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管理者6

 会議室に到着すると、そこには相変わらず資料の山が大量に出来ていた。
 それは前回と同じだが、今回は山の数が増している。ただし、山一つの高さは全体的に低くなっているので、めいの要望通りに分けられているのだろう。
 そんな会議室には、代行者達以外にも沢山の者が行き交っている。
 会議室自体かなり広く、端から端まで霞むほどの広さがある。ただ、そこに大量の山が出来ているので全容が分からないし、狭くも感じるほど。
 それでも広さは変わらないので、沢山の人が行き交っていても問題はないだろう。おそらく手伝っているのは、ここの代行者の部下達だと思われる。
 その内の何人かが会議室に入ってきためいに気づき、代行者を呼びに行く。ちょうど近くに居たのか、直ぐに代表の代行者がやってきた。

「これは主様。もう作業は終わりましたので?」

 目の前で跪きながら、代表の代行者は驚きの滲む声音を出す。
 しかしそれもそのはずで、ここには膨大な数の魂が集められているのである。もしも四日ほどでその全てを精査して対処したともなると、それには驚きしかないだろう。

「いいえ。早急に対処しなければならない魂だけ取り急ぎ処理しただけです。それで、資料の整理の方は終わりましたか?」

 めいは代表の驚きを否定した後、そう確認する。とはいえ、それだけでも処理が早すぎるのだが。
 資料の整理は見た限り結構進んでいるようだが、それでも忙しなく資料の束を持った人が行き交う様子を見るに、まだ完全には終わっていないのだろう。
 それでも進捗状況の確認はしておきたかったので、とりあえず最初にそう問い掛けただけなのだが、代表は見るからに焦りだす。

「そ、それはですね、まま、まだで御座いますです」

 もしかしたら罰せられるとでも思っているのだろうかと考えためいは、落ち着くように言葉を掛ける。その際に進捗状況だけ報告するように告げた。
 資料の量が多いのだ、あまりに進んでいないのであれば別だが、見た限りそうでもなさそうなので罰する必要はないだろう。
 そうして代表を落ち着けためいは、報告に耳を傾ける。それによると、おおよそ七割は終わっているようだった。

「損耗の激しい魂の資料に限定してはどうですか?」

 めいは少し考え、先程自身が処理し終えた案件に関連した資料についての進捗状況を問う。
 資料の整理が終わるのを待つ間、そちらの処理をしておこうと思ったのだ。めいは全ての魂について記憶しているので、それの照合をして漏れがないかの確認をと。

「それでしたら全て終えております」

 代表の返答にめいは満足そうに頷くと、案内を頼む。勝手に移動してもいいが、案内させた方が代表側としても都合がいいだろう。
 めいの言葉に代表は頷くと自分が案内しようとしたが、代表ともなれば色々とやる事も多いだろうからと思い、めいが別の者で構わない旨を告げた。
 めいとしては案内してくれれば誰でもいいし、区画ごとに調べ終わる度に案内を頼む事になるので、最初に代表に頼んでしまうとその度に代表を呼ばなければならなくなるかもしれない。
 案内後に次からは別の者に頼む旨を伝えればいいのかもしれないが、今までの反応を見るに、それを変に重く受け止められても困るので、それならば最初から案内だけなのだからと説明して、別の者に頼んでおいた方が無難だろう。幸いここには代表以外にも証人は居るのだから。

(それはそれで別の意味に受け止められても困りますが)

