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異世界の扉!?行ってみるしかないでしょ!(まとめ)


プロローグ

「あー暇。」
背もたれに背中をだるんとつかせてそう言った。
「知らねーよ!」
「いや、なんかないかなーとか思っただけ。」
「確かにこの漫研部なにもやることないからな。」
この漫研は一応、仲の良い4人で作った、なんとなくの部だ。
「てか、漫研に来てまで勉強することないと思うけどなー。」
急に前に座っていた女子がペンを振りながら言った。
「 いくら勉強しても後悔することはありませーん♪」
「急に入ってくんなー。」
座りながら少し前のめりになって言った。
「いいじゃん暇だし、二人が楽そうに話しているから入りたくなったの!」
「相変わらずお前当たり強いな。」
胸に手を当て言った。
「それが俺だ!」
「うわーきっぱり認めやがったー。」
「だねー。」
「・・・なんか冷めきってない?」
「冗談だよ!」
「ならよかった。」
彼の名前は谷野 隆史。この物語の主人公だ。
谷野隆史:高校一年生の男子。成績は中の下、少しサボり癖がある。好きな食べ物は板チョコだ。

TU.ピュアエンド:異世界の扉



部活時間が終わり、続々と生徒が門の外に出始めていた。漫研部は部員が4人しかいないため、3階の暫く使われてない教室が部室になっている。勿論この漫研部は、学校内の部活カーストの中でも最下層にいる。簡単に言えば帰宅部と同等ということだ。このカーストで下だったら何があるか?モテない!これ大事!
あと、このカーストのせいで、いじめが絶えないことだ。これは、許されないと思う。絶対・・・。
「・・・。」
「見つけた。」
こんなこと言うのはどうかと思うが、幸せだった。
あんなことがなければ・・・。

わからないことばかりだ。異世界に行く?というのはどういうことなのか?
「なにか分からないことがあったら言ってください。」
ヤラがいきなりそう言った。
「ん?」
「いや、谷野さん悩んでいる様子だったからです。」
「ありがとう。じゃあ1つ質問していいかな。」
「はい。」
ヤラは頷いた。
「異世界に行くってどういうことなのか?」
「そのままの意味だと思いますが。」
そのまま返されても困る。いや、俺の質問の仕方が悪かったのかもな。谷野は言い換えて質問した。
「異世界ってどんな感じなのか?」
「・・・。」
何故無言?まさか・・・。
カッ!!
「うわっ!?」
急に周りが光った。谷野は急過ぎて何も出来なかった・・・。そこで意識を失った・・・。


転生面接の間にて
「 谷野 隆史は何故来ない?」
Aが膝まずいて言った。
「何者かの奇襲にあって・・・。」
「そうか。」
Bは残念そうにそう言った。
「それで、ローナド様も・・・。」
「ローナドも巻き込まれたのか!?」
Bは強くそう言った。
「はい・・・。」
Aは膝まずきながら頷いた。
「チッ、これはまずい事になったな。」
「はい・・・。」

転生面接の結果の報告
谷野 隆史
転生面接の間の途中の階段通路にて、何者かの奇襲に会い、その際に階段から落下。転生者の為この落下は生存。面接は落下という結果になった為能力値を最低のFランクとする。
体力10 技力、攻撃力、防御力等その他パラメーターを【1】とする。なお、特殊能力については【なし】とする。

ローナド・トラヤラ
上記の谷野 隆史と同様の理由で階段通路にて落下。ローナドについては落下によって【消滅(死亡)】した。なお、この消滅については殉職と判定する。

以上 転生面積官長ホヌ(上記の会話のB)


「ルク様。このようになりました。」
「拝見したぞ。」
伝言人は呆れた顔をしてこう言った。
「ルク様が期待していた転生者なのに期待はずれでしたね。」
ルクは鋭く反論した。
「いや、そう考えるには早いと思うが。」
「・・・そうですね。」
間違いなくルクは焦っている様子だった。伝言人はそんな様子は見たことが無かったのでこれ以上の反論はしなかった。
この後、谷野がどのようになるか。それは・・・

【あなた達(読者)が思う甘いものでは無いぞ。】

落ちた俺はまた謎の空間に来ていた。何だろう、今まで感じた事のない・・・浮いている感覚だ。谷野は薄い意識の中で少しでも情報を得ようとした。でないと、この何も情報のない状況で分からないという恐怖に襲われるからだ。しかし、そんな余裕もなく谷野はまた意識を失った・・・。

現世界(こっち側)→→→異世界

起きたらそこはーーー。
「草原・・・。」
大きな草原が目の前に映っていた。少し岩肌も見えていているが本当に綺麗だった。谷野は泣きそうになった。谷野にはここまで来るまでの苦痛が大きく傷として残っていた。ただ、ここが何処か分からない以上余り長居する訳にもいかず、谷野はのろのろと少しずつ
足を進めた。
草原を結構進んだのだろう。村らしきものがあった。もう日が沈みかけていたので谷野はここで一晩を過ごそうと思った。あと、凄い空腹と眠気、頭痛に襲われていた。正直、息も切れている上、体力の限界だ。村の前に来た。村の名前らしき表札があったが読めないなかった。一体ここはどこなんだ?谷野が中に入って歩いていると村の噴水広場まで来た。すると村人らしき人がいた。村人らしき人もこちらが気になるようだったので話しかけた。
「すみません、ここは・・・。」
「・・・?」
首をかしげられた。もしかして日本語が通じないのか?どうしよう・・・。数秒黙り混んで考えた。そうだ、ジェスチャーならどうだ!谷野は下を指さして首をかしげた。それがなんとなく通じたのか手招きされたので着いていった。ジェスチャーはきちんと通じるようだった。手招きされ、着いていってる途中その人をよく見ると、若い女性で頭には猫耳・・・。
「猫耳!?」
びっくりしてつい声に出てしまった。猫耳の女性は気になってこちらを振り向いたが谷野は首を振った。猫耳の女性はまた前を向いて進み出した。よく見ると少し垂れているだけで尻尾もあるようだった。ここで谷野に1つの疑問が生じた。猫なら何故歩けるのだろう・・・。そんな考察をしていたら、猫耳の女性は急に止まった。考察をしている途中で下を向いていた谷野はぶつかりそうになったが足の爪先を使って止まった。向かった先は民家だった。どうやらその猫耳の女性の家らしい。猫耳の女性は鍵を開けて家に入ると、少し遠慮気味な谷野を見て、優しい笑顔で手招きをした。部屋に入ると猫耳の女性は、
「ごめん、ちょっと散らかっているね。」
と言って片付け始めた。谷野は遠慮気味に言った。
「そういうのはあまり気にしないので大丈夫ですよ。」
猫耳の女性は、
「気遣ってくれてありがとう。」
と言って片付けをやめて、椅子に座るように進めてくれた。谷野は椅子に腰掛けてあることが気になったので聞いた。
「あの、あなたの名前は?」
猫耳の女性は少し慌てた様子で答えた。
「あ、ごめんなさい!一応言っておきますね。私の名前は『アカネ・ハサナ』と言います。よろしくお願いします。」
谷野は自分だけ名乗らないのはいけないと思ったので名乗った。
「俺は『ヤノ タカシ』と言います。こちらこそよろしくお願いします。」
お互いの自己紹介を終えると、アカネは物入れから木のコップを出してバケツに汲んであった水を入れた。
「ヤノさんとりあえず水飲んでください。」
アカネは疲れているヤノを見てそう言った。その気遣いがとてもありがたかった。アカネは思いきった様子で言った。
「とりあえず落ち着くまでこの村にいてください。村長には私が言っておきますので。」
泊めて貰いたいのはあるが、このまで順調だと逆に怖かった。ただ、泊めて貰うほかないので今はそれに従った。ヤノはこの日、この国の言語について一通り教えてもらった。割と簡単で覚えられそうだ。
その日の夜の事だ。急に飛ばされまくった俺は、落ち着けず起きてしまった。落ち着く為に外の空気でも吸おうかと思って外に出た。すると、外にある長椅子にアカネが座っていた。俺は近づいてジェスチャーを混ぜながら言った。
「アカネ、隣座っていいか?」
アカネは座ったまま言った。
「なんだ、ヤノも眠れなかったのか。」
「まあな。」
とヤノは椅子に腰かけながら言った。ふとヤノは疑問になったので聞いた。
「アカネはなんでそんなに急に来た人に対して優しいのか?」
「あんたを見てるとなんか昔の仲間を思い出してさ、まあただの気まぐれだよ。」
アカネは意外な答えで返した。ヤノはなんだそれと思ったが、それが本当だとしても心配かけない様にする為なのかあるが、その優しい心がけに対しては関係なかった。まあ、こんなのを考えたのもただの気まぐれと変わらないのだが。アカネはヤノに質問した。
「ヤノ、この星綺麗でしょ。私は寝れない時とか、辛い事があった時とかにこうして座って見ているのだよ。ヤノは質問に答えた。
「それは羨ましいな。」
「あと、村長に相談したら今日どころか一年くらい居てもいいって言ってたよ。あの人お人好しだからそこら辺ほんとオーバーなんだよ。・・・ごめんなさいさっきからついタメ口になってしまいました。」
ヤノは慌てて答えた。
「あの、自分もタメ口にするからタメ口でいいよ。」
アカネは手を合わせて言った。
「ほんとありがとう!」
分からないことだらけだが、俺はアカネのお陰で一時の安心を得た。それでよかった。

