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第3章の第48話 くじ引きと、一触即発



【ファミリア星立総合運動公園陸上競技場】
【――くじ引きが続けられていた……】
【進行役を買って出ているのは、星王アンドロメダ様の直属の部下、3英傑の3柱の1人、ティフさんが進行役を務めている】
『――ここで確認しよう!』
「!?」
『ここ、アンドロメダ星に残るのは2000人! アクアリウス星には1500人! ソーテリア星には1000人!』
「……」
『合わせて地球人の難民4500人を受け入れるように、手続きを進ませています……。
……。
……ですよね?』
「はい」
「ええ」
「もちろんじゃ」
「相違ありません」
「うん、僕もそう聞いてた」
「うん……」
ティフさんの問いかけに答えたのは、ヒース、シャルロット、アンドロメダ王女、デネボラ、L、そしてスバルと頷いて答えたのだった。
『そろそろ、ランダムにアクアリウス星に送る人数を限定したいと、私、ティフは考えます。
……。
……いかがでしょうか?』
「「……」」
それについて考えるのは、ヒースさんとシャルロットさんだ。
それは大事な事だからだ。
そこでアンドロメダ王女様が。
「……なら、先に体の弱い子供達や胎児を宿したお母さんたちは済ませたのか?」
『ええ、もちろん! 抜かりありませんわ』
「ふむ……」
と一考するアンドロメダ王女様。

「とすると、必要なのはお父さん達、働く人か……!」

「!」
振り返る一同。
その呟きは、スバル君のものだった。
「……」
笑みを深めるヒースさん。
(ついにきたか……!! 上手くこちらに引き込めないとな……シャルロット!)
(ええもちろんわかってますよ、ヒース!)
アイコンタクトを送り合う2人。
シャルロットさんも笑みを深め、周りに気づかれないよう、小さく頷き合うのだった。
もちろん、タダでここまでやらない。
将来的な見返りも含めて、極秘ミッションとして仕事を請け負っているのだから。
2人が考えていることは、ほとんど同じだった。
(若い働き手を確保する……!!)
(将来的な若者を確保する……!!)
そこだけは譲らないとばかりに、意思を統合をしていた。
――だから、こう自然と問いかける。
「――スバル君どうだろう?」
「んっ?」
「こちらアクアリウス星には、まだ幼い子供達と胎児を宿したお母さん方が多分にいる!」
「……」
事実の言葉で問いかけるヒースさん。これは駆け引きだ、交渉の材料だ。
こちらもただでは引き下がらない。
難民を請け負うのだ。
将来的にメリットになる駆け引きを、僕はこの時仕掛けた。
「そこでどうだろう!? 君の判断で便宜を図ってくれないだろうか?」
「えっ!?」
ザワッとこれには会場中がざわついた。
「今君には、地球人の難民達のこれから先の人生を預かっている……『地球の代表』なんだ!」
「!」
事実の言葉をもって問いかけるヒースさん。
その言葉は、スバルの認識を改めさせる。
「君の一存で、難民達を好きに移動できる……!! それが君が有している……力なんだよ!」
「……」
ついに、その判断に迫られた。
「……」
その時僕は、「う~ん……」と考え込んでしまう。
「スバル君、迷う事はありませんよ!」
「シャルロットさん」
「フフッ、ここまで仲介役を買って出てくれた、あたし達に応えるためにもね……!」
「……」
圧を加えてくるシャルロットさん。
ここだけは譲らないとばかりに、少年の精神を揺り動かす。
次にヒースさんが語りかける。
「君なら、きっと! みんなが納得してくれるいい答えを出してくれると、僕達アクアリウス星人は信じているよ……!」
「……」
それは駆け引きだった。交渉の材料への問いかけだった。
「……」
「……」
「う~ん……」
見詰めるヒースさんにシャルロットさん。
スバルは一考し続ける。
「ちょっと質問なんですが……」
「何かな?」」「なに……?」
「水が豊かな星なんですよね?」
「? あぁ、そうだが……」
「うん……」
「じゃあ、お魚をメインにした水産課の人達を回しますよ!」
「……は?」「え……?」
「クジラでも何でも、力仕事関係はそうした人達の方が詳しい、と思います!」
「……」「……」
言われてみればもっともだ。
これには会場中の人達も、それとなく頷き合う。
「ティフさん、変わってください!」
『……フッ』
僕は、ティフさんと立ち位置を立ち替わるのだった。
これから演説を行うのは、スバルだ。


☆彡
『――この中に、お魚や、水産課関係に詳しい方はいませんか?』
「………………」
それはチラホラと、その手が挙がるのだった。
『見た感じ、日本人が多いですね? ……これは……?』
スバルは、ヒースさん達を見て伺うが……。
「……」
「……」
ヒースさん、シャルロットさんとわからないようで。その返答は返ってこない……。
そこで、この壇上にいなかったアユミちゃんとクコンちゃんの2人が走ってきて、それを告げる。
「スバル君!!」
『!』
「聞いて!! あの時、あたしとクコンちゃんは、派遣された宇宙船を10機づつ持ってたの!!」
アユミちゃんの発言に。
隣にいたクコンちゃんも、コクリと頷く。
『10機……!? 計20機か……!?』
「そうよ! 1機当たり乗員数は50人まで!! あたしは暮らしている長崎と諫早に振り分けた」
「あたしはもちろん、大村と諫早よ!!」
クコンさん、アユミちゃんと言いあう。さらに、話が続く。
「あたしの暮らしているところだもん!! そこには多く振ったわ!!」
「うん!」
『……なるほど……』
「聞いて!! 長崎は、昔、諸外国と交流を図るために国内で初めて開国したの!!」
『開国……!!』
それは大事な事だった。
「小さな島国が、大きな大国と渡り合うために、交流を深めるため、長崎出島港で、その先陣を切った!! それが長崎のルーツよ!!」
『長崎って、そうだったのか……』
僕は小さく頷き得る。
「……役に立てて!!」
『はいっ!!』
僕は、クコンさんにそう答え、小さく頷くのだった。
そして、ヒースさん達に振り返り。
『アンドロメダ星にも、ソーテリア星にも、海が当然あるんですよね?』
「うむ、もちろんじゃ!」
それについて答えたのは、アンドロメダ王女だった。
僕の問いかけは続く、バランスを取り合わないといけない。
『なら答えは1つです!! アクアリウス星には4! アンドロメダ星には3! ソーテリア星には3と振り分けます!!』
オオオオオッ
「いや、ちょっとスバル君、もう少し便宜を……!!」
これには対応に困るヒースさん。
ダメだこんなのは、まさかこの子がこんなにも身勝手な子だとは。
まさかここまできて、今まで便宜を図ってきたのに……ッ。
「!?」
何だ、ここでスバル君が、僕達から視線を切り、
再び難民達の方に振り返ったんだ。
『長崎にお住まいの方で、実際に船に乗っていた方は、何人いますか? 手を挙げてください!』
「ッ!?」
ザワザワ
これには迷いながらも、船を持つ人たちが、その手を挙げていく。