 そう思うので、めいは誤解が生じないように丁寧に説明をしておいた。これは代表に思うところがある訳ではないという事もちゃんと言葉にもしておく。
 そうしたやり取りを経て、代行者以外の者に案内されてめいは最初の区画の資料置き場に到着する。そこから目的の資料の山を教えてもらい、一人黙々と処理を始める。
 損耗の激しい魂は全て世界に還元したので、その還元した魂と一致する者の資料である事を確認すると、めいはそれを足下に置く。
 そして次の資料を手に取り確認を行い、確認を終えた資料を足元に重ねる。
 短時間でどんどんと資料は高さを増していく。元々損耗の激しい魂は全体で見れば最も少ないので、更に区分けされて数が減った資料など、めいにとっては大した数ではなかった。
 処理を終えると、漏れがないか周囲の資料も軽く確認して別の区分の資料であるのを確かめた後、近くに居た者に確認を終えた資料の処理を任せ、それとは別の者に案内を頼んで次の資料の場所へと移動していく。
 そうして会議室中に置かれた全ての区画別の場所を巡ったものの、どうやら別の部屋にも資料の山は在るらしく、めいは次を求めて案内されて部屋を移動する。
 到着したのは、先程の会議室の上に在る部屋。広さも似たようなものなのだが、そこに築かれている資料の山もまた似たようなものだった。この区画に集められている人数を思えば、まだ別の部屋にも似たような山が在りそうだなと思いながら、めいは早速案内された区画の資料の処理を始めた。
 迅速に幾つもの山を処理しながら、めいは内心で失敗したなと苦笑を零す。
 元々が区画ごとに分けられていたので、ついそのまま魂の損耗別に分けるように指示してしまったが、これだったら手間が掛かろうとも区画関係なく損耗別に分けて一ヵ所に纏めさせればよかったと。そうして纏めた後に改めて区画別に分けた方が、その後の処理は早く済んだかもしれない。
 処理しては移動を幾度も繰り返しながら、めいは小さく息を吐き出す。とはいえ、それもそろそろ終わりが見えてきた。
 損耗の激しい魂は数が少ない部類に入るとはいえ、それでも何部屋も移動するとなると相応の時間が掛かるというもの。
 しかし、それだけ時間を掛ければ資料整理も進むというもので、めいが資料が分けられた全ての区画を調べ終えた頃には、指示していた資料整理はほぼ終わっていた。
 とはいえ、まだ少し時間が必要そうだったので、めいは再び屋上へ向かうことにする。その際に仕事を増やして申し訳ないと思いながらも、めいは代表に仕分けが終わったら更に魂の損耗別に纏めておくように指示を出しておく。可能であれば、魂の損耗別に纏めた中で、更に区画別に分けておくようにも追加しておいたが、そうすると部屋の広さ的に最も多い損耗の軽微な魂の資料だけでも部屋を分けねばならないだろう。
 それでも、それが出来ればかなり作業が早く楽になるので、めいとしては是非とも実現してほしいものであった。
 部屋に関しては、ここは管理している人数が人数なだけにかなり広いだけではなく数もあるので、今使用している部屋とは別に用意しても問題はないだろう。

(今行っている作業を終えた後に新しい作業を行うとしましても、区間内では魂の損耗別に既に分けられているので、後はそれを手順良く運び出せばいいだけ。作業的には現在行っているものよりかは多少楽でしょうが、それでも時間は掛かりそうですね)

 そう考えためいは、屋上に向かいながらどの魂から調べていこうかと思案する。

(作業には時間が掛かりそうですし、こちらも急ぐ必要が無くなった訳ですから、今回は時間が掛かりそうなところに手をつけるとしまして……)

 と、そこまで考えたところで、残りは数は多いが緊急性の無い魂ばかりなのだから、一気に終わらせてしまおうと思い直す。そうすれば、後は資料を確認するだけでめいの仕事は終わるだろう。
 緊急性の高かった魂に関しては既には分解は終えた後であるし、資料にも抜けなどは存在していなかったので、全て処理したという事で間違いはなさそうだ。
 屋上に到着したところで、作業のための準備に取り掛かる。
 座る場所の周囲に魔法道具を大量に配置した後、めいは屋上に腰を下ろして力を抜く。

「さて、始めますか」

 そう呟いたところで意識のほぼ全てを魂に集中させる。
 まず手をつけるのは、損耗のほぼ無い魂からだ。数は最も多いが、確認だけなのでそれほど時間はかからない。損耗の激しい魂の時に比べれば十倍は早く作業が出来るだろう。もしかすれば百倍は早く終わるかもしれない。
 そうして集中して作業を行っていき、損耗の少ない魂から順番に確認を終わらせていく。最も数の多い損耗が軽微な魂の確認に掛かった時間は、損耗の激しい魂を処理した時間と同じぐらいであった。
 損耗が軽微なので魂を確認するだけの作業になり、直ぐに終わったのだ。後は資料の確認を終えさえすれば、無事だった魂は各区画へと戻されるだけ。
 めいはそのまま、次に多い多少損耗が確認されている魂を調べていく。損耗具合によっては修復もしなければならないだろうが、ここまではほぼ確認だけで問題ないだろう。
 その後もどんどんと確認を終える。ほぼ確認だけだったので、日数はそれほど掛からずに終わる。