次の日
谷野は起きて朝日でも浴びようと思った。しかし、ツンっとする匂いで立ち止まった。まさか!?扉を開けるとまただ・・・。『燃えていた』
「はーはー。」
アカネがこちらに向かってくる。
「こっちにくるな!!」
谷野は必死の声で止めた。しかし、アカネはそれを聞かなかった。するとアカネはこう言った。
「やっとできた友達を死なすわけにはいかないからね。」
アカネの目を見ればその必死さがわかった。そう言えば俺がアカネと一緒にいる時に何故か村の人がアカネを睨んでいるような気がした。アカネ村の人に嫌われているのだろうか。しかし、聞けば傷つけてしまうだろう、谷野は聞くのを拒んだ。するとアカネが構えて・・・。
『アクアシスウェーブズ!』
アクアシスウェーブズ・・・前方を扇範囲に波攻撃(初級水魔術)
そうアカネが唱えると前方の火が一瞬にして消えた。
だが火は尽きない。アカネはまた構えて。
『オーシャンラーシャラッシュ!』
オーシャンラーシャラッシュ・・・自身中心に円状に中距離水攻撃(中級水魔術)
とアカネが唱えると周囲の火が一瞬にして消えた。同時に建物が少し剥がれた。どのくらい強いの!?俺も耐えきれず吹っ飛んだ。その勢いで村の門の前まで来た。(体力10→3)
(危なー!?)
本当に危ない、死ぬところだった。ところで何だ!この体力!10って明らかに少なくないか?ビックリして谷野は単調になった。そこにアカネが駆けつけて来た。
「よかったー生きてて!」
そう言うと右手を心臓部に当ててホッとした。そうすると谷野は言った。
「とりあえず火がこっちに来るまでに村を出るぞ!」
「わかった!」
アカネがそう言うと二人は村を出た。この火事で村長が命を落とした。俺とアカネが火事の片付けをしている途中、村の人のコショコショ話が聞こえた。
《あの二人最近よくいるわよね。》
《あの男の人、アカネさんがどんな人か知らないで過ごしているのかしらね。そう思うと可哀想になってくるわ。》
谷野にそれが聞こえていて拳を強く握っていた。そう、怒っているのだ。しかもアカネが怒らない事を良いことにわざわざ聞こえる所で噂している事も谷野の怒りを増幅させた。その二人は谷野のキレ具合を察したのかその場を去った。谷野は小声でアカネに注意した。
《少しは怒ったらどうだ。このままじゃ嘗められたままだぞ。》
《じゃあ谷野は注意しないの?》
そう言われると反論できなかった。注意すると俺までそう言われるのでは、と思ってしまっていた。なんで俺は活発的な性格をして臆病なんだ・・・。そう考えているとアカネが聞いてきた。
「ねえ谷野?私と一緒に新しい町で暮らさない?」
えっ。谷野はビックリして少し離れた。
「いいでしょ?」
そう言うアカネの笑顔が少し妖艶に見えた。なんだこれは・・・?
「・・・。少し考えさせてくれ。」
谷野はそう言ってその場を離れた。
(なんだったんだあれは!一回頭を冷やそう。)
そう頭の中で会議をさせ、谷野は考えた。すると村の男性が話してきた。村長が死んでしまい、その中で村のまとめ役になっている人だ。
「あの。」
「どうしたの?旅人さん。」
「アカネの事で聞きたいことが。」
「アカネさんの事か・・・。」
「知っているのですか!?」
谷野はそう言い返した。
「知っているけど知ってしまったらまた彼女が独りになってしまう可能性があるよ?」
「それを聞いても独りにしない自信があるので聞いているのです。」
谷野は自信あり気に言った。
「ほう、そう言って去った旅人もいるというのに。まあ言いましょう。彼女は・・・。」
まとめの人は続けて言った。
「『遊女』だったんだよ。まあこれ聞いてどうも思うか・・・。」
まとめ役の人はそう言った。
「昔の事だろ、そんなの。ならいいんじゃないかで他にあるのか?」
谷野がそう言うとまとめ役の人は、
「は?なんだお前。」
とビックリした様子だった。
「まあ、何もないのならいかせて貰うよ。」
そう言うと谷野は走ってその場からいなくなった。谷野はすぐさまアカネの所に行った。アカネはビックリした様子で走って向かってくる谷野を見た。
「どうしたの谷野!?」
「ゴメン!ついキレて次期村長敵に回したわ。」
谷野はそう言ってにやけた。
「なら10分で準備して!来てしまったら人溜まりもないから。」
アカネはそう言って笑い返した。谷野は、少量の食べ物と木の水筒を物置にあったリュックにしまった。するとアカネが訪ねてきた。
「武器とかいらないの?ここら辺はモンスターいないけど、もう少し行ったらウジャウジャいるよ!」
「えっ、ここモンスターいるの!?」
谷野がビックリした様子で言うとアカネは当然の様に頷いた。谷野はあることに気がついた。
『えー!?これまるで異世界転生モノじゃないか!(歓喜)』
谷野がそう言うとダッシュで村の柵まで行って越えた。するとアカネが走って来て、
「ヤノー!武器持ってかないのーー!?」
「アカネ、大丈夫大丈夫。」
と谷野が余裕の表情で答えた。不安そうな表情をするアカネに谷野は追加で言った。
「なんせ俺は最強なんだから!!」
とガッツポーズをした。
「体力10が?」
とアカネは当然のツッコミをした。
「・・・。うん!まあな!」
と谷野はゴリ押しで返した。

異世界の解?そんなの今は分からない。ただ、少しずつ感覚と記憶が戻ってきている予感がした。それでだけで一歩ずつ進んでいるような気がした。

『二章 異世界の中の甘味と苦味』に続く!


二章 異世界の中の甘味と苦味

俺とアカネは村を抜け出して草原を歩いている。アカネは明るい空を見上げながら言った。
「なんかあんな小さな村に囚われていた私が馬鹿みたいだよ。」
「だな。」
谷野は若者特有の略で答えた。
「ヤノ、『だな』ってなに?」
アカネはそう言って笑った。・・・!?
「あっ・・・。」
谷野はビックリして心の声が漏れた。この言葉も自然と出てしまったのだろうか。ただ『ここ』には噛み合わない言葉とわかった。何故『ここ』には噛み合わないと思ったのだろう。谷野の頭に何かが徘徊しているようだった。
「・・・。」
「ヤノ、急に黙り混んでどうしたの?」
アカネが心配そうに聞いた。その言葉で谷野の視界に明かりが射した。谷野は謝罪の意味を込めてジェスチャーで手を横に立てた。どうやら通じたらしく、
「大丈夫だよ。」
と返してくれた。俺はここの言葉はアカネにある程度教えてもらったがジェスチャーは欠かせない状態だ。しかし通じると同士に楽しいと思った。谷野が自分の思いに浸っていると、アカネが質問をしてきた。
「ヤノ。」
「どうした?」
「谷野ってどこから来たの?」
とてもシンプルな質問に谷野は困惑した。しかし、答えは簡単だった。谷野は嘘は付く必要はないと思い、偽りなく言った。
『異世界だ。』
どういうことか?簡単なことだ。こちらから見たらここは異世界だ。その逆だ。
「異世界・・・。異世界の冒険者なのか?」
アカネは谷野の顔を覗き込む様にして見てそう言った。
「そうだな。」
谷野がそうどや顔で言うと。
「体力10にどや顔で言われても・・・。」
「それ言う!?」
事実だが案外言われてると辛いぞ!谷野はふと思った。
「アカネの体力ってどのくらいなんだ?」
「言う?」
アカネはそう言って首を傾げた。
「そんな焦らすか?」
「まあ谷野の百倍以上あるよ。」
千以上かよ!?そう思うと自信がなくなってきた。
「まあその内増えると思うから、そんな気を落とす事はないよ。」
アカネそう励ました。よく考えると具体的に言わないだけマイルドにしている所があるので、そこで気を落とすのは失礼だと思った。そもそも元気でないとな!
話している内に村が見えなくなっていた。ここまで歩いたのか。谷野がそう感心していると、ある生き物が谷野とアカネに近付いて来た。『スライム』だ。
「何かと思ったらスライムか。」
アカネがそう言ったので安心した谷野は近付くと、
「ちょっとヤノ!」
スライムがタックルしてきた。
【スライムのタックル→谷野に6のダメージ(4/10)
痛ぁ!?タックルだけで死にかけってどんだけ脆いの俺!?谷野はどうしても驚きが隠せなかった。しかし、そんな谷野を差し置いてスライムは更にタックルをしてきた・・・。アカネは間に入ろうしたその時だった。
「オルァ!!」
大声と共に蹴りでスライムを攻撃した。
スライムのタックル→谷野が蹴りでカウンター→スライムにダメージ(1×2)→谷野が回し蹴りで追加攻撃、スライムにダメージ(3)
スライムを倒した】
アカネは驚いた様子だった。何故か、
「質問は一杯あるけど、一つだけ言わせて。」
『なんで恐れないの・・・。』
そんなのわかっていた。だが言わないでおこう、そう思った。
一方、異世界の中心神の間にて
谷野君。君はこの世界の攻略法を知ってしまったようだね・・・。いいデータを録らせてもらったよ。男はそう言うと本を本棚にしまった。

スライムを倒した後、谷野の体力が4と危ない状態だったので谷野とアカネは草原の木陰で休憩していた。
(因みに一般的なら2割以下が危険とされている。)
するとアカネが質問してきた。
「谷野って何があってここに来たの?」
谷野はやっぱりその質問してきたか、と思ったが答えた。
「それがな、分からないんだ。」
「わからないって、普通分かるでしょ。」
アカネはそう返して来たが、谷野は本当に分からなかった。
「・・・。本当に分からないの?」
無言になる谷野にアカネはそう質問してきた。そして谷野は『頷いた』。
「ごめんね。」
アカネは地雷を踏んだと思い、謝罪してきた。少しして谷野はブツブツと言い始めた。
「過去が分からなくて怖いんだ。」
ここに来て谷野は初めて弱音を吐いた。男として情けないと思ってもどうしても辛かったのだ。
「大丈夫だから。」
アカネはそう言ってハグしてきた。そのハグで谷野は少し落ち着いた。谷野はふと我に帰って言った。
「・・・はっ、ごめん!!」
そう言った谷野にアカネは
「いいから座って。」
と言って、『穿いていたズボンを脱がし始めた。』
「えっ!?」
ビックリした谷野は必死に抵抗した。
「あの、じっとしてください。」
そう冷淡に返してきたアカネに谷野は、
「アカネ、もうこんなことする必要はないんだ。」
と言うとズボンを握っていた手が震えた。谷野はアカネの震えた手を握ってこう言った。
「アカネは俺よりも強くて正しい人間だ!ただ、才能は俺のモノだからな!!」
アカネはクスッと笑って、
「なにそれ、才能も私のモノですー!」
と言った。谷野は今はこれ以上探ったら怒りが増幅するだけだと思い、アカネの過去には触れない様にしようと思った。谷野とアカネは落ち着いてから出発した。
木陰から出発したのはいいが、日が傾いて来ている事に気がついた。
「谷野、夜のモンスターは手強いのが多いから宿を探そう。」
アカネがそう言ってきたのはいいが、見えるのは山と草原しかなかった。谷野がそれを指摘するとアカネはじっと考え始めた。悩んでいる谷野とアカネの元に誰かが寄ってきた。
「あの、すみません。」
谷野とアカネはビックリして見ると豪華な服装を着したお嬢様らしき人が話しかけて来ていた。
「はい!!」
二人はそのお嬢様らしき人の服装を見るなり姿勢をビシッとし始めた。するとお嬢様らしき人は、
「私はナコです。何か困っていそうだったので話かけましたが大丈夫ですか?」
谷野は流石お嬢様優しいなと思った。アカネはこの機会を逃すまいと思い質問をした。
「すみません、ここ付近に宿屋ってありますか?」
と聞いた。するとナコは、
「ここ付近はありませんが良かったら私の館に泊まっていきますか?」
流石お嬢様!!(二回目)
「はい!!是非泊まらして貰います!」
と谷野は元気よく返した。そして谷野とアカネはナコと付き添いの執事と草原を歩き、山を登り、その館らしき所まで着いた。その時には真っ暗になっていたので篝火が灯っていた。しかし、本当に大きいな。谷野はそう思いつつ、ナコと執事に着いていき、アカネと共に館に入って行った。

