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第七十三話 ダンジョン?


 最下層は、不思議な感じがする。
 魔物は一体だけのようだ。

 最下層は一本道だ。扉の先には、お約束では、ドラゴン種でも居るのだろう。

 5分くらい通路を歩くが何も出てこない。探索を行っても、何も無いのが解っている。意地が悪いゲームだと最下層の一本道に隠し扉があって、貴重なアイテムが隠されていたりする。隠し通路から、裏ボスに繋がっていたゲームもあった。

 扉の前に到着した。
 結局、魔物は出てこなかった。セーフエリアではないが、魔物が出現しないようになっているのか?

 扉の前でゆっくりと身体と心を休めてから、扉を開けて中に入る。

 自動的に扉が閉まる。中央に魔法陣が出現した。刀を抜いて、魔力を練る。

 魔法陣から出てきたのは、コボルトだ。1階層で出てくる魔物だ。すごく嫌な予感がする。魔法陣は消えない。コボルトが、襲ってくるが、斬り殺す。
 また、魔法陣が光る。次は、ゴブリンだ。同じく、1階層で出てくる魔物だ。

 それから、50階層までの魔物が順番に出てくる可能性がある。
 今は、10階層くらいで出てきたオークソルジャーを相手にしている。単体で出てくるので、対応が楽だ。

 そして、バグなのかこの装置の問題点を見つけた。
 魔物が魔法陣に乗っている最中に、俺が魔法陣に乗って、魔物を倒したら、次の魔物が出てこないのだ。最初は、時間がかかるだけかと思ったが、1時間待っても出てこなかった。疲れたら、この方法で休めることがわかった。寝ていても問題はなかった。

 さて、次辺りから40階層に出てくる魔物が出ているかな

 予想通りの展開だ。
 一体では怖くない魔物ばかりだ。強さは変えているようだが、それでも連戦にはならない方法が見つかってしまっている状態では、対処の方法はいくらでもある。
 魔法を使って力押しで倒しても良かった。その後で、魔力の回復をおこなう。雑に討伐しているつもりはないが、すでに100連戦くらいはしている。途中で休憩を挟んだと言っても、体感では2日くらい戦い続けている。仮眠が取れなかったら、死んでいたかもしれない。

 多分、次が最後だ。今、倒したのは、49階層の階層主だ。

”GUGAGAAAAAA”

 やはり、ドラゴンが出てきた。
 不思議と怖いとは思えない。余裕ではないが、倒せない魔物ではない。刀を構える。

 最初は、回避に専念していたが、予想していた通りだ。
 どこかプログラムされているような動きをする。ぎこちない動きだ。昔の8ビットパソコンのRPGに出てくるドラゴンのような動きになっている。両足を曲げると、突進してくる。首を持ち上げれば、次はブレスが来る。片足を上げた反対側から尻尾攻撃が来る。攻撃が単調ではないが、パターンになっている。
 攻撃がわかれば、避けるのか、カウンターを放ってダメージを与えるか、決めていけばいい。あとは、パターンが変わるタイミングがなければ作業のような戦闘だ。

 オーガキングやトロールキングの方が攻撃にバリエーションがあって強かった。
 今までの魔物たちと戦ってきたことを思い浮かべながら体力だけはあるドラゴンと対峙する。すでに、2時間以上は戦っているが、弱まっている印象はない。やはりプログラムなのだろう。痛みに対する反応がない。試しに、目を潰してみても、反応がなく決められた攻撃を繰り返すだけだ。

 3時間くらいは戦っていただろうか?
 やっとドラゴンが光の粒になって消えていった。

 宝箱の一つでも残していけばいいのに、何も残さなかった。魔法陣が消えたので、本当に最後の敵だったのだろう。
 昔のRPGでありがちな、レベルを上げすぎて最後の敵との戦闘が作業になってしまった感じだ。

 身体は疲労している。

 ドラゴンの一撃は、どれも致命傷になりえる物だ。

 立川にあるゲーム会社の代表作の一つ。赤毛の冒険者が活躍するシリーズの一作品目の最終ボス・・・。ダル◯・フ◯クトとの戦いを思い出す。強いが手順を間違えなければ攻略できる。ただ、一撃が重い。こちらの一撃は軽い。何度も何度も、崩れる足場を気にしながら、相手の攻撃を交わして、少ないダメージを与えていく、ただそれだけを繰り返す。精神力の勝負になっていた。