(ふぅ。ここまでは確認だけですが、この先は修復や統合が必要になってきますね。魂の統合、面倒ですね)

 全体の半数以上の魂を確認し終えためいは、少し休憩を取りながら残りの魂について考える。残っているのは、緊急性はないが損耗が確認されている魂ばかり。中には可能なら早めに処理した方がいいだろう魂もちらほらと確認出来た。
 何とか形だけは問題なく維持出来ているという具合の危ういその魂は、傷が深すぎてめいでも修復は不可能。だが、分解しなければ手はないというほど酷い状況ではない。何も無ければ放置していても自然と力に還元される事も可能だろう。
 だが、やはり何かあっては困るので、めいはそういった魂は、二つ以上を束ねて一つにするという方法で処置をしている。これを魂の統合と呼んでいるが、要は複数の魂から必要な部分を取り出し、それを組み合わせて新しく一つの魂を作り上げるというだけの話。
 死後の世界と言うのは不思議なもので、独自の法則が働いている為に、罪の在り処が何処かはめいでもまだ完全には理解出来ていない。
 今のところ力に対して罪が決まっているようなので、こうして統合した魂にも改めて相応の罪が定められて、浄化が行われる。

(贖罪に個は関係無し。浄化に対する罰であるのであれば、やはり罪の軽重は力の在り方次第という事なのでしょうか?)

 そこまで考えたところで、めいはそんな疑問を抱く。
 例えば、無傷の魂同士を統合したとしても、それに対する罪が決まり、罰が与えられる。その場合、統合した魂の罰を合算しただけ、という訳ではないのだろう。新しく誕生した魂に対して再度定義されるようになっている。

(この辺りが解明出来れば、もう少し効率的に力を循環出来そうなのですが)

 めいはそんな事を考えながら、短い休憩を終える。
 因みに罰を受けることに対する苦しみについてだが、魂にはその生前の感覚や記憶が残っているので、その残滓とも言うべき部分が罰に対して苦しみを受けるのだが、魂を統合した場合には、統合した魂に適した人格のようなものが自動的に与えられて、それが苦しむというおかしな仕組みになっていた。
 この辺りの仕組みに対してもめいは理解出来ていない。いや、より正確には、わざわざ苦しみを与える意味がめいには理解出来ない。それは、管理するうえで酷く無駄な気がしてならなかったから。