ナコに着いて行った谷野とアカネは大きな館を見て怖じ気ついたが、ナコが門を開けて手招きした。二人は恐る恐る入って行ったが予想通り下はタイルと絨毯、上はシャンデリアと、とても豪華な造りと装飾がしてあった。玄関は靴を置くスペースがあったのでそこに靴を置いて上がろうとしたが、執事が止めたので任せた。上がりには履き物が置いてあったので二人はそれを履かせてもらった。しかし、しっかりとしているなと谷野は思いつつ玄関を歩き、リビングに来た。ナコは二人が来たのを確認すると、
「とりあえずここにいて、準備が終わったら呼ぶから。」
ナコそう言うと執事と共に奥に行った。俺とアカネはこれも豪華な椅子に座るとアカネが小声で言った。
「本当に着いて行って大丈夫だったの?」
それに対して谷野は小声で返した。
「まあ大丈夫でしょ。」
そう言ったが実は谷野は結構警戒していた。ただ、泊めてもらう事に越したことはないので着いていったのだ。そう考えていると執事が来て、
「谷野様、アカネ様、御部屋の準備が完了しました。」
と言ってきた。部屋は勿論別だったので別れて部屋に入った。谷野は部屋に入ると部屋中を探り始めた。30分探ったが怪しい物はなかったのでやっと部屋のベッドに座って、そのまま寝っ転がった。疲れた、そんな考えが真っ先に浮かんだ。谷野は今まで何があったか思い返していた。今までわかった事は、ここが異世界である事。アカネが異世界の人間である事・・・。アカネは異世界の人間の筈だろ。それにしては他の人達とは違う雰囲気がするんだ?何故だ?すると、ドアノブを捻る音がした。
「谷野様、ナコお嬢様からお話があるので来てください。」
谷野はビックリして起き上がった。執事が訪ねて来たのか。そう確認すると部屋を出て執事に着いて行き、一際大きな両開きのドアがある部屋に案内された。谷野が圧倒されて立ち止まっていると、執事はドアを開けた。そして部屋に入るとナコがいた。
「執事、席を外しなさい。」
ナコがそう言うと執事がお辞儀をしてドアを閉めた。
するとナコは谷野に席に座るよう勧めた。谷野が座るとナコが言った。
「谷野さん、あなた異世界の転生者でしょ?」
「えっ!?なんで・・・。」
谷野はビックリしてつい声が出た。
「やっぱり合ってたのね。」
唖然とした顔をする谷野にナコは付け足した。
「まあビックリするわよね。だけど、心配する必要はないわ。私は谷野さんの味方よ。」
もしかして俺の事を知っているかもしれないと思った谷野はナコに質問した。
「ナコ、俺は何故この世界に来たんだ?」
ナコは悩んだ様子で答えた。
「んー考えられるのは二つあるかな?」
一つ目、『異世界の門』から来た。
二つ目、『三次元(地球等)』で死んでしまった。
「という感じだが、谷野さんの場合特殊かな?」
そう言ったナコに谷野は返した。
「なんで俺が特殊なのか?もしかして何も覚えて無いからか?」
「谷野さんビンゴ、鋭いねー。」
ナコはそう言って谷野を指さした。その後手を下ろして更に言った。
「あとパラメーター情報送ってー、振り分けポイントを振り分けているか確認がしたいの。」
しかし、送れって言われても・・・。
「送り方が分からないけど言おう。」
「ほうそれほど自信があると。」
ナコにそう言われたが正直に自信がない谷野は少し考えて言った。
『体力10、他1だーー。」
そう言うと、
「えっ・・・。」
流石のお嬢様も固まってしまった。しかし、すぐに言い始めた。
「フーアッハッハ、なーに冗談言ってるの、ね!」
「いや、冗談と言われても事実なので。」
谷野がそう言うとナコは立ち上がって、
「・・・。は?」
と言って頭を抱えながら部屋を歩き始めた。
「(いや、何でそうなったの!)(んー何でだ?)」
ナコの独り言が聞こえている。谷野はゆっくり立ち上がると言った。
「ナコさんパニックになっても何も変わらないので一回落ち着きましょう。」
そう言うとナコの歩きが止まり、一つ咳払いをすると言った。
「・・・すみません取り乱してしまいました!まあ座ってください。」
再び座るとナコが言ってきた。
「谷野さんあなた他の転生者とは違いますね。」
そう言うとナコの表情が一変、無表情になった。
「だからあなたの転生したした理由いわゆる現実を教えましょう。」
甘い一時の苦味は重い一時だった。

ナコは無表情で言った。
「谷野さん貴方は、『下校中刺されて死亡』しました。」
「下校ということは俺は学生だったのか ?」
谷野はそう返すと、
「はい、そうです。しかし、私はこれくらいしか教えて貰っていません。」
ナコはそう言った。すると、ナコの顔がガクンと落ちる様に下がった。もしかして、気を失ってる!?
「ナコ!!」
谷野はナコの肩を揺さぶったが、応答がなかった・・・。谷野は走ってドアをバタァンと勢いよく開けた。
「あの勢いよく開けるのは・・・。」
執事は言いかけたが谷野の慌てようで言い止まった。
「はーはー、執事さん!!ナコさんが・・・。」
「え!?」
執事は谷野の言葉にビックリして扉の向こうに飛び出して見た。そしてナコが倒れているのを確認した。
「ナコさん!大丈夫ですか!?」
また執事はそう言ってナコの所へ走って肩を掴んで揺さぶった。しかし応答がなかった・・・。そして、執事が二人部屋に入って来た。・・・!?谷野は気づいた。二人まさか・・・。ズチャと音がした。1人がショットガン、もう1人がナイフを構えた。既にいた執事(ここからはAと略)が鞘に納めていた剣を出そうとしたが遅かった・・・。谷野は武器がないので抵抗できなかった。そう、ここで谷野は。
『死んでしまった』






異世界神の間にて
「ルク様!!谷野さんが・・・」
役人が慌てて言いに来た。しかし、ルクの表情は至って落ち着いていた。ルクは慌てている役人に言った。
「まあ、落ち着いて見ておけ。こいつは今までの転生者と違うぞ。」
役人は戸惑ったがルクに質問した。
「違うとは?」
役人の質問にルクは答えた。
「それは言えないな♪」
「逆に気になりますよ!!」
役人はにやけながら言った。役人とルクはもう少し談笑を交わして役人は部屋を出た。ルクは役人が出たのを確認すると鍵を閉めて考え始めた。しかし、一つ言える事はルクには何かを確信があるという事だ。谷野が行った場所それは過去だった・・・。

『転換への扉』に続く


三章 転換の扉

異世界→現世界

男が目を開けるとベッドで寝ていた。しかし、今の時刻は一時だ。まあ今頃他の奴は学校だろうなー。まあつまりどう言うことか、簡単にいうと自分はニートだ!自信持って言うことでもないか、因みに自分の名前は『田中 進時』この物語の主人公は自分だ!なんてな。冗談だ。ここまでの話と関係ないよねだって?あれは、茶番みたいな物だ気にしなくていいぞ。ここからは自分達のコメディの始まりだ!まあ始まんないと思うけど。自分がなんでニートなんだってどうでもいいだろそんなの。てか今、親が仕事でいないっけ今のうちに食い物買ってこよーー。・・・よしいないな、コンビニまで行ってこよ。進時は少し黒くなった白靴を穿いてコンビニまでたどり着いた。(よし、ここまではクリアーだな。)進時はエナジードリンク、ポテチ、その他お菓子と最後にカロリー食品(カ○リーメ○ト等)を買い、コンビニを後にして颯爽と家に戻った。そして、パソコンに電源を入れて充電していたスマホ、タブレットを抜いていつものスタイルに入った!!とまあ進時の日常はこんな感じだ。ニートの中でも外に出るだけマシなのしれない。そんな事を思いながらゲームをする。
数日後チョコを食べたくなったので、進時は近くのコンビニに向かっていた。その途中の事だった・・・。
「シンジ様・・・。」
少女みたいな声でそう呼ばれているような気がした。流石に最初は幻覚だと思った。しかし、帰り道だった、
「あなたが必要なのです・・・。求めるなら何でも授けましょう。」
まただ、いやでも気になるな。進時は体を横にしてギリギリ入る位の細い道を少し進むと・・・。そこからは覚えてはない。

現世界→異世界

目を開けると、眼鏡を掛けた少女?の顔がスレスレになってた。
「うわぁ!?!?」
びっくりした拍子に起き上がったその時に唇が触れてしまった・・・。少し沈黙したあと、二人とも顔を赤くして、
「たまだまだからね!!」
と少女がカミながら言った。進時も、
「うん!そうそう!」
といったが、心の中では、
「よっしゃーーーー!!!(歓喜)」
という感じだった。そう考えていると少女が言った。
「なんか・・・、ラナさんが!おでことおでこを引っ付けて熱を測って!て!言ってたから!」
となんか誤魔化しながら言った。まあ人見知りなんだろう。予想が付くが心の中を聞いて見よう、
「うおしゃーーー!!!(歓喜)」
ですよね。
数分しても気まずくて話せなかった二人の所にフード付きのローブを来ている女性が来て、
「さっきから見てれば、なんだ!?気まず過ぎだろ!!」
そう言って眼鏡の少女を手招きして寄せると耳元で話し始めた。進時はなんか見てはいけないと思い、目線を反らした。それから少しして・・・
「あっ、あの!!」
進時は反らしていた目線を合わせて答えた。
「ああ、どうした。」
「・・・私の名前はメタナセだよ♪♪よろぴく!」
そう言って両手でハートを作って前に突き出した。進時は思わず
「おい、無理するな。」
と本音が出た。そして進時は付け足した。
「でも!可愛かったぞ。」
とグッドサインをして言った。
「褒められたようで貶されたような気がする・・・。」
そう言って落ち込み始めた。進時は慌てて言った。
「気のせいだ!」
進時とメタナセはそう言って笑いあった。自分はこんな皆で楽しめる場を求めていたのかもな、そう感じた。
「なー、ラナ・・・いない!?」
進時は目を大きくしてそう言った。そうすると、メタサがため息を付いて言った。
「はー、またラナ存在感消していなくなってるよ。」
進時とメタナセは死んだ魚の目をして言った。
「何回もあるんだー。」
「あるよー。」
進時は話を変えた。
「ところでメタナセやっとタメ口で話してくれたな。」
すると、メタナセは落ち着いた口調で言った。
「私も男の人に久しぶりにタメ口で話したな。」
進時は頷きながら言った。
「それは良かった。」
すると、
「お二人さん話は済んだかーい。」
「わ!?ラナ!?!?」
ラナが天井の角材にぶら下がっていた!?流石にびっくりした。メタナセは強い口調で言った。
「ラナびっくりするから急に出てこないで!」
「それは二人とも済まないな。」
ラナはそう言ってお辞儀した。メタナセは言った。
「はー、ラナったら。ところでシンジって何処から来たの?」
進時は流石にバレるのはマズイと思い、慌てて答えた。
「まあ・・・遠方のところかな?」
「そうならこの町案内しよっか?」
進時はバレなかった事に安心しつつ、返事をした。
「ああ、そうだな。案内してくれ。」
「正直でよろしい♪着いてきて!」
メタナセはそう言って手招きした。進時はゆっくりした足取りで着いて行った。ラナはこれまた存在感を消して着いて行った。だから怖いよ!!

