バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

 とても良かったお店の雰囲気のままに、ランチはとても美味しかった。サーモンときのこのパスタを選んだのだが、まろやかなクリームに絡み合っていてクリーミー。少しつめたい風も吹くようなこの季節によく合っていた。
 リゲルはランチセットのほかにも、アラカルトをいくつか頼んでいたけれど。
 サイドメニュー。ソーセージの盛り合わせやら、ジャーマンポテトやら。ランチセットだけでは、成人した男性のおなかを満たすことはできないのだろう。
 リゲルの食べっぷりは見ていて気持ちの良いほどだった。がつがつと、ではないが勢いよく次々に平らげていく。それはこの料理を美味しいと思っているからだ、ということがよくわかった。
 リゲルがランチセットに頼んだ、海老とほうれん草のグラタン。あれも美味しそうだった。
 今度、家で作ってみようかしら、とライラは思った。そしてリゲルを招くのだ。そうしたらきっと喜んでくれるだろう。
 海老も少し良いものを選んだらいいかな。オマール海老とか。見た目良く、少し豪華に。
 そう、クリスマスなんかに出せたら。
 考えてしまって、ちょっとやっぱり恥ずかしくなってしまった。
 クリスマスは家族と過ごすというのが、この街の定番。でも若い恋人同士は、二人きりで過ごすのも定番なのだ。
 ライラはまだそういう経験をしたことはなかった。当たり前のように、リゲルとそういうふうに過ごせたらいいなと思ったことはあるけれど。
 今年こそ叶えばいいのに。叶ってしまえばいいのに。
 だから、一歩進みたい。ライラの中で、勇気がほんの少しだけ前進した、ランチタイムだった。

しおり