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巨人と管理補佐

 巨人というのは、その名の通りに一般的な人より身体が大きい。
 れいが拠点にしている巨大建造物に住まうことになった巨人達は、小柄な者でも人の倍以上はある。指や鼻など各部位も、身体相応に大きかった。
 であるからして、一般的に人から見て巨人は不器用な種族だと思われている節があった。だが実際は、人同様に個人差がある。器用な者はかなり器用だし、不器用な者は驚くほど不器用という。
 ハードゥスに漂着した巨人達は、そのほとんどが手先の器用な者であった。その場にある物で自分達に割り振られた部屋を奇麗に飾り付け、教えれば木工細工も見事にこなしてみせた。
 ちなみに、巨人達の部屋を飾る置物の一部はれいが提供している。供物も死蔵されるよりは有効に活用される方がいいだろう。同様に食料も巨人に下賜されていた。
 まだ新しい地に根を下ろしたばかりなので、大量の食料は非常に歓迎された。中には森では採れないモノも含まれていたし、調味料も供物の中には大量に含まれていたらしい。エイビスが事前にチェックしているので、れいは安全性だけ確認して色々と下げ渡しただけであるが。その中から巨人達が自分達に必要なモノを確保して、残りをれいが改めて回収した。
 食料は専用の保管庫をれいが設置し、そこに保管されている。その保管庫は、何処かの世界から流れ着いた大型の冷凍庫と冷蔵庫。
 供物の中にも冷蔵の魔法道具がそこそこの数が在ったが、それでは保管庫の広さに対して冷蔵能力が低かったので、巨人の各部屋に設置して、冷房代わりに使用している。
 保管庫の動力は電力のようだったが、発電装置も一緒に流れ着いていたので問題はなかった。そもそもその辺りはれいが居る時点で何の問題もないのだが。
 その結果に、大量の供物も役に立つものだと思ったれいは、食料保管庫とは別に供物を置いておく保管場所も用意して、そこに置いていても問題なさそうな供物を置いておいた。後は巨人達が自由に使用していいということにしておく。
 そうした結果、人用のサイズのモノばかりのはずなのに、それらを器用に使いこなしてみせる巨人の姿がちらほら確認出来るようになった。
 動物達が住む森とも上手く共存出来ているようで、食料の方の補助をれいが少し行ったぐらいで問題は起きなかった。それに、巨人向けに調整した食料のみを産出する迷宮も設置してみたので、森以外からも食料の確保は出来るだろう。装備も巨人用のを渡しておいたし。
 ちなみにこの迷宮は食料の補助としての役割なので、ほとんど成長しないように設定されている。なので成長しても最初から決まった階層までしか成長しないし、中から魔物があふれ出すようなこともなかった。
 そうしたサポートを最初に少し行っただけで、後は巨人達が自分達で好きにやっている。連絡役としての管理補佐も創造しておいたが、今のところこれといって出番はない。
 れいが巨大建造物を拠点にしたことにより、巨人とは別の階層に住み始めた管理補佐達は結構好き勝手やっているようだ。
 自室のレイアウトには、れいより与えられている創造の力をフル活用したり、住んでいる階層全体も管理補佐達で話し合って色から飾りつけまで変更されている。もう最初の面影は建物の大きさぐらいしかない。
 それに、情報交換や管理補佐達の集会場としても利用されているようだ。一角の今後の全体的な方針なんかも話し合われているのだとか。管理補佐達に一角の大部分の管理を任せているれいとしては、そのまま頑張ってくれとしか言うことがない。
 れいは最上階に帰ってきては、椅子に腰かけて考え事をしながら何も無い部屋を眺めたり、置いている本を読んでみたりしているだけ。
 思いつきでとりあえず拠点を設けてみたが、結局れいに拠点が必要だったとは思えなかった。まぁ、管理補佐達に集まる場所を用意したと思うことにすれば、意義はあったのだろうが。

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