進時達は部屋を出て受付に来た。他にも部屋があることから宿屋かなと思った。しかし不安に思い、聞いた。
「ここって宿屋か?」
「そうだよ?」
メタナセが不思議そうな目をして答えた。そうして歩いていると受付に着いて、チェックアウトをした。そしてドアを開けると、緑と複数の町並みが広がった。
それにしても、
「暑いなー」
「だよねー」
メタナセがそう相づちを打った。ところで・・・
「ラナー、いるかー?」
「いるよー。屋根の上に。」
ん?屋根の上・・・えっ!?
「いるーーー!?」
「二人同時に言われてもなー。」
そう言うラナに進時は指摘した。
「ラナ、それホント怖いからやめた方がいいよ。」
「んーまあね。」
そう言って頷いた。オーラや存在感がなくせるのは凄いと思うが。するとメタナセが言い始めた。
「あっそういえば私達が何か言ってなかったね。私達はギルド『ネクルシーザ』のメンバーだよ♪」
ラナがメタナセの言葉に付け足した。
「現在三人しかいない最弱ギルドでーす!」
メタナセが慌てて言い始めた。
(それ言わないでーー!)
まあ聞こえているが。一つため息をつくと進時が言った。
「んー、もう少し考えて答え出すわ。」
「でも考えてくれるだけでも嬉しいよ!」
そしてメタナセの表情が少し暗くなった。何でだろうこんな事言うのはどうかと思うかもしれないが、メタナセは眼鏡をかけた理系美少女で、ラナはフードを被ったボーイッシュ系でこんな人が集まらないギルドには・・・まてよ。三人!?あと一人いるなそいつに原因があるのかも・・・。
「なあ、もう一人いるよな。」
「うん、そうだよ?」
メタナセは進時を不思議そうな目で見た。そして、少し暗い顔をした。
「そいつに会うことって出来るか?」
「いや・・・。」
メタナセの顔が更に暗くなった。なんでだ?進時は鈍感な性格なのでよく分からなかった。しかし、
「済まないな。」
問い詰めてはいけないことだとはわかった。察してくれたと感じたメタナセは、
「ありがと。」
と言って、
「さてっとこんな暗い感じでもしょうがないから、早く行こ!」
「ああ、そうだな!」
そう言って少し笑みを浮かべた。
「・・・お二人さーん私忘れでしょー!」
・・・。
「ナンカキコエタヨネー。」
メタナセが棒読み
「ウンソウダネー。」
進時も棒読み。
「いや、ここだから!」
ラナは凄く強調して訴えた。
「冗談だから、大丈夫だよ。」
進時は流石に正直に言った。
「・・・へーそうなんだ。」
ラナはそう言って手をポキポキと鳴らした。
「なあ、ラナそれはなんだ・・・?」
進時はラナの手を指差した。
「イヤーナンダロネ。」
ラナは棒読みでそう言った。
「この通りだけど。」
また手をポキポキ鳴らしながら進時に近づいた。
「どういう・・・。」
そう言って進時は少し後退りをした。
「オラァ、シンジ一発殴らせろ💢」
「イヤーーー!」
ラナが走り始めて、それを見て進時は逃げた。
「なんで自分だけーーー!」
そう言って進時は更にスピードを上げた。
「・・・シンジドンマイ!」
去っていく進時とラナを見てそう言って、グッドサインをした。



異世界神の間にて
「進時って奴、面接してたっけ?」
ルクは椅子で寛ぎながらそう言った。
「いや、見たことありませんが。」
伝言人は資料を見ながら言った。
(まあ俺が付けるパラメーターではないが。だって進時のパラメーターは。)
体力(HP)5000、技力(SP)2000、攻撃力2500、防御力2000、以下省略。これで1レベルだ。これは、転生者に付けられる最大パラメーターを超えてる。
「・・・ルク様、早い所で対処しないと。」
伝言人はそう慌てていた。
「わかってる、早いうちに『殺せ。』」
そうルクは冷淡に言った。
「わかりました。」
伝言人は返事をした。



異世界
「シンジ、ここはね!」
「おう。」
元気に町を紹介しているメタナセを見て本当にこの町が、大好きなんだなと思った。
「やあメタナセちゃん。今度は町案内かい?」
進時より少し背の高い男性が話しかけて来た。
「あっ、ハユさん!そうですよ!」
「へー、メタナセちゃん凄いなー、ナンパばかりしてる俺とは違うなー!」
(ハユさんは少しチャラいのか?)
「そうですよ!」
メタナセはハユに強くそう言った。
「ハハッ、そこら辺俺より一枚上手だからなー。まあ、頑張れ!」
ハユはそう言ってグッドサインをした。
「はい!ありがとうございます!」
メタナセはお辞儀をした。
「じゃあな!」
ハユは笑顔で手を振った。その少し離れた所で、
「・・・ふー、見つけた。」
伝言人は双眼鏡を見ながらそう言った。そして、一旦物語は戻る。

これは遡ること4カ月前の話だ。

異世界
「谷野さん!!」
執事が谷野の肩を掴んで揺さぶって呼んでも応答がなかった・・・。しかし、
「谷野さんは生きてるよ。」
白髪が特徴的な執事がそう言って通りすぎて、ナコの安否を確認しようとナコに近付いた。すると、
「ナコ様・・・。」
白髪の執事が黙りこんだ。
「ナコ様も倒れてしまいましたが外傷はないので大丈夫だと。」
執事がそう言うと、白髪の執事は首を横に振った。
「ナコ様は、谷野さんの『身代わり』になったのですよ・・・。」
「それはどういう・・・。」
急な情報が多い為に言葉に困った。すると白髪の執事が説明し始めた。
「確かに谷野さんは一回死んだ。しかし、ナコ様がその致命傷を庇ってらっしゃった。ということだ。」
(ナコ様、庇ったのですか?私達はどうすれば・・・。)
執事は泣き始めた。何年も全てを捧げ、信じてきた主人が最後がこんな辛いものだとは・・・。
「しかし、なんで・・・。」
「それほど谷野さんに価値や力を感じたとしか思えません。」
執事が言い終えると白髪の執事が執事の頭に手を置いて言った。
「これで私達の仕事は終わりだ。タメ語で話していいよ。」
「わかった『父さん』。」

谷野は意識が戻るとベッドから起きた。当然だが自分は死んだはずだと混乱した。情報が欲しい谷野はとりあえず部屋から出ると、通りかかったメイドが気がついて慌てて中央の広間に走って行った。谷野はそのままメイドに着いていって中央の広間に来た。すると、白髪の執事が近づいてきた。
「あの谷野さんですよね。」
白髪の執事の質問に谷野は素直に頷いた。
「一応自己紹介しておきましょう。私は執事長、名前は伏せておきます。」
そう言うと執事長は右手を右にやってお辞儀をした。(それはそうとしてなんで名前を伏せたのだろうか。)
谷野は考えているが分かるわけもなく間が空いた。考え込んでいる谷野を見て執事長は少し不思議そうな目をした。
「教えない理由言いましょうか?」
「出来ればお願いします。」
当たり前だが聞いた。
「親しい仲ではないからですよ。」
(ん?どういうことだ?)
結局分からなかったが、無理やり飲み込んだ。とりあえず何があったか聞いた。そもそも防御力1の時点で即死は確定なのだが、死ななかった。その理由を知りたかったのだ。
「あの時なにがあったんだ?」
「話が長くなるので座ってください。」
すると谷野に椅子に座るよう勧めた。
「あの時何があったか一通り言いましょう。
1.暗殺者が襲ってきた。
2.しかし、間に合わなかった。
3.谷野が私の娘を庇った。
4.谷野が刺されて死んだ。
5.暗殺者が谷野の庇ったことにびっくりしている隙を私の娘が衝いて倒した。
6.私達が駆けつけた。
こんな感じです。」
谷野はどこまで知っているか大体の人は分かっているだろう。
「2までだ、というかその後から記憶もないぞ。」
谷野の回答に執事長はびっくりした様子だった。
執事長は少し間をおいて言った。
「だが、なんで記憶もない状態の中で庇えたのだ?」
「確かにそれがわからないな。」
しかし谷野がわからなければ誰がわかる、そんな様子だった。
(でも意識はなかったんだ。いや、意識がなかったからか?いや流石にそれはない。意識がないのに体が動くものか。)
悩めば悩むほど迷宮入りしていく、そんな様子だった。すると執事長が一咳して言った。
「谷野さん少しの間この館に留まって考えるのはどうでしょう。第一体も疲れているでしょうし、のんびりしながら考えた方がいいと思います。」
谷野は少し悩んで、
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます。」
すると、執事長は立って言った。
「私は何かとやることが多いので谷野さんの世話は副執事長が担当します。なので何か困った事があったら副執事長にお申し付けくださいませ。あと、何か思い出したら私を呼び出しても構いませんのでよろしくお願いします。それでは失礼します。」
執事長は颯爽と去っていった。
(まあその通りだ主人が死んだのだからやることも多いと思うしな。)
それから谷野は色々と整理するために部屋に戻った。すると部屋に、
「あっすみません、いまベッドメイキングしている途中で・・・。」
執事がいた。谷野は慌てていった。
「い、いいですよ。ちょっとしたらまた戻るので。」
その言葉を聞いて執事が近くに寄ってきた。
「あの、谷野さんに少し聞きたい事があるのでいいですか?」
(・・・この執事よく見たら女性じゃないか。そういえば、執事長さんが俺の世話を副執事長が担当するって言ってたな。それがこの女性執事ということか。)
「谷野さん、もしかして私が女性だって気になりましたか。」
(まあ気になるよな。)
そう考えていると副執事長が座る事を勧めてくれた。そして椅子に腰掛けると副執事長が一息ついて言った。今思えば『これが始まり』だったと考える。

