350章 一気ににぎわう店内
シノブは焼きそば店に出社した、ミサキに深々と頭を下げる。
「ミサキさん、無理をいってすみません」
「これくらいならいいよ」
マイ、ユタカ、シラセ、フユコは退屈そうにしていた。彼女たちの様子を見ているだけで、昼からの状態ははっきりとわかった。
「マイさん、ユタカさん、シラセさん、フユコさん、30分後にはたくさんの人が来るはずです。しっかりと働いてくださいね」
フユコのアホ毛はピンと伸びた。
「フユコは頑張るのだ」
マイはテンションをあげる。
「焼きそばを作って、お客様を笑顔にするぞ」
ユタカは右のこぶしを突き上げた。
「頑張る」
シラセは大きな欠伸をする。
「しっかりとやっていく・・・・・・」
声のトーンは徐々に小さくなっていく。無人の状態だからか、モチベーションは低かった。
「ミサキさん、カウンターをお願いします」
「わかった」
カウンターは無人。お客様のいない店内は、異様な静けさを漂わせていた。
10分経っても、誰もやってこなかった。午前中はあれだけの人でにぎわっていただけに、別の場所にいるような錯覚に陥る。
シノブはこちらにやってきた。
「人が極端に少ないですね。普段はもう少し、やってくるのですが」
「午前中はあんなににぎわっていたのに・・・・・・」
「30分くらいすれば、たくさんやってくると思いますよ。私は仕込みをしてくるので、お客様の相手をお願いします」
空いた時間には、焼きそば、豚肉、キャベツなどの仕入れを行う。シノブに本当の意味での休みは、なかなか与えられない。
10分後、6人組の女性がやってきた。年齢は15歳から18歳といったところだった。
「いらっしゃいませ」
あまりに退屈だったからか、仕事モードに入れていなかった。
「ミサキちゃんは休みだったような・・・・・・」
「ミサキちゃんだ・・・・・・」
「ミサキちゃん・・・・・・」
「ミサキちゃん、サインちょうだい」
「ミサキちゃん、握手したい」
「ミサキちゃんの焼きそばを食べているところをみたい」
「ミサキちゃんに焼きそばを20人前」
午前中は25人前、午後からは20人前の焼きそばを食べる。腹ペコ成人でなければ、絶対に食べ切れない量といえる。
閑古鳥の鳴いていた焼きそば店に、続々と人が入ってくる。店内はあっという間に、満員になってしまった。
「ミサキちゃん、サインをください・・・・・・」
「ミサキちゃん、握手をお願いします」
「ミサキちゃん・・・・・・」
おなかはギュルルとなった。体の反応に対して、店内は大いなる賑わいを見せていた。