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第十二話 【カミドネ】アンデッド


 謁見が終了して、カミドネに戻ってきた。
 ルブラン殿とモミジ殿とは、後からカミドネのギルドの近くで落ち合う事になった。

 まずは・・・。

「フォリ」

「御前に」

 フォリが、私の足下まで来て跪く。立ってもらって、抱きしめる。
 安心できる。フォリの暖かさが・・・。怖かった。魔王様やルブラン殿やモミジ殿が、私たちを生かしておくメリットが少ないことを認識させられた。私を殺しても、支配領域にはできないから生かしておく程度なのだろう。

「カミドネ様」

 フォリの心配した声で、私がしっかりしなければダメだと思い出される。もう大丈夫。
 フォリの体温を感じて、少しだけ気分が戻ってきた。

「ありがとう。もう大丈夫」

 本当の事を言えば、フォリの身体を堪能したいけど、魔王様から与えられる能力を確認して、神聖国からのお客様をもてなした方がゆっくりできる。それに、ルブラン殿とモミジ殿を待たせるのも・・・。

「フォリ。アンデッドの采配は、任せていい?」

「お任せください。カミドネ様の代わりをしっかりと務めます」

「撃退は必要だけど、フォリ。絶対に戻ってくるように、約束ですよ。イドラもキャロも絶対に無理はしないでください。私を一人にしないでください」

 皆が私に寄り添ってくれる。
 すごく嬉しい。傅かれる魔王様もうらやましいと思うけど、私は・・・。フォリでよかった。イドラやキャロたちが居てくれて嬉しい。対等ではないが、近い関係が心地よい。進化した事で、意思が前よりも感じられる。次の進化が行われれば、会話も可能かもしれない。
 イドラもキャロも、他の眷属もそれが解っているから、今回の戦闘に参加すると言っている。

「よし!獣人たちの捕縛を優先的に考えよう」

「カミドネ様。神聖国の正面は、イドラ殿たちに任せて、私はアンデッドを指揮して、後方から神聖国の神官たちを狙います」

 フォリの提案を受けて、カタログに乗っているアンデッドを調べる。
 兵としては、スケルトンやゾンビなど、数で押し込む者でもいいが、神官が相手だと、リビングアーマー系でもいいかもしれない。

 ん?

「フォリ!」

「どうしました?」

 カタログの中にあるアンデッドに目が止まる。

「カミドネ様。ポイントは大丈夫ですか?」

「カスタマイズ次第だけど、魔王様から頂いたポイントだけでまかなえる。部隊として編成するアンデッドや、イドラたちに渡す魔物は、元のポイントを使えばいい」

 アンデッドを呼び出す為に、魔王様から頂いたポイントが驚くほど多かった。
 それで、新しく眷属に加える3体を呼び出す。そのうえで、神聖国との間にある森にポッドを配置する。森の半分をアンデッドの森に変える。残りの半分を元々の眷属たちの狩場にも使える獣系のポッドを配置する。

 今まで、ダンジョンの中にだけ配置してきたが、ダンジョンの支配領域なら配置ができると教えられた。もともと、ダンジョン以外に支配領域を広げられると教えられたのも、魔王様からだ。

「フォリ。アンデッド・バンパイアを召喚する。複数体で、能力を発揮すると書かれている」

「カミドネ様。バンパイアだと、日光が弱点だと思うのですが?」

「大丈夫。弱点克服は可能だ。聖属性にも耐性を持たせられる。そうなると、ツインではなく、トリプルになる」

「3姉妹ですか?」

「そう。肉体を強化して、アンデッドの弱点を消す。そして、知恵を最大にして・・・」

 夜伽もありに変更する。性別を男性にすると、夜伽が選択できない。本当に、このカスタマイズは意地が悪い。
 フォリだけで十分だけど・・・。

 あと、武器の条件を付ければ、ポイントが減らせる。長女/次女/三女。有名な、真名はジュレを与えて、ミンタカ/アルニタク/アルニラムにした。ミンタカ=ジュレ。アルニタク=ジュレ。アルニラム=ジュレ。だ。

「よし、設定はできた。ポイントも範囲内だ」

 3体が召喚された。
 防具も服も与えていないから全裸だ。皆、好みの体型をしている。乳房を小さく、いい形をしている。私と同じ位にしている。顔も、フォリと私を足した感じにできた。カタログで、私とフォリから姿を作ることが出来たのでやってみた。すごくいい。
 白い肌。明るい髪色。青い目。髪の毛の色は、深い青色。次女は、赤色の髪色だ。三女は、二人を合わせたように、半分が明るい赤で半分が明るい青だ。