話とはなんだ、そんなことを思いながら座ると副執事長が言い始めた。
「谷野さん庇ってくれてありがとうございました。」
「お礼言われても自分でも何故庇ったのかもわからないんだ。」
谷野はお辞儀しつつそう言った。
「理由なんて簡単ですよ。谷野さんの優しさです。」
(えっ、そんなのあったっけ。)
優しさがあったと思わなかった谷野はびっくりした。谷野は外は大胆で少しチャラさがある感じだが、中身は勇気のない意気地無しだった『はず』。そう思っていた。
(いや、待てよ。)
谷野は落ち着いた様子で副執事長に言った。
「そもそも意識もなかったのに優しさなんてあるものか?」
「谷野さん、お礼に正解は関係なくて素直に受けとるべきですよ。」
(あっそうだった。俺、なんで他人を疑っていたのかな。)
そんな事を思った自分が馬鹿馬鹿しくなった。
(何回も死んで何をすればよいかがわからなくなってしまったのか。いや、今は正解を探すことよりもやるべきことがあるだろ。)
もはや苦痛で自我が壊れてしまったのだろうか、分からなかった。谷野の様子がどんどん暗くなっていた。
「谷野さん!!」
副執事長がいきなり大声で言った。
(びっくりした!?)
しかし、切り替えてくれということは伝わってきた。
(また考え込んでしまっていた。)
間違いなく谷野の悪い所だ。しかし、考える時間がなかった谷野は『鬱陶しい』と思った。そう、谷野は人の優しさも鬱陶しいと思う器の小さい男だ。しかし、
「ありがとう。」
と言った。あくまでも隠しておくということだ。それも優しさと思っている。
「あの、気分転換に近くの森を散策しに行きませんか?」
副執事長は首を傾げながらそういった。
(それは確かにいいな。)
「じゃあお言葉に甘えて行かせてもらおうか。」
「はい!!」
副執事長はにこやかに笑った。そして副執事長は部屋を出ていった。
(どうせ演技なんだろーけどな。)
谷野はもはやこんな事を思う人間不信になっていた。とりあえず準備を済まして副執事長が来ることを待っていた。まあ準備といっても何もないのだが。数十分後準備を済ました副執事長が部屋に入って来た。
(いや変わった所ないのだが。)
「行く前に、谷野さん武器持ってませんよね。片手剣貸しておくので使ってください。」
そう言って谷野に片手剣を渡した。鞘に納められていて、長さも両手合わせた位といった感じだった。
「てか攻撃力1で持てるのか?」
「攻撃力と腕力は直結しないので安心してください。」
確かに持てるということは『そういうこと』だ。そんな事を話して部屋の外に出て裏口らしき所から出発した。話すことといっても世間話もわからないのだが。

出発した谷野と副執事長は本当に気まずい様子だった。山頂に着くまで聞けたことは
「なあ、副執事長の実名って何なんだ?」
「教えませんよ。」
「ですよねー。」
これだけ。何のために出たのか。
(まだ部屋にいたときの方がマシのような気がするな。)
しばらくして山頂に着いた。山頂からの景色は緑と複数の町のある生活感のあるものだった。すると、副執事長が言った。
「ここは昼より夜の方が綺麗ですよ。」
(ならなんで来たんだよ。)
「だけどここに私の元仲間がいるんですよ。」
副執事長がそう続けて言った。
(仲間か・・・。)
・・・。
ドォン
重低音がして谷野を貫いた。そして体が動かなくなった。
『思考停止』
「谷野!?」
副執事長は辺りを見渡した。すると、
ドォン
また重低音がして今度は副執事長を貫いた。すると三人組の男がやって来て倒れている谷野を蹴った。
『思考再開』
(はっ。)
意識を取り戻したが倒れているふりをした。実は副執事長が撃たれたのも見ていたのだ。簡単にいえば、谷野は仮死状態だったが目が開いていたのである程度見えていたのだ。一人が副執事長を引きずっていき、もう二人は辺りを見渡していた。そして、ヤノはゆっくり目を開け、
『ブラインドフィールド』
を唱えた。辺りが暗闇に包まれた。しかし、ヤノには暗闇の中でも見えるのだ。三人組が混乱している内に辺りを見渡していた二人に斬りかかってあっという間に倒した。しかし、谷野の攻撃力は1のはずだ。・・・いやそこにいたのは谷野ではなくヤノだった。谷野は覚醒したのだ。すると暗闇が晴れて最後の男と一騎討ちになって、男は副執事長の首に刃物を突きつけようとしたが、
『アサヌヤード』
ヤノは消えて、男の頭上にワープして攻撃した。男は受け止められるわけもなく、
「うわぁぁぁ!?」
剣を脳天に刺されて即死した。

(はっ!?)
また起きた谷野は副執事長に駆け寄った。
「おい!!大丈夫か!」
応答はない。
「おい!!」
応答はない。
「・・・。」
(まただ。)
こうして谷野はまた失うのだ。その繰り返しだ。谷野は倒れている副執事長を抱き抱えて下山した。
「なあ、副執事。」
応答はない。谷野は裏口から入った。すると、廊下に引きずった跡のように血が付いていて、噎せかえるような臭いがした。そして広間には沢山の死体が積まれていた。
(まただ。)
よく見ると執事長の死体も積まれていた。奇襲に会ったのだろうか。谷野は副執事長の死体をそこに積んだ。その後穴を掘って、死体を焼いて、埋めた。その時に副執事長のネックレスを回収した。そのネックレスと借りた剣、キッチンにあった食べ物を倉庫にあったリュックに入れて、館を去っていった。そして谷野は涙が出なくなっていた。


異世界(進時側)
「プハーー、やっぱり酒場はこうでないとね!」
メタナセが木のジョッキを勢いよく置いて、そう言った。進時達は、町の宿屋の酒場に来ていた。お酒を嗜む人、デカイ声で喋る人、ヒソヒソと話す人、料理やお酒を配っていく人、色とりどりの人が沢山いる。
(確かにこの雰囲気は嫌いではない。)
「・・・メタナセ明日クエストにいく予定だからあまり飲み過ぎないでね。」
ラナが心配そうにメタナセにそう言った。そんなラナを裏腹にメタナセは飲み続けていた。

「よいしょっと、飲み過ぎるなと言われてるに飲み過ぎちまったな。」
進時は宿屋でメタナセを運んでベッドに下ろした。
(二階まで運んで疲れたな、俺も部屋に戻ろうかな・・・やっぱり心配だからいとくか。)
進時は壁を背もたれにして床に座った。
(眠いなー。ちょっと寝とくか。)
進時はそのまま目を閉じた。

「・・・ごめん、進時。」
メタナセは眠る進時にそう言って部屋を出た。廊下を歩いて、階段を降りて、ドアを開けて出た。宿屋を出て走っているメタナセの手には新聞があった。
『ナコ国政長とその執事、メイドの大量殺人!?その真実を追った。』
という記事があった。その記事の一文には、
『騎士団、警備隊は谷野を容疑者として追っている。』
という一文があった。
次の日
(寝すぎた!?)
起きると既に朝だった。ベッドを見るとメタナセがいなかった。宿屋を徘徊をしたがいなかったので、荷物を確認するとチェックインして出た。進時はひたすら走って探し回った。ただひたすら、計画も立てずに探した。しかし、見つからず夜を迎えた。そういえば、
「ラナ!?いるか!!」
「いるよー。」
振り向くとそこにはラナが後ろにいた。
「びっくりした!?またいきなり現れるなよー。」
「・・・私そんな存在感なかったか?」
進時はの慌てて言った。
「メタナセ見かけなかったか?」
と進時が言うと
「見かけた、と言うより追いかけたけどほっといてくれと言われたよ。」
とラナは返した。
「そうか・・・」
谷野は悲しそうに下を向いた。するとラナが言った。
「でも・・・。」
ラナは新聞を出して言った。
「そう言えば新聞な記事にナコ国政長とその執事、メイド達が襲撃にあって全滅という記事があったんだよ。それで『ヤノ』という人が犯人の可能性が高いって書いてあったよ。」
「それと関係ないと思うが。」
「もう、言うか。」
すると、進時が不思議そうな顔をした。
「私達が一枠残しているのは、そこ執事の為なんだ。」
「ほう。」
ラナは悲しそうに、
「その執事・・・いや、バーサヌはメタナセの幼なじみで・・・グハッ!?」
ラナは・・・血を吐いて、倒れた。
「ラナ!?」
(なっ、なんで・・・)
すると、ラナが
「進時・・・にっげて。」
「なんでだよ、俺が仲間を捨ててに。」
そこからの意識はなかった。

「グアーーー!!」
怪物と化した進時はいろんな町を行っては暴れて殺し回った。殺した数は百人?いや、千人は簡単に超えていた。ラナも怪物に化し、ここまで約五百人を殺している。そう、二人はモンスター用の凶暴化する呪いのある薬品を注射されたのだ。
「ふー、目的通り二人の駆除は終わったっと。あとは二人を操作してヤノを殺して、征服するだけだ。」

数日後
「バーサヌ!!」
メタナセは門から入って、
「なんで・・・。」
すると、死体を漁る男がいた。
「!?、誰だ!!」
すると男は、
「これは、その・・・」
メタナセはその言葉を無視して
「あんたヤノか?」
「そうだけど?なにか?」
すると、メタナセは
「そうか・・・」
メタナセは、ヤノに切りかかった!→ヤノは鞘から剣を出して、その攻撃を受け流した。→メタナセはもう一回切りかかった!→ヤノはメタナセの攻撃を回避して足を引っかけ転かした→ヤノは更に転けたメタナセの首を掴み、刃を向けた。
「俺に、近付くな!!」
谷野がそう言うと、メタナセは言った。
「私は!お前を許さない!」
そう言って抵抗した。すると、
「うわ!?」
谷野が凄い勢いでふっ飛んだ!?
ドサッ
『不完全な意地』
谷野は壁に打った勢いで9ダメージ!残り1
(あっぶなー!?)
「・・・よし!今だ!!」
メタナセが飛びかかった!→ヤノは鞘から剣を取り、受け流した。→メタナセはそのままの勢いで壁に当たった(36ダメージ+気絶)。
「ふー、危な・・・。」
・・・。
「!?、メタナセさん!大丈夫ですか!」
谷野はメタナセの肩を掴み、揺さぶった。しかし、応答がなかった。
(メタナセさん・・・そうだ。今度こそ生かしてみせる・・・。絶対に・・・。)
谷野は館を去った。

四章 かさ地蔵に続く


谷野はメタナセを背中でおんぶして、左肩にはリュックを背負って歩き続けていた。その目は覚悟を決めた。そう感じさせるものだった。谷野は、
(絶対に、生かすんだ。)
そう常に考えながら歩き続けた。
数時間した頃だった。肩から振動がして草原にそっと寝かすと、少しずつ目を開け始めた。
「・・・、見えない。」
(起きた!!えっと。)
「眼鏡だな。これでいいか?」
谷野はそっと眼鏡をメタナセの手に持っていった。するとメタナセは頷いて眼鏡を持ち、そっと着けた。
「うん、これだな。ありが・・・。」
メタナセは谷野を見ると止まった。
「あーー!?えっ、谷野だ!?」
「そうだよ。また殺そうとするのか?」
そう言うとメタナセはじっと睨んだ。
(でも何で俺を殺そうとしたんだ?・・・もしかして。)
「お前、あの執事達の関係者なのか?」
「そうです。だから襲いました・・・。」
少し震えた声でメタナセはそう言った。恐らく負けたと思ったのだろう。するとメタナセは、
「やっぱり殺されるのですか。」
(・・・。)
「は?誰が殺すって言った。」
メタナセは凄い唖然とした顔をした。
「お前、あの記事を鵜呑みしてるのか?」
「・・・はい。」
(ですよね。)
「そして俺を殺そうとしたと、んー。」
「あの、すみませんでした。」
メタナセは正座して深々と頭を下げて土下座した。
(起きたがどうしようか。)
谷野は腕を組んで言った。
「お前一応帰る所はあるか?」
「仲間の所ですがありますよ。」
(仲間の所か・・・。)
「なら仲間の所まで送るよ。」
「そうですね、私の名前はメタナセです。よろしく俺の名前はメタナセです。」
「知ってると思うが、俺の名前は谷野だよろしく。」
こうして二人はメタナセの仲間の所へ向かい始めた。
「・・・見つけた。」
暗殺者はスナイパーライフルを構えた。
「おい、後ろ。」
「ん?」
男はサイレンサー付きのハンドガンで暗殺者の頭に三発打ち、体にも三発打ってその場を去った。
「これでいいんですよね、『アカネ』さん。」
「はい。」
アカネは頷いた。

