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10話

「さて、私もご飯にしようかな」

子猫をベッドに寝かせて、気が付けばいつもより遅い時間。
想定外のこともあったので少し疲れている。
夕飯は簡単に済ませようと思い、冷蔵庫の中を見る。

「そういえば、こっちきてから麺類食べてないな」

そう思ったとたん、なぜか食べたくなった。
いつか食べようと思って乾麺を買っておいて正解だった。
この世界にも、麺類は普及している。横道なところでラーメン、スパゲッティ、うどん、そば。
それ以外にも色々あり、麺専門店なんかも見かけた。

「ん-ナポリタンが無難かな。あ、ゆで時間長い…うどんにしよ」

ナポリタンに変わりはないけど。
うどんをゆでている間に、玉ねぎ・ピーマン・ウインナーを切って炒める。
味付けをしている間に茹で上がったうどんを加えて混ぜ合わせるだけの簡単調理だ。
あとはインスタントのスープと、果物を切って簡単に食事を終えた。
あとはシャワーを浴びて…と考えていると、子猫の様子を見ていたロズが飛んできた。

「ココロココロー!」
「ん?どうしたの」
「ねこちゃん、おしっこだってー」
「え…」

そういえば猫のトイレの事を忘れていた。
猫のトイレなど、当然ない。
家の中でされたら大変だと、急いで連れに行き、とりあえず外へ出してそこでさせる。
きちんと自分で後始末をして戻ってきた子猫は、すっきりとした表情をしていた。

「うーん、一晩大丈夫かな…」

今更ながら不安になってきた。
しかしもうどうしようもない。幸い、妖精達は眠る必要が無いので、何かあったらすぐに呼ぶようにしてもらい、シャワーは手短に済ませてココロも休むことにした。


そして朝。
ココロは久々に寝不足になった。
トイレを済ませた後に、もう一度眠った子猫だけど、ココロが眠ってしばらくしたところで、急に起きだしてバタバタと部屋中を駆け回ったのだ。
その物音に目が覚めて、何が起こったのか見てみれば、ただ単に走り回っているだけ。トイレというわけでもない。
それからすぐに満足いったのか、ベッドに戻ってパタリという表現がぴったりなほど、急にまた寝た。
それが数回。そのたびに起こされて、時々トイレのために外へ連れて行って…。
うん、これは早急になんとかしないといけないだろう。

「ふわぁ…眠い」

満足に寝れていないのだから、寝不足になるのは必須だ。
それなのに、夜中あれだけ走り回っていた子猫は元気にご飯を要求してくる。
夕べと同じくヤギのミルクを用意する。床はまたあとで拭こう。

「ん-、今朝はパンケーキにでもしようかな…」

静かにミルクを飲んでいる間に、急いで自分の朝食を済ませる。
その後は軽く家の片付けをし、子猫が妖精達と遊んでいる間にリアラに手土産でもとパウンドケーキを焼く。一緒に午後のおやつの分も。
準備を終えて、畑や動物たちの様子を見てから、1週間ぶりとなるリアラの店へ向かった。


「こんにちはー」
「あ、ココロさん。いらっしゃいませ!」

子猫を連れてリアラの店に入る。
すぐ出迎えてくれたのは、出掛けにいつ頃着くか連絡を入れておいたからだ。

「例の子、どうですか?」
「すごく元気で、夜中ずーっと走り回ってました」
「アハハ。猫って夜行性ですもんね」

そう言いながら、奥の部屋へ案内してもらう。
最初に来た時に入った空間はリアラのスキルによるものだそうで、実際にこの店の中にあるわけではないのだとか。

「ここに猫ちゃん出してもらえますか?」
「はーい。ほら、出ておいで」

示された台に猫用のキャリーバッグ(木製。早急に作ってもらった)を置いて出てくるように促す。
子猫はキョロキョロとしながらも、そっとバッグの中から出てきた。

「わー、綺麗な毛色ですね」
「そうなの。最初はやっぱり薄汚れてたんだけど、洗ってみたらこんな色で。しかも毛もふわっふわに」
「おお、確かに。どれどれ~?」

ひょいと、前足の脇に手を入れて持ち上げたかと思うと、フムフムと言いながら何かを確認している。

「うん、女の子ですね」
「あ、そうなんだ」

そういえば確認してなかった。気にしてなかったともいう。
その間にも、リアラは子猫の全身を確認している。子猫は何が何やらという感じだ。

「うん、特にケガもしてないですし、ノミとかもいなさそうですね」
「そっか、よかった」
「それで、この子どうしますか?」
「ん?うーん…」

この子猫のこれからは、深く考えていなかった。
リアラから見ても野良だろうという事で、どこかには母猫もいるのだろうが、探すのには骨が折れる。
それならば里親を探して…なんて一瞬過ったが、すぐにその考えを消し去った。

「せっかくだし、このまま一緒に暮らすよ。土地は広いからのびのびさせられるし、遊び相手もいっぱいいるから」
「そうですか。そう言ってもらえて良かったです」
「なので、猫の飼育に必要な物一式下さい」
「喜んで!」

そうして一通り揃えてもらった。
最重要なものでは当面の餌と、それと水を入れる皿(食べやすいように高さのあるものを勧められた)。
それと猫用のドーム型トイレ(スキルによる特殊加工で完全無臭になるらしい)とそれ専用の砂。
猫用ベッド、おやつとおもちゃを数種類。
ちょっと大きめのキャットタワーもせっかくだから買ってみた。
首輪は外に連れ出すときのため、一応購入。
猫用キャリーバッグはあるし、ゲージとシャンプーは必要ないのでやめておいた。

「うんうん、これぐらいかな。餌は何種類か入ってるから、好み探してあげてください。その子専用に作れるので」
「へぇーそんなことまで…」

専用というと、好み以外にも体調を見てという事か。
探す必要もないし、獣医も兼ねているようなので、時々見てもらうのがいいだろう。
商談成立?したところで、来客を告げるベルの音が聞こえてきた。

「あれ、お客さんかな?」

ちょっと待っててくださいと言って、対応しに向かう。
それからすぐに、誰かと一緒に戻ってきた。

「あれ、もう話し終わっちゃった?」
「あ、ハロルド」
「気になってたから来たんだけど…」
「うん、買い物も終えたところだよ」
「そうなんだ。様子はどう?」

子猫の様子を見てみれば、いつの間にバッグの中に戻って眠っていた。
飽きたのか疲れたのか、一体どっちなのだろう。
そういえば対応に出たリアラが戻ってこないが…。

「ココロさんにもらったケーキでお茶しましょう、お茶」

そう言って、3人分の紅茶とケーキをトレーに乗せて持ってきた。

「おぉ、いい時に来た」

お土産で持ってきたものだけど、せっかくなので頂くことにした。
妖精達と食べるのももちろん楽しいけれど、こうして人同士で食べるのも、また違いがあって楽しかった。

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