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 K大学の寮がやっと見えてきた時、丁度寮の門から出てきた男の人がいた。
 その人はそのまま左に曲がる。それは別にいいんだ。
 反対側から、美音さんが近づいていることを除けば。
 まずい! きっとあの人が福田さんだ!
 美音さんの殺意をはらんだ両腕が着実に福田さんに近づく。
 俺は疲れ果てている両足を必死で漕ぐが、距離が距離なだけに全然追いつかない。
 というか、ロクさんは? あの人先に行ったんじゃないのか?
 いいや、今いないならそれまでだ。いない人に頼っている場合じゃない。
 自分で撒いた種だ。俺がなんとかしないと!
 ソラがいなくても、ロクさんがいなくても。
 俺が、美音さんを止めるんだ。
 このまま自転車で突っ込む!
 美音さんの手と、福田さんの首との間があと三センチくらいになった時、
「はい、残念でしたー」
 その両手をソラが掴んだ。
「なんだよ、お前。離せ!」
 ソラの片手で両腕の自由を奪われた美音さんが、じたばたと暴れる。
 それを無視して、ソラは冷静に空いている方の手でポケットから黒のハンドガンを取りだした。
「殺人未遂現行犯逮捕ー」
「ちょっと! 私は悪くないでしょ!?」
「生きてる人間に危害を加えようと目論んだ時点でアウト」
 抗議を試みる美音さんに、まるで聞き耳をもたずに、ソラの銃はぴたりと美音さんの眉間に押しつけられた。
「地獄で反省しろ」
 ソラがトリガーを引くと、美音さんはあっさりと霧になって消えていった。

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