男の名は『Mr.キャット』。まあ探偵といえば探偵だが、彼は一味違うのだ。彼は転生といえば転生だ。しかし、彼は・・・

半年前(異世界)
「最近依頼こないなー。」
Mr.キャットがそう言うと女性は返した。
「そうだね。まあ平和なだけいいでしょ。」
「そうだな。」
3ヶ月前
「よし、依頼終わったな!というか最近探し物の依頼多いな・・・。」
Mr.キャットはゆっくり歩いていた。
「よし着いた。ただいま・・・。」
そこで見たのは・・・。数人の男女が血を流して倒れている光景だった。機材は割れたり、電気はチカチカと点滅しており、煽っているようだった。そして少し雨の後の独特の匂いがした。外は晴れなのに。それから調べてそれは『傘使いの能力の独特の匂いだとわかった』
「許さない・・・。」
それから探し回った。そして見つけた。

「ほい。」
アカネはMr.キャットの胸ぐらを掴んだ。
「は?」
Mr.キャットはキョトンとした顔をしたが、
「Mr.キャットさん、さっき谷野に殺意向けてたでしょ。」
アカネはそう言ってMr.キャットを睨んだ。
「いやいや殺そうとするなわけないでしょ、ならなんで助けるの。」
Mr.キャットはそう言った。するとアカネは言った。
「どうせ、あんたの手で殺して復讐したいんでしょ『転生者さん』。」
「えっなんで・・・。」
Mr.キャットはそう言って目が飛び出そうなくらいびっくりした。確かに少し前にあった人にバレるのだから。

約一週間前
アカネは谷野と執事達の目を盗んで館の裏口から出た。そして、ある場所に向かった。それはMr.キャットの探偵事務所『カスタード』だ。カスタードは殺人事件からもの探しまで様々している。まあここまでは他の所でもやってそうだがカスタードの所属者にはある特徴がある。
そこにいるのは一人除いて『特殊能力者』だ。
ここまではアカネが調べてわかっている。

「おい、アカネって言ったっけ。なんでそこまで俺達にこだわる・・・。」
すると、アカネはきっぱりと言った。
「それはね谷野にあるの。」
「谷野は俺達の敵だ!あいつに俺の仲間は・・・。」
そう言ったMr.キャットは
「カウント20、ストップ」

「はっ!えっ・・・。」
さっきまでアカネがMr.キャットの胸ぐらを掴んでいのに、逆にMr.キャットがアカネの胸ぐらを掴んでいる・・・。
「立場逆転だな・・・。」
そして、Mr.キャットはサイレンサー付きハンドガンを取り出し・・・。
「さよなら。」
といって打った・・・。
トン、トン
「・・・。」
「Mr.キャット・・・。」
Mr.キャットが打ったのは実弾に見せかけた偽弾だ。
偽弾は見た目は実弾だが、ゴム等で出来ていて殺傷能力のない弾だ。
「・・・見えない。」
Mr.キャットはそう呟くと、
「見えない?」
アカネはわからなかったのでまた言うように返した。するとMr.キャットは言った。
「俺の仲間を殺したのは確かに傘使いの能力者なんだ。しかし、あの谷野という者はどうしても殺してるようには見えない・・・。」
「谷野は殺すような人ではないからね。」
アカネはそう言ったが、
「アカネは谷野の何を知っている?」
Mr.キャットのその言葉で少し黙ったがやがて話し始めた。
「谷野はね・・・。」

アカネは言った。
「谷野はね・・・、一回この世界を救ったの。」
「・・・え!?」
「まあMr.キャットがびっくりするのは仕方無いけど、事実なの。」
Mr.キャットは驚きを隠せないが言った。
「まあとりあえず聞こう。」
「うん。」
アカネは頷いた。

約二年前
谷野は中学二年生だった。そんな谷野がこの世界に来た。どこから来たのかというと扉だ。異世界と現世界を繋ぐ不思議な扉だ。そこを何回も出入りしていた。入れたのは実はある日森の空き家で餓死寸前の魔族の男を助けた際に、
「魔族の皆を助けてください!」
そう言われたのが始まりだった。それまで天族と神軍人間の同盟軍に圧倒的劣勢にまで追い込まれていた。それは本当に残酷で、ある魔族は見せしめに町の中心で処刑。ある魔族は性欲の捨て場に。ある魔族は拷問で徐々に弱らせていって同盟軍に忠誠を迫るなど、もう終わっていた。
しかし、谷野が来てからは変わった。劣勢が徐々に戻り遂には攻められて奪われていた所を取り戻し、最初の状態に戻った。そこで同盟軍は驚く行動をした。和解である。すると、魔族側はこれに条件付きで了承した。条件は囚われた捕虜の解放だ。因みに魔族側も同盟軍の兵を捕虜として囚えていたが、衣食住は揃えていた。服はきちんと綺麗な物を揃え、食事はコックが作った美味しい物を食べさせ、住は一人一人個室できちんとプライバシーを守るという簡単に言えば至れり尽くせりだ。そんな中捕虜達にはある考えができた。
「自分達人間は見せしめに殺したり、徐々に弱らせてそれを楽しんだり、奴隷にしたりしていたのが馬鹿馬鹿しい。」
それからは捕虜達はせめてもの償いと思い、町で働き始めた。捕虜達は残る側と出る側に別れた。勿論出ると決意した捕虜は解放した。
しかし、同盟軍は違った。いつまで経っても捕虜を解放しないのだ。 しかも見せしめにわざわざ魔族達の目の前に来て捕虜の魔族を殺した。そして、また戦いが始まった。
そんな中谷野は世界を救った。

男は言った。
「正直ここまでしか書いてないんだよ。」
「・・・『 』様までわからないとはどういうことですか?」
男は少し笑みを見せて言った。
「谷野をこっち側に持ってくか。そうすればあいつの企みを何とか出来るだろう。」

異世界
「とういう所なの。」
アカネはそう言った。するとMr.キャットは、
「おい、なんでそんなことアカネが知ってるんだ。」
「それはヒミツね。」
そう少し魅惑びた声で言った。
「なんだよ。」
まあ『保留』だな、そうMr.キャットは思った。
一方、谷野とメタナセは。気まずそうにどちらも話しかけずに静かだった。実は谷野は少し偉そうな話し方していながら、人見知りだ。
(どうしよう。)
谷野は言った。
「あの、その探している仲間ってどんな人達ですか?」
「んー、一人は本当に存在感がなくていつの間にいなくなってる事が多いですね。あともう一人は少し話が苦手だけど頼れる人ですね・・・。」
メタナセは少し楽しそうにそう言った。
(頼れるか・・・。)
「二人の事が大切なんですね。」
「はい、大切な仲間です。」
メタナセはそう言うと、
「ヤノさんって旅人なんですか?」
谷野は言った。
「確かに旅人と言ったら旅人ですね。」
谷野がそう言うと、メタナセは少し不思議そうな顔をした。そうすると谷野は付け加えた。
「正直に言うと、目的のない旅人です。」
メタナセはそれを聞いてあることを思った。私達と同じだと。すると、メタナセは言った。
「ねえ、あなた行き場所ないのなら私達のギルドに入りませんか?」
谷野はびっくりした。しかし、本当に嬉しいかった。今まで仲間がいなくなって辛い思いをしていた谷野にとっては、とても嬉しい出来事だった。
「ありがとうございます!」
谷野は笑顔でそう言った。
「あの、ギルドに入ったので敬語やめよ!」
メタナセはそう言うと手を差し出した。
(ん?なんだ?)
「ハイタッチ!」
「おっ、おう。」
谷野は戸惑いつつもハイタッチをした。メタナセの笑顔、ハイタッチの音。その一つ一つが谷野に実感を与えてくれた。
(やっと俺の終着点に着いたか。いや、始まりか。)
アカネ、Mr.キャット側
「谷野嬉しそう!」
そう言ったアカネがの顔も笑顔だった。
「そうだな、ところで俺達隠れる必要あるか?」
そう言ったMr.キャットにアカネはどや顔をして言った。
「出るタイミングがあるの!」
「・・・うん。」
Mr.キャットは少し唖然した。
谷野、メタナセ側
「ねー、谷野って何処から来たの?」
メタナセの質問に谷野は、
「んー何処だろ?」
「いやいやあるでしょ。」
メタナセは手を横に振りながらそう言った。
「実は俺の中でも不思議なんだ。なんか死んだらしんだけど、覚えてないって言われて正直謎だ。」
メタナセは少しびっくりした顔をしながら、
「へー、なるほど。」
「まあ、そうなるよな。」
谷野は少し悲しそうな顔をしてそう言った。確かに分からない事は辛い事だ。
「それより、谷野!山頂までもう少しだよ!」
メタナセは山頂に向かって走り始めた。谷野もそのあとを追っていった。山頂に着いたメタナセは唖然とした。
「谷野・・・。」
あとを追っていた谷野も見た。
「えっ・・・。」
そこで見たのは燃える建物、黒くなった建物跡。
「なんでこんなことに・・・。」
そして、
「谷野!後ろ!」
アカネがそう叫んだ!谷野は後ろを振り向いたが、
(間に合わない!)
「カウント30、バースト!」
すると、周りの人達が動かなくなった。しかし、Mr.キャット以外に動ける人がいた。谷野である・・・。

「なんでお前が動けるんだ!?」
Mr.キャットはびっくりした。この能力で動ける者は一人もいないと。
「それよりも縄あるか!」
その本人のヤノはびっくりする様子もない。何故だと思ったが、
「縄あるぞ!」
Mr.キャットは縄を投げた。しかし、
「しまっ・・・」
カウントリセット
襲いかかって来ていた人が動き出したが、ヤノが攻撃を受け流し捕まえた。そして気絶させた。それと同時にヤノも気絶した。
「えっ、谷野!?」
Mr.キャットがびっくりして寄って来た。
「はー、いきなり走るなってMr.キャット・・・って谷野!?」
アカネも来た。一方メタナセは、
「・・・さっきから何が起こってるのだろう?」
メタナセの中では何が起こってるか分からないかった。メタナセから見ると、いきなり人が瞬間移動して気絶してと情報量が多い。
「おい、そこの谷野と一緒にいた女!運ぶの手伝え!」
Mr.キャットがメタナセにそう呼び掛けた。
「は、はい!」
メタナセはそう言うとMr.キャットとアカネの所に来て、Mr.キャットは谷野を背負って、アカネとメタナセで襲撃者を運んだ。

