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「こ、子どもに言われちゃって……その、恋人同士なのかとか……」
 きっと顔は赤いだろう。そして、ライラがそのことを嬉しく思ったことが二人にはわかってしまったはずで。
「そんなんじゃないんだけど! 幼馴染だし」
 取り繕うように言ったけれど、そしてそれは事実ではあるのだけど、なんの意味もなかったと思う。ミアはにやにやとしながら「でも好きなひとでしょう」と言ってきたのだから。
 にやにやとなんてしなくても、シャウラもきっと同じ気持ちだっただろう。そんな視線を感じた。
「そ、そう、だけど……」
 もじもじと言ったライラに、ミアは嬉しそうな声をあげた。声の高さに恥ずかしくなってしまうけれど、とめなかったのは部屋の中にほかのひとがいなかったからだ。
「えー、じゃあそれ、絶対意識してくれたって。恋人にしてくれるかもよ?」
 恋人にしてくれる?
 耳から入ってきたミアの言葉に、顔はもっと熱くなった。
「う、あ、あるかなぁ、そんな……」
 おまけに期待するようなことまで言ってしまった。
「あるわよ。そこで意識しない男のひとっているかしら」
 ミアとは対極的におっとりとではあるが、シャウラも言う。後押ししてくれるようなことを。
 二人にそう言われてしまえば、それは本当のことのような気がしてきた。
 そして、そう言われたかったのだということもやっぱり思い知ってしまう。聞いてほしいだけでなく、言ってほしくて話してしまった自分をみっともないとは思うのだけど、恋をしている少女としては、おかしなことではないと思いたい。
「そうだと、いいけどなぁ」
「そうだって思っときなよ。いや、それよりもうライラから言っちゃいなよ。いい機会じゃん」
 ぼんやりと肯定したライラの言葉には、さらに過激な発破がかけられた。これは今初めて言われたことではないのだけど。ことあるごとに突っつかれている。
「え! そ、それは無理だから」
 会話の展開は、毎回言いあっているやりとりへ入ってしまった。
「前から言ってるのに……リゲルさんなんて年上なんだから、ぼやぼやしてると取られちゃうよ」
 きゃんきゃんとかしましい女子トークは、教師が「そろそろ帰りなさい」と部屋を覗きに来るまで、夕暮れまで続いてしまった。

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