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60. 祭りのあと。今はそれで

 60. 祭りのあと。今はそれで



 そしてその日の夜。あれから家に帰るとオレの両親は祭りのあとの宴会があるからと家にいなかった。オレのLINEに母さんからは『今日は帰らないから2人でごゆっくり』父さんから『男になれ秋人』とメッセージが届いていた。

 オレはとりあえずシャワーを浴びて汗を流したあと、自室に戻りベッドの上に座った。今は白石がお風呂に入っている。

「……。」

 メッセージを見たせいもあるが変に緊張してしまう。いや、多分帰り道のいつもと違う感じが原因だろうな。なんか白石を意識してしまった……。白石はただの学校の後輩なだけなのに。あぁ、もう!落ち着けよオレ!! それから10分ほど経っただろうか。白石が戻ってくる。

「お風呂あがりましたよ」

 そこには髪がまだ濡れたままでパジャマ姿の白石がいた。その姿は見慣れないせいか、なんだか妙に色っぽく感じる。

「おっおう……なんか今日、親が帰ってこないらしい」

「え?そうなんですね……」

 ……勘弁してくれ白石。いつものウザいお前はどこに言ったんだよ!ダメだ緊張してしまう。この空気に耐えられない!

「あー……よし!ゲームでもするか!こういう時は夜更かししてゲームに限るだろ!な?」

「先輩がやりたいならやりましょう」

 良かった。どうやらいつもの雰囲気に戻ったようだ。しばらくゲームで遊んだがやがて終わりを告げる。そして電気を消して寝ることになった。

 正直眠れない。だって白石とは言え、女の子と同じ部屋にいるんだぞ?昨日とかこの前とはオレの感情や状況が違う。……こんな状況意識するなって言う方が難しい。そんなことを考えていると隣から声が聞こえる。

「あの、先輩……」

「なんだ?」

「エッチしないんですか……?」

「ブフッ!?ゲホッゴホ!!」

 何言ってんのコイツ!?いきなりすぎるだろ!!てかなんで急にそんなこと言い出したんだ!?

「なっ何言ってんだよ!?お前はしたいのかよ!?」

「いえ、別にそういうわけじゃないですけど……この状況ならするのかなって。なんか……花火見てから先輩変だし……」

 うぐっ……さすが鋭いなお前……。まぁ確かにちょっと気まずかったりはしたんだけどさ……。

「変なのはお前も一緒だろ!いつもならウザいくらい絡んでくるのに……調子が狂うんだよ……。」

「それは私も同じですよ……。普段通りの先輩を見てたら安心します。やっぱりいつもの先輩が一番いいですね!」

 はぁ……ホントこいつは素直というかなんと言うか……。とにかく少し落ち着いた。

「はぁ。変なこと言ってねぇで寝るぞ?」

「はーい。でも本当はしたかったんじゃないですか先輩?私可愛いですもんね?」

「うぜぇ……そんなわけねぇだろ?白石だぞ?あり得ないだろ」

 そう言って布団を被る。するとしばらくして隣から小さな声でボソっと聞こえた気がした。

「私はいつでも大丈夫ですよ……先輩」

「……うるせぇ。もう寝ろよ」

「はい、おやすみなさい」

 結局、その夜はなかなか眠ることができなかった。オレは白石のこと……なんて思うのはやめにする。きっと変な感情になるのは祭りの余韻のせいだから。オレ達はただの先輩後輩だ。今はそれでいい。

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