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とある異世界に伝わる宇宙創生神話

 悠久なる昔のこと。今では並び立つものがいないほど大いなる存在となったものを昨今の人は『原初の神』という。

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 原初の神は目覚めた。原初の神は力を欲した。原初の神は力を育んだ。

 原初の神は事あるごとに記憶を記録にした。原初の神の原初の神による原初の神のための記録。今の人々はそれを『原初なる神の記憶』『アカシック・レコード』と呼ぶ。

 原初の神は光を生み出した。光あるところに闇あり。原初の神は闇を知った。そして、原初の神は孤独を知った。

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 原初の神は自らのための箱庭を作った。

 原初の神は箱庭に土を、火を、風を、水を作った。原初の神は音を知った。

 原初の神は自らの身体を削り生命を生み出した。原初の神は生み出した生命を箱庭の水の中に落とした。

 原初の神は生み出した生命が箱庭で育ちゆくのを見守った。原初の神の孤独は少しずつ癒えていった。

 原初の神は生み出した生命が絶えるのを見届け、箱庭に魂を休め、次なる生を待つための場所を作った。今の人々はそれを『原初の冥界』と呼ぶ。

 原初の神は箱庭に多くの生命を生み出し、輪廻転生を繰り返させながら、生命の進化を見守った。原初の神は初めての知性ある生命への進化を大いに喜んだ。

 原初の神は知性ある生命の営みを見守りながら、善と悪を知った。原初の神は原初の冥界を3つに分け、『原初の審判所』では魂の善悪を振り分けるようにし、『原初の天界』には善なるものの魂を、『原初の魔界』には悪なるものの魂を集めた。
 次の生に転生をしないものもいた。『原初の天界』にいるもののうち、超越せしものは善神となったり、そうでないものは天使となったり、『原初の魔界』にいるもののうち、超越せしものは悪神、またの名を魔神となったり、そうでないものは悪魔となったりとした。

 原初の住まう箱庭は今では『原初の神界』と呼ばれている。

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 原初の神はそんなある日、善神悪神を集め、新たな箱庭を生み出したいことを願った。そして、その決断は善神悪神問わず皆に喜ばれた。

 原初の神は自らが初めて目覚めた頃を思い出しながら、箱庭の外に新たな時空間を作り、そこへ自らの身体の一部を初めて目覚めた頃の大きさにして切り離した。

 原初の神は神界にいる全ての善神悪神に見守られながら、切り離した自らの身体の一部に願いを込めた。新たな生命の住処を。新たなる世界の始まりを。

 そして、切り離した原初の神の体の一部は大爆発を起こした。今の人々はその大爆発を『ビッグバン』と呼んでいる。

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 新たな世界の始まりは光も闇も火も風も水も土も混じった『混沌』であった。

『混沌』は膨張と収縮を繰り返した。
 膨張の端ではやがて光や闇、土のある星、土のない星など数多の星々が生まれた。
 数多の星々の内、光も闇も火も風も水も土もすべて揃った星はいくつもあった。

 これを見た神界の神々は自らも新たな世界を欲し、原初の神もそれに応えた。原初の神々は神界の神々にやり方を教え、神界の神々もそれを学び、実践した。

 こうして、いくつもの時空間が生まれ、それぞれ数多の星々が生まれた。
 数多の星々の内、生命が住めるところには我々人間どものような知性ある生命が多く住んでいる。

 我々が住まう星は『原初の神界』に住まう善神イーアス様が作られた宇宙の中にある数多の星々の一つに過ぎない。

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『原初の神界』に住まう神々は善悪問わず我々とは比べ物にならない大いなる存在。信仰なんぞ必要とせぬ。名は知られずとも勝手に力を振るうことのできる。

 たまに『原初の神アーイーア』様が神託を授けられることがあるがとても恐れ多くて、その日から三日三晩はまともに眠れないものだ。

 原初の神は大いなる存在だ。我々の及ぶところを遥かに高く通り越した偉大な存在だ。故に語り継ぐのだ。故に原初の神アーイーア様、宇宙神イーアス様を始めとした原初の神界に住まう神々、この星の最高神グーレオローリス様を始めとしたこの星の神々に感謝を捧げ、祈りを捧げるのだ。

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『原初の神々による宇宙創世神話(要約版) 編者:神聖グーレオローリス教国 教皇テオドール・ミハイル・アーイー・イーア・グーレオローリス/出版日:神聖グーレオローリス暦10年1月1日(イーアス第1宇宙暦14132732915年) 教国建国10周年を慶賀して』

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