新しい攻撃方法
酒浸りの生活を送ってしまい、1週間以上をロスすることになった。予定では三日にしようと思っていただけに、余計な足止めをくらった。
女子大生は敵ではなかったものの、プレイヤーを足止めする役割を担っていたのかな。誘惑の世界を作り出すことで、脳に働きかけてくる演出は憎い。
クスリが大の酒好きというデータを入手しているとは思わなかった。ＲＰＧの世界は冒険以外の部分においても、ぬかりはなかった。
ＲＰＧの世界に戻ってくるも、アルコールは完全に抜けていなかった。クスリは頭痛、ふらつきなどの症状が現れることとなった。本来ならもう少し休んだほうがいいけど、時間制限を設けられているため、ゆっくりとはしていられない。
電流ステージにて苦戦したことから、レベル不足であると思われる。クスリはマップをうろついて、レベルを上げようかなと考えた。レベルを上げれば、敵を簡単に倒せるようになるはずだ。
PRGでは最大レベルは99に設定されていることが多いけど、このゲームについては明らかにされていない。9を一つ後ろにつけて、999まで上昇する可能性もある。最高レベルはいくつなのかな。
マップをうろついていると、戦闘画面に切り替わった。
「おなかペコペコ3体が現れた。敵に先制攻撃を受けた」
アラジンの魔法のランプから登場する、ラジーンさながらだった。「ご主人様、何をいたしましょうか」といっても何ら違和感はない。
「おなかペコペコ」はどのような攻撃を仕掛けてくるのかと思っていると、ぶつぶつと呪文を唱えていた。
「おなかペコペコ１は空腹の呪文を唱えた」
ハレヤソレヤナンマイダと数回唱えると、クスリの胃袋で消化しきれていない食べ物を吸い取られた感覚があった。
「おなかペコペコ２は空腹の呪文を唱えた」
オナカペコペコ、オナカペコペコ、オナカペコペコと3回唱えると、体内の肉を吸い取られた。
「おなかペコペコ3は空腹の呪文を唱えた」
こちらは南無阿弥陀仏だった。五分ほど、経を訊かされたのち、体内のエネルギーを吸いつくされることとなった。
実際に攻撃するだけでなく、こういうやり方もあるのかと思い知らされた。敵は多彩な技を繰り広げることで、プレイヤーをどん底に叩き落そうとしている。
「おなかペコペコ」は戦闘中にもかかわらず、暢気に踊っているではないか。命がけの冒険をしているのに、くだらない踊りを見せられると、無性に苛立ってくる。
クスリは「おなかペコペコ１」に攻撃を仕掛ける。
「おなかペコペコに70のダメージを与えた」
こちらのレベルは上昇したものの、敵の防御力もあがっている。一撃で闇に葬るのは難しいのかな。
敵は生身の人間なので、「アイスソード」は有効かもしれない。クスリはあとで「アイスソード」を入手しようかなと思った。
3体のおなかペコペコは、プレイヤーの空腹にするための呪文を唱え続けた。本体に攻撃をすることなく、闇へと叩き落とすタイプは厄介だ。パラメーターにおなかメーターが表示されていることを、きっちりと生かしている。
クスリは10ターンほどで敵を完全に撃破した。意味不明な踊り、呪文と相対したことにより精神的な疲労をためてしまった。
「クスリは3000の経験値を得て、レベルアップした」
レベルは30に上昇。「こうげき」、「ぶつりぼうぎょ」、「すばやさ」、「まほうぼうぎょ」、「うん」のステータスはそれぞれ2ずつ上がることとなった。
ＲＰＧにおいては、「武器」、「防具」よりもレベルアップを重要視しているのかな。ゲームのシステムについてはよくわかっていない。
マップでお腹メーターを確認すると、120まで減らされていた。先ほどまで240ほどあったのに、一回の戦闘で半分になってしまった。
「おなかメーター」は減少したのに、アルコールの酔いからは冷めていなかった。プレイヤーの摂取したアルコール分は吸収しないようだ。
宿の方向に視線を送ると、跡形もなく消え去っていた。短時間でどこに行ってしまったのだろうか。
現時点では「おなかメーター」は100を超えているものの、「おなかペコペコ」と再戦することになれば、
マップをうろついていると、鼠小僧の頭巾をかぶった敵が出現した。
「とうぞくが3体現れた」
見た目は完全な盗人なので、プレイヤーからアイテムを奪ってくると思われる。
クスリは盗賊に攻撃を仕掛けることにした。軽い眩暈をおぼえるも、敵に命中させることはできた。
「とうぞく1に100のダメージを与えた」
シーフはＨＰを低めに設定されていることが多い。盗賊も例外にもれず、一撃で倒れていった。
「とうぞく2」は盗みを働いてきた。
「クスリは非常用の肉を15個奪われた」
一回で15個も盗まれるのか。宿屋で補充したものの、すぐになくなってしまいそうだ。
「とうぞく3」もプレイヤーの懐に忍び込み、アイテムを盗んできた。
「クスリは非常用の肉を10個盗まれた」
肉を優先的に盗むようにプログラムされているのかな。そうでなければ、こればかり盗まれる説明をつけられない。
「おなかペコペコ」と合わせて、プレイヤーを空腹地獄に陥れようとしている。攻撃を加えることなく、ＨＰを0に持っていこうとするシステムは斬新だ。ゲームを考えた奴は、狡賢さに優れている。
クスリは「とうぞく2」に攻撃を仕掛けた。攻撃は命中し、盗賊は倒れた。
「とうぞく3」は攻撃を仕掛けてくるかと思っていたら、素早い動きで逃げ出してしまった。盗みを働いたらプレイヤーに用はないといったところか。本物のスリと全く同じで、盗むものだけ
盗んで逃げだした。
「クスリは2000の経験値を得た。とうぞくから肉15個を取り戻した」
盗賊に逃げられる前に倒すことができれば、盗まれたアイテムを全て回収できるのか。盗まれた時点で、アイテムを失うわけではなさそうだ。
下に進んでいると、戦闘画面に切り替わった。
「おなかペコペコが3体現れた」
さっきはまともに対峙したために、満腹度を削られてしまった。今度はすぐに逃げようかなと思った。
クスリは逃亡しようとするも、「このモンスターからは逃げられません」と表示された。プレイヤーの心理をきっちりと読み、対策を施している。
クスリは三体の「おなかペコペコ」を撃破するも、お腹メーターは40まで減らされていた。次の戦闘を終えると、0を切っていてもおかしくない。
「おなかペコペコ」、「盗賊」しか出現しないコースにおけるレベルアップは物理的に不可能だ。クスリは次のゾーンを探すことにした。
一定のところまで移動すると、目の前の空間が歪むこととなった。次のステージに飛ばされるようだ