 休憩を終えためいは、魂の修復と統合の作業に入る。
 まずは修復。これは傷を癒すようなものだが、魂は自然治癒を行わないので、普通の回復魔法ではまず修復は不可能。
 それに、損耗によって抜けた力は戻らないので、損耗の度合いによっては本来よりも弱弱しい魂になった事になる。
 これを直すには、力を与えてめいの力で傷を塞ぐしかない。面倒ではあるが、損耗具合によっては意外と便利でもあった。
 というのも、魂に込められた力は世界が勝手に浄化して力に還元してくれるのである。それを利用すれば、魂の崩壊によって溢れた力の浄化に役に立つのだ。
 魂の崩壊によって溢れた力は穢れているのだが、それも時間の経過と共に浄化されていく。しかし、それには途方もなく長い時間が必要になってくる。それに、その力は世界に干渉して悪影響を及ぼしてしまうので、世界を管理する者にとっては厄介者という事になる。
 だが、溢れた力を浄化するのは実は困難なのであった。厄介なことに溢れた力は、直ぐに世界に満ちる正常な力の中に紛れてしまうから。
 それに何とかしてその紛れた力を特定したとしても、既に世界に混じってしまっていて、穢れた力だけを取り出すのが困難になっている。
 そのまま浄化しようにも、正常な力の方が邪魔になって効果はかなり薄い。結果として、狭い範囲を浄化するだけでもかなりの時間が掛かってしまうという事になる。それでも時に任せるよりは随分と早いのだが、非常に疲れる事には変わりない。それに浄化に時間を掛けていると、それが無駄な時間に思えてきてしまう。
 そこで役に立つのが、損耗度合いがそれなりに高い魂。これを修復する際に穢れた力を含む力を籠めてしまって外殻を覆ってやると、あら不思議、力が戻って元気な魂になるうえに、面倒な浄化を世界が勝手に行ってくれるのだ。
 一度に込められる量はそれほど多くはないが、それでもその多くはない量をちまちま浄化するのにも結構な時間を浪費してしまう。
 今回は報告を受けた段階で修復するのが予想出来たので、めいはその穢れた力を含む力を事前に用意して持参していたのだが、損耗の激しい魂が予想以上に酷かったので、そこから漏れたこの区画の周囲に漂う穢れた力を含む力だけでも結構な量になっていた。
 それでもめげる事なくめいは修復を行っていく。それにこの方法は統合の際にも使えるので、今回流出した分の力を全て込めてもまだ余裕があると思われる。
 それでも予想外の結果に、めいは少しやる気が落ちていた。世界を管理しているめいにとって、この穢れた力は頭が痛い問題なのだ。現在世界にはかなりの量の穢れが漂っているのだから。
 そもそも何故それほどまでに穢れた力が世界に蔓延しているのかだが、原因は全て死後の世界を管理していた前任者にある。めいの代に限って言えば、そんな失態は一度も犯していない。なので、今回が初の事態でもあった。
 というのも、前任者は死後の世界をほとんど管理していなかったのだ。そのずぼらな管理のせいで、外から魂を持っていかれる事態が頻発する。
 それはヘカテーが行ったように手順をしっかりと踏んで復活させる方法ではなく、強引に魂を死後の世界から奪い取って無理矢理復活させるという蛮行だったので、魂の損耗速度がもの凄く跳ね上がった。
 それこそヘカテーが膨大な数の魂を数回蘇生させても魂がそこまで大きく損耗しなかったのに対して、強引に蘇生させる方法では、最悪一度目で魂が壊れてしまうほど。
 めいにとっては、何か仕込んで蘇生させたヘカテーも大概なのだが、前任者の時代はそれすらまともな蘇生に思えるほど杜撰であった。
 結果として世界に穢れた力が満ち、魔力にも影響してしまった。本来であれば均一に世界に満ちていた魔力は極端な濃淡を生み出し、それによって他のモノにまで影響を及ぼす事態に陥る。
 幽霊などその最たるものだろう。穢れた力が寄り集まり、勝手に蘇生の真似事を始めた存在が幽霊なのだから。
 とはいえ、生きとし生ける者にとっては幽霊よりも魔物の方が厄介だったかもしれないが。
 魔物というのは、本来は知的な存在のはずなのだ。それだけに、数もそれほど創造出来るものではない。しかし、今では穢れた力を吸収する事で一定以下の魔物は知性を失くし凶暴性が増す。そして、穢れた力が補助してしまい魔物の創造や維持に必要な魔力量をかなり減らしてしまっていた。
 厄介なのはそれで穢れが減るという訳ではなく、むしろ魔物を経由する事で浄化による消耗を回復している始末。
 流石にそこまでいけば前任者も動いたようで、蘇生する際に簡易ながらも許可制にしたという。この辺りは前任の正式な世界の管理者、つまりは神の意向が働いていたのだろう。めいにとっては論ずる事も馬鹿馬鹿しいほどに杜撰な対処なのだから。
 結果として、現在はそれら全てを引き継いだめいが対処している状態であった。世界の軛からの解放などもあってあまり対処も進んではいないが、それもこれからであった。
 そんな訳で修復と統合は面倒ながらも、管理者としてめいにとっても大事な作業であった。
 今回は持ってきた穢れを含む力を使用しようと考えていためいであったが、思った以上に損耗の激しい魂の穢れが周囲に満ちてしまっていたので、そちらを使用することにする。少し手間はかかるが、どうせ浄化するなら穢れの濃い方を優先した方がいいだろう。
 そうして修復を行っていき、何とか修復だけで今回周囲に溢れた穢れをどうにか出来ためいは、僅かだが持参した穢れた力も使用出来た。
 周囲に穢れが拡がったといっても、めいが早い段階で分解に着手したおかげで、そこまで量が出た訳ではなかったようだ。それでも、それなりの量があった修復が必要な魂をほぼ全て活用して何とかというのは、自然に浄化される事に期待した場合はどれだけの悪影響を世界に及ぼしたものか。
 めいの代まで穢れを増やす訳にもいかないので、めい自身も間に合って少しホッとしていた。
 修復が終わった後は統合だが、こちらは複数の魂を掛け合わせて新しい魂を生み出すので、まずは一つの魂を形成するのに必要な分だけ魂を集めなければいけなかった。そして可能であれば、生み出す魂は均一な力で作り上げた方が管理がしやすい。
 そう考えためいは統合に着手する前に少し考え、必要量が集まったらその都度魂を作り出すのではなく、一度統合が必要な魂を全てかき集めてから魂を生み出した方がいいだろうという考えに行き着く。
 統合が必要な魂の量も結構な数ではあったが、めいであれば全ての魂を集めてから新たに作り出すまでの間、手元に魂を留め置くぐらいは可能そうであった。
 改めて計算してみても問題なさそうだっただけではなく、そちらの方が作業効率もよさそうだったので、さっさと残っている魂を全てかき集める。統合が最後の作業だったので、とにかく残っている魂を集めるだけというのは非常に楽であった。
 そうして残っていた全ての魂を集めると、めいは早速再分配を始める。

