再会
ガヤガヤっと沢山の声が聞こえる。
周りは人や色んな種族が居るがこの場所はそれなりに人との空間は開いている。そんな中二人の男女は横に並び、何かを待っていた。男は片手に持っているオシャレカフェでお腹を壊さないか心配しながら、中央の長い通路を見ていると隣から幸せそうな声が聞こえる。
「美味しですねオオハラさん!」
「ええ、甘みが丁度良いですね」
ルーナはもう一口飲み、頬っぺたが落ちそうな顔をした後今回のパレードについて大原に聞く。
「オオハラさん、今回は勇者様が不在らしいです。一体どうしちゃったんでしょうか?」
「..さぁ? 自分はパレード自体が初めてなので、詳しくは分からないですね」
「あ! 初めてだったんですか!?」
「はい」
「え! じゃあオオハラさんってどこ....」
興味津々な質問をしている途中で大原とルーナの横から顔色の悪い男がこちらに近寄る。男に気付いたルーナはよくよく見ると男はデラインだった。
「お兄ちゃん!?」
不気味な笑みを浮かべデラインはフラフラしながら更に近づく。
「へへ、見つけたぞ我が妹、ルーナよ..さぁ、こっちにおいで....」
っと手を前に出す。
「へ? いや、一緒に見ようよ!」
「一緒に....?」
デラインはルーナの後ろに目をやると片手にルーナと同じカフェを持っている大原が居る事に気付く。
ボーっと間抜けな顔でまじまじと見つめてくるので大原は軽く会釈(えしゃく)する。そうするとまるで拒絶反応みたいに何故かデラインが震え始める。
「ああぁ..! やっぱり、ルーナは..」
頭を抑え何か言おうとするデラインの口元を塞ぐように、後ろから手が覆いデラインは手を離そうと暴れ出す。そんな光景を唖然と見ていたルーナだが、デラインを押させている人物を見てみると変な仮面を付けているミラが居た。
「え? ミラさん?」
ミラらしき人物は体をビクンっと軽く飛び跳ねる。
「な、なんでわかった?」
そう言いながら首を絞めデラインを気絶させる。
「なんか..雰囲気がミラさんぽいかな~って」
「まじぃ~、クソ~このバカさえ居なければなぁ~」
「ちょっとミラ待ってよ~!」
更に遅れてエラがやって来た。
「あ! エラさん!」
少し離れていた三人の方にルーナは歩いて向かう。
何だか一名気絶してる中、ルーナは合流して楽しげに話している。そんな様子を見ている大原はめんどくさいのでルーナ達の方には行かず、静かに中央を見ていると奥の方から段々と騒がしくなっていく。
大原は目を細め見る。そこにはデカい乗り物? 的な上に人が乗っていて、人々に手を振っている。
(まるで都会にある遊園地のイベントみたいだ)
っと大原は思う。
それはスムーズに進み、大原の手前ぐらいまで来て、上の人物がよく見えるようになる。一目散にある人物見ると大原心から喜びが溢れ、小さく呟く。
「あぁ..素晴らしいよ。瑠奈」
一人の女性に目を奪われていた大原だったが、騎士らしき人物と被り見えなくなる。
(クソ)
っと心の中で愚痴る。代わりに他の人を見て情報を得る事にする。
(先頭に立っている女性はいつだかあった..ソフィエルかな)
大原は目線を後ろの方にやる。
(..あの少女見たことないな。いや確か..レイカ? 王の二人目の娘? にしても似てない。その隣に居る騎士は何だか傘をさしている。多分人間じゃない感情が分かりにくい)
最後に健康とは言えない人物を見る。
(あれがこの国の王か..普通の人だな。....ん? なんだ..)
この時二つ疑問に思ったが人々が空を見上げ指を指していた。乗り物はもう大原のすぐそこまで来ていて乗り物目掛け上から何か落ちてくる。その姿が見えた時、人々は歓声を上げた。
それと同時に乗り物はその場で緊急停止する。そして、その人物は身を乗り出し大きく手を振り、大きく叫ぶ。
「皆~! ただいま~!!」
いい笑顔で言う。
(帰って来たか..)
嫌悪感を抱きながら見ていると服の袖を引っ張られる。
「オオハラさん! オオハラさん! あれが勇者様ですよ!」
どうやらルーナ達の話は終わったらしく、全員大原の周りに集まっていた。
有名人を見たかのように興奮しているルーナに優しく心にもないことを言う。
「あれが勇者様ですか。カッコいいですね」
「う~ん、カッコいいかはわかりませんけど。一回は実物を見といた方が良いですよね?」
「..そうですね」
目線をアルトリウス向けマジマジと見る。何やら王と話している様子だった、遠いいので何て話しているのか聞こえないがしばらく見つめると、話は終わり視線を人々に向けるが一瞬大原の方を見た気がしたので大原は目線を逸らし、ルーナを見る。
(あの一瞬の感情....。クエン、君は一体何を..)
