105. ゆく年くる年
105. ゆく年くる年
時刻は23時50分。あと少しで今年も終わりだ。オレは夏帆と共に今年の終わりを迎えようとしている。
「ねぇ先輩?除夜の鐘ってなんで108回鳴らすんですかね?」
「人間の煩悩の数らしいぞ?そして煩悩を消すために1つ1つの回数を増やしてくのが一般的な方法なんだとよ。諸説あるけどな」
「へぇー、そうなんですか……先輩みたいですね」
「どこがだよ!」
「えぇ~いつも私の事をエッチな目で見てるじゃないですかぁ!先輩は煩悩だらけですよぉ~」
「言わせてもらうけどな、お前のほうが十分イヤらしいと思うんだが?」
「私は正常です。好きな人に欲情して何が悪いんですか?」
「うぜぇ……開き直んなって……」
そんな会話をしていると、カウントダウンまで残り1分前になっていた。
「じゃあ先輩、カウントダウンしましょうよ!」
「そうだな」
2人の間に沈黙が流れる。時計の音だけが部屋に響く中、2人は静かに見つめ合った。
「10秒前……9,8,7……」
「先輩、私幸せですよ」
「え?」
突然の言葉に戸惑うオレを他所に、夏帆は言葉を続ける。
「だって大好きな人とこうして一緒に居られて、大晦日を過ごす事が出来るんですよ?これ以上の幸せなんてないと思います!」
「夏帆……オレも……」
「3,2,1……あけましておめでとうございます!先輩!」
「あ、ああ。あけましておめでとう」
「ふふっ、先輩ったら動揺しすぎですよ?でもそういうところも大好きです!」
夏帆はそう言うと、オレに抱きついてきた。その勢いでベッドに押し倒される。
「おいこら!急に飛びつくなって!」
「いいじゃないですか!今日くらい甘えてもいいですよね?」
「まぁ、別に良いけどさ……」
「ありがとうございます。先輩……大好き……」
オレの胸に顔を埋めながら呟く夏帆。その姿はとても可愛らしく見えた。しばらくそのまま2人でベッドに寝転んでいた。今年も良い年になるといいな。そんなことを考えていた。