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第二十三話 学習


 セバス(ルブラン)が、マスタールームから出ると、5人が整列して待機していた。

「代表を決めたほうが良いでしょう」

 ルブランからの言葉は、上位者からの言葉だ。
 代表と言われても、皆が顔を見合わせる。

「そうですね。カエデ。貴方が、皆の代表です。他の者もいいですね?」

 文句が出るはずもない。
 上位者からの命令は絶対だ。

 ルブランは、5人に、知識として”知っている”と思われる内容を含めて、マスターに関する物事の説明を行う。
 自分がマスターの眷属になってからの話は、丁寧に、マスターの偉大さを伝えるように、5人に話して聞かせた

 5人は、黙ってルブランの話を聞いた。

「子どもたちの教育を行うために、あなた達5名を召喚したのです」

「ルブラン様。他の眷属はいらっしゃらないのですか?」

「貴方たちが、側近です。マスターの手足となって働きなさい」

「「「「「はっ」」」」」

 説明が終えた、ルブランは、5人にしっかりと確認する。皆が、ここまでは理解していると判断して、マスターが5人を召喚した理由である。子どもたちの教育に関しての説明を行う。

「問題が生じた場合には、個々で判断をしないで、皆で相談しなさい。全員の考えが一致しないときには、私を加えて話をしましょう。それでダメなら、マスターにお伺いをたてます」

 全員が頷くのを見て、ルブランは満足した。

「何か、質問やお願いはありますか?」

 代表に指名した。カエデが前に出て、ルブランに質問をする。

「ルブラン様。マスターは?」

「休まれています」

「夜伽」「必要はありません!」

 ルブランは、被せるように否定する。夜伽に呼ばれるのなら、自分の方が先だと考えているのだ。寝所に入るのも、自分だけにしたいと考えている。
 オプションで”夜伽”を許可しないようにしたのだが、それが間違っていた。”本”特有のミスリードを誘う表記だ。”夜伽”を許可すると、”夜伽を強要する”ことになり、マスター以外の異性を夜伽の対象として考えるのだ。同性の場合には、”夜伽の相手となる”となり強制力が働く。説明は、オプションには書かれていない。スキル夜伽というスキルがあり、”スキル”の説明に詳しく書かれている。

「失礼致しました。ルブラン様」

 カエデが、ルブランに頭を下げる。
 自分の役目では無いと考えたのだ。

「解ってくれたのでしたら嬉しいです。現状の把握は出来ていますか?」

 現状の把握は、自分たちのスキルや能力に関してだが、カエデを含めて、ルブランの言った意味を理解した。

「皆、大丈夫です。しかし、外の愚か者共の始末は必要ないのでしょうか?」

 能力の話よりも、やはり、魔王城に、いと尊き魔王様の居城に攻め込んできた者たちを許せない気持ちが強い。ルブランが最初に言ったように、殲滅を提案したい気持ちである。特に、武官として召喚された二人は、殲滅したい気持ちが強い。

「マスターは、必要ないと判断しました。貴方たちには、捕らえた子どもたちの教育をお願いします。ルブランである私は、魔王という設定なので、教育が出来ません」

 ルブランは、重ねての命令になるが、皆の心情も理解ができる。子どもたちの教育を任せる理由を、マスターから言われた設定を告げる。

 皆が納得したように頷く。

「ルブラン様。俺と、バチョウは、武術を教えることになるが、設定はどうしたらいい?」

 カンウから、ルブランに教育に関する質問が出る。
 二人とも、召喚されるときに、適当に半々になるように武術を付与されている。そのために、ほぼ万能型になってしまっている。