「あ、あの、オオハラさん?」
異変に気付いたルーナが頬を赤くし大原を見つめる。
「ルーナさん、肩にゴミが付いてますよ」
っと言い肩に手を置きほろう。
「あ、ありがとうございます..」
何だか気分が落ちているルーナを後回しにし大原は一足先に立ち去ろうとする。
「皆さん自分は先に帰ります。今日は本当楽しかったです。また今度誘って下さい。ではまた」
「え、ちょっ..」
ミラが何か言う前に大原はその場から逃げる様立ち去っていく。
「え~なんかしょぼくな~い?」
残念そうにエラが言う。
「....」
ただ静かに大原の背をルーナは見つめる。
「いいのルーナ? 追いかけてきても良いんだよ?」
心配そうな顔でミラは問いかける。
「いいの....。て、え?」
ルーナは二人の顔を見ると顔を赤らめ、問いかける。
「もしかしてだけど....」
二人はヤバいっと思い、口笛を吹き知らんぷりしている。
パレードは終わり。サンタンジェロ城内でアルトリウス一行が王の前で村で起こった事を報告していた。
「..以上が村での出来事でした」
王は王座で話を聞いていて、アルトリウスは立ちながら説明していた。他の仲間は床に膝を着き頭を伏せていいる。
「フム、そうか..ご苦労であった」
「王様これで異変は解決しました。僕達はこれからどうすればいいですか?」
「フム....」
王はアルトリウスの左手の甲を見た後、淡白な声を響かせ威厳な態度で言う。
「これからは自由にするといい。解散しそれぞれの人生を歩むのも、また旅を続けるのも」
「分かりました!」
キリっとした顔でアルトリウスは言う。
一段落が尽き。王はゆっくり王座から立ち上がり、腕を横に振りマントをなびかせる。
「これにて世界は平和に舞い戻った! これからも、平和を維持することを誓おう! 勇者様に感謝を」
アルトリウス一行は広い廊下を歩いていた。
「おいアル、いいのかの? 一応あの事言った方がよかたんじゃ~ね~の?」
「バレット、あの人は関係ないかも知れないだろ」
「始まったよ....お前は甘いんだよぉ..」
「いいかいバレット!? すぐ人を怪しむのはやめた方がいい」
突然バレットは立ち止まる。
皆なぜ立ち止まったのか気になり、足を止め視線がバレットに向く。
「かぁ~! もう、お前らはどう思ってんだよ!?」
っと質問するとバレット以外が考えるしぐさをする。
そんな事を考えている中、王座とは反対方向から誰かが歩いてくる。
そして、こちらに気付き走って来る。
「あ! アルトリウス! お帰り!」
「エリオォ!」
エリオはアルトリウス達の目の前に来ると質問し始める。
「どうしたんです皆さん? こんな場所で立ち止まって」
エリオにそう言われ、アルトリウス達は顔を見合わせる。エリオには言うべきか言わないか、そんな感じで迷っているとバレットが口を開ける。
「なあエリオ、俺達がいない間何か変な出来事は無かったか?」
「....」
しばらくエリオは固まり何か考え、覚悟を決めた目をした。
「実は最近..男女の行方不明が相次いでます。それとルベアが出現しました」
「!?」
アルトリウス達は驚き、空気が重くなっていくと、真剣な声でメリネが口を開ける。
「エリオ詳しく」
「はい、姉さん。大体一週間前ぐらいから、男女の行方不明が発生してます。被害者は必ず恋人関係もしくは夫婦です。それ以外の報告は今の所ありません。..次にルベアですが。五日前に四人組の冒険者によって討伐され、こちらは解決しました」
「冒険者が? すげ~なおい」
関心するかのようにバレットは言う。
「..男女の行方不明、気になるね」
ノエルは心配そうな顔をする。
「....そうかエリオ、ありがとう。..皆行こう」
「おい待てよアル! いいのかエリオに言わなくて?」
「..」
少し歩き全員に背を向けた後アルトリウスは立ち止まる。
「大丈夫さ、僕は信じる」
っと再び歩き始める。
「んだよぉ~....」
頭をボリボリ掻き不貞腐れながらバレットは付いていく。
ノエル、リールーもそれに続き歩く。
そんな先に行ったアルトリウスをエリオは見送っているとメリネが耳元に近寄り小さな声で喋る。
「オオハラには気を付けな....」
そう言われ、しぶい表情でエリオは軽く頷く。
「じゃぁ! 家で晩飯、用意しといて~」
後ろ向きで手を振り、メリネはアルトリウス達についていく。
徐々に離れていくアルトリウス達を見ながらエリオ思う。
(ソフィエルさん..約束破ってしました....。許してください)
首からぶら下げているネックレスを強く握り、エリオも元の場所に向かうため足を進める。