「魔王様。我ら、3姉妹。魔王様に忠誠を誓い。深い敬愛を捧げます。いかなる時も、髪の毛一本までも魔王様に捧げます」

 3人が全裸のままで跪いた。その状態で、揃って祝詞を私に捧げた。

「ありがとう」

 真名は、隠した方がいいだろう。

「バンパイア3姉妹の長女」

「はっ」

 私の意図が解るのだろう。中央に居た長女が頭を上げる。

「長女は、マリアと名乗れ」

「かしこまりました。私は、マリア。魔王様」

 次女には、マルタ。三女には、マルゴット。

 それぞれ、名付けを行った。

「私は、カミドネ。詳しい、話は、フォリから聞くように、早速だけど、3姉妹・・・。そうだな。トレスマリアスと呼称するように・・・」

「「「私たちは、トレスマリアス。カミドネ様に使える。バンパイア」」」

 三人が、名前を受け入れて進化を始めた。

「フォリ。3人を頼む。イドラとキャロも、戦闘の準備を!私は、ポッドの配置を行う。数回は、ポイントを使ってポップさせる」

「はっ」

 フォリが、私の前から3人を連れて行く、イドラとキャロも他の眷属と相談を始めた。

 ひとまず、ポッドの配置を考えよう。
 私が配置しても、問題が解らないからな。

「フォリ!イドラ!私は、先にギルドに移動する。準備が出来たら、来てくれ」

 了承の返事を聞いてから・・・。
 そうだ。トレスマリアスにもポイントを付与しておこう。配布は、フォリの半分にしよう。3人でフォリを上回るくらいで丁度いいだろう。

「フォリ。トレスマリアスにもポイントが使えるようにした。説明を頼む。武器と防具とスキルに使うように!」

 フォリから了承の言葉が返ってきた。トレスマリアスからは、感謝の言葉が返ってきた。服は、カミドネの町ではまだ少ないけど、カプレカ島に連れて行けば、いろいろ気に入る物があるだろう。可愛い下着とか、似合う物を探すのも楽しそうだ。

 ギルドに移動すると、まだセバス殿とモミジ殿は来ていなかった。
 5分くらい周りを歩いていると、姿が見えた。

「魔王カミドネ」

「魔王ルブラン」

 モミジ殿は、ルブラン殿の従者のフリをしている。
 本当に、ルブラン殿が魔王だと言われても信じてしまいそうだ。

「それで、魔王カミドネ。迎撃部隊の編成は?」

 3姉妹のバンパイアを召喚して、眷属に加えた事も説明する。他にも、これから行おうとしている作戦も説明をした。

「それは、丁度良かった」

「丁度よい?」

「ギミックハウスに攻め込んできた神聖国の者たちを、アンデッドにして連れてきた。奴らを、その三姉妹の配下に加えて欲しい」

「え?アンデッド?」

「そうだ。それも、生前の姿のままだ」

「・・・。姿だけ?」

「ふふふ。そうだな。意識は、残っている。しかし、行動は制限されている。行動は、基本のアンデッドだ」

「それは、支配しているというのか?」

「そうだ。神聖国の神官や聖騎士だという意識を残したままアンデッドになって、行動を縛られている。話はできる上に、声も生前に近いはずだ」

 まさに、魔王だな。
 神聖国の神官や聖騎士を使って、神聖国を攻める。攻められた者たちも、自分が同じ目に会うと思えば・・・。攻撃が緩めば、トレスマリアスなら容赦なく攻撃を加えるだろう。
 敵には容赦しない性格になるように調整している。ルブラン殿が言っているように、神聖国の者たちを従えるのなら、トレスマリアスがちょうどいいだろう。

 ルブラン殿とモミジ殿からの提案を受けて、アンデッドを受け取って、フォリ経由で、トレスマリアスに分配した。一人に、300体。残りの50をイドラたちの前衛に配置した。
 ポッドの配置は急務では無くなったが、ルブラン殿とモミジ殿のアドバイスで、ポッドの設置を行う事になった。
 最初だけポイントでポップさせるだけにした。戦力は十分だ。

 ルブラン殿の話では、ポップした魔物でも意識を持つ場合があり、その場合には名を与えて眷属にすればいいと教えられた。そうしたら、ネームドになり、獣系ならイドラやキャロたちの配下に加えられる。アンデッドなら、そのまま、トレスマリアスの配下にすればいい。

 ポッドを配置して、最初の魔物がポップした事で、森の中の様子が手に取るように解る。
 神聖国の準備が整いつつある。

 ルブラン殿と相談して、今夜・・・。
 神聖国の拠点を攻める事に決まった。

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