☆彡
別所、その光景を見ていた3つの星の王達は。
「――お前のところのプロトニアの教育方針……あれは何だ!?」
「……ッ」
「ほほ、これは滑稽じゃのう! 見よ、男(おのこ)ばかりではなくあの女子(おなご)も同じじゃ! 目先の利益ばかり先に走りよる……!」
「……あのバカ……宇宙の晒し者になりおって……ッ!」
「フン、ワシは一向に構わぬがの……。後日、各宇宙のメディア放送を通して、アクアリウスファミリアの評価は、……どのように映るのかの!?」
「……グッ」
「ほほ良い良い! そちらが一向に若い働き手を持っていこうが、こちらは一向に損得せぬぞ! ……いやむしろ、プラスに働くのかの? こちらも事後対応策を講じるだけじゃ!」
「……ッ……ッッ、あのバカ……! 大衆の面前で恥ずかしい姿を晒しおって……!!」
「フン!」
「ほほ、あの小僧、上手い事バランスを取りよったわ!」
「……」
その星王ガニュメデス様の見ておられる御前の前で、エアディスプレイ画面に映るのは、スバルの対応の仕方だった。
それは高く評価されるものだ。

『なら答えは1つです!! アクアリウス星には4! アンドロメダ星には3! ソーテリア星には3と振り分けます!!』
オオオオオッ
「いや、ちょっとスバル君、もう少し便宜を……!!」
これには対応に困るヒースさん。

「――あのバカ……」
これには頭を痛めてしまう星王ガニュメデス様。
周りにいた御二方は、ニヤニヤとニヤついていた。
「どうやらあの2人は、今までに自分達の行った評価に、自信がおありのようじゃのう? ほほ」
「……うつけが」
「……」
ブリリアントダイヤモンド女王、星王アンドロメダ、星王ガニュメデスと述べあう。
これには星王ガニュメデス様も見ていられなかった……。
「まだ、サポートが入った、娘さんの方がしっかりしてる……!」
「フン、愚女の評価を改める必要はない!!」
「……」
「……」
「更迭処分だ!! あいつの事はこちらに任せてもらう」
「厳しいわね。自分の子でしょうが……」
「……」
ワシは、この時、星王アンドロメダのところの娘さんが、上手く、状況に合わせ被せたことに評価を改めた。
少年の方も、バランスのとり方が上手い。
問題はヒースとシャルロットの両名だ。
後日、降りかかるかもしれない、最悪の印象の悪さだけは脱した。
ワシはその事に安堵した。
「……後でキツク灸をすえてやらねばならぬな……」
「フンッ」
「ほほ」
笑みを深めるブリリアントダイヤモンド女王様。
そして、言葉が続く。
「……ふむ、このスバルという小僧もっとるの」
「……」
「……」
「見よ、状況に流されるのかと思えば、民衆の方に意見を求めた」
「……」
「……」
「ここで仮に、状況に流されたとすれば、その地位が危うい……。
星王としては、失格じゃ!!
何より、一番大事なのは、周りへの理解じゃ!
良い良い、頼りなくても、それが正解じゃ!
周りの宇宙の見方としても、子供のやる事なのだから、好印象じゃよ! フフッ。
……どこかのワンマンプレイの独裁政権では、いつか周りへの信も失うからの……」
「……」
この時、星王アンドロメダ様が、その視線をブリリアントダイヤモンド女王様に向ける。
女王様のお言葉は続く。
「自分の星だけではなく、周りの星の理解も考えていかねばの……ほほほほ」
「フッ……。
では、以前話した通り、2人のレベルアップ昇格試験の話は……、……見送りで良いのじゃな?」
「うむ、構わず取り消してくれ」
「承認した」
星王達の間で交わされた秘め事は、ヒースとシャルロット2人のレベルアップ昇格試験の話だった。
2人はこのまま現状維持となる。
「ふむ……それでは周りに示しがつかぬのではないのか?」
「「?」」
「わらわに考えがある……!」
それはブリリアントダイヤモンド女王様からの、新たな追加任務だった。


