はじめての給金
「そうか、自由なんてお前にゃ全く縁が無かったことかもな。まぁいい機会だ。ついでだからその答えをおまえ自身で見つけてみろ。こいつは俺からの宿題だ。でもお前のバカな頭じゃ、そう簡単には見つけられないかもな」
そう言って、親方は大口を開けてガハハと笑った。すごく弱々しかったけど、久々に親方のでっかい笑いが見られて嬉しかった。ああそうだ。自由の意味なんて、笑い顔を見たらもうどうでもよくなってきた。
……しかし正直言って、俺にはこの宝石を何に使っていいかが全く分からない。だからとりあえず食事で世話になっているトガリに、宝石1個だけ手元に残し、あとは全部奴にくれてやった。今までぶん殴ったお詫びってことで。
トガリの野郎びっくりして「ここここんなのぼぼぼぼぼ僕どどどどどどどうしたらいいいいいいかわわわわわ分からないよ!ここここれってたたた大金だよ!」っていつも以上に騒ぎやがったから、いつも通り一発殴って黙らせてやった。
さて……残ったこの宝石1個。どうしようか、なんか市場で買い物でもするか。なんて思いながら、いつもリンゴをもらっている果物売りのおばさんに、これやるからリンゴくれと言ったら、いきなり叫び声を上げて腰を抜かしやがった。
しかたない、と俺はいつも通りリンゴを1個だけもらっていった。
しかし困った。何が俺に必要なのか、これじゃさっぱり分からない。
家といっても今の場所で満足しているし、服は……もう何年くらいこれ着たままだったか忘れた、まあ別に問題ねえし。
ちょっと前だったか、戦地で他の連中に「ラッシュってすごく臭くねぇか?」っていきなり言われたもんだから、ついカッとなってそいつを叩きのめしたことがあったな。俺の鼻には別に何も感じちゃいない、お前らの鼻が変なんじゃないかって最後に言ったさ。俺が変に思わなきゃそれでいいじゃねえか。いちいち口を出すなってあの時思ったっけ。
……となると、あそこしかねえか。