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15話

コーダイさんの店から出て、大通りへと戻る。
次は何がいるのかというハロルドの問に、タブレットのスケジュールを確認する。
メモしておいた買い物リストには、電化製品全てに横線が引かれて、購入済みなのがわかりやすくなっている。
残りは食器や調理道具、日用品、衣類や食品に農園で必要な種や苗だった。
荷物に関しては心配ないが、買う種類も数も多過ぎる。さすがに全部買うのは無理だろうか

「んー、ならやっぱりあそこかな」
「?」

迷うことなく進んでいくハロルドに、はぐれないよう慌てて追いかける。
しばらく進むと、大きな建物が見えてくる。もちろん周りは高層ビルばかり建ち並んでいるが、その建物はそれらとは大きく違っていた。
最もたる違いを挙げるのならば、外観。他のビルは壁にたくさんの大小様々なまどがあるだけ。しかし目の前にある建物にはあまり窓がない。むしろほとんど無い。
その代わりに、色々な看板が取り付けられている。
看板に描かれているのは、ロゴマーク。全てデザインが異なっている。
ここは恐らく、様々な店が集まって営業している、ショッピングモールだろうか。

「ハロルド、ここは?」
「買い物に一番オススメな場所だよ。基本的に買えないものは無いんじゃないかな。移動時間も抑えられるしね」

ショッピングモールという認識で間違ってはいなさそうだ。建物自体には名前は無いらしい。
立ち止まって見上げている間にも、多くの人が出入りしている。
その波に乗るように、ハロルドと共に中へ入った。

「いらっしゃいませー!」
「ありがとうございました!」

たくさんの人でザワザワしているなか、凛とした大きな声が聞こえてくる。
見ると、フロア中心に円形のカウンターが設置されていた。
中には数人、制服をキッチリと着込んだ女性が、笑顔を浮かべて周りの人たちへ声をかけたり、逆に声をかけられると、笑顔を浮かべて対応している。受付…コンシェルジュデスクだろうか。

そのデスクの上には、小さなモニターが設置され、それぞれ『対応中』や『空いてます』など表示されている。
さらにその上には大きなモニターがあり、セール中や新商品の情報が流れていた。
その上に天井はなく、吹き抜けになっている。

あるき出したハロルドに置いていかれないように慌てて着いていく。向かった先は受付だった。
ココロから見て正面にいる女性がこちらに気付き、ニコリと笑顔で迎えてくれる。

「いらっしゃいませ。どうされましたか?」
「あ、えっと」

何故ハロルドではなくココロに向かってなのか、なんと応えたら良いのかと戸惑い、思わずハロルドを見上げる。

「彼女の、初回来店の手続きをお願いします」
「かしこまりました。ではお客様、こちらに住民カードのご提示をお願いいたします」
「あっは、はい」

急いで示された位置にタブレットを置く。女性はすぐに受付内側で何か操作を始めた。
しばらくするとタブレットが淡い光を放ち、すぐに収まる。
以上になりますという言葉と当時にタブレットが返される。

「それではご案内をさせていただきます」

簡単な案内を聞く。
まずタブレットに、どの階にとんな店があるか情報を入力してくれたので、それを見ながら移動すればいいとの事。
また、一度でも利用した店舗は常時最新の情報へと自動更新していく。
そして全店舗共通で、利用金額に応じたポイントが貯まり、任意の店舗で金銭と同じに使う事が出来る。
聞いてしまえば、よくあるシステムと同じなので安心した。

「それでは、ごゆっくりお過ごしください」
「あ、ありがとうございました」

感謝を述べて、その場を離れる。人が集中する所に長居は出来ない。
隅っこは人がまばらになっているので、一先ずそちらへ退避した。

「じゃあ、行き先はここで決めてしまおうか。人の流れを止めるわけにもいかないから」
「うん、そうする」

タブレットを確認すれば、フロアごとの特徴が表示されていた。
現在地は1階。エントランスホールと書かれているのみだ。地下はない。
各フロア、3~6店舗収容されていて、大きさはバラバラ。
同類の店舗が隣接されているフロアが多い。
例えば2階。青果や鮮魚、精肉店がある。3階は製菓店や、調味料等の店、惣菜店なんかもある。中には店だけではなく、料理教室もあった

そんな感じに食事系のフロアが続けば、同じように日用品のフロア、雑貨類のフロア等、色んな系統の店舗が揃って収容されている。ハロルドの言うように、普通に生活するならここに買い物に来るだけで充分…むしろ行く機会があるのかさえ分からないようなてもありそうだ。
そして建物中央の階はフロア全てアミューズメントコーナー、その階と1階、最上階との真ん中の階にはフードコートになっている。
1日いても充分、むしろ半分も回れないぐらいの広さがある。
ザッと見てから、日用品をみて、時間が有れば衣料品店を覗き、時間が無ければそこは飛ばして食料を見る事にした。

「決まった?」
「決まった。とりあえず、上から攻めていこうかな」
「よし、じゃあ行こうか」

エレベーターやエスカレーター、そして階段らしきものは見当たらないが、どうやって上に行くのか、なんてもはや疑問に思わない。先程から視界の端に、青い光に人が次々と消えていったり、逆に白い光からは人が次々と出てきたりしていたからだ。

ハロルドに目的の回数を伝えて、恐る恐る青い光に足を踏み入れる。
中に入ると、すぐ目の前に小さなディスプレイが現れ、目的の階を入力するように表示されている。
入力すると僅かな浮遊感を感じ、直後、別のフロアへたどり着いた。

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