バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

駆け引き4

 狐に鼠を付けて舟を追わせた。狗はすでに光秀の死体を運びこんだのを年寄りから聞いて秀吉の陣に走った。陣の前で長老に呼び止められた。
「こちらに」
 長老は侍の格好をしていた。陣幕を抜けると秀吉が軍師と茶を飲んでいる。二人ともまだ鎧を着けている。
「狗ご苦労だった」
 秀吉が声をかける。
「光秀の首のない死体は偽物です」
「やはりな」
 軍師が頷く。
「服部が舟で戦場から運び出しました。恐らく宗矩の指示だと思います」
「そうだろうな。だが光秀は死んだことにすることにした。まだ本当の戦いは終わっていない」
 秀吉は天下を狙っている。
「今回の働きには満足している。ところで長老をお伽衆にすることにした。狗は嫌だろう?順慶にも伝えてある。狗は秀吉の忍者になった。強化費を出す」
「何を?」
「光秀と家康を見張れ」
 秀吉は最大の敵を家康と見ている。命を伝えると秀吉は急ぐように光秀の死亡を発表して京に向かった。狗は陣幕を出ると長老を呼んだ。
「蝙蝠を連れて行け。柴田の動きを探らせろ。まずこの壁からだろう」
「頭は?」
「光秀を追いかける」
 取りあえず狗は堺に走る。

しおり