44. 頑張ってますアピール
44. 頑張ってますアピール
今日は図書館で読書感想文ようの本を探しに来ている。もちろんあいつも一緒だけど。
「ねぇねぇ先輩。どんな本を借りればいいですかね?」
「好きな本を借りればいいんじゃねぇの?お前の好みとか分からん」
「……そうですね。じゃああれを借りますね!」
と、その本が置いてあるコーナーに歩いていく白石。オレはその後ろをついて行く。そして、手に取った本をオレに見せてくる。
「これです!『恋愛小説のすすめ』っていうやつです」
「ほぉー……っておい。それ恋愛小説じゃなくて、普通の小説だぞ?」
「知ってますよ。ほら、私あんまり登場人物の気持ちとかわからないんですよね?」
「まぁそれは納得だが。お前は現実の世界でも人の気持ちが分からないだろ。」
「えぇー!?ひどくないですかぁ~?先輩の気持ちは一番理解してるはずなんだけどなぁ~。」
「どこがだよ!それにしてもなんでそんなもん借りるんだ?」
「うーん。特に理由はないですよ?ただ面白そうだなと思っただけですし。それにこの本なら主人公の女の子が頑張って、でも報われない感じの物語なので、一応、私も感情移入できるかなーって思ったんですよね?ねぇ先輩?」
うぜぇ……明らかに遠回しに私頑張ってますアピールが半端ない……。しかもなんか無駄にこっち見てきやがったし。
「あっそ。良かったじゃん」
とりあえず適当にあしらうことにしておいた。すると白石はなぜか頬を膨らませている。
「むぅー……」
「なんだよ?」
「先輩って私のこと好きなのに冷たいですよね?」
「別に好きじゃねぇし」
「ひどいですよぉ~。私は先輩のこと大好きなのにぃ〜!私のこと遊びなんですか?」
「遊びってなんだよ!別に付き合ってねぇだろ!」
いかん。こいつのペースに乗せられてる気がする。ここは一旦冷静になろう。
そのあとなんだかんだで本を選び、家に帰って読書感想文を仕上げた。結局、白石はほとんど本を読まずにオレが手伝う羽目になった。