「そうですね。子どもたちは、成人まえで、戦いには慣れていません。狩り向けと対人戦の二通りをお願いできますか?」

「わかった。武器や防具は?」

「マスターが用意するとおっしゃっています」

「なぁ。外に居る連中から、奪ってこられないか?手出しはしないが、武具や物資を奪うのはダメか?戦力を削る意味でも有りだと思うが?」

 ルブランが考えていなかった方法だが、有効だと判断出来る。
 それに、”いやがらせ”に繋がると考えた。

「そうですね。バチョウの言っている内容は、確かに有効ですね。マスターに確認しましょう」

「おぉ!頼む。その時には、俺とカンウで向かう」

 ルブランも、二人で十分だと思うのだが、説明をするときに心配されてしまうことを考えた。

「サポートで、ナツメかモミジを付けましょう。・・・。4人の方が、マスターがご安心しますね。4人で向かうことにしましょう」

 5人全員に行かせるのは、連絡係が居ないのは”まずい”と判断して、代表を除く4人で作戦の実行を行うことにした。
 説明を行うときに、これでも戦力は過剰なのだと説明して、実際に作戦を実行する時に、確認をしてもらえたら、戦力が過剰なのだと理解してもらえるかもしれない。

「「「はっ」」」」

 4人は嬉しそうに頭を下げる。
 頷く4人を見て、満足な気持ちになる。

「許可が出たらですよ」

 ルブランは、しっかりと釘を差しておく。作戦を考えると、反対されるのは、”危険”だからという理由だが、そのために、一度は戦力の分析が必要だと説得すれば大丈夫だと考えた。

「ルブラン様」

「なんですか?」

 話を聞いていた、カエデがルブランに自分の疑問を告げる。

「はい。カンウたちが、武具や防具を奪ってくるのは、戦略的にも賛成なのですが、子どもたちに渡すには些か問題があると思います」

「問題?」

「はい。ルブラン様のご説明では、子どもたちの大半は獣人種です」

「そうですね」

「それに、成人前の子供で、人種でも獣人種でも、これから成長します。武具のサイズは、良いとしても、防具はサイズが合わない可能性があります」

「そうですね。これからの事を含めて、マスターに相談しなければなりませんね」

 ルブランとしては、子どもたちの教育を任せる部下が出来た時点で、興味が半減している。
 今は、子どもたちに関する相談をするという理由で、敬愛する人物と話をするのが目的になりつつ有る。

「あの・・・。ルブラン様。マスターのお力に頼ってしまうのですが、ドワーフ族を呼び出すことは難しいですか?」

 ナツメが、ルブランに質問という形になるが、これも、ルブランが考えていなかった方法だ。

「確かに、鍛冶場を用意して、ドワーフ族に任せれば・・・。武器や防具の問題は解決しますね」

「はい。子どもたちの中には、鍛冶に興味を持つ者が出てくる可能性もあります」

「そうですね。そうなると、エルフや人族も必要ですね。錬金は人族が得意ですし、罠などのレンジャーの技術はエルフが得意だったですよね?」

「はい。盗賊の技術なども必要になりますし、神聖スキルも必要です。闇スキルや光スキルもあれば・・・」

「わかりました。マスターにご提案しましょう。他に、ありますか?」

「そうだな。ルブラン様。子どもたちを鍛えるのはいいが、安全な実践場所があると、訓練にもメリハリが出てくるのだが?」

「森では不満ですか?」

「森でもいいが、侵略者たちが居るかもしれない場所で訓練はダメだろう?」

「そうですね」

「ルブラン様。ご確認いただきたいのですが、私が持っている知識では、”特別な領域を構築できる”。その領域では、証を持つものは”死なない”となっています。魔王様なら、何かご存知かもしれません」

「モミジの知識ですか?わかりました。マスターに確認しましょう」

 ルブランは、5人を見回すが、もう何もなさそうだ。

「ないようですね。何か有りましたら、私の部屋は、”ここ”です。訪ねてきて下さい。あなた達の部屋もマスターがお作りになってくれています。空いている場所を使って下さい。それでは、仕事に取り掛かって下さい。マスターの許可が出ましたら、連絡します」

 皆が返事をしたのを確認して、ルブランは自分の部屋にはいる。
 部屋に入ったと同時に、呼び出しがあり、マスタールームに移動する。

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