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第24話「焔火、五条と対峙」

(無性にうな重が食いてえ……新宿にあるあそこの……)

麗水と別れた後に自宅に向かって渋谷の道路をバイクで走っていた焔火は心の底からそう思った。思い立ったが吉日。という訳なので焔火は家に帰らずテキトーにその辺でUターンして新宿へとバイクを走らせていった。



「───うし、到着っと」

焔火が辿り着いたのは西武新宿駅の近くにある"ウナギ"という看板の貼られたお店であった。ここは創業80年の老舗うなぎ料理専門店である。早速焔火は店の近くにバイクを停めて中へと入っていった。

「へいらっしゃ~い」

店内に入るとカウンター席の奥から50代くらいの男性店主が出迎えた。そして焔火は入り口近くの席へと座った。

「おっさん、うな重特盛1つ」

「あいよ!」

焔火から注文を受けておっさんは調理を開始した。そして出来上がるまでの間焔火はテキトーに瞑想や妄想をして時間を潰した。

「あいよ!お待ちどおさん!」

10分程経過した頃にうな重は完成し、焔火の前へと差し出された。

「きたきたぁ!!いただきやす!」

焔火はうな重にがっついた。

「うん!美味い!!いやぁ~!たまらねぇっすわ!うなぎがふっくらフワフワで舌と胃が喜んでますわ!うなぎだけじゃねえ!タレもまた良いっすねぇ~!極上もんっすよこりゃあ!くそぉ!手が止まらねぇ!なんて罪深い食べ物なんだぁ!!!」

黙って食えよ……と、店内にいた他の客達は焔火に対して思っていた。


「───ふい~……ごっそさん、お勘定たのんます」

うな重を食べ終わった焔火はおっさんに勘定を頼んだ。

「2000円になりやす!」

「ほ~い」

焔火は2枚の千円札をおっさんに差し出した。

「あい、丁度ですねい!ありゃっした~!」

「うい~、また来ま~す」

焔火は店を出た。そしてその直後になぜか無性に甘いものが食べたくなったので新宿区内にあるスイーツ食べ放題の店へとバイクを走らせていった。


「───ふ~……食った食った」

スイーツ食べ放題店から出てきた焔火。するとその直後に右から歩いてきた天パで顎の長い男と体がぶつかった。

「おっと、すんません」

「チッ、気をつけろや虫ケラ」

「ああ!?」

天パ男のいきなりの暴言に焔火はムカッとなり天パ男の胸ぐらを勢いよく掴んだ。

「てめぇ喧嘩売ってんのかゴラァ!!!誰が虫ケラだゴラァ!!!殺すぞぉぉ!!??ああ!!??タイマン張れやダボがぁぁ!!!」

焔火は額の血管を浮かび上がらせながら尋常じゃないくらいに天パ男に怒鳴り散らした。普段であればここまでキレ散らかす事などほとんどない彼であったが生憎現在は甘いものを大量に食べた後だったので血糖値がかなり上昇しておりイライラしやすくキレやすい状態となっていたのだ。そして一方で天パ男の方は焔火に特にビビる様子もなく非常に冷静であった。

「離せよ……俺は無意味な殺生はしたくねぇ……」

「ああ?言ってんだ?」

「いいから離せっつてんだよ」

「あっ」

天パ男は自身を掴んでいた焔火の手を払いのけてその場から立ち去っていった。そしてそんな天パ男に焔火は言い放つ。

「けっ!マトモにタイマンも張れねぇのかよ!ヘタレ"ゲンスルー"が!」

「ッッッ!!!」

焔火の発言を聞いた天パ男はピタッと立ち止まった。そして顔をビキビキとさせながら彼の方へと振り返った。

「てめぇ……誰がゲンスルーだゴラ……!!!」

「ああ?てめぇだよてめぇ、その長い顎、どう見たってゲンスルーだろうが」

「こ、この野郎……!!!」

「ん~?ゲンスルーは不服か?じゃあ学園ハンサム」

「ッッッ!!!てめぇは殺す!!!」

キレた天パ男は焔火の首に勢いよくラリアットをかました。するとその瞬間にドガァァァンと大きな爆発が起き、焔火は20m程吹き飛んだ。

「きゃあああああ!!!!」

「うわぁぁぁぁぁ!!!!」

「テ、テロだぁぁぁぁぁ!!!!」

突然の爆発に近くを歩いていた人々はパニック状態となって逃げ回った。

「あ~あ……普段はクールを信条にしている俺だが顎の事を言われちまうとついカッとなって我を忘れて殺っちまう……悪い癖だぜ……」

天パ男はそう呟きながらズボンポケットからタバコの箱を取り出してそこからタバコを1本抜いて口に加えて火を点けた。

「…………いってぇ…………」

「!?」

天パ男は口からポロッとタバコを落として驚愕した。なんと爆撃を喰らって死んだと思っていた男が自転車でコケたくらいのノリで平然と起き上がったからだ。

「て、てめぇ……なぜ生きてる!?」

「ああ?知るかボケ」

そう言うと焔火はダッシュで天パ男に接近し、右ストレートを顔面に放った。

「だぶっ!!??」

天パ男は50m程吹き飛んだ。

「へへ、ツーベースヒットってとこか?」

焔火は吹き飛んだ天パ男に向かってそう呟いた。

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