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駆け引き6

 筒井の城は戦闘体制に入っていた。秀吉に味方すると言っても光秀が死んで戦う相手が見えない状態だ。かと言ってこの隙に大和に攻め込むのはさすがに秀吉の反感を買う。順慶は鎧姿で居間をうろうろしている。
「狗ですよろしいか?」
「おお、狗か?手柄をあげて秀吉直属になったらしいな」
 すでに知らせがあったようだ。
「面白い話があるのですが乗りますか?」
 家康が伊賀峠を越えて堺から逃げているのは順慶は知らない。取り敢えず簡単に今回の天王山の戦いの話をする。
「幾らいる?」
「服部が百と家康の家臣が百だけです」
「なら全軍を出して撃ち取ろう」
「それは不味いですよ。まだ表立って家康は秀吉殿の敵ではないのです。だが秀吉殿は家康を一番恐れています」
「どうすれば?」
「黒装束で5百ほど出してもらえませんか?」
「儂が行く」
「順慶殿は出てはだめです」
 と言うことで鉄砲隊を黒装束で伊賀峠に向かわせた。ここは筒井の領地ではない。ここでは服部以外の忍者軍団とみなされる。鉄砲隊を崖の上に配置すると合図を決めて狗は沢を下りていく。峠の登り口に服部の先方隊が見える。しばらくして馬に乗った家康が見えた。狗はやはり沢を登ってきた鼠を認めて木に登った。
「どれほどいる?」
「伊賀からさらに百が加わりました」
 家康はこういうことを想定していたのだ。ここを越えると徳川の兵を回しているかもしれない。最後のチャンスかもしれない。狗は合図の狼煙を上げた。同時に5百艇の鉄砲が火を噴いた。彼らにはすぐに引き上げるように伝えている。しばらく様子を見て鼠と沢から山道に上がる。山道には倒れた下忍を30人ほど残して姿を消している。
「逃げられましたね?」
「家康にも運がある」

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