(流石に持ってきた穢れた力を全て混ぜる訳にはいかないですからね・・・残念です)

 今回のヘカテーの作戦で発生した穢れの流出に対処したので、持ってきた穢れた力が予想以上に手元に残っていた。それら全てを混ぜてから再分配も可能ではあるが、そうなると少々魂の大きさが大きくなりすぎてしまうし、穢れが濃くなりすぎて浄化に時間が掛かりすぎる事になる。
 長く浄化に時間が掛かる魂が多いと、それはそれで面倒があるので、めいは欲を抑えて適度な量の穢れを混ぜた魂を生み出していく。

(再利用ではなく、こちらで一から魂を生み出せたら楽なんですがね)

 そうして次々と魂を統合させながら、めいは内心で残念だと呟く。魂の生成は未だにめいでも上手くいっていない。こうして魂の欠片を集めて組み直すのであれば可能であるというのに。
 めいは上手くいかないものだと思いつつ、目の前の作業に集中する。
 なんだかんだと併せて、魂の状態を確認してから統合まで全ての工程を終わらせるのに十日ほど掛かってしまった。それは十分早いのだが、めいにとっては少々不満であった。
 もっとも、それを表に出すめいではないので、作業を終えた後は資料の処理を行うべく会議室に向かう。
 その道中、めいは何とはなしに前任者について考える。それはおそらく先程まで穢れた力について考えていたからだろう。

(杜撰な管理を行った前任者。しかし、そこには一応の理解は出来ます)

 前任者には以前の神の影響が強く出ていた。
 元々前任者は最果ての獣を討伐する為に生み出された存在であり、死後の世界を管理する為に生み出された訳ではない。
 それなのに死後の世界の管理を任されていたのは、他に適任が居なかったからに過ぎない。というよりも、前の神は死後の世界についてあまり重要視していなかったようだ。

(世界に悪影響が及ぶのが前提のような動きもありましたからね・・・)

 その方がゲームとして創りやすかったという事なのだろう。
 オーガストから受け継いだ記憶に残っている限り、開発していたのは冒険物のゲームだったようだし、安定した世界で冒険するよりも、不安定な世界で冒険する方がらしいという事か。その方が英雄も創りやすい。

(所詮は娯楽の為に創造された世界という事ですか。これはおそらく知らなければよかった事実なのでしょうね)

 自分達の住む世界は、神々が遊ぶ為だけに創られた世界。そんな事実は知らない方が幸せだろう。実際、オーガストという歪みさえ発生しなければ、誰も彼もが決められた通りにしか動けないような人形だったのだから。
 それとは別口で生み出されためいは、そんな人形達を少し憐れに思う。もっとも、それをわざわざ伝えるような趣味はめいにはないので、心の中でそう思うだけなのだが。
 まあ何にせよ、こうして世界は変わり、新しい世界として生まれ変わっている。旧世界の後片付けの大半はめいに押しつけられた形になるが、それが可能なほどの性能を持って生み出されたので、面倒ではあるがめいならば可能だろう。
 そんな事を考えている内に会議室に到着しためいは、丁度近くに居た代表者に話を聞く。
 どうやらめいが残りの魂を処理している間に、要望通りに資料はしっかりと魂の損耗度合い別に、更には区画別にも分けられたようであった。

しおり