☆彡
『長崎にお住まいの方で、実際に船に乗っていた方は、何人いますか? 手を挙げてください!』
「ッ!?」
ザワザワ
これには迷いながらも、船を持つ人たちが、その手を挙げていく――
『――……50代、40代の日焼けをした人の手が多いような……』
僕がそんな事を呟くと、反感を買ったように厳つい顔をした人が声を上げてきた。
「おいっ坊主!!!」
『!?』
「俺達は漁師だ!!!
そこにいる嬢ちゃんは、諫早市を推したが、中には、船を持つ奴等もいるぜ!!」
『えっ?』
「ああ」
その漁師の方の手が挙がる。
「あと……こっちで確認したが、大村市の連中もチラホラいたな」
「ああ」
「そいつ等も、俺達の知り合いの漁師仲間だ!!」
『……』
「こんな案はどうだ坊主!? 長崎は諫早や大村と比較して、その船を持っている連中の数が多い!! だからよぉ、俺達長崎の漁師組合がそのアクアリウス星ってやつに行ってやる!!」
『ホント!?』
「ああ、ホントだ!! 良かったな坊主、これで1つ解決だ!!」
『うん!』
「クッ……!」
(まさか……こんな事に……ッ)
まさかの漁師さんの呼びかけで、スバルの意を介さずに自分達で解決する流れになったのだった。
これにはヒースさんもシャルロットさんも、予定外の流れなので、悔しさに顔がにじむ。
(予定じゃあ、働き盛りの20代、30代ばかりを拾うつもりだったのに……!)
(まさか、漁師本人から名乗り出るだなんて……完全に予想外……!)
『ははっ……』
これには僕も、まさかという思いで苦笑いだ。
「んっ!? そう言えば嬢ちゃん達は、長崎の人間なのか?」
「んっ?」
「あたしはそうだけど、この子は違うわよ!」
「へ……?」
これには漁師さんも勘違い。
「この子と知り合ったのは、大分のホテルだけど……! この子の住まいは、大村市だもの!」
「うん!」
「……何だそうだったのか……?」
「おいおい、じゃああの坊主は!?」
「あぁあの子は……」
クコンさんが、僕の方に振り向くと。
『あぁ、僕は大村ですよ』
「へぇ~」
『で、隣にいる彼女が僕と同じ、大村の人間です!』
「……なるほどな……!」
「へぇ~」
これには納得し合う漁師さん。
「……じゃあ、こんなのはどうだ坊主!?」
『なに!?』
「坊主はこのまま、この星に残るんだろ!?」
僕はこの言葉にちょっと考えて。
『……はい!』
「じゃあ、大村の人間はこの星に残れ!!」
「!!」
「知り合いが多いほうがいいだろ!?」
『う~~ん…………うんっ!』
考えた僕は、そう答えたんだ。
「……決まりだな! お~い!! みんな!! 俺に考えがある!! 今からでも聞いてくれ!!」
「!!」
その長崎の漁師のおじさんの元に集まる人たち。
「俺、考えたんだけどよ!! もっとシンプルに行こうぜ!!」
「シンプル!?」
「ああ。大村の連中は、ここアンドロメダ星に残れ!!」
「!!」
「で、諫早の奴等は、あの星――」
「……」
その漁師おじさんが見たのは、ここから見える、お月様よりも大きい惑星サイズのソーテリア星だった。
「……」
「……」
「で、俺達長崎がアクアリウス星に行ってやる!! 俺ぁくじ引きとかギャンブルが苦手でな!! 性に合わねぇんだわ!!」
「……」
これには周りも頷く思いだ。
「っつーわけで姉ちゃん!!!」
『!』
それはさっきまで司会進行していたティフさんだった。
「俺達のくじ引きの件は忘れてくれ!!」
『!?』
「おいっ坊主そーゆうわけだからよ!! 長崎、大村、諫早はもう決まったぜ!! さっきのくじ引きの件も、無効で頼む!!」
「なっ!?」
「なっ!?」
『ウソッ!!』
『うんっ!』
「じゃあ、シンプルに頼んだぜ!! あんまり頭は使うな!! バカになっちまうからな!! シンプル・イズ・ザ・ベストだぜ!! もっと単純明快にやるのを忘れるなよ!!」
そーゆうとその漁師のおじさん達は、僕たちに背を向けて歩いていくのだった。
それこそ、海の男たちの背中だった。
『……シンプルにか……』
僕は『うんっ!』と強く頷き得る。
『……』
「……」
「……」
これにはティフさんも、ヒースさんも、シャルロットさんも、ただただ言葉を失ってしまう。
「フッ、自分の道は自分で切り開くか……!」
「! 王女様!」
「お前の強さの秘密も、案外、そこにあるのかもしれんな……」
『……長崎の起源(ルーツ)か……』
僕はそんな事を考えてしまう。
そこでアンドロメダ王女様が気を利かせて。
「ティフ!」
『ハッ!』
「デネボラ!」
「はい!」
「長崎、大村、諫早の3つは無効試合じゃ!! すぐに取り消して、本人たちの意思に沿うように!!」
「はいっ!」
『……あの』
「何じゃ?」
『それだとまだ幼い子供や胎児を宿したお母さん方の負担が……』
「あの海の男達を見よ!」
『……』
その頃、あの漁師のおじさん達は、ご家族の方と話し合っていた。
「自分達の力で、きっとやり遂げるじゃろう……!! わらわ達は侮っていた……地球人たちの未来を切り開く力を……!!」
『……』
「これはまた1つ、大きく学んだな」
「……フッ」
そのアンドロメダ王女様の御言葉に、あたしデネボラも笑みを深めてしまう。
「……」
「……」
『……』
2人が、ティフ(あたし)を見たことで。
『承りました! その意見を承服します!』
「ッ……」
(そんな……!?)
これには少なからずヒースさんもシャルロットさんも、軽くショックを受けるのだった。
(完全に計算違いだ……!! あんなおじさん達が出るだなんて……!! しかもあれは、スバル君たちの故郷の人たちじゃないか……ッ!!)
「クッ……」
(完全にしてやられた……ッ!! あんな意図しない動き、まるでイレギュラーだ!!!)
これにはヒースさんも苦虫を嚙み潰したような面持ちをするのだった……。

【――人の動きが活発になって、自分達の意思で動いていく】
【その頃、僕は思う、『自分の道は自分で切り開く』、昔、父ちゃんが言ってたな……】
【僕はそれを、今日この日、この人達に教わったんだ】

「これはこれで、わかりやすくていいな」
とレグルスが零す。
「シンプル・イズ・ザ・ベスト……か。俺も見習うところがあるな……!」
と俺は零した。
「さすがおじさん達ね」
「うん、さすがにわかりやすいわ。さすが海の男って感じね。……フッ」
「フフッ……」
アユミちゃん、クコンちゃんと言いあう。それは清々しいほど海の男達の姿だった。


☆彡
『――さてと!』
と意気込むスバル。
『僕も簡単にやるかな!』
「!?」
それはスバルに訪れた心境の変化だった。
「なに? スバル?」
『フフッ、もっとシンプルにやろうって思って!』
「え~!? なにそれ面白い~!」
笑みを深めるスバル。つられて笑いかけるL。
そして、それを語り出す。
『――皆さん、誠に勝手ながら、ここからは僕の意思で、あるグループの人達を引き抜くことを許してください!!』
「!?」
「ほぉ」
これにはあの漁師のおじさんの関心を買う。
(さて、お手並み拝見だ坊主……!)
『恵さんのホテルのところは確定しているので、他には――』
「………………」
その経過を見守る難民達一同。
「……」
「……!?」
少年の視線が動き、恵グループのところにいたクリスティさんに注がられた。
あたしは、その視線に感づき、周りの子達とペチャクチャ喋っていたけど、それを止めて、その視線と向き合う。
「……」
『……』
あたしとスバル君の視線がかち合い。
僕は小さく頷き、それを告げる。クリスティさんの未来のために。
『僕達の仲間のグループに、クリスティさんという女医の方がいます!』
「!」
『彼女は、僕やアユミちゃんやクコンさんとは違い、まだ生きているご家族の方がいらっしゃいます!』
「!」
「「「!」」」
とこれにはクリスティさんのパパが、その美人3姉妹の方々が反応する。
『僕としては、引き合わせたいと考えています! ……なんかひと悶着あったみたいですが……。
……。
……よって、このご家族の方を、アンドロメダ星のブロックに残したいと……僕は思います!』
クリスティのパパが、美人三姉妹が反応を買う。
それは訪れた、またとないチャンスだ。
娘に思い知らせてやるッッ。自然、その拳に力がこもる。
だが、少年はその事をつゆ知らず、演説を続ける。
『……いかがでしょうか……?』
ザワザワ
そして、難民達が隣同士で話し合う。
「別にいーんじゃないか?」
「うん、家族なんだしな?」
「当然じゃねえ!? むしろひとまとめにしちまえよ!」
「別に構わねえぞ――ッ!! 坊主!! むしろその意見は賛成だ!!」
あの漁師のおじさんが発言したことで、僕は水を得た魚のように、躍り出す。
『……』
コクンと強く頷き得る。
「あの子……フッ……」
これにはクリスティさんもほくそ笑む思いだ。それはスバルなりの優しと気遣いだった。
で。
「あいつ……あんな子のグループにいたのか……!?」
「きっと騙されているのよあの子!!」
「きっとそうよ!! そうに違いないわ!!」
「お姉ちゃん、あんな小さな子まで騙して……!! ……ッ、許せないわ!!」
とそのご家族の方々が勘違いのまま、頷き得る。
4女なんかその拳を震わせていた。
「何なんだこの家族……?!」
「よぅわからん……」
周りにいた人達も疑問に思うところだ。
また何かもう一波乱が起きそうだった。