「ふー、とりあえず着いたな。」
運び終えたMr.キャットはソファーに腰かけた。
「ところでここは何処ですか?」
メタナセは疑問になったので質問した。
「ここは俺の元探偵事務所だ。前ここが襲撃されて俺以外全滅だったんだ・・・。」
Mr.キャットが普通そうに衝撃的な事を言った。
「え!?・・・なんでそんな事をほぼ初対面の私に言うのですか?」
「んーそうだな、メタナセって言ったっけ?あんた悪い人だと思えないし。」
「なんせ谷野が自ら信じて守ろうと思った人だからね。」
アカネが話に乱入してきた。
「・・・、谷野さんって何者なんですか?目的のない旅人ってことしか知らないんですが・・・。」
そんな質問をするメタナセにアカネが言った。
「そうね・・・私は彼に救われた話でもしようかな。」
一年前
アカネは風俗をしていた。アカネの家族はその風俗を営んでいる人に借金していたのだ。それでその人にメタナセを売る事を条件にチャラにしてもらっていたのだ。話が好きなアカネはたちまち人気が出た。
「主人あの・・・。」
ここでは営業主を主人と呼ぶようになっている。
「どうした?指名だから言ってこい。」
「あっあの。」
そう呼び掛けるアカネだったが、
「いいから言ってこい!!言うこと聞いてないと捨てるぞ!」
「は、い・・・。」
毎日主人にこんなことしたくないと言おうとしたらこうだ。何度か言ったことがあったが怒鳴られ、殴られで終わりだ。
毎日して、殴られ、雑に扱われ、辛くて、苦しくて、そんな日々を過ごしているとこんな考えが出来た。
(しないと、しないと、そうしないと私の居場所がなくなる・・・。とにかくしないと言うとおりにしないと・・・。捨てられる。)
もはやそう思って自分に言い聞かせていた。しかし、それが逆に快楽になっていた。
そんなある日だった。買い物に行っていると、
「ちょっとお姉さんいいかな?」
少しがたい良い男が声をかけて来た。
「なんですか?」
「ちょっといいですか?」
(またか・・・。)
アカネは町に来るとたまにそうやって声をかけられる事がある。目的はわかっているだろう。そんなこともあるのだ。しかしこの日は違った。
「よっし、それじゃ・・・」
男がアカネに手をかけた時だった。
「おーい、お兄さん達ー。」
やって来た少年はそう言った。
「こんな裏通路に用かな?」
「その女の人を僕にくれない?」
確かにその少年は小さく、声変わりもしていなかった。
「おいおい、小僧は引っ込んでな。」
「うーん、これならどうだ?」
少年は懐からお金を出した。その額200D、これがあれば1ヶ月暮らせる額だ・・・。
「おい、小僧この額どこで・・・。」
男がそう言うと、
「じゃあ、女の人もらってくね、じゃあね。」
「おっ、おう。」
少年とアカネはそうして裏通路から出た。アカネは少年に聞いた。
「なんで、無茶したの!私なんて・・・。」
「あんた、そんな事言ってるの?」
アカネはびっくりした。こんな事言ってくる人初めてだったからだ。少年はアカネの手の手を掴んで歩き出した。
「えっ、何処行くの!」
驚くアカネに少年は言った。
「決まってるでしょ!」
そう言われて連れてかれたのは、アカネが働いている店だった。そして、少年は入った。
「あのー。店主さんって・・・。」
「私が店主だが、坊やには早い所かな?」
店主はそう言って少年を外に出そうとした。すると少年は、
「この額であの女の人を譲ってください。」そう言って懐から600Rを出した。これは家が四軒位建てられる額だ。すると店主は、
「この小僧を取り押さえろ!」
そう言うと四人の男が現れた。少年は言った。
「交渉決裂かー、残念だ。それじゃ、こちらもいこうか。」
そう言うと少年は四人の男を軽々となぎ倒し、店主に駆け寄った。
「はい、これで言うこと聞くようになったかな?」
「はっ、はい!」
店主は涙目になりながらそう言った。
「じゃあ、もらってくよ。」
「女の人?何か最後に言うことある?」
少年がそう言うとアカネは言った。
「さよなら、ウジ虫ども!」
そう言って去った・・・。それから少年とはたまに会った。少年はアカネに家を買い、武術や剣術を教えた。少年と話す時はとても楽しく、素で話せた。そして少年はある日、急にいなくなった・・・。いなくなる少し前に名前を聞いた所、
「谷野 隆史だよ。」
そう答えた。

「という所なの。だから私はもし、もう一回来たらこの命が尽きても守り続けると誓ったの。それが恩返しだと思うからね。」
メタナセはそう言うと、メタナセは仮眠室で倒れている谷野の所に行った。
「谷野・・・。」
アカネはそう言って谷野の頬にキスをした。
「あっ、あの人いっ今谷野さんに、キッスをしましたよ・・・。」
メタナセが凄く戸惑ってそう言った。
「うーん、メタナセは戸惑い過ぎかな?」
Mr.キャットがメタナセにそう言った。
「まあ、そういうこと!」
アカネはそう言ってベッドで倒れている谷野にバグをした。すると・・・
「おーい、アカネ・・・重い。」
「誰が重い・・・谷野!?」
アカネはすぐに退けてヤノが起き上がった。
「谷野大丈夫か?」
Mr.キャットがそう聞くとヤノは答えた。
「おー、今は元の俺の出番か。」
「元の俺?」
メタナセが不思議そうに聞くと、
「三人に、元の谷野から言いたいことがある。それは・・・。」

「三人に元の谷野から話したい事がある。」
「あのさっきから元とか何ですか?あなたは谷野ですよね?」
メタナセがそう質問すると、谷野は答えた。
「まず俺は谷野だ。だが、今は別人格と言うべきか・・・。今は元の俺、三人がよく見ているのは1の俺だ。」
「うーん、私達が今までいたのは1の谷野って事?」
メタナセは少し疑問の様子でそう聞いた。
「そうだ。元っていうのはアカネ。君にあるんだ。」
「うん。」
ヤノはアカネに笑顔でこう言った。
「中学校時代、君のと過ごした日々を俺は覚えているぞ。本当に辛かっただろうが、頑張ったな・・・。」
「谷野・・・。」
アカネは目に涙を浮かべた。本当に辛かった日々を一通り終わったからだ。
「あと、1の俺についてだ。Mr.キャットの考え通り、俺は『傘使い』の能力者だ。」
「やっぱりな。所で何で俺の時間停止の中でも動けたんだ?」
Mr.キャットはそれが全くわからなかった。
「動けた理由か・・・。三人とも、今から話す事信じてもらえるかな?」
ヤノは少し心配そうに聞いた。
「おう。」
Mr.キャットがそう返事すると、ヤノは少しずつ話し始めた。
「まずMr.キャット、自分自身の能力は知ってるか?」
「『カウントクロック』だろ?」

カウントクロック
カウントと呼ばれるポイントを溜めて、そのポイントを一気に放出して自分の動きの倍率を操作したり、相手を止めたり、周囲の時間を止めたりできる能力。能力の中でも強力な部類に入っている。

「そうだ。だが実はカウントクロックには一つ弱点がある。『時空の行動者』には効かないことだ。」
「時空の行動者ってそもそもなんだ?」
Mr.キャットが質問すると、
「時空の行動者は、『過去や未来に行ったことがある人がなる特質』だ。」
「えっ、ということは・・・。」
「俺は過去や未来に行った事があるということだ。」
「えーーー!?」
メタナセが凄く驚いた表情でヤノを見た。
「おい、なら何を見たかを言え。」
Mr.キャットはヤノにそう聞いた。
「それは言わないでおこう・・・。」
ヤノは少し悲しそうな顔でそう言った。なぜなら、
(俺が見たのは仲間が全滅し、異世界が崩壊する残酷な結末だからだ。そして、『この三人の中に裏切り者がいる』からだ。」
「えっ、ここまで話しておいてそれはないだろ。」
「ここから話すのはいけないだけだ。」
ヤノはそう言うと、Mr.キャットに近付き耳元で言った。
「お前の仲間のうち一人は生きている。」
そう言うとヤノは事務所を出た。するとメタナセは 、
「ねえ、さっき谷野に何言われたの?」
「教えねぇよ。」
(何であいつが知ってたんだ?もしかしてあいつ・・・。)
アカネはこう言った。
「二人とも谷野についてだけど・・・。」

一方ヤノは、
(よし、行くか。)
休憩する感じにして、実はある場所に向かっていた。そこは・・・。
「待ってろよ進時。」
メタナセ達がいた町に向かっていた。そう、進時の所へ戦いにいくのだ。
そして山の山頂まで来た。
(やっぱりひでぇな。・・・うっ。)
ヤノはクラっとした。すると、
(おい!聞こえるか!)
〈・・・え!?心の中で何か聞こえる!?〉
どういうことか言うと、元のヤノと1の谷野は今心の中で会話しているということだ。
(おーい、聞こえるか1ー。)
〈1じゃなくて谷野だ!〉
(・・・俺も谷野だから言ってるのだけど。)
〈えっ、どういうこと!?〉
ヤノは谷野に事の一部始終を教えた。
〈んー、という事は俺は新しく生成された人格って事?〉
(まあ、そうなるな。)
〈とりあえずわかった。〉
(・・・てっきり悲しむと思ったんだが。)
〈おーい、聞こえてるぞー。あと、悲しむどころか嬉しいよ。だって、二人でいる方が行動しやすいからね。〉
(そうだな。でも、一人の時間なくなるな・・・。)
〈だから、聞こえてるぞー。〉
(ですよね。)
ヤノは笑った。因みにこの心での会話は勿論他の人には聞こえてない。なので、周りから見るとヤバい奴だ。
ヤノは走って山を下っていた。
〈足はや!?〉
(んー、パラメーター違うからな。)
〈どういうこと?〉
(パラメーター見てみて。)
〈うん。〉
ヤノのパラメーター
HP1000、SP1000、攻撃力2000、防御力1500、素早さ 3000、その他略だ。気づいた読者もいると思うが、実は進時より弱いのだ。しかし進時に勝るものがある。それはレベルと素早さだ。まず、進時のレベルが1なのに対してヤノのレベルは257だ。そして素早さなのだが、進時のパラメーター紹介の際書いて無かったが、進時の素早さは2000だ。しかし、ヤノは3000と上回っているのだ。素早さが相手より速いと回避しやすいというメリットがある。
(俺も前は谷野のようにパラメーターが超低かったからな。)
〈そうなの!?〉
(そうだ。・・・おっ、町に着いたな。)
〈でっ、どうすればいいんだ?〉
(んー、あれ試すか!)
〈あれ?〉
(あれってのはな・・・。)

あれとは・・・
(傘地蔵の能力ってどんな感じか知ってるか?)
〈んー、人格2つ出来ることしか・・・。〉
(まあそうだよな。それじゃあ教えるよ。)
傘地蔵の能力 (現時点)
・元の人格にさらに1の人格が追加される。
・1の人格は人の心に入る事が出来る。
・心を変化させる事が出来る。
(という所だ。)
〈えっ、これだけ!?〉
(そうだ、しかしこれだけでわかった事がある。)
〈うん。〉
(最後で気づいたかもしれないが、心を変化させる・・・。これ悪用したら、精神崩壊や人格崩壊を容易く出来るということだ・・・。)
〈おい、それ不味くないか!?〉
(Mr.キャットが言う限り、この能力者は俺らを含めて最低二人はいる。これがどういう事を意味するか。)
〈確実に一人は悪用者がいるということか・・・。〉
(そうだ。)
〈そのためにも早く行こうぜ!〉
(よし、わかった。)
そして、谷野達は廃墟と化した町へと入っていった。

