115. 吹きすさぶ春一番
115. 吹きすさぶ春一番
オレは従妹の雛山千春を家に泊めることになった。とりあえず夏帆に連絡はしないほうがいいだろ。面倒なことにしかなりかねんからな。
というより、千春はまだ中学3年生だ。何かあるほうがヤバい。変なこと考えるなオレ。オレは千春と夕食を食べることにする。
「ん。この煮物美味しい。秋兄、ちゃんと自炊してるんだね?」
「え?あっいやそれは夏帆が……」
「夏帆?秋兄の彼女?」
「ああ。あいつ料理だけは得意なんだよ」
本当に料理だけは得意なんだよな夏帆は。まぁ一応オレよりは家事全般万能ではあるけどさ。
「へぇ……あ!じゃあさ、今度教えてもらいたいな」
「はっ!?お前何言ってんだよ?」
「だって私も料理できるようになりたし、それにほら、私もうすぐ高校生になるでしょ?そしたらお弁当とか作りたいし」
「……」
こいつマジかよ……。こんな可愛い子が作ったお弁当だと……もし彼氏になるやつがいたら喜びそうだな。
「あの秋兄。迷惑かけてごめん」
「え?」
「今日。いきなり押し掛けちゃったわけだし迷惑だったよね?」
「いや押し掛けには慣れてるから気にするなよ。それで、いきなりどうしたんだ?」
「一応春から通うことになってるから秋兄の学校とか通学路とか見ておきたくて」
「受かるかわからんだろ?」
「推薦でもう受かったから。」
……頭いいんだな千春は。ん?通学路って?
「千春はこのアパートに引っ越してくるのか?」
「うん。しかも秋兄のとなりの部屋。両親が心配だからって。」
マジかよ。隣に千春と夏帆がいるのか?なんか色々ヤバイ気がしてきたぞ。それから雑談を挟んで寝る準備をする。今千春はお風呂に入っている。静かな部屋にシャワーの音だけが響く。
「何緊張してんだよオレ。千春は従妹だし中学3年生だぞ?」
そう自分に言い聞かせるが心臓の鼓動が激しくなるばかりだ。そしてしばらくして千春が出てくる。パジャマ姿の千春は髪がまだ濡れていてシャンプーの良い香りが漂ってくる。
「ふぅ気持ちよかった~」
「おっおう。なら良かったな」
「私の布団は?どこに敷けばいいかな?」
「えっとその辺に転がってくれれば良いんだけど……」
「わかった」
黙々と自分のことをする千春を見てるとなんだか悪い気しかしない。というより千春の姿を見ていると理性が崩壊しそうになる。落ち着けオレ!千春は従妹だぞ!?そんな目で見てはいけない。
「ねぇ秋兄。ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
「なっなんだ?」
「彼女さんどんな人?」
「え?夏帆?えっと……一言で言うとウザい。毎日オレの部屋に押し掛けてきて、ガタガタ言ってて……でも可愛くて憎めないやつだよ」
「へぇ……私も押し掛けてたら秋兄の彼女に慣れたかな……」
「え?」
「なんでもない。おやすみなさい。」
「おやすみ……」
オレは自分の部屋に戻りベッドに入る。今日の千春の様子が少し変だったが大丈夫だろうか?
「千春……まさかとは思うけど……いやそんなはずないか……」
オレはそのまま眠りに着くのだった。