☆彡
『――さて、では次に、クコンさんの知り合いの方で、南極大陸で調査船に関わった人達は、いませんか!?』
ザワザワ
とこれには難民達も騒ぐ。とそんな中、手が挙がった。
『……あなたは……?』
「ああ、私達は南極大陸で調査と研究を行っていたグループだ! 世界各国から有志を募り年間を通して、調査と研究を行っていた科学者と研究者たちの集まりだ!!」
『調査と研究!? それって僕達が今、欲しいものじゃないですか!?』
「ああ、坊や達が何が欲しいのかわからないが、役立てるものがあるなら役立ててくれ!」
『決まりです! あなた達を、アンドロメダ星のブロック……! いや、僕たちのグループに引き抜いたいです!!』
「……」
これにはアンドロメダ王女様も、コクリと頷き得る。
是非もなし。

【――小さく頷き得る南極大陸で調査と研究を行っていた科学者と研究者たちのグループ】
【これが後に、大きな手助けとなる】

「――いいものを拾ったな」
「ええ……」
そう問いかけるアンドロメダ王女様に。
コクリとデネボラさんは頷き得て、チラッと向こうの方を見やる。
その向こうにいるのは、クコンちゃんとアユミちゃんだった。
「何の因果かしらね……。
クコンちゃんのご両親は、南極大陸で調査を行っていた。とても寒いところで……。
そこには科学者と研究者たちもいた。
実地調査、フィールドワークを通して、共同研究を行っていた……!
それも世界各国の公的機関を通して……!!
その頭脳は極めて高い!! おおよそ今あたし達が欲している情報を有している、エキスパートのプロフェッサー達!!
その人達の頭脳と力があれば、共同研究で、全球凍結からの復興への協力な足掛かりとなります……!!」
「……」
コクンと強く頷き得るアンドロメダ王女様。
「強力な援軍ですよこれ!」
「フッ……」
わらわ達は、思いがけないところで、強力な援軍を得ていたのだった。
とここでヒースが。
(マズイなこれは……なんとか流れをこっちにも引き込まないと……!)
僕は、決心したように小さく頷いた。
「スバル君!」
『! ――はい!』
ヒースさんに呼ばれた僕は振り向く。
「見た感じ、南極大陸で調査していた人達の数が、少ないようだよ……」
『え……』
僕はこの時、その目線を難民達の方に向ける。いや、誘導する。
僕も、それを伺うと……。ホントにその数は少ない……なんでだ。
「……スバル君、君は知らないだろうが……。あの時僕達には、
派遣された宇宙船の数を、10機ずつ有していたんだ」
『……』
「全部で90機だ!
派遣された宇宙船1機につき、乗員数は50人程度……。それが合わせて4500人程度だ……!」
『……』
その話は、聞いて伺っていた。
聞き間違うはずもない。
ヒースさんは話を続ける。
「僕達と王女様達と、そして、君の連れを交えて、苦渋の選択をしたんだ……。
どこの地域に、どの宇宙船を派遣し、民間人を拾っていくのかね」
『……』
「当然、その事は、派遣された宇宙船の方にも連絡が行っていて、こちらの判断で、現場の人達を振り回すわけには、いかなかった……。
当然だよね?
民間人たちを救う為には、それこそ、辛辣の思いで、時には切り捨てなければならないのだから……!!」
『……』
「――僕達も、身を切る思いで相当苦しんだんだ……!!
そんな時、朗報が入ったんだよ……!
そう、見届け人としてプレアデス星から遣われた、宇宙船の数が数機あった……!
その時、ちょうどタイミングよく、クコンちゃんにはご両親の方がいて、たまたま南極大陸で調査していることがわかった……!」
ヒースさんは、シャルロットさんの方に目配りをして。
これにはシャルロットさんが頷き得る。
『……』
僕もその話とシャルロットさんの反応を見て、事実であることを容認する。
「後は言わなくてもわかるよね……? 聡明な君なら……」
「……」
(上手い! ヒースさすが……!)
シャルロット(あたし)はこの時、心からヒースの評価を持ち上げた。
(これで……)
(これで……)
((誘導できる……!!))
ヒースはこの時、目配りでシャルロットさんを見た。
その視線に感づいたシャルロットさんが、小さく頷き得る。
(人数は少数……! それも希少な科学者と研究者たち……! これを上手く使い、便宜を図っていく……フフッ!)
笑みを深めるシャルロットさん。
それは悪い笑みにも見えた。
『……』
この時、スバル(少年)はなんとなしに、嫌な空気を覚えた。
それは虐めを受けていた経緯のある少年だからこそ、勘づけた違和感だった。
『……』
だが、ヒースさんとシャルロットの両名は、今までよく便宜を図ってくれた人達だった。
頼れる仲間だ。いい面もあるし悪い面もある。それが人だからだ。
だから僕はこの時、俯きながら、黙考す。
「スバル君! こんなのはどう……?」
『……』
「あたしも見た感じ、数は少ない……。もしも万が一、何かあった場合……その損失は大きくない……!?」
『……うん』
「……」
ニィと笑みを深めるシャルロットさん。
「なにも、アンドロメダ王女様のところだけで、研究しなくてもいいんじゃないのかしら!?」
「!」
「!」
これに反応示したのは、王女様とデネボラさんだ。
「それはどーゆう?」
「共同研究しましょう!」
『!』
「「!」」
「全球凍結からの復興のテーマ!! これだけの大偉業です!! それにアンドロメダ星とアクアリウス星をかませませんか!?」
『!』
「「!」」
「もちろん、こちらからも援助はします! 便宜も図ります! ……だからそちらも……、……今、同じ思いではありませんか!? ……王女様!?」
「……」
「……」
わらわは考える。
あたしも考える。
(確かに……アンドロメダ星だけの研究では、壁が多過ぎる……!!)
(この機会にアクアリウス星との共同研究を結んだ方が、こちらが得るリターンも大きいのでは……!? しかもあっち星は、あたし達と違って、他の惑星との交流も深めている……!)
「……」
「……」
アンドロメダ王女様が、デネボラさんが頷き合う。
「クスッ」
笑みを深めるシャルロットさん。
「……もちろん、こちらからも願いたいくらいじゃ!」
「……ええ、共同研究のテーマ、こちらも是非はありません!」
チラッ、チラッとしたアンドロメダ王女様にデネボラさん。それは、アンドロメダファミリアとアクアリウスファミリアとの、腹の探り合いだった。
「……決まりですね!」
(よしっ!)
アンドロメダ王女、デネボラ、シャルロット、ヒースと述べあう。
ヒースさんはこの時、拳をグッと握りしめて、気づかれないようガッツポーズを取った。
((これなら……!! 復興後、アクアリウス星へのリターンも大きい!! もちろん、あたし達(僕達の)リターンも……!!))
だがこの時少年は。
(……なんかいいように騙されてるような……でも、それしかないし……)
これには僕も、心の底から頭を痛めるばかりだった……。

