた。


~数時間後・新宿区~

「この女について何か知ってる事は?」

焔火は街を歩いていたリーマン風の男性に翡翠碧(ひすい みどり)の写真を見せながら、そう尋ねた。

「う~ん……済まぬ、知らぬ」

男性は写真を見ながら申し訳なさそうな顔で、そう答えた。

「そっすか、あざっす」

焔火は男性に礼を言った後に他を当たり始めた。ちなみに焔火は今日の朝5時くらいから渋谷区、杉並区、中野区、新宿区の順に移動して翡翠碧についての聞き込みを行っていた。


~数時間後~

「ふ~……めぼしい情報は得られず……か」

焔火は新宿区内にあった公共ベンチに座り、缶コーヒーを片手に空を見上げながら、そう呟いた。そしてその後5分程休憩した後に、再び2時間程聞き込みを始めた。しかし翡翠碧に繋がる情報は何も得られなかった。

「あ~……何も情報ゲットできねぇよ、そろそろ別の区に行こっかな」

非常に悩ましそうな顔を浮かべ、右手で髪をクシャクシャと掻きながら新宿の街中を歩いていた焔火。するとそんな時、横から女性と思わしき何者かが焔火に声を掛ける。

「ちょっとそこのお兄さん」

女性の呼び掛けに対し、焔火は自分の事だと気付かずに素通りしようとした。そんな焔火に女性は、さらに呼び掛ける。

「ちょっと、そこのお兄さん、そこのツーブロックヘアで両耳に炎のピアスを付けた長身のお兄さん」

「ん?」

"ツーブロック"、"炎のピアス"、"長身"、これらのワードで、焔火は、ようやく自分の事だと気付き、声の聞こえた方へと顔を向けた。するとそこには占い師の風の格好をした女性が椅子に座っていた。それから女性の目の前には机が置かれており、その上に水晶が置かれていた。

「何すかあなたは?」

焔火は女性に、そう尋ねた。

「見て分からない?占い師よ」

女性は、うっすら笑みを浮かべながら、そう答えた。

「は~……占い師っすか……お勤めご苦労様です、それじゃあ」

焔火は女性に軽くペコリと会釈をし、その場から離れようとした。

「ちょいとちょいと、待ちなさいったら」

女性が呼び止めると、焔火は面倒臭そうな顔をしながら彼女の方へと振り返った。

「何すか~?俺今人捜しで忙しいんすよ~、あ、そうだ」

焔火は翡翠碧の写真を、着ていたパーカーのポケットから取り出し、女性に見せた。

「俺、今この女を捜してるんす、この女について何か知ってる事とかってないっすか?」

「ごめんなさい、知らないわ」

「ですよね~」

「知らないけど……知ろうと思えば知れるわ」

「……はい?」

知ろうと思えば知れる……女性の突然の意味不明な発言に、焔火は呆然とした表情を浮かべた。

「私は特殊な力を持っているの、その力を使えばその女について詳しく知る事ができるわ、例えば……その女の居場所を突き止めたりとかね」

「居場所を……?いや、それよりも特殊な力って……もしかして……お姉さんミュータントっすか?」

「いいえ?違うわよ」

「え?違う?でもこの世界で特殊な力を使う人っていったらミュータントくらいしかいないんじゃ……」

「……ミュータントというのは遺伝子の突然変異によって特殊な力を手にした人の事でしょ?けど私は違う、私の場合は体内にある"魔力"を消費して特殊な力を使うのよ」

「は???魔力???何すかそれ???」

焔火は先程の様な呆然とした表情を浮かべた。

「まぁ細かい事はいいじゃない、それよりも私の持ってる力の一部を見せてあげるわ」

「は、はぁ……」

焔火は流されるがままに、彼女の持つ特殊な力を見る事となった。

しおり