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「え、えっとね……昨日仕事終わりに待っててくれて……綺麗な公園に連れて行ってくれて……」
 惚気になってしまうのはわかっていたが、そしてまだ恋人のいない二人に自慢するようになってしまうのは心が痛んだが、話したい気持ちは確かにあった。
 なので正直に話した。昨日あったことを。
 真夜中の告白。抱擁。そしてキス。流石に抱擁とキスについては濁したが、わかられてしまっただろう。
「えーっ! そんな……公園とはいえ、夜景の見えるところでなんて、まるでプロポーズ! ロマンティック~」
 ビスクはうっとりと、羨ましげである声で言って、ほう、と手を合わせて頬に触れた。ストルも「シャイさん、まるで王子様ね」などと言った。
 今度はシャイのことを王子様と言われて、サシャはまたびくりとしてしまう。
 これだって比喩でしかないのはわかっている。けれど、友達の口から言われればほんとうに『王子様』と『お姫様』の関係に思えてくる。
 ほんとうにそのとおりなのだけど。なんというか、そうであってそうでないというか。
 上手く説明は出来ないし、出来たとしても二人きりの秘密である以上、友達には言えない話だ。
 なのでサシャは言った。微笑と共に。
「うん。本当に、王子様になってくれたの」
 その言葉にはビスクが、ぷぅっと膨れた。
「もう! 惚気て! 決めたっ、幸せのお裾分けにスイーツ奢って! そうね、トルテがいいわ!」
「そうねぇ、私もお裾分け欲しいわぁ」
 ストルまで悪ノリしてくる始末。年頃の少女にとっては、恋人ができるというのは最上級の幸せなので。
 ビスクはメニューを、ぱっと広げて軽く見回して指さした。
「トルテの大型。トッピングナッツ増量、クリーム添え!」
「ちょっと!? オプションまでつけるの!?」
 サシャの焦った声に、ビスクは楽しそうに笑う。
「無礼講無礼講!」
「ビスク、それちょっと違う……」
 苦笑するストルがそれに突っ込み、きゃはは、と楽し気な声がカフェの片隅に響いた。お財布は多少の痛手を負うものの、友達二人に祝福してもらえたことは嬉しくて、サシャは「今日だけだからね!」なんて言っていた。

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