【――それは駆け引きであり、交渉術だ】
【仮にもしも、地球が復興できた場合、その富と名声は、この2人が今日日あってこそだ】
【それは、歴史の瞬間でもあり】
【多くの人が見届けた、歴史の生き証人でもあった――】

スバルが、アンドロメダ王女が、デネボラが、ヒースが、シャルロットが、円陣を組みながら、見つめ合い、頷き合う。
とシャルロットさんの口が開き。
「――では後程、話し合いの場を設けましょう!」
『うん……』
「異論はない」
「ですね」
「フッ」
シャルロットさんの問いかけを皮切りに、スバル(僕)が、王女様が、デネボラさんが、そしてヒースさんがほくそ笑むのだった。


☆彡
――とそこへ。
「――スバル!」
『!』
「僕と君が手に入れた『LUCA』と『シアノバクテリア』も忘れちゃいけないよ!」
僕は鼻で『フッ……』と笑みを深めて、『うん!』と頷き得た。
「「……」」
その2人の行動に、アンドロメダ王女様が、デネボラさんが察した後、「フフッ……」と微笑む。
「……」
その王女様が目を瞑り、その目を開けると……。
「チアキのあの『親書』には大きく助けられた……!」
『「!」』
「!」
スバルとLが。
デネボラが王女様に振り向く。
「希望を胸に、前に進める事ができる!」
「ええ」
答えるデネボラさんに。
僕とスバルは頷き得る。
「……あやつが生きていたら、現場のリーダーに据えていたのじゃが……」
「でもいませんよね?」
「ああ……あの娘子がいないのは、痛い損失じゃが……。……それを補って余りある!!」
コクリと、これにはデネボラさんも強く頷く思いだ。


☆彡
――スバルは壇上の前に出て、スピーチを行う。
『――では次に、『ワールドシステムロード(WSL)社の久保星斗総帥!!』
ザワッこれには難民達もざわつく。
「おいおい、そんな大物がいるのかよ!?」
「カ――ッ!! あいつ!! 完全に台風の目だわ!! 海が大しけだ!!」
あの漁師のおじさんも驚き、「てやんでい!!」と謎の言語を発するのだった……。
さすがに意味が不明である……。
『そのご家族と、あの船に乗っていたすべての乗り組み員達は、ここ、アンドロメダ星に残ってください!!』
「なっ!?」
「勝手だーっ!!」
『僕の意思に従ってください!! 後に、地球復興のためにも、御力添えをお願いします!!』
「なぁ……っ!?」
「マジかあいつ……」
アハハハハッ
難民達から歓声が上がる。
「本気か坊主っ!?」
「そんなのできっこねえだろ!?」
「夢見てんじゃねえよ!!」
『……』
これにはスバルも、対応に苦慮する。
だが、その時近づいてきたのは、相棒のLだった。
『!』
「スバル……」
この時、Lがスバルに何か耳打ちしたのだった。『フンフン……へっマジ!?』『うん』『あーなるほどねぇ……』と。
L(僕)はニッと笑みを深めて、スバルから距離を取った。
後は任せたよ。
とスバルは。
(こちらの秘匿情報を明かすのは、愚策だけど……)
僕は周りを見回した。
周りには、カメラ付きゴーグルをつけた人が、エアディスプレイ画面を向ける人が、飛び回る無人航空機が、上空を浮遊する宇宙船が、僕の一挙手一投足の動向を納めている。
(『ここで注目を買い、あちらから何らかのアクションがある』……か)
「フフッ」
笑みを浮かべるLに。
スバル(僕)は。
(なんか面白そうだ……! 君の意見に乗ったよL……! これから待ち受けるものが何なのか……楽しみになってきた……!)
僕は演技ぶる。
『か……可能です!!』
いかにも、今、知らされた体で……。
「!?」
『信じられないのかもしれませんが……たった今、入った情報によりますと……!
僕達の地球は、これまでに三度全球凍結した時代があり、僕達は知らず知らずのうちに、その1種を入手していました……!』
「……」
「……」
にやけるLに。
地球人の難民達がその顔を向ける。それは関心だった。
『それは『細菌』……! 『シアノバクテリア』と全生物最終共通祖先の『LUCA』です……!!』
――ザワッ!?
難民達の間でどよめきが起こる。
『最低でも、もうこの1種、細菌は入手しています!!』
――エエエエエ
これには地球人難民全員の驚倒をさらう。
で。
「そういえば、アメリカのイエロストーン国立公園に行ってたもんね!」
「うん!」
クコンちゃん、アユミちゃんと、その話の同意をするのだった。
これには周りにいた人達も驚き。
――ハァアアアア
驚愕をさらうのだった。


――別所。
これを見ていた星王達は。
「ほぅ……!」
「フム……」
「フフッ」
星王アンドロメダ、同じく星王ガニュメデス、その星を納めるブリリアントダイヤモンド女王様たちが、呟きを落とす。
「クックックッ、やっぱりこやつ、Lが選んだだけの事はあるわ……」
「アンドロメダ王も、面白いやつを見つけたのー」
「ホホ、この先どうなるのやら……ほんに面白い地球人じゃ……このスバルという小僧は……!」
そのエアディスプレイには、スバルとLが映し出されていた。


――だがこの時、南極大陸で調査を行ったことがあるグループは。
「『シアノバクテリア』……!?」
「あれっ? 何かが引っかかるぞ……?」
「あれって確か、二酸化炭素を吸って、酸素を作ってくれるやつだろ?」
「何だろうなこれ……?」
「う~ん……なんか論文に出てたような……」
「う~ん……」
一筋縄ではない。
全球凍結した地球復興において、『シアノバクテリア』は必要なものの1つにしか過ぎないのだから……。