 ゲームなら、セーブした場所からやり直しが出来る。しかし、セーブがない世界では、やり直せない。心も疲れてしまう。
 床に大の字になって寝てしまっても許されるだろう。

 ドラゴ◯スレイヤーIIIのロマ◯シアじゃないのだから、セーブくらいできても良かったと思えてしまう。途中での退室が出来るようになっていれば、ゲームバランスを考えても良かったと思う。何度か、外に出て、続きから挑戦できれば、訓練にも丁度いい。攻略後は、試したい魔物とだけ対戦出来るようになればもっと楽しくなりそうだ。

 少しだけ寝る。疲れた。俺が次のアクションを起こさなければ、次のイベントは発生しないだろう。
 発生したら、それはそれで考えよう。今は、眠い。

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 どのくらい寝ていたのか?
 外の光がないから判断できない。戦闘での疲れも引いているから、しっかり寝たのだろう。
 やはり、何もイベントは発生しなかったようだ。

 それにしても、不思議なダンジョンだ。
 魔物には、3種類居るように思えた。

・最後のドラゴンのように、地上では見たことがない魔物でプログラミングされているかのような動きをしている者。これは、階層主にしか存在しない。
・地上でも見たことがある獣や魔物だ。自然な動きをしている。連携なんかもしていて、厄介な相手だ。
・地上では見たことがないもしかしたら、森の深層部とか山脈には居るかもしれないが、変異種。上位種は、居るらしいが、変異種は聞いたことがない。

 ダンジョン自体が不思議の塊だから、しょうがないと言われればそうなのかもしれないが、俺としては”プログラミング”されているような動きをする魔物が気になる。誰かが作ったのならどうやって作った?魔法の詠唱だけではあの動きを再現するのは不可能だ。パターンな動きをおこなうだけでも大量の詠唱が必要になる。本当にプログラミングでなければ不可能ではないだろうか?
 あのドラゴンは、間違いなく”生物”では無いだろう。攻撃を食らっても、エフェクトは発生するが、血液の一滴も出てこなかった。ドラゴンという魔物が全部そうなのかもしれないが、叫んだのは最初だけだ。それ以外は、静かな戦いだった。HPが0になったときに”死”を演出したのではないかと思っている。全ての階層主ではないが、多くの階層主に見られたことだ。

 何か、ダンジョンには秘密がある。

 そして、くだらないことを考えているのには理由がある。

 地上に戻る方法の提示がない。
 入ってきた扉は鍵がかかっているかのように開かない。無理やり破壊すれば、破壊できそうだが最終手段にしたい。破壊したら、違うイベントが発生しても困る。

 壁を見て回るが、何か仕掛けが有るようには思えない。

 全方位で探索をかけてみると一箇所だけ怪しい場所が見つかった。
 入ってきた扉の正面になる壁の下に空間があるようだ。更に地下に通じる階段がありそうだ。

 階段がありそうな場所に移動しても、何も発生しない。石畳が存在するだけだ。近くを入念に調べても、何も出てこない。床を叩いても、地下が有るようには思えないが、探索した結果では階段が有るように見える。

 面倒だな。
 階段がある石畳に”魔法”を打ち込む。俺が疲れる全属性の魔法を打ち込んだ。

 これで、階段が現れるとは・・・。え?本当?

 部屋の中央にあった魔法陣がまた表れた。
 慌てて、刀を抜くけど、魔物は表れない。

 10分くらい光ってから、魔法陣が”光の粒”になって消えた。
 中央に、宝箱が現れる。

 バグっていたのか?

 宝箱には、”鍵”が一つだけ入っていた。

 ここに来て鍵?と、思ったが、階段があった場所を見ると、床に鍵穴が表れていた。

 ドラゴンを倒した後のイベントがバグっていたのか?

 鍵を挿入して回すと、”ごー”という音がして石畳が”消えた”横に開くのかと思ったが、期待を裏切ってくれる。

 やはり、階段があった。
 階段を降りると、通路になっている。歩いた感じだと、Uターンしてラスボスたちの部屋の真下辺りに続いているように思えた。

 そして、階段を降りてから、何度か探索を使うが”弾かれる”感じになって情報が何も読み取れない。

 魔法陣があった辺りだろうか?通路の先に、扉が表れた。

 そして、扉には、何やら文字が書かれている。

「はぁ????なんで?」

しおり