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異世界生活44日目:お隣さんにお邪魔します

俺たちは隣国レイデリアへの物資の輸送の護衛の任務を受けていた。最初は順調に進んでいたものの、レイデリアまであと半分というところで盗賊が襲ってきた。依頼主は盗賊を恐れ逃げ出してしまった
放置された物資を守りながら何とか盗賊の撃退に成功した
だが、俺は撃退する過程で人を殺めてしまった。いくら悪人であっても人間を殺したことに違いは無い。初めて人を殺したという自責の念が俺を襲っているのは言うまでもない
こんなので王様を暗殺できるのだろうか?
カンちゃんはよく殺ったって褒めてくれたけど、俺は褒めてくれたことを素直には喜べない

………今回の盗賊たちとの戦いは自分の未熟さを思い知らされた
仲間のためだとしても人を殺すのに躊躇ってしまう心。早く俺がリーダー格の男仕留めておけばナリアが瀕死になることもなかったということ
カンちゃんがいてくれたからナリアは一命を取り留めたが俺たちだけではどうにも出来なかった
仲間1人すら救えないで何がパーティーだ。何が俺の仲間だ
俺は強大な力を持っておきながら人を殺す以外何も出来ない。ただの人殺しだ


「盗賊たちは………死んでる」


「俺が…殺った」


「!?……ありがとう」


「え?なんで?俺は人を殺したんだよ!?何人も!!」


「でもおかげで俺たちは今捕まってないし、生きてる」


「カズヤのおかげだよ」


「人を殺すなんて出来ればしたくない。これは俺たちも思ってる」


「けどな、冒険者をやってるとどうしてもしたくないことをしないといけない場面にも出くわす」


「さっきのがまさにそうだ。俺たちが生きるためには仕方なかった」


仕方ない……か
自然界に生息している動物たちは生きるために動物を殺す
弱肉強食なんて言葉があるが、それは自然界に生きる動物だけでなく人間にも言えることだろう
人間も生きるためなら同じ人間を殺す。弱いものは淘汰される。自然の摂理だ
生き残るためには殺し合うこともあるのだろう。俺の世界ではそんなことはありえなかった
平和ボケしたまま異世界へ来てしまった。冒険者を名乗るなら命を懸けなければいけないんだ


「仕方ない………か」


「あぁ。納得いかなくても今は飲み込め」


「とりあえずレイデリアに行こう。ナリアも意識が戻ってない。それに馬車をここにいつまでも放置する訳には行かない」


「しっかし……あの依頼主どこに行った?盗賊たちは居なくなったのによ」


「俺たちで動かす?」


「馬が見ず知らずの人間の言うこと素直に聞くか?」


「やってみないとわからない」


俺たちはまだ任務の途中だ。また盗賊が現れるかもしれない。
早いところレイデリアへ物資を輸送したい。ナリアのことも心配だ。死なないとはいえ意識を失ってる状態でここに居ては危ない


「あのー!!!!!すいませんでしたー!!!!!」


「やっと戻ってきたか……」


「どこに行ってたんですか???」


「すいません……物陰から見てました……
まさか災いの騎士(カタストロフィナイト)が現れるとは思っていなかったもので……」


「あれがそうなのか?」


災いの騎士(カタストロフィナイト)???」


聞いた事ない単語が出てきた
名前から嫌な予感しかしない。さっきの盗賊に騎士要素なんてあっただろうか?
変なところがあるとするなら全員左手に不気味なタトゥーがあったことだ


「知らないのか?」


「初めて聞いた…」


災いの騎士(カタストロフィナイト)は大規模なテロ組織のことだ」


「テロ組織?」


「あぁ。あいつら(災いの騎士)は表向きは世界を変えるとか言ってるが、やってることは賊と変わらない」


「世界各地にいるから壊滅させるのが難しいんだ」


「そうなんだ……」
(テロ組織なんて異世界にもあるんだな)


さっきのあいつが盗賊と呼ばれるのを嫌がってたのは世界を変えるために活動してるからか
賊行為を働いてる癖に世界を変えるだのなんだの言うのは自分勝手過ぎるけどな
災いの騎士にはあいつみたいなやつがゴロゴロいるのだろうか???
だとしたら壊滅が難しいのも頷ける


「さっきのは下っ端という所でしょうか。あのリーダー格の男は左頬にタトゥーが入っていました」


「顔にタトゥーが入ってると何かあるのか?」


「2つタトゥーが入ってる人間は組織の中でもかなりの実力者です。それを倒すなんて……強いんですね!!!!!」
(最後のトドメはカンちゃんがさしたんですけどね)


「そうでもねぇよ。俺たちより強いやつなんてそこら中にいる」


「早くレイデリアに行ってくれませんか?仲間がまだ寝てるので」


「はい。すぐに出発します」


俺たちはレイデリアに向かって出発した
レイデリア前の森で魔物たちが何度か襲ってきたが難なく倒し、無事にレイデリアへたどり着いた
レイデリアはマラ王国のように巨大な王城はなくても街は発展してるようだった
出店が開いており多くの人でごった返している。賑やかな街だな
レイデリアに着いてすぐにナリアを病院に運んだ。ナリアの意識はまだ戻っていない。目を覚ますまでは病院で休んでもらっていた方がいい


「色々とありがとうました!!おかげで無事に届けることが出来ました!!」


「これを。あとはギルドで報酬受け取ってください」
(何かの手紙だろうか?そんなものが役に立つのか?)