☆彡
『う~ん……』
「……」
スバルが難民達を見て。
その難民達はその動向を伺う。
『……』
とその少年が上を向いて……。
「……うん、もう案はないかも……!」
ズコッ
これを聞いた難民達はズッコケた。
――とこの様子を見ていたプレアデス星人たち、その見届け人たちは、多少ガックリきて、気落ちしていた……。
「――……あいつ、ここまで引っ張っておいて……それはないだろ……」
「やっぱ、ガキだわ……」
「はは……でもあたしあの子……」
「んっ?」
「案外好きかも」
「……その好きは、どんな好きなんだ?」
「ちっと気になるよな?」
「ああ」
「そうねぇ……うん、面白さかな?」
「「ははっ、何だそりゃあ!!」」
「おもしれー!」
「フフッ」
少年はいい意味で、プレアデス星人のお姉さんから、愉悦を買っていたのだった。
――壇上に伸びる足。
『……』
「……」
その人物は、当人の少年のもので、歩む先はシャルロットさん達だった。
『……次お願いできますか?』
「フフッ、いいわよ!」
とそのシャルロットさんが壇上の前に名乗り出る。
これには目ざといおじさん達は。
「おっ! 若い姉ちゃんだ!」
「金髪青目くりくり! もろ好みだ!!」
その難民達から、その容姿に対して高評価を買うシャルロットさん。
僕から見ても、美人さんに見えるのは当たり前だ。
『……』
シャルロットさんがその口が開き、その名を告げる。
『――国際警察のリンシェンさん! いらっしゃいますか!?』
「………………
 ………………
 ………………」
シ~ン……
と反応がなかった……。
『あれ……!? リンシェンさんは……!? ……そんなはずはないんですが、報告にもあったし……』
訳がわからない……。
とそこへ、民衆をかき分けて進んでくる男女の子供達がいた。
「ちょっと通して!」
「通してください!」
『!?』
シャルロット(あたし)の目に映ったのは、男女の子供達だった。
「リンシェンさんは来れないよ!!」
『え……?』
「だって大怪我してるもの!!」
『は……。……き、君達は……!?』
「僕、マオ!」
「あたし、メイリィ!」

【マオ 12歳 出身地モス国、産まれは台湾人】
【メイリィ 12歳 出身地モス国 産まれもモス国】
2人とも、スバル達よりも年上で、中学生ぐらいに当たる年齢だ。
だが、2人の服装はボロボロだった。

壇上にいるあたしの目から見て、この子達の服装は全体的にボロボロ……。
ほつれ、破れ、小さな穴が空いていて、どんな場所にいたんだろうと思わせる。
でも、リンシェンさんの事が気になって、あたしは、この子達にこう問いかける。
『あの来れないとは……?』
「僕達は大怪我を負ったリンシェンさんを、下水道から運んで、病院に連れて行ったんだよ!!」
『げ、下水道ッッ!?』
これにはとんでもなく驚くあたし。
加えて、この時周りから、「ドブネズミ」かよ、と侮辱の声が上がった。
「「……ッ」」
周りの意見、見方は下に見られていた。
でも、今もまだリンシェンさんは戦っている。
あたし達の命があるのは、あの人が身を挺して守ったからだ。
だから、ここであたし達が戦わないで、言わないでどうする。
だから、この時、あたしはこの人に助けを求める。
「……ッ! でね!! どの病院も病室が満席でね、不衛生なまま仮設テントに運ぶしかなかったの!!
がんばって――って祈る思いでね!!
リンシェンさんは大怪我と病気と戦ってるの!!」
『……ッ』
「その時、偶然、宇宙船がきて、リンシェンさんの名前を知っていたから、その人達に助けてもらったんだい!!」
「うん!! ……でね!! 今のあたし達が生きているのは、あの人のおかげなの!!
体中傷だらけで、絶命してもおかしくない!!
……だから……助けて!!」
「ねえ、お願い!!」
「「お姉さんを助けて!!!」」
『……ッ』
(まさかそんな事に……!!)
完全に計算違いだわ。
『……わかったわ! じゃあ、リンシェンさんやあなた達には、病院を手配してあげる!! ……ティフさん、お願いできますか!?』
「ええ、もちろんよ。すぐに問い合わせるわ」
そのティフさんが、手を挙げると監視員の人達が向かうのだった。
『シャルロットさん……?』
「!」
そのスバル君の心配する声が背中から聞こえて。
あたしは俯きながら、口を零す。
『ええ。ここであたしが抜けた方がいいわね……』
あたしは向こうにいるヒースと視線を合わせて、『「……」』頷き合った。
あたしはヒースから視線を切り、壇上の下にいる子供達に語りかける。
『あたしを、そのリンシェンさんの元に連れて行って!』
「こっちだよ!!」
「ついてきて!!」
あたしは壇上から飛び降りて――着地したすぐ後に、後ろに振り返って、「あとお願いね!!」と言い残した。
そのままあたしは、子供達の背中についていき、この場を後にするのだった……。
『………………』
壇上からその様子を認めた僕達は、その3人の後姿を見送るのばかりだ……。
まさかこんな事態になるだなんて……。
完全に想定外だった。
ここで僕達は、シャルロットさんとは別行動になった。
「……」
これにはヒースさんも渋々、呼気を吐いて、難色と理解の色を示す。


☆彡
「……まぁしょうがないか」
周りの目もある。
今、シャルロットが取った行動は、ベストだった。
今後の事もあるしね。
クルリと僕は、アンドロメダ王女様達を見て。
「! ……あぁ構わんぞ。どうせわらわ達は、あの地球の難民達には見えもせんからな!」
「どうぞ、お願いします、ヒースさん」
「……では」
ヒース(僕)は、アンドロメダ王女様、デネボラさんから了承を得て、一礼を取るのだった。
彼女達に振られていた派遣されていた宇宙船の取り分は、残りすべて、僕が請け負う形になった。
『……』
ヒース(僕)は、壇上の最前列に立った。
その姿を一目見たおばさま方は。
「まあ、いい男」
「男前だわ」
「宇宙人でも、いい男! ポッ」
「ケッ、尻の軽い女どもめ!!」
等々、地球人の難民達から意見が出るのだった。ほとんど、この場では支障がない程度の話だった。
僕は、優男よろしく、おばさま方に手を振って、まず、軽い挨拶をする。
それから演説を行う。
『――次に、紛争地域で敵対関係にあった! ロバートさんとアイシャ―さん! いらっしゃいますかー!?』
僕がそう問いかけると。
怒声となって返ってきた。
これには僕もビックリで、それは荒れくれもの軍人、傭兵などだ。
「属国と一緒にするな!!! 隊長の名誉を汚すな!!!」
「何を――ッ!!! 何を抜かすんだッ!!! この侵略国め!!!」
物凄い怒りの声だ。
これには子供のスバル君も、オズッ、と後ろに引いてしまうほどだ。
(こ、恐っ……)
僕は素直にビビる。
『皆さん、落ち着いてください』
「ああ、知った事か!?」
「何なら今ここで、決着をつけてやろうか!!」
「侵略者め!!!」
「誰がだ!!! そっちが悪いんだろうが!!! マナーをわきまえない侵略国め!!!」
「何を!!!」
「やるか――ッ!!!」
『……』
(何でこんなに血の気が多いんだ……!?)
ピクピクとこれには、ヒースさんも顔が引きつってしまう。何だこれは、まるで話し合いにならないじゃないか……ちぃと血の気が多過ぎないか地球人。
それに対して、アンドロメダ王女様達は。
「紛争地域は、やはり血気盛んじゃな……!」
「ええ……。やはり、当然と言えば当然で……!
敵対国に当たる人に奪われた人達の数は、数が知れませんからね……。
親や子供、友人や親戚、中には手足がもげた負傷兵もいますから……。その怒気は、並大抵のものではありませんよ……!」
「……」
これにはわらわも嘆息する思いじゃ。
『……』
僕はその話を聞き、納得したように頷き得た。
「おいおい、これ、面白い事になってるぜ……!」
「よーし! あっちに回れ! 注目しろ!」
「ラジャー!」
カメラ付きゴーグルをつけた人が、エアディスプレイ画面を向ける人が、飛び交う無人航空機が、浮遊する宇宙船がちょっと移動して、それを収める。
「ちょっとこれ……マズくない……?」
「もう、何でこうなるかなぁ……」
クコンちゃんが、アユミちゃんが困る。
彼女達も、彼等がこの現場を撮影し、他所の報道機関を通して、実況生中継を流していることを知っている。
地球人が、その難民が初日目で、不手際を働けば、その風当たりは悪くなるばかりだ。
周りの見方が悪くなる。
だが自分達子供には、どうする事もできない。

