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第20話 神罰

ある日、夜だと言うのに何やら宮の中が慌ただしかった。いや、殺気立ってると言っても過言ではなかった。

『天界樹様?どうかなさったの?』
『ああ、起こしてしまったかえ?すまぬな』

どうも例のエルフの馬鹿王が何かをやらかしたらしく、鍛治神様が直々に粛清に向かうというのだ。
戦いに行くなら武神様の方が?と思ったのだが

『もちろん、武神もそう申し出たのじゃがの。今回はの、かつて鍛治神が携わった鎧が関わっておるようなのじゃ』
『え?』
それはかつて、何代か前のまともであったエルフの王と共に作った特別な鎧なのだという。

『彼の王は聡明で出来た男だったのえ。容姿も中々に美しかったしの。まさか、子孫があのように愚かになるとは思いもしなかったであろうに⋯』
それは、お気の毒に⋯

『それで鍛治神は絶対に自分が行くと言うてのぉ』
『なるほど。そういうことなのですね』
鍛治神様も責任感がお強い方だものね。
『二人とも脳筋なだけじゃよ』ふぅ
『あ、あはは』
決してそんなことはないと思いますよ。

加えて、
〖主神、今回ばかりはもう駄目だ〗
〖奴らは禁忌を犯した。もう救う余地はねぇよ〗
〖⋯そうだね。どれ程のエルフが残るかな〗
〖そうだな。何せ、王族から腐ってるしな〗
〖絶滅に近い状態になるかもな〗
〖それでも仕方ないね。神罰はやむを得ない⋯このままでは守らなければならない者たちが、死んでしまう。精霊と共にある真のエルフを守らないとね〗

どうやら今回ばかりは見逃すことは出来ないらしい。ただでさえ、今までの積み重ねもあるから、主神様が神託を下ろし、犯罪を犯しているエルフたちに一斉に神罰を下すことになったそうだ。主神様はお優しいから、そのお顔は決意を固めてはいらしても、とても悲しい⋯

ぽんっぽんっ

〖主神、背負い込むな〗
〖主神は優しすぎるからな〗
〖俺たちも一緒に背負ってやるよ〗ニカッ
〖だな。んじゃまあ、行ってくるわ〗ニカッ
〖うん。鍛治神、お願いね〗
主神様、鍛治神、武神様の男の友情、美しいわ。

でも、この事件、エルフだけでは済まなかったのよね。
裏でヤツが手引きをしていたのよ。
その為、急遽、主神様も現場に出向き、鍛治神様曰く
〖まったく、後先考えずに無茶しやがって。まあ、あいつじゃなきゃ出来なかったがな〗
そうおっしゃる通り、かなり無理をされたらしい。結果、ヤツに痛手を負わせられたものの、一番ダメージを負ったのが主神様だった。

〖まったく、何してるのよ!こんな無茶してっ〗
〖まあまあ、お母様、そのお陰で捉えられていたエルフの巫女たちを救えたのですから〗
『しっかり神罰も下したしの。まったく、その状態でよくぞあんな各地に神罰を落とせたものじゃのぉ』
〖あははは〗

神罰、凄かったわ。そこら中に雷が落ちて、火柱が上がって⋯主神様、普段はぽやぽやしてるのに、やはりこの世界で一番の神なのね。
『何を今更?一番怒らせたらいけないのは普段大人しい主神のような者え?』
た、たしかに⋯

〖当たり前よ。主神はやる時はやるのよ!〗ふふんっ
〖ま、魔神ちゃんってば〗
〖くすくす。お母様が自慢しても仕方ないでしょうに〗
当然、しばらく安静を言い渡された主神様。急遽、看病のため聖域にいた魔神様と娘の女神様が呼び戻された。代わりに鍛治神様が下に降りたわけなのだけど⋯


今、皆さん、私のために天界に帰ってきて下さっているのよね。申し訳ないわ。

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