「これは……???」


「レイデリアでは冒険者の偽の達成報告が相次いでましてね。その対策として依頼主がいる場合はその人から達成が証明出来るものを渡す仕組みになっているんですよ」


「偽の達成報告なんてマラ王国じゃなかった」


「ここはレイデリアですからね……国が変われば国民も変わるんですよ」
(そうだよな。国が違えば国民も違う)


「そうなんですね」


「あとの詳しいことはギルドで聞いてください」


「ありがとうございます」


「レイデリアでゆっくりしてください」


俺たちはレイデリアのギルドへ足を運んだ
レイデリアのギルドはマラ王国ほど冒険者はいなかったが、それでも中々屈強そうな冒険者もいる
マラ王国・レイデリアといいギルドは盛り上がってるな。冒険者はそれほど人気なのか
レイデリアは冒険者による悪行が行われてると言っていた。嘘はどっちみちバレるのにな


「あの、任務の達成報告をしに来たんですが」


「はい。どちらの任務でしょうか?」


「物資輸送の護衛なんですが」


「達成を証明出来るものをご提示頂けますか?」


「これで大丈夫ですか?」


「はい。お疲れ様でした。報酬の1万アーツです」


「こんな貰っていいんですか???」


「はい。災いの騎士(カタストロフィナイト)を倒して頂けたようですからね」
(手紙には俺たちの活動報告が書いてあるのか)


「それでか」


あいつらを捕まえてなくても殺してるのにかなりの報酬だ。かなりの懸賞金を掛けられてるみたいだな
やってることは賊だし、言ってることは世界転覆だしな…………
考えてみるの結構ヤバい人たちの集まりだ


「これからの冒険はお気をつけ下さい」


「どうしてですか?」


災いの騎士(カタストロフィナイト)は仲間意識が強いんです。そのため、仲間を倒されると報復しようとしてきます」
(仲間意識?そんなの無かったぞ)


「いかなる時も注意をしてくれと言うわけか」


「厄介なのに目をつけられたね」


「倒すしかないだろ。いちいち逃げててもどの道追いつかれるだろうしな」


「そうだね」


これからの旅はより一層警戒していかなければならない。厳しいものになるだろう
刺客から身を守るためには再び殺めてしまうこともあるだろう。その度に憔悴していては先に進めない


「ではお気をつけて」


「これからどうする?」


「そうだな……とりあえずナリアの見舞いでも行くか」


「そうだね。まだ目は覚まさないって医師が言ってたけど様子を見ておこうか」
(医師によればあと2日は目を覚まさないとのこと。ナリアには早く元気になって欲しい)


俺たちはギルドを出たあと病院へ向かった
ナリアの見舞いに来たと言うとすんなり通して貰えた
ナリアは病室のベッドで寝息を立てて寝ている。こうやって見るとナリアって綺麗だな


「寝てるけど元気そうだな」


「そうだね。元気そうで良かったよ」


「我、死なないって言った」


「いや、そうだけど。心配じゃん」


「急に1人居なくなるとそいつのことが気になるだろ」


「知るか」


こいつは本当に…………
話の分からないやつだな。長いこと一緒にいた人が急に居なくなった心配になるだろうがよ
もちろんこいつに何言っても無駄なのは承知の上


「「……」」
(2人とも引いてるよ)


「いつもそんな感じなの?」


「残念ながらそうなんです」


「そいつは大変だな」


「毎日毎日、大変だよ」


俺はよくここまでやれてると思う
自分のことを褒めてあげたい。毒と話をぶち壊すことしか吐かない鳩と1ヶ月以上一緒にいるんだ
誰でもいいからカンちゃん1日体験をやって欲しい。俺の大変さを知って欲しい


「とりあえず宿屋探すか」


「そうだね」


「いやーカンちゃんはね………」


「歩いてれば見つかるよな」


「宿屋くらい見つかるよ」


「毎朝5時に起こしてきて……しかも起こす時つついてくるんだよね……これが………」


「行くか」


「うん」


「こんな態度してるのに俺に命令しかしてこないんだよね……それが腹立つけど……そのおかげで生きてるってのもあるから……」


カンちゃんの愚痴は口に出せば出すほど止まらない
肝心な本人は寝てるから、今なら愚痴を言っても聞こえない。ケールとロイスにはカンちゃんといることの大変さを知って頂きたい
こいつといることがどれだけ精神をすり減らすか……
どれだけ疲労させられることか………

って!!!いないじゃん!!!
どこ行ったんだよ!!!!!置いてくな!!!!!仲間だろ!!!!!
仲間の愚痴くらい聞いてくれてもいいだろ!!!!!
(病院ですんな by筆者)


「待ってよぉー!!!!!」


「はぁ…はぁ…急に消えたからビックリするじゃん!!」


「やっと帰ってきたか」


「あのまま1人で愚痴を言い続けると思ったけど」


「そんなわけないだろ!!!!!行くなら行くって言えよ!!!!!」


「言ったぞ」


「うん。言った」


「え???言ってた???」


………………あ、言ってた。思い返してみれば言ってた
それはそれとしてなんで俺の愚痴を無視してんだ!!!!!
少しくらい聞いてくれてもいいだろ!!!!!


「言ってたけど…それはそれだよ!!なんで俺の事無視するんだよ!!!」


「聞いててもいい事ないしな」


「うん。愚痴聞いて思うことないし」


「…………結構言うね。傷つくよ」


「愚痴聞いて何になるんだよ?」


「俺のストレス軽減」


「ならいいや」


「俺もいいや」


俺のストレス軽減されるのって結構大きいからね??
人はストレスを抱えて生きてるんだ。それを軽減するのはとても大切なことだと思うんだが
この2人はそうは思わないのか??


「ストレス軽減するの結構いい事だと思うんだけどな」


「よし、宿屋探すぞ」


「早く見つけて休みたいね」


「無視すんなよ!!!!!」


パーティーに無視されるようになってきた
でも、それも仲が深まったことの裏返しだと思う
仲がいいからこそ出来ることだ
俺はこのパーティーで良かったと心の底から思っている

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