「だいたいだな!! なんで壇上に上がっているのが『地球人』のガキなんだよ!!」

「!」
「「!」」
怒気のこもった発言に。
この時、スバルが、アユミとクコンが反応を示した。
振り返った先にいたのは、難民だった。
――注目すべきは、彼の首筋に『目に見えない針』が刺さっていた事実だ。彼は誰かに操作されていた。スバル達は気づけない。仕掛けたのが巧妙だからだ。
「――そんな奴に、どうこう言う権利はねえっ!!!」
「だなっ!!」
「なんでガキに決めさせんだ!! バカの集まりじゃねえのか!!」
とある難民の発言を皮切りに、他の難民達にも伝染していく。それは不平不満だ。
『……ッ』
これにはスバルもどうしようもなく、悔しさで、俯いてしまう。
『……もっともだ……』
(僕は子供だ……)
少年スバルにできる事は何もなかった……。悔しさで、苦虫を嚙み潰したような面持ちになる。
そこでアユミちゃんが思うは。
「そんな……!! スバル君はあんなにみんなのために頑張ってるのに……何でよ!?」
「無理よアユミちゃん!」
「! クコンちゃん?」
「所詮あたし達は、まだ子供だもの!」
「!」
「そんな子に、誰が耳を貸すっていうのよ……」
「……」
「……地球人の大人達の言い分が、100%正しいわ。地球人の難民達の視点で見れば……ね」
「……ッ」
「忘れないで。……これが現実よ!」
クコンちゃんはとても現実的で、今の自分達の立場を弁えていた。
「クコンちゃんは、ドライだね……」
「……。……! あなた、何を考えているの」
「……」
クコン(あたし)が気がつくと、アユミちゃんはあたしから視線を切り、壇上を見詰めていた。


――紛争地域にいた軍人たちの口論は続き。
「……! ……!」
「……! ……!」
ついに手を挙げるまでの喧嘩になる。
――バキッ
「るっせえ!!!」
ドシャ……
と殴り飛ばされた軍人が倒れる。
「てっ……てめえ、やりやがったな!!」
「へっ、かかってこ」
バキッ
横から殴り込みが入り。その軍人を殴り飛ばす。
ドシャ……
と倒れる軍人。
「はっ!! やっぱりお前等気に入らねえわ!」
「おら、かかってこいよ!」
「あの時の続きだ! オラッ!」
「こっこの野郎!!」
身を起こす、殴り飛ばされた軍人。
その人は、口元についた血をぬぐい取り。
「上等だ!! やってやらあ!!」
周りの軍人達と一緒に、抗争に身を投じていくのだった――
――その頃。
「――あたしが何とかしなくちゃ!!」
アユミ(あたし)は、壇上に上がるために、階段を駆け上がっていく――とそこには、壇上に上がっていた人達がいた。
その人物達の中には、当然スバル君もいて。
「あ、アユミちゃん!?」
えっなぜここに。
とアユミちゃんは向こうから走ってきて、その顔は凄い剣幕だった。これには僕もビビる。
「そのエアディスプレイ貸して!!」
「あっ!」
アユミ(あたし)はスバル君から、エアディスプレイの主導権を奪う。
やり方は、実は簡単。
エアディスプレイ画面に掌を乗せて、その主導権を奪い取る方法だった。
これにはスバル君も手を伸ばして「アユミちゃん!?」と背中でその声を聞く。
(ごめんねスバル君……! でもあたし、我慢できないの、だから許して……!!)
あたしは駆けながら、そのエアディスプレイの音声サウンドを最大MAXまで上げる。
そして、ヒースさんの隣に並び立ち。
『アユミちゃん何でここに!?』
ス――ッ
とあたしは思い切り息を吸い込んで、
「うるさぁあああああい!!!」
と叫んだのだった、大音響。
「!!!」
キィ――――ン
とエアディスプレイ画面を通して、それが会場中に取り付けられていた拡声器から、音声最大の怒声となって響く~~ぅ。
これにはすぐ隣にいたヒース(僕)さんも、もろに被害を受け、ビックリだ。
当然、これにはスバル(僕)も、ビックリだ。
当然、会場中がキィ――――ンと静まりかえる……。
「す、すげえ……声……」
「鼓膜を破る気か――ッッ!!!?」
『うるさぁあああああい!!!』
キィ――――ン
再び、エアディスプレイ画面を通して、それが会場中に取り付けられていた拡声器から、音声最大の怒声となって響く~~ぅ。
『戦争も糞もないでしょうが!!! 喧嘩してる暇があったらね!!!、あんたたち!!! そのまま地球に送り返してやろうかッッ!!! めっちゃ寒いんだからね!!!』
『アユミちゃん! アユミちゃん! エアディスプレイ画面の音量が最大になってるーぅ!?』
『もちろん、わかっててやってるのよーっ!!!』
キィ――――ン
三度、エアディスプレイ画面を通して、それが会場中に取り付けられていた拡声器から、音声最大の怒声となって響く~~ぅ。
「ヒィ!?」
『スバル君も何か言い返しなさいよ!!? こいつ等何もしてないくせにつけ上がりやがって!!! 何の役に立ってない、クソ退役軍人じゃないの!!!』
この行為と暴言により、溜まり兼ねた軍人達の中から、拳銃(ハンドガン)を取り出す人がいて、それを真上に向けて発砲したのだった
パンッ
「「!」」
「シャーラップ! もといフリーズ! おとなしく手ぇ挙げろ!!」
その軍人さんが構えた拳銃(ハンドガン)は、『MP-443グラッチ』に似ていた。
仮にMP-443グラッチの性能は。
口径9㎜、銃身長112.5㎜(MP-443)、使用弾薬9×19㎜パラベラム弾、装弾数18発(初期型17発)、作動方式ショートリコイル、全長198㎜、重量950g、銃口初速450m/s、有効射程50m。
製造国はロシアである。
これは2020年代、旧ロシア軍が携帯していた古いモデルのものだ。
が、現在は22XX年である為、時代背景がそもそも合わない。
型落ちもいいところだ。おそらくは新型であろう。
私達が知る旧ソ連、ロシアは再び、次代の流れで敗戦国となって、新しい国の名前となっている。
次こそは、周りの隣国に配慮した国になってほしいと思う。
これは新型である為、『MP-443RXグラッチリビルドクロウド』とする。
『は?」
「プリーズって、えっ? 何くれるの!?」
呆けてしまうアユミちゃんに。
英語が苦手なスバル君。
なんか残念な子だ……。プレゼントと聞き間違えてしまい、何かをくれるのかと思い、勘違いをしてしまったのだ……ッッ
『いや、スバル君、今のはフリーズといって……!?』
「――」
――ここから、時間がスローモーションになる。
スバルの危機感知能力がそれをさらう。
射撃の腕のいい軍人さんだ。
前方に突き出した拳銃(ハンドガン)を構え、引き金(トリガー)を引き、発砲した。
パンッ
拳銃(ハンドガン)の口径から発砲された弾薬は、螺旋回転を描きながら、直線状を突き進む。
狙った場所は、スバルの顔面の中央、鼻だった。
殺す気でいた。
だが、ここは地球ではなく、アンドロメダ星だ。
多分に重力の影響を受け、摩擦空気抵抗係数も受ける。さらにここは競技場でもあるため、吹き込んでくる風も強めだ。
当然、弾薬は下向きに変わり、空気抵抗と、風の流れを受けて、左側へややそれ加減になる。
それはちょうど、スバルからの視点では右手側に当たる。
「――!!」
その位置取りは、ちょうどスバルの首の右手側に当たり。
そこには大事な血管と静脈、神経が通っていた。
接触まで、約6mに差し迫った時――
――バリッ
とその一瞬、スバルの体に電気信号が流れて、緊急回避行動を取った。
――ビッ
スバル(僕)の首をかすめる。それは一瞬の出来事で、切れた箇所から血が滲み出る……。
凝縮されていた時間の密度がとけ、スローモーションから通常モーションに戻る……。
「――ひえぇ……」
僕は首の皮が裂けたところに、手を触れる。
『今、撃った……』
これにはあたしアユミも凝視するほど、今の光景を疑っていた。
恐怖で、この身が震え上がる。
ギリッ
「かような場で……」
憤慨を覚えるアンドロメダ王女。