異世界(どこか)
「よし、出来た♪」
女が笑顔でそう言った。
「これは?」
男が質問すると、
「これはね、異世界の扉。これが私の計画に必要なの。」
「計画?」
女は言った。
「それはね・・・。」

異世界(谷野達)
〈ところで進時って誰だ?〉
(んー、チート的なパラメーターがあるがその一方で催眠や呪いにかかりやすいデバフのある奴なんだが・・・。)
〈ってまさか!?〉
(そうだ。だから操られたりしている可能性が高いんだ。)
〈で、助けにいきたいと。〉
(そうだよ。)
〈なら行こう!〉
(その前に、あれしようか。)
〈あれってなんだ?〉
(あれってのは、精神分離だ!)
精神分離
傘地蔵など、能力で人格が出来た場合に分離することができる。分離した時にパラメーターを振り分けることになるが、二人のパラメーターを合わせてその後好きに取っていく。因みに割合は6-4、5-5でないといけない。因みに分離した後にまた戻ることは可能だが、パラメーターの再分配は不可能。

(こんな感じだな。)
〈わー、難し。〉
(とりあえず分配どうするかだな。)
〈どうするか・・・。ヤノ、とりあえず接近戦向きと魔法向きなので分けよ。〉
(いいなそれ。じゃあ俺接近いくわ。)
〈その方がいいな。〉
(よし、じゃあ振り分けるか。〉
〈ちょっと待って、進時って人パラメーターチートなんでしょ?〉
(そうだな。)
〈パラメーター分けたら一人あたりは減るってことは、下手したら一撃だぞ?〉
(確かに。)
〈ということは今はしない方がいいと思うぞ?〉
(そうだな。)
〈うん、覚悟は出来てるよね。〉
(おう。行くか・・・。)
二人は廃墟を歩き始めた。町には焼き崩れた建物、死体が生々しく残っていた。何があったか、よくわからないが物事の大きさを物語っていた。
〈何があったのだろうか。〉
(これ進時が操られたとして一人で出来るものなのか?)
〈いや、いくらチートでも一人では出来ないと思うよ。進時の他に何か・・・。〉
(いや、今はそんなこと考えてる場合ではない。先に進もう。)
〈そうだな。〉
また少し進むと、廃墟の中に人影が見えた。谷野達は瓦礫に身を潜めて人影を見た。
〈んー、誰だろあれ。
(・・・あれは!?)
〈ん?なんだ?〉
(メラアクだ!)
〈メラアク?〉
(メラアクはな、俺が中学生の時に森の空き家で助けた魔族だ。)
〈なるほど。〉
(よし、あいつに。)
〈待て。〉
(なんだ?)
〈後ろ!!〉
ギン!
すると、ヤノの剣と襲撃者の剣が合わさった!
(危な!?)
〈もう一発くる!〉
(よし。)
ジリリッ
ヤノは襲撃者の攻撃を受けながした。
(いくぞ!)
〈なんだ!?〉
ヤノが振り被ると剣が赤くなりだし、ヤノはそのまま襲撃者に斬りかかった。
リードパワースラッシャー+5
ヤノの剣は襲撃者に直撃し、襲撃者はそのまま倒れた。
(終わったな・・・。)
〈とりあえず相手の情報を調べる方がいいと思うよ?〉
(そうだな。)
〈こんな時こそ分離すべきか。〉
(何でだ?)
〈襲撃されたって事は俺達が狙われてる可能性だってあるから調べる時に一人は見張りに付くという感じが
良いかな。〉
(そうだな・・・、OKいくぞ。)
〈わかった・・・。〉

(聞こえるか。)
〈おう。〉
(パラメーターはもう振り分けてあるから、分離だけだ。)
〈OK。〉
ヤノは静かに目を閉じた。すると目の前が光出し、光がヤノ達を包み込んだ。そして目覚めると・・・。
「おい、何が・・・。」
谷野が辺りを見渡すと・・・。
「これ成功したのか!?」
フードを被った男がいた。谷野である。
「成功っぽいな。」
ヤノは少しホッとした。
「とりあえずボーッとしてる暇はないから早速調べよ!」
「じゃあ俺見張りいくわ。」
ヤノは見張り、谷野は調べる感じにした。ヤノは襲撃者の所持品を調べ始めた。すると、
〈剣に毒が塗ってあるな・・・危なかった。〉
そんな中谷野はある物を見つけた。
〈家族写真・・・。〉
三人の家族が笑顔で写った写真だった。谷野は襲撃者の顔を見た。
「俺がこの戦いを終わらせます。だから安らかに・・・。」
そう語りかけた。そして決意した。
〈絶対に戦いを終わらせる。〉
谷野はそしてヤノの所に戻った。しかし、そこにいたのは血を流して倒れている谷野だった・・・。

谷野が着いたときにはヤノは倒れていた。
「大丈夫か!?」
よく見るとヤノは大量の血を流していた。するとヤノは谷野の服を掴み凍えた声で言った。
「1の谷野・・・ここは包囲されている、俺を囮にして逃げろ・・・。」
「でもヤノが!」
するとヤノは言った。
「俺はいい、だけどこれを持っていけ・・・。」
ヤノから不思議な巻物を渡された。その後谷野は笑顔で谷野を見た。
(血を流して苦しいと思うのになんで・・・。)
「行く・・・。」
「ああ、行けそして・・・過去を変えろーー!!」
ヤノは掠れた声でそう言いまた地面に倒れた。
(俺は・・・もう、もう誰も、『殺させない、悲しませない。』そして、戦いを終わらせる。)
目に涙を浮かべた・・・。
(この包囲網を脱出する。とりあえずどうするかだな。)
ここは複数の建物があるが、どれも窓が割れている。一応夜では無いため、見渡しやすいのが有利だった。
(人数が分からないからどう動けばいいか・・・。)
「おーい。」
「うわ!?誰か・・・。」
誰かが谷野の口を塞いだ。
「モゴモゴゴ・・・プハー、びっくりした。」
谷野がいきなり口を塞がれたのでびっくりした。
「びっくりしたのはこっちもですよ。そういえばあなた・・・谷野さん?」
「はい、そうですが。」
「・・・久しぶりです。」
「誰・・・ヤラトラ!?」
「そうです!」
ヤラトラが笑顔でそう言った。
「なんでだ?お前俺と一緒に落ちたはずじゃ・・・。」
「そういうのは、後で説明するから。とりあえずこの包囲網から出よう。」
「わかった。」
ヤラトラ、谷野のパラメーターを決める転生面接の間に向かってる際に階段通路で落ちてしまい死亡扱いになっていた。
(・・・今はそれよりも包囲網から出る方法を探る方法が先だ。現状こちらは俺とヤラトラがいる、ヤラトラがどれほど強いのか気になるが、俺はヤノと実力が半分に分けてある。そして、ヤノがやられた。敵わない・・・。)
谷野が悩んでいる様子をすると、
「どうしたのヤノ?」
「ここまで行くまで何か襲撃にあったか?」
谷野が質問した。
「いや、特には。」
「そうか。」
30分経っても動きはなかった。というよりかはお互いが様子を伺っている様子だった。
「相手動かないな。」
「・・・はい。」
(このままじゃ消耗戦になってしまう、どうすればよいか・・・あっ。)
「雷を降らせるから、離れといて!」
「わかった!」
【詠唱】
魔力を溜めて、
【魔法を生成】
雷が降るのを想像して、
【魔法を発動!】
魔法を放つ!
谷野達から少し離れた所に雷が降った。
(よし、出来た!)
どういうことかと言うと、
(仲間や助けを呼ばないと・・・。)
谷野の選択としては、強行突破、待機、助けを呼ぶ等があった。強行突破はまずない、待機は消耗戦になるのでない。となったら助けを呼ぶしかないので呼んだ。
「・・・やっぱり無理だったのか?ヤラトラごめん。」
「こちらこそ・・・。」
すると、
「助けを呼ぶ声がしたのですが。」
谷野の方を叩いた男は、
「えっ、谷野様・・・。」
黒い服をきた男だった。
「あの、誰ですか?」
「覚えてないのですか!?うーん、私はメラアクと申します。」
メラアクは谷野のわからない様子を見てびっくりした。
「もしかして、あそこに倒れているヤノの知り合いですか?」
谷野がそう言うと。
「それはどういう・・・。」
谷野はメラアクに事の一部始終を説明した。
「なるほど、なら私が守るべきなのは谷野様ですね!」
「そうなるな。」
いきなり風と共に忍者らしき男がそう言った。
「待ってよ、れたん!」
今度は魔法使いらしき女性が一人来た。
「・・・ん?」
谷野は状況が読み込めない様子だった。すると、
「僕は忍者『れたん』。魔法使いらしきのは『キヌラ』、あとから侍が来るんだが名は『カツオブシ』だ。」
「よろしくお願いいたします・・・。」
メラアクは戸惑っている谷野に言った。
「戸惑うのは当たり前だ。しかし今はここを出るのを優先しよう。話はそれからだ。」
「ありがとうございます。」
メラアクは頷くと皆に言った。
「よし、一気に行くぞ!」
「オッケー。」
そのれたんの返事と共に全員一斉に走り出した。目的はあくまでも谷野の生存だ。
しかし、何故こうなったの?皆なんで血を流して倒れているの? 何で皆・・・そうだ。あいつらが攻めて来たんだ。神族とタサだ。神族は神に使える者達のことで、魔族と仲の悪い種族らしい。何故神族が来たかというと、メラアクが魔族だからだ。俺達は魔族を匿ったとして倒しに来たのだ。だが問題はここからだ。タサはこう言った。
「異世界と現世界を繋ぐ扉を沢山作っといたから、谷野さんの仲間が沢山出来るよ!」
タサはそう言うと、
「よし、言うことは言ったから。爆破しよ!」
・・・そしてタサは町全体を爆発させた。
俺が生き残ったのは何故なのか・・・分からないが、間違いなく生かされたと思う。

現世界
「何これ?」
少年達は扉を見つめていた。
「異世界の扉って書いてあるけど。」
『異世界の扉!?行ってみるしかないでしょ!』
「っておい!?」
入った少年が見たのは・・・。
「おい、何だこれ・・・。」
モンスターに食われる人間、死体の山、そして、
「・・・近づくな!近づくなー!!」
少年は泣き叫ぶが声は届かず、
グシャ
少年の首は飛んだ。

異世界
「ねえ谷野さん、この景色綺麗でしょ。」
「・・・。」
「俺は・・・。」

『異世界の扉!?行ってみるしかないでしょ!』
終わり。

『異世界の傘地蔵の破壊衝動が抑えられない!?』
に続く。















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