43.面食いの精霊たち
「諸君、紹介しよう。彼らは主精霊である。そして主精霊諸君、この子達は契約を望む者たちだ」
紹介された精霊たちが、じいっと子供たちを見下ろした。射抜くようなその視線にびくつく彼らに、まず最初に口を開いたのは水のような姿かたちの女性。
「やだぁ! 私好みの子がいっぱい!」
女性はそう言い、リックの目の前へ。驚く彼をものともせずに、「お名前は? どこから来たの?」と問うていく。
「え、えっと、リック・A・リピト……」
「リピト! リピト家の者か!」
炎を纏う大男が言った。
「リピト家と言えばセラフィーユ、シェレイザに次ぐ三大名家のひとつ!」
「けど、確か信仰心のないお家だったよねぇ」
緑色の少女がむすくれたように唇を尖らせた。どうやら彼女はリピト家に対して好感は抱いていないようだ。
リックがオロオロしているのをいい事に、水の女性は彼を抱きしめ、緑色の少女に吠えたてる。
「いいじゃないそんなこと! こんなに顔面良いんだから信仰がなくたって許されるわ!」
「捗りますなぁ」
雷を纏う老人が言って笑った。その横、氷のように凍てついた視線を皆に向ける女性が、困ったように背を縮こまらせる。
「でもでも、さすがに信仰心がない人と契約は……いつ私たちを裏切るかわかりませんし……」
「もー!お堅いわよセルシウス!」
「はひっ」
女性は「ごめんなさい〜」と謝罪した。それに、緑色の少女が「かったる〜い」と耳をほじりながらよそを向く。
「大体さぁ、顔面顔面って。顔面良ければ世の中回るとでも思ってんのかねー。アタシは別に面食いじゃないからよくわかんないんだけどさぁー」
「そういう割にアンタ、この前森に入った迷子みて熱烈アタックしてたじゃない」
「それはそれ、これはこれ」
フン、と告げた少女が、するりと空気を伝うように降りてくる。そして、リレイヌの目の前へ。「てかアンタさー」と告げる彼女に、リレイヌは目を瞬いてからニコリと笑う。
「ぐうっ!? 眩しい!!!」
少女が落ちた。
「捗りますなぁ」
雷の老人が笑う。
「ほらほら皆さん。久々の契約ではしゃぐ気持ちはわかりますが、今はまだその時ではありませんよ。契約に必要な素養があるか、まだ確かめていないじゃないですか」
「それはそう」
眩い女性に頷いた水の女性が、ふわりと浮いて元の位置へ。緑の少女も戻ったところで、真ん中に立つ精霊王はこう告げる。
「皆、驚かせてすまんの。しかしてこれより契約の義に移りたい。まずは君たちに素養があるかを確認し、素養がある者のみ契約の戦いへ。異論はないかの?」
こくりと頷く面々。どこか緊張した面持ちの彼ら、彼女らに笑い、老人は言う。
「ならばせいぜい、死なぬように」
ばちり、と、周囲が暗くなった。