「――チッ、外したか……!! 今度は外さん!!」
もう一度構えなおす。
次に狙うのは、少女の方だ。
「!」
『!』
「レグルス!!」
すぐにその名を呼ぶアンドロメダ王女。
――パンッ
構えた拳銃(ハンドガン)の口径から発砲された弾薬は、螺旋回転を描きながら、直線状を突き進む。
それは人々の頭の上を、物凄いスピードで飛んでいく様だ。
都合三度のいい描写が入る。人々の頭の上を疾駆する、疾駆する、疾駆する。
そして、同じように、レグルスがもっと素早く駆ける。
すれ違う両者。弾薬とレグルス。互い違いに行き交う。
先に辿り着いたのは、レグルスだ。
「炎上爪!!」
そして、その弾薬は――
『――!』
アユミちゃんの目の前で静止していた。
一瞬だけあたしがビビる。それを捉える。
それは、Lとデネボラさんのサイコキネシス(プシキキニシス)で静止している様だ。
すかさずスバル君がアユミちゃんに抱き着き、ドシャン、と押し倒す。
だが、仮にもしも、スバルが行動していた頃には、間違いなく手遅れで、アユミちゃんは絶命していただろう。
弾薬の高速回転が弱まっていき……。止まったところを確認して、その念力を解いて、床上にカララン……と落ちるのだった。
落ちた先は、あたしの目の前だったの。
『――ッ』
それは間違いなく、あたしの命を奪おうとした弾薬だったの――


「うわぁあああああ!!!」
「きゃあああああ!!!」
「オオオオオァアアアアア!!!?」
人を殺そうとした軍人は、その身が激しく燃え盛っていた。
それをやったのは、他ならないこの男レグルス。それは、炎上している男の背中側にいた。
炎上する軍人、それはただ燃え盛っているだけではなく、斜め一閃に線が入り――
――ズルリ
とそこにあった体の一部が抜け落ちたのだった。
胸から上のパーツと胸から下のパーツに断殺され、そのまま前にのめりこみ、倒れ伏し、絶命す……。
それを見た女性は甲高い悲鳴を上げる。
「キャアアアアア!!!」
「いきなり人が死んだぞ!!!」
「何だ今のは、いきなり人が燃えたぞ――ッ!?」
「何だ!? いったい何が起きたんだァ!!?」
叫ぶ人々。
場は混乱していた。
だが、これを知っている、もしくは見知っている、実際にあの場で味わった長崎学院の関係者達は。
「い……今のはあの時の……!」
「生きてたんだ……」
「あの炎だ……ァ!!!」
「炎の死神がいるぞォ!!!」
「きゃあああああ」
またある所では。
「クッ、やっぱりあいつ等は俺達の敵なんだ!!!」
「だっダマしやがって!!!」
この状況を俯瞰していたクコンちゃんは。
「この状況、かなりマズいんじゃ……」
(事態の収拾がつかない……)
事態は、最悪に向かって転げ落ちていく――
ガチャ、ガチャ、ガチャ、ガチャ
と次々拳銃(ハンドガン)を構えていく軍人達。
これを見たアユミ(あたし)たちは。
『「「「――!!」」」」』
絶体絶命のピンチに遭遇した。
「「死ね――!!!」」
その時、レグルスの手爪が燃える。


☆彡
別所。
星王アンドロメダがその口を開いた。
「アイ……沈めろ」


競技場に周辺にある拡声器を通じて、星王アンドロメダ様からの命が下る。
小さく頷くアイ。はい、王の仰せのままに。
アイと呼ばれた少女は、身を小さくし前傾姿勢を取り、その足に魔力を集中し――爆発。
ドンッ
と弾丸の如く躍り出た。


TO BE CONTINUD……

しおり