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 ピノは間もなくして意識が遠退いた。重たい瞼を閉じる時、そこにローゼフの姿が映った。彼が名前を呼ぶと、優しそうな顔でぎゅっと抱き締めてくれた。ピノはそれが嬉しかった。最後にもう一度、彼と出会えて心から喜んだ。これが幻でもいいとピノは思った。その温もりと優しさが本物ならそれでいいと…――。

 雨が止むと空はいつの間にか晴れて朝日が昇っていた。そして、鳥達の鳴き声でピノはベッドの上で目を覚ましました。そしてふと目を覚ますと隣には彼がいた。

「おはよう、気分はどうだ…――?」

 彼は優しげな表情で話しかけると、ピノのオデコに触って髪を撫でた。ピノはこれが幸せな夢だと感じた。

「ローゼフこれは夢……? 夢でもいいや、ローゼフ優しいから夢だよね……? ボク、ローゼフのこと怒らしたから嫌われちゃったんだ……。顔も見たくもないって言われちゃった……。ボクなんて消えちゃえばいい……。うっうっ……ひっく……ぐすっ……」

 ピノは悲しげにそう話すと辛い記憶を不意に思い出した途端、瞳から涙を流して泣いた。ローゼフは泣いているピノをぎゅっと腕の中で抱き締めた。

「バカなことを言うな……! お前が消えたら、私も死ぬ……! すまなかったピノ、どうか私を許して欲しい……!」

「ロ……ローゼフ、これは夢……?」

「夢ではない、現実だ……! お前がいなくなって私は酷く後悔した。辛くあたってすまなかった…! お前が無事に見つかって本当によかった……! もうどんなことがあっても離さない……! ピノ、お前を愛してる…――!」

「ローゼフ……! ローゼフ、ボクも大好き! だってボクにはローゼフしかいないから、ローゼフがいないとボク死んじゃうよ……! だからお願い、ボクを離さないで……! ローゼフの傍にずっといさせて……!」

 ピノは幼い子供のように泣くと、彼にしがみついて大きな声を出して泣きじゃくった。ローゼフは頷くとピノを強く抱き締めた。

「ああ、約束しよう。私もお前がいないとダメなんだ。だからいつまでも私のそばにいろ……!」

 2人は熱い抱擁をかわすと、今まで以上の絆が芽生えた。ローゼフはピノをあやすと髪飾りの話をした。

「――ピノ、やはりお前は凄いな。母上が無くした髪飾りを見つけてくれてありがとう。これは母上と私にとっても大事な思い出の品なのだ。母上が誕生日の時、私が生まれてはじめて母上に贈ったんだ。母上はこの髪飾りを大事にしてくれた。きっと母上もこの髪飾りをみつけてくれたお前に感謝しているよ」

「えへへ……。ローゼフのお母さん綺麗だね?」

「ああ、そうだとも。私の自慢の母だからな――」

「うん、そうだねローゼフ。髪飾り見つかってよかったね!」
「ああ、ピノありがとう……!」

 彼はそう話すと優しく微笑んだ。彼の優しげな顔にピノは頬を赤く染めると、恥ずかしそうに照れた。

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