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勢力争い

 人は歴史を繰り返すという。
 大陸間での交流が盛んになり、書籍が大量に出回った結果、様々な思想が世界に拡がった。その中でも宗教というのは大きな力を占めているようで、各大陸に各国に存在する宗教が一気に規模を拡げる結果になった。
 しかし、元々信じている神が居る者が多いので、改宗する者はそこまで多くはない。それでも時と共に同じ神を信じる者として、宗教間で統廃合が進み、勢力が集約され始めていく。
 その結果、元々大きな勢力を誇っていた宗教は益々その権勢を強めたのは当然として、少数派だった宗教も勢力を増してきていた。
 そうした流れの中、国教の変更を願う声というのが幾つかの国で大きくなる。その実、裏ではそれを利用してのただの権力争いなのだから呆れるしかないが。
 さて、そんな事態に陥っている国の中に主座教を国教としている国も含まれていた。
 主座教自体も勢力を拡大してはいるが、元々一国のみで祀られていた宗教なだけに、いくら大国の国教とはいえ、そう簡単には拡がらない。特に大陸が違うとその威光も翳りを見せるようで、布教は苦戦しているようだ。れいが姿を現せば話は違うのだろうが、れいは別に祀られたいわけではないのでそれは無理な話だろう。
 もっとも一部の大陸に限って言えば、主座教ではないがれい崇拝が主流なのだが、その大陸は閉鎖的なので、大陸間の交流が盛んになった昨今でも細々とした交流しかない。
 そういうわけで、他の宗教勢力が統廃合による躍進もあり、以前消えたはずの火がまた点いたということらしい。国内の勢力だけで言えば、未だに主座教が圧倒的に最大勢力ではあるのだが、他の宗教の主張としては、他大陸と今後一層の関係強化を図るために、他大陸でも一定の信者が居る宗教に国教を変えましょうというものだった。
 今のところ主張だけで強硬な手段には出ていないが、外からの暗躍もあってそれも時間の問題のように思われた。
 それを察した今代の聖女が、以前の聖女に倣ってれいに祈祷する。もっとも、そんなことをせずとも、れいを主神に据える宗教を別の神を崇める宗教に改めさせようとしている時点で、全ての管理補佐の逆鱗に触れているのだが。
 結局、以前と同じ結果に終わるのだが、また時が経てば再燃するのかもしれない。もしくはトップが変わった場合とか。ただし、主座教を国教に据えた時点で、それを変えることは国の滅亡を意味することになるのかもしれないのだが。
 そんなことれいは全く気にしないが、周囲はそうではない。そして、れいは既にそれについては止めることを諦めている。それは譲れない部分らしく、止めたところで止まらないのだから。
 そうして主座教を国教にしていた国に関しては騒動は終息したものの、他の国ではそうはいかなかった国があった。
 ただ国教を変えただけならいい方で、それに伴う国のトップの変更でさえまだいい。
 最悪だった場所では、内戦からの飛び火により各国を巻き込んだ大規模な宗教戦争にまで発展してしまったのだから。

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