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強くなる目的

出された金を見てみると……
大量に入ってはいるが、どこで拾ってきたのかも分からないくらい傷んだ銅貨ばかりだ。正直大したカネにもならない。
「頼むラッシュ! 俺を誰にも負けないくらいの戦士にしてくれ!」拳をぎゅっと握りしめ、俺に懇願してくるその姿……確かにこれはマジだ。大マジメだ。
しかし一体なぜそんなことを俺に頼んでくるんだか。俺以外にも腕っぷしある奴なんて探せばいっぱいうろついているんだし
そこのところをじっくり聞いてみるか。
「なんで俺に?」とは言ったものの……ダメだ、良い返しが見つからない。
「だから、あんたは世界一強い戦士だって聞いたから……」
「いいけど高くつくぞ、これっぽっちじゃメシ代にすらならねえ」なんとか断れる言い訳を見つけないと。
「じゃあどっかで働く、いっぱい稼ぐからさ!」
「一回につき金貨一枚だ、それでも払えるのか?」
ぐっ……とガキは歯噛みした。
「どんな理由なんだか知らねえが、強くなりたいっていうのならそれ相応の金は必要だ。俺もこの前傭兵ギルドの権利を取られちまったんでな」
こう言っておけば恐らく引き下がるだろう。ケンカでも強くなりたいのか、それとも……
「リオネングの騎士にでもなりたいとか……か?」
「そんなモンなりたくねえよ。とにかく強くなりたいだけだって。それで……」何か言いたそうだったが、ガキは慌てて口をつぐんだ。
なんか事情はありそうだな。たとえばオコニドに両親を殺されたとか。おおかたそんな感じだろう。
「働くよ、それでいいんだろ? カネはちゃんと払うよ」
うーん……断らせようにもこいつ結構意思は硬そうだな。
「仕方ねえな、とりあえず理由だけは言え。それによっちゃ指導料まけてやってもいいぞ」
「理由……。強くなって、ある男を懲らしめ、いや、殺すんだ」
ある男? となるとやはりオコニドあたりか。
「その男ってのは誰なんだ?」
「話に聞いて、この街にいるらしいって聞いたんだ……俺の母ちゃんを捨てて逃げたやつがさ」
「名前教えてくれるか?」
「……ラザトだ。俺の父ちゃん」

え……息が止まった。
ラザトって……うちの居候親方のあいつ⁉︎

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