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42.襲撃

 博士邸が襲撃される少し前、アリータとラニング博士はアンドロイドについて話していた。

「私の居た世界ではアンドロイド? っていうのは無かったんだけど、簡単に言うとアンドロイドって何なの?」
「んー。一言で伝えるのは難しいが、簡潔に言うとすれば『人間に模したロボット』だろうか」
「そのロボットってのもよくわからないわ」
「ロボットは人間の代わりに労働させる目的で造られた機械のことだ」
「ふーん? ――アンドロイドにも血は流れてるのかしら」
「血は流れてはいないが、血に例えられるくらい大事なものは流れているよ。オイルっていうんだ。これが少なくなったり、劣化したりすると様々な支障がでてくる」
「それは美味しい?」
「いやまさか。オイルは飲むものじゃないよ。決して口に入れるべきではない」
「ああそう……。アンドロイドってなんの価値もないのね」
「それは間違いだ。君が何に価値を見出すかは知らないが、アンドロイドに価値はある」
「いったいどんな?」
「――アンドロイドといえばやはり、良くも悪くも人間とは似て非なるもの。長時間の労働や連続した複雑な計算ができる。経営者の視点でみればこの上ない働き手だろう」
「それに価値があるのかしら? 人間でもで出来ることじゃない」
「人間は文句もいうし休憩も必要とする。病にも侵されるし壊れたら治すのは難しい。人権尊重のこの世に人間ほど煩わしいものはない。効率化を極めると、どうしてもアンドロイドの方が価値があるんだよ」
「なんだか小難しい話ね……」
「ちなみに先程連れてきたアンドロイドだが、あれの価値はそこらのアンドロイドの比ではない。最初直してくれと言われた時は正直捨てろと言いたかったよ。新しく買った方が安くつくからな。だが、あれが軍の開発した極秘機体とわかれば話は別だ。一般に公開されてない、軍が独占している技術がこれでもかと詰まっている! その情報だけでも価値があるのに機体が丸々あるんだからな。ある意味では恐ろしさすら感じるよ」
「……何が恐ろしいっていうのよ?」
「あそこにあるのは一種の化物だ。小国だったら数時間もかからず滅ぼすこともできる。制御出来てるうちはいいが……もしもの事を考えると身近なところにいて欲しくはないね」
「それくらいだったら私にもできるわ。やっぱりアンドロイドなんて大した事ないわね」

 博士はコーヒを啜った。

「そのビッグマウスは今のうちに直した方がいい。癖になると大人になっても響く」

 その言葉にアリータはイラッと来た。

「あぁ゛ん? なんだったらアンタの身をもって教えてあげるわよ。アンドロイドより私の方が優秀だってね――ていうか外うるさい!」

ドドドドという大排気量のエンジンが複数、それから強烈なスポットライトが家の窓に向けて当てられた。
その光は真っ黒な分厚いカーテンを透かせる程だった。
異常事態を察したアリータは素早くコバートを起こす。

「寝坊助! さっさと起きなさい、緊急事態よ!」
「んぁ……?」

 寝起きには(つら)い突然の事態だったがそんなこと構ってはいられない。
博士は博士で何が起きたのかを察して、1人大事なものを持ってはアンドロイドのいる部屋に避難させようと往復していた。
アリータは窓から射し込む光を能力で捻じ曲げて外を確認すると、大勢の武装集団に囲まれていることがわかった。
 アリータは慌てて報告した。

[怜央! 大変よ! 今すぐ